連載
そうだ アニメ,見よう:第192回は今期No.1の注目作「葬送のフリーレン」。勇者パーティの痕跡をたどる魔法使いの物語
「週刊少年サンデー」で連載中の「葬送のフリーレン」(少年サンデーコミックス/既刊11巻)は,山田鐘人氏(原作)とアベツカサ氏(作画)によるファンタジーコミックだ。コミックスの累計発行部数は1000万部を突破し,2021年には「マンガ大賞2021」の大賞,「第25回手塚治虫文化賞」の新生賞を受賞するなど,昨今のマンガ業界で注目度ナンバーワンの作品となる。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第192回のタイトルは,同作をアニメ化した「葬送のフリーレン」(毎週金曜23:00〜日本テレビ系列ほか)。制作はマッドハウス,シリーズ構成は「ワンパンマン」や「ACCA13区監察課」の鈴木智尋氏が担当。監督は「ぼっち・ざ・ろっく!」の斎藤圭一郎氏が務めている。
「葬送のフリーレン」
50年後,すっかり年老いたヒンメルと再会したフリーレンは,ハイターやアイゼンと連れ立って再び流星群を観賞する。間もなく死を迎えたヒンメルを目の当たりにしたフリーレンは,これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し,それを悔いた。
「なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう……」
葬儀を終えたフリーレンは,再びハイターやアイゼンと別れ,魔法収集と“人を知るため”の旅に出るのだった。
ヒンメルが死んで20年後,フリーレンは老い先短いハイターを訪ねる。ハイターは魔導書の解読と戦災孤児のフェルン(CV:市ノ瀬加那)を弟子にすることを依頼するが,足手まといはいらないとフリーレンは断る。それなら解読の片手間に魔法を教えてほしいとハイターは頼み,それならとフリーレンは了承した。
4年後,フリーレンは魔導書の解読を終え,フェルンは1人前の魔法使いとなっていた。ハイターにしてやられたと悟ったフリーレンは,ハイターを看取った後,足手まといではなくなったフェルンと共に諸国を巡る旅に出る。
「FRIDAY ANIME NIGHT」枠の第1弾
漫画ファン期待の作品がついにアニメ化された。しかも,初回は「金曜ロードショー」の枠にて放送されるという異例の扱いで,放送局である日本テレビの“やる気”が伝わってくるというもの。そのかいあってか,4エピソードが放送された2時間スペシャルの初回は,視聴率6.8%となかなかの好スタートを切っている。この後は,金曜23時に新設された「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で2クール連続での放送が予定されているそうだ。
物語は,ヒンメルたち勇者パーティが魔王を倒したその後から始まる。魔王を倒した勇者であっても老い,やがてこの世を去る。1000年以上も生きるヒロインのフリーレンは,仲間たちのそうした姿を見送り,それをきっかけに“人を知るため”の旅に出て,さまざまな人に出会う。いわばロードムービーなのだ。
勇者パーティの痕跡をたどるフリーレンは,ハイターの元でフェルンに出会い,やがてアイゼンの弟子であるシュタルク(CV:小林千晃)とも同行することになる。彼らとフリーレンのやり取りはどこかとぼけた雰囲気で,ついクスリと笑ってしまう。
派手なバトルやドラマティックな展開が比較的少ない本作だが,こうした登場人物たちの軽妙なやり取りが,見る者をストーリーに引き込む要因となっているだろう。
また,長命種であるフリーレンは,時間の感覚が人間のそれと異なっている。10年の冒険もごく短い期間なのである。そのため,ひとつの逗留場所で半年や1年,長い時は数年という時間がかかるときもあり,同行者であるフェルンに怒られることもしばしばだ。
こうした時間に対する感覚の違いが,フリーレンと人間の違いであり,“人を知る”ことにも深く関わってくる。その点も作品を通してのテーマともいえそうだ。
魔族たちとの魔法戦に期待
魔王亡き後とはいえ,魔族が全滅したわけではない。第3話「人を殺す魔法」に登場した「腐敗の賢老」クヴァールのように生き残っている魔族も存在し,フリーレンたちの前に立ちふさがってくる。魔力を自在に操る魔族と,トップクラスの魔法使いであるフリーレンたちの魔法戦は,ダイナミックなエフェクトと表現で見応えのあるシーンとなっていた。
今後も魔王配下の魔族たちが多数登場すると思われ,迫力のある魔法戦を期待できそうだ。なお,「葬送のフリーレン」とは,史上最も多くの魔族を葬ったフリーレンに与えられた二つ名のことである。
ちなみに,魔法戦だけでなく,本作は些細なシーンでもかなりこだわった演出がされている模様。魔法で空に飛び上がるときの浮遊感,蒼月草が舞い散るシーンなど印象的な場面を丁寧に描写し,なにより原作のキャラクターの印象をほぼ損なうことなくアニメ化していることに驚く。CGや撮影技術ではない,アニメーターの地力を感じた。さすが老舗スタジオのマッドハウスと言わざるを得ない。
果たしてメガヒットとなるか
エルフであるフリーレンの目を通して「人間とはなにか?」「生命とは?」と問いかけてくる本作。重いテーマ性だが,フリーレンの適度に力の抜けた感じ,可愛らしいフェルンの存在などにより,肩の力を抜いて楽しむことができるのが魅力と言える。
オープニングにYOASOBIの「勇者」,エンディングテーマはmiletの「Anytime Anywhere」と万全の体制でスタートしている本作だが,果たして「【推しの子】」や「SPY×FAMILY」のようにメガヒットとなるのか興味深い。ともあれ今期トップクラスの注目作であるのは間違いないので,今後も目が離せなくなりそうだ。
TVアニメ「葬送のフリーレン」公式サイト
TVアニメ「葬送のフリーレン」公式X(旧Twitter)
放映データ |
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2023年10月〜 |
毎週金曜23:00〜日本テレビ系ほか) |
キャスト | |
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フリーレン:種﨑敦美 | |
フェルン:市ノ瀬加那 | |
シュタルク:小林千晃 | |
ヒンメル:岡本信彦 | |
ハイター:東地宏樹 | |
アイゼン:上田燿司 |
スタッフ | |
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原作:山田鐘人・アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中) | |
監督:斎藤圭一郎 | |
シリーズ構成:鈴木智尋 | |
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子 | |
コンセプトアート:吉岡誠子 | |
魔物デザイン:原科大樹 | |
アクションディレクター:岩澤 亨 | |
デザインワークス:簑島綾香、山?絵美、とだま。、長坂慶太、亀澤 蘭、松村佳子、高瀬丸 | |
美術監督:高木佐和子 | |
美術設定:杉山晋史 | |
色彩設計:大野春恵 | |
3DCGディレクター:廣住茂徳 | |
撮影監督:伏原あかね | |
編集:木村佳史子 | |
音響監督:はたしょう二 | |
音楽:Evan Call | |
オープニングテーマ:「勇者」YOASOBI | |
エンディングテーマ:「Anytime Anywhere」milet | |
アニメーション制作:マッドハウス | |
製作:「葬送のフリーレン」製作委員会 | |
(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会 |
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