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そうだ アニメ,見よう:第189回は謎解き+伝奇アクション作品「アンデッドガール・マーダーファルス」。首だけの美少女探偵が難事件に挑む
第22回鮎川哲也賞を受賞し,“平成のエラリー・クイーン”と称される青崎有吾氏の小説「アンデッドガール・マーダーファルス」(講談社タイガ刊/既刊4巻)。本作は,吸血鬼や人狼といったファンタジーの住人に加え,アルセーヌ・ルパン,シャーロック・ホームズなど,フィクション世界のオールスターが登場するミステリ作品だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第189回のタイトルは,同作をアニメ化した「アンデッドガール・マーダーファルス」(毎週水曜24:55〜フジ・関西テレビほか)。制作はラパントラック,シリーズ構成は「キングダム」や「ゴールデンカムイ」の高木 登氏が担当。監督は「かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」シリーズや「昭和元禄落語心中」の畠山 守氏が務めている。
「アンデッドガール・マーダーファルス」
19世紀末。吸血鬼,人造人間,人狼など,異形の存在が人間と共生する世界。怪物たちの殺し合いを楽しむ見世物小屋で,“鬼殺し”として活躍する真打津軽(CV:八代 拓)のもとに,鳥籠を携えたメイドの馳井静句(CV:小市眞琴)が訪れた。その鳥籠の中身は首だけの美少女で,静句の主人・輪堂鴉夜(CV:黒沢ともよ)だと名乗る。
自分は“不死”だという鴉夜は,唯一自分を殺せる鬼の力を持つ津軽に,自分を殺してほしいと依頼する。しかし,自身が鬼に侵食されつつある津軽は,彼女の身体を奪った男“教授”を一緒に追う代わりに,鴉夜の唾液で進行を遅らせてほしいと提案。その男は津軽の身体に鬼の肉体を移植した人物でもあったのだ。
かくして,3人は怪物専門の探偵「鳥籠使い」として,数々の事件を解決しながら,鴉夜の奪われた身体を探してヨーロッパを巡る旅に出るのだった。
鳥籠使い一行として名を馳せるようになった鴉夜,津軽,静句は,フランス東部で起きた人類親和派の吸血鬼が殺された事件を見事解決。その後,イギリス・ロンドンに赴き,人工ブラックダイヤ「最後から二番目の夜」を若き大怪盗アルセーヌ・ルパン(CV:宮野真守)から守ってほしいと依頼される。
現地で待ち受けていたのは,依頼を受けたもう1人の探偵であるシャーロック・ホームズ(CV:三木眞一郎)と大手保険機構ロイスの諮問警備部の2人,レイノルド・スティングハート(CV:神尾晋一郎)とファティマ・ダブルダーツ(CV:松本沙羅)であった。さらに,ダイヤを狙って“教授”ことモリアーティ(CV:横島 亘)率いる「夜宴(バンケット)」も動き出す。果たして鴉夜たちはダイヤを守り切れるのか?
怪物専門の探偵「鳥籠使い」
怪盗ルパンや名探偵ホームズ,切り裂きジャックにオペラ座の怪人などなど,誰もが知っているレジェンドたちが一堂に会し,頭脳や異能を駆使したバトルを繰り広げる。彼らを相手取るのは,首だけの美少女と半人半鬼の男,そして卓越した戦闘技術を持ったメイドの3人という,なんともロマンあふれる“謎解き+伝奇アクション”作品が本作「アンデッドガール・マーダーファルス」だ。ちなみにファルスとは,フランス語で喜劇や笑劇のことを指し,本作では笑い話の意味となる。
舞台となるのは,人間と怪物が共生する世界。怪物専門の探偵として活動する鴉夜たち「鳥籠使い」の3人は,普通の探偵では解決できない事件を,鴉夜の962歳の経験と驚くべき頭脳による怪物論理(モンスターロジック)で解き明かしていく。物語は,数話でひとつのエピソードが語られる章仕立ての構成だ。
第一章「吸血鬼編」では,吸血鬼のゴダール一家で発生した殺人事件の真相を,鴉夜が華麗な推理で解決して見せた。細かい観察による推理と犯人を追い詰めていくロジックは,ミステリものならではの緊張感と,謎解きのカタルシスを味わうことができて,推理ファンには堪らない演出だったのではないだろうか。
そして,第二章「ダイヤ争奪編」には,ついにルパンやホームズをはじめ,多数の著名なキャラクターが登場し,いろいろな要素を詰め込んだ“ヤミ鍋”のようなカオスな状況になっている。鬼の力を持つジャックや,特殊な力を使うロイスの諮問警備部の2人組なども加わり,頭脳戦だけではなく,直接のバトルも頻発している。ミステリ要素だけでなく,山田風太郎作品のような異能バトルも本作の見どころとなりそうだ。
制作は「劇場版 輪るピングドラム」のラパントラック
首だけの少女がヒロインという,一風変わった本作の世界観を作り上げているのは,「さらざんまい」や「劇場版 輪るピングドラム」など,数多くの幾原邦彦氏の作品を手掛けてきたラパントラックだ。今回も,クセの強いキャラクターたちにマッチした独特な世界観を作り上げている。19世紀のヨーロッパの古い街並みを背景にした,異能者たちの壮絶なバトルは見応え抜群だ。
なお,第1話が鴉夜と津軽の出会いになっているなど,原作とアニメ版では物語の構成が微妙に異なる。そのほかにも,大手保険機構ロイスの名称といった細部にも手が加えられているようなので,気になる人は違いを探してみよう。
津軽と鴉夜の軽妙なやり取りもステキ
ミステリーであり,異能バトルものであり,ロードムービーでもあり,ファンタジー要素もあるという本作の混沌とした雰囲気も楽しいが,無駄口をたたく津軽とそれを受け流す鴉夜の軽妙なやり取りも,本作の魅力だろう。ダイヤを奪われたことで,ストーリーはサバイバル戦のようになっているが,一服の清涼剤として2人の会話を楽しみたいところだ。
「アンデッドガール・マーダーファルス」公式サイト
「アンデッドガール・マーダーファルス」公式X(旧Twitter)
放映データ |
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2023年7月〜 |
毎週水曜24:55〜フジ・関西テレビほか |
キャスト | |
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輪堂鴉夜:黒沢ともよ | |
真打津軽:八代 拓 | |
馳井静句:小市眞琴 | |
アニー・ケルベル:鈴代紗弓 | |
シャーロック・ホームズ:三木眞一郎 | |
ジョン・H・ワトソン:相沢まさき | |
アルセーヌ・ルパン:宮野真守 | |
ファントム:下野 紘 | |
ジェームズ・モリアーティ:横島 亘 | |
アレイスター・クロウリー:杉田智和 | |
カーミラ:近藤玲奈 | |
ヴィクター:山本 格 | |
ジャック:斉藤壮馬 | |
ノラ:内田真礼 | |
ヴェラ:花守ゆみり | |
カーヤ:中野さいま | |
レイノルド・スティングハート:神尾晋一郎 | |
ファティマ・ダブルダーツ:松本沙羅 | |
フィリアス・フォッグ:手塚秀彰 | |
パスパルトゥー:宇垣秀成 | |
レストレード:楠 大典 | |
ガニマール:廣田行生 |
スタッフ | |
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原作:青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス」(講談社タイガ刊) | |
監督:畠山 守 | |
シリーズ構成:高木 登 | |
キャラクター原案:岩本ゼロゴ | |
キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤憲子 | |
サブキャラクターデザイン・総作画監督:小園菜穂 | |
美術監督:関口 輝 佐藤理来 | |
撮影監督:塩川智幸 | |
色彩設計:中村千穂 | |
3Dディレクター:菅 友彦 | |
編集:松原理恵 | |
音楽:yuma yamaguchi | |
音響監督:若林和弘 | |
オープニング・テーマ:CLASS:y 「Crack-Crack-Crackle」 | |
エンディング・テーマ:Anna 「reversal」 | |
アニメーション制作:ラパントラック |
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