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「Radeon RX 5600 XT」レビュー。遅れてきたミドルレンジ級Naviは,クロックアップモデルならRTX 2060をも上回る
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印刷2020/01/21 23:00

レビュー

遅れてきたミドルレンジ級Naviの実力を検証

Radeon RX 5600 XT
(Sapphire PULSE Radeon RX 5600 XT 6GB)

Text by 宮崎真一

 2020年1月21日23:00,AMDのミドルレンジ向け新型GPU「Radeon RX 5600 XT」(以下,RX 5600 XT)のレビューが解禁となった。モデルナンバーから明らかなとおり,RX 5600 XTは,「Radeon RX 5700」(以下,RX 5700)と「Radeon RX 5500 XT」(以下,RX 5500 XT)の間にくるモデルで,Navi世代のGPUにおいて,ミドルレンジ市場向けの穴を埋める最後のピースとも言えるGPUである。「RX 5500 XTでは性能面で物足りない」と感じて,RX 5600 XTの登場を待ち望んでいた人もいるかもしれない。

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 北米時間2020年1月6日,AMDがCESに先駆けて開催したプレスカンファレンスでは,ノートPC用第3世代RyzenやNaviコアのノートPC向けGPU,64C/128TのRyzen Threadripper 3970Xの発表など,多くの製品や技術が紹介された。概要はすでにニュースでお伝え済みだが,カンファレンスの詳報をお届けしたい。

[2020/01/08 00:00]

 そんなRX 5600 XTの実力はどの程度なのか。今回は,RX 5600 XTを搭載したSapphire Technology(以下,Sapphire)製グラフィックスカード「Sapphire PULSE Radeon RX 5600 XT 6GB」(関連記事,以下 Pulse RX 5600 XT)を使用して,早速その性能をチェックしてみたい。

Sapphire PULSE Radeon RX 5600 XT 6GB
メーカー:Sapphire
実勢価格:未公表(※2020年1月21日現在)
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RX 5600 XTはRX 5700の低クロック版?

メモリ周りのスペックも控えめ


 まずは,RX 5600 XTのスペックからおさらいしておこう。
 RX 5600 XTは,RDNA(Radeon DNA)アーキテクチャをベースとしたNavi世代のGPUで,GPUコアには上位モデルのRX 5700と同じ「Navi 10」を使用している。
 そのため,AMDが「Stream Processor」(以下,SP)と呼ぶシェーダプロセッサ16基をひとかたまりとした実行ユニットを4つ束ねたうえで,キャッシュメモリやレジスタファイル,スケジューラ,テクスチャユニットとセットで演算ユニット「Compute Unit」(以下,CU)を構成する構造は,RX 5600 XTでも同じだ。
 RX 5600 XTは,RX 5700と同じくCUを36基搭載しており,RX 5600 XTにおけるSPの総数は64×36の2304基となるので,この部分はRX 5700とまったく変わらないのである。

RX 5600 XTの主なスペック
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 では,RX 5600 XTとRX 5700ではどこが異なるかというと,ひとつは動作クロック設定だ。RX 5600 XTにおけるベースクロックは非公開だが,ゲームクロックは1375MHz,ブーストクロックは1560MHzで,RX 5700比で見ると前者は250MHz,後者は165MHz低い設定となっている。

 もうひとつは,GPUの足回りと言えるグラフィックスメモリ周りの仕様だ。RX 5700と同様に,RX 5600 XTもグラフィックスメモリにはGDDR6を採用するが,メモリインタフェースは192bitで,RX 5700の256bitより狭くなっている。それに加えて,メモリクロックも12GHz相当と,RX 5700の14GHz相当より低くなっているため,RX 5600 XTのメモリバス帯域幅は288GB/sと,RX 5700の448GB/sと比べるて64%程度のスペック規模に抑えられているのだ。メモリ容量が6GBと,RX 5700の8GBよりも少ない点も注意すべきだろう。

 つまりRX 5600 XTは,RX 5700の動作クロックを低くして,メモリ周りのスペックも抑えたものとまとめることができる。表1にRX 5600 XTの主なスペックを,従来製品と競合製品ともにまとめたので参考にしてほしい。

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2つのVBIOSを搭載し,PerformanceではRX 5700のクロック設定を凌駕


Pulse RX 5600 XT
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 Pulse RX 5600 XTのカードそのものについて見ていこう。
 Pulse RX 5600 XTにおける最大の特徴は,2つの異なるVBIOS(ビデオBIOS)を備えている点が挙げられる。2つのVBIOSは「Performance」と「Silent」と呼ばれており,以下のようにそれぞれ動作クロック設定とメモリクロック設定が異なる。

  • Performance:ゲームクロック 1615MHz,ブーストクロック 1750MHz,メモリクロック 14GHz相当
  • Silent:ゲームクロック 1460MHz,ブーストクロック 1620MHz,メモリクロック 12GHz相当

上側面に用意されたディップスイッチ。ブラケット側がSilent,反対側がPerformanceとなる。なお,VBIOSの切り替えには,PCの再起動が必要となる
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 Performanceのブーストクロックは,RX 5700のリファレンス仕様におけるブーストクロックを上回っており,メモリクロックも同様である点は注目に値しよう。
 一方のSilentも,RX 5600 XTのリファレンススペックから60〜75MHzほど動作クロックを引き上げた設定だ。なお,工場出荷時設定はPerformanceで,カード上側面のブラケットの近いところにあるディップスイッチで,VBIOSを切り替えるようになっている。

Radeon Softwareから,Performance(左)とSilent(右)の仕様を確認しているところ。Performanceでは,ゲームクロックのことを示す「コアのクロック」が1615MHz,「メモリービットレート」が14.00Gbpsとなっているところ,Silentではそれぞれ1460MHz,12.00Gbpsである
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 カード長は実測250mmほど(※突起部除く)で,RX 5700リファレンスカードが約263mmだったので,それより13mmほど短い計算になる。ただ,マザーボードに装着すると,ブラケットからクーラー部分が垂直方向に26mmほどはみ出た格好となっているので,スリムなPCケースなどを使っている人は,装着するスペースがあるかどうか確認が必要だろう。

Pulse RX 5600 XTのカード長は約250mm
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カード裏面には,補強用のバックプレートが取り付けられていた(左)。ブラケット側から見ると,クーラー部分のはみ出し具合が大きいことが見てとれる
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 GPUクーラーは,2.2スロット占有タイプで,Sapphireが「Dual-X Cooling」と呼ぶオリジナルのものである。100mm角相当の空冷ファンを2基搭載しており,ファンブレードには浅い溝が彫られている点が特徴的だ。また,GPUの負荷が低くなるアイドル時に,ファンを停止する機能も備える。

Dual-X Coolingと呼ばれるオリジナルクーラーを採用。エアフローを向上させるためか,ファンブレードにはうっすらとではあるが溝が彫られている
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 側面からカードを覗き込むと,6mm径のヒートパイプを3本使う構造になっていた。さらに,GPUだけでなく電源部やメモリチップにもヒートシンクが密着しているようで,しっかりと冷却を行えるように配慮してあるようだ。

カードを横から見たところ。太いヒートパイプを用いて,GPU直上の銅製プレートに密着する構造を採用している
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 PCI Express(以下,PCIe)補助電源コネクタは,8ピンを1基備える。映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b×1という構成で,これはRX 5700のリファレンスカードと変わらない。

電源コネクタは8ピンをひとつ搭載(左)。一段低く奥まったところに実装されており,電源ケーブルのコネクタがPCケースに干渉しないよう配慮している。映像出力インタフェースはDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b×1で,最近のカードではよく見かける構成だ(右)
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Performance VBIOSでのテストを実施

RTX 2060 SUPERやRTX 2060とも比較


 それでは,RX 5600 XTのテスト環境に話を移そう。今回,比較対象には,Navi世代のGPUからRX 5700とRX 5500 XTを用意。さらに,Pulse RX 5600 XTの動作クロック設定が,かなりアグレッシブであることを考慮して,競合製品としては,性能が近くなるであろう「GeForce RTX 2060 SUPER」(以下,RTX 2060 SUPER)と「GeForce RTX 2060」(以下,RTX 2060)を用意した。
 AMDは,RX 5600 XTの競合として「GeForce GTX 1660 Ti」を挙げているが,Pulse RX 5600 XTの動作クロックなら,これを上回るのは確実だろう。

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 今回は,Pulse RX 5600 XTのPerformanceにおける素の状態(※グラフ内ではPulse RX 5600 XT OCと表記)だけでなく,VBIOSをSilentに切り替えて,ブーストクロックをリファレンスに揃えた状態(※グラフ内ではRX 5600 XTと表記)でもテストを行った。
 なお,RX 5500 XT搭載カードとして利用したMSI製「Radeon RX 5500 XT GAMING X 8G」はクロックアップモデルであるため,MSIのオーバークロックツールである「Afterburner」(Version 4.6.2)を用いて,ブーストクロックをリファレンス相当のスペックまで落としてテストしている。

 テストに利用したグラフィックスドライバは,Radeonシリーズが「Radeon Software Adrenalin 2020 Edition 20.1.1 Jan13-RC5」というバージョンで,AMDがRX 5600 XTのテスト用として,全世界のレビュワー向けに配布したものだ。一方のGeForceシリーズは,「GeForce 441.87 Driver」で,これはテスト時における最新バージョンである。そのほかのテスト環境は,表2にまとめておいた。

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 テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1に準拠。ただし,レギュレーション23を先取りする形で,「Far Cry 5」の代わりに「Far Cry New Dawn」,「Middle-earth: Shadow of War」の代わりに「Borderlands 3」,「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の代わりに,「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)をそれぞれ使用している。

 これらの具体的なテスト方法は,GTX 1650 SUPERのレビュー記事を参照してほしいが,簡単にまとめると,Far Cry New Dawnは「最高」プリセット,Borderlands 3は「高」プリセットで,それぞれゲームに含まれるベンチマークモードを実行。FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチに関しては,「最高品質」を選択している。
 解像度については,AMDがRX 5600 XTを「最新ゲームの最高品質をフルHDで60fpsオーバーで楽しめるもの」としているため,1920×1080ドットは当然として,2560×1440ドットと3840×2160ドットも選択している。


性能はRX 5700の8割前後,OC状態ではRTX 2060を超える性能を発揮


 それでは,「3DMark」(Version 2.11.6846)の結果から順に見ていこう。
 グラフ1は,DirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。RX 5600 XTの性能は,RX 5700の81〜84%程度といったところで,RX 5500 XTと比べると,36〜39%程度スコアを伸ばしている。

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 興味深いのは,RX 5600 XTは,解像度が高まるにつれてRTX 2060との差を詰めて逆転している点だ。メモリ周りのスペックだけ見ると,RTX 2060に分があるのだが,RX 5600 XTのほうがメモリアクセス性能には優れるということなのだろうか。Navi世代で実装となった「Lossless Delta Color Compression」がすべてのキャッシュメモリに対して行えるようになったこと(関連記事)が奏功したのかもしれない。
 なお,Pulse RX 5600 XT OCは,RX 5600 XTから12〜14%程度スコアが向上し,RX 5700には届かないものの,RTX 2060を上回っている点は立派だ。さらに高解像度のプリセットでは,RTX 2060 SUPERを超えるスコアを記録したのは注目すべき点であろう。

 続いてグラフ2は,Fire Strikeの結果からGPU性能を見るGraphics scoreを抜き出したものだ。おおむね総合スコアを踏襲している。RX 5600 XTのスコアは,RX 5700の80〜83%程度といったところ。Pulse RX 5600 XT OCのRX 5600 XTからの伸びは約15%だ。

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 グラフ3は,Fire Strikeのスコアからソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものである。CPUを統一していることもあり,スコアはほぼ横一線に並ぶ。

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 グラフ4はGPUとCPU両方の性能を見る「Combined test」の結果をまとめたものだが,やはりRX 5600 XTはRX 5700の80〜82%程度のスコアで,RX 5500 XTに対しては40〜57%の差を付けている。ただ,Combined testではスコアの比重が総合スコアと異なるためか,3840×2160ドットでも,RX 5600 XTはRTX 2060に届いていない。とはいえ,Pulse RX 5600 XT OCでは,RTX 2060と肩を並べている点は評価できるポイントだ。

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 DirectX 12世代のテストである「Time Spy」から,総合スコアをまとめたものがグラフ5である。ここでも,RX 5600 XTの位置付けは変わらない。RX 5700との差は17〜20%程度で,RX 5500 XTに対しては34〜35%程度の差をつけている。Time Spyでは,NVIDIAのTuring世代GPUが良好なスコアを残すことが多いが,それでもPulse RX 5600 XT OCがRTX 2060を上回っている点は,目を見張るものがある。

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 次のグラフ6はTime SpyからGPUテストの結果を,グラフ7はCPUテストの結果をそれぞれまとめたものだ。GPUテスト結果は,総合スコアを踏襲する形となり,RX 5600 XTはRX 5700の77〜81%程度で,RX 5500 XTを39〜40%程度上回るのスコアを発揮している。また,Pulse RX 5600 XT OCがRTX 2060を優に上回っている点も変わらない。
 なお,CPUテストはFire Strikeと同様に,CPUが同一であるためスコアが横並びだ。

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 3DMarkでは優秀な結果を見せたRX 5600 XTだが,実際のゲームだとどうなるだろう。
 グラフ8〜10は,Far Cry New Dawnのテスト結果をまとめたものだ。Far Cry New Dawnでは,1920×1080ドットはCPUのボトルネックが近いためか,スコアが丸まりつつある。そこで,2560×1440ドット以上の解像度に目を移すと,RX 5600 XTは,平均フレームレートでRX 5700の80〜88%程度のスコアを発揮し,RTX 2060よりも優位に立っている点は賞賛すべきポイントだ。さすがに,Pulse RX 5600 XT OCであってもRTX 2060 SUPERに届いていないものの,その差を5〜7%程度にまで詰めている点は立派と言えよう。

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 「Overwatch」の結果をまとめたものがグラフ11〜13になる。平均フレームレートにおいて,RX 5600 XTは,RX 5700の80〜81%程度といったところ。Pulse RX 5600 XT OCは,そこからさらに12〜15%ほどスコアが向上して,RTX 2060を2560×1440ドット以上で上回り,RTX 2060 SUPERとの差を詰めている。

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 グラフ14〜16にまとめた「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果を見ていくと,RX 5600 XTは,RX 5700比で82〜88%程度の性能となり,RX 5500 XTとの差は41〜44%程度と,格の違いは明らかだ。Pulse RX 5600 XT OCは,そこからさらに10〜14%程度スコアを伸ばして,RTX 2060を超える性能を見せた。ただ,RX 5600 XTやRX 5700で,2560×1440ドットだけスコアが伸びきらないのは,ドライバ側に何かしら問題があるように思える。

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 グラフ17〜19の「Fortnite」でも,これまでの傾向は変わらない。RX 5600 XTは,平均フレームレートでRX 5700の79〜82%程度にあり,2560×1440ドット以下であれば,常時60fps以上の性能を発揮している点は評価していい。Pulse RX 5600 XT OCが,安定してRTX 2060のスコアを超えている点も注目に値する。

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 Borderlands 3の結果をまとめたものがグラフ20〜22だ。Pulse RX 5600 XT OCは,RX 5600 XTから平均フレームレートを13〜14%程度伸ばし,RTX 2060に対しても,2〜10%程度の差を付けた。なお,RX 5600 XTがRX 5700比で82〜84%程度の平均フレームレートを記録した点などは,これまでの傾向と同様である。

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 FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチの総合スコアをまとめたものがグラフ23だが,ここでもCPUのボトルネックが近いため,1920×1080ドットではスコアが丸まりつつある。
 そこで,それ以外の解像度を見ていくと,本ベンチは,GeForceシリーズへの最適化が進んでいるため,Radeonシリーズには毎度苦しい戦いになる。それはPulse RX 5600 XT OCも同じで,3840×2160ドットでようやくRTX 2060に対して逆転を果たすのがやっとだ。ただPulse RX 5600 XT OCが,RX 5600 XTからスコアを13〜15%程度も伸ばしている点は評価できよう。
 なお,RX 5600 XTは,RX 5700比で79〜82%といったところで,2560×1440ドットでもスクウェア・エニックスの指標で最高評価となるスコア7000を余裕で上回っている点は評価できる。

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 グラフ24〜26は,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものだ。平均フレームレートは総合スコアを踏襲している一方で,最小フレームレートになると,Pulse RX 5600 XT OCが上位モデルであるRX 5700といい勝負を演じている。

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 ゲームテストの最後に,「PROJECT CRAS 2」の結果をまとめたのがグラフ27〜29となる。RX 5600 XTの平均フレームレートは,やはりRX 5700の79〜82%程度といったところ。Pulse RX 5600 XT OCは,RX 5600 XTから平均フレームレートが14〜15%程度向上し,RTX 2060 SUPERとの差を4〜7%程度にまで縮めている。
 とくに最小フレームレートを見ると,Pulse RX 5600 XT OCがすべての解像度でRTX 2060 SUPERを上回っており,ゲームの快適さという点では,Pulse RX 5600 XT OCに軍配が上がる。

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消費電力はかなり控えめな印象,カード単体の実測値は140Wほど


 続いては消費電力の検証を進めていこう。
 RX 5600 XTのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は150Wだが,AMDによると,Pulse RX 5600 XTにおけるTGP(Total Graphic Power,ここではTDPとほぼ同意)は,Performance VBIOSが160Wで,Silent VBIOSが135Wであるという。
 では,実際の消費電力はどの程度なのか,「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめたものがグラフ30となる。ただ,Pulse RX 5600 XT OCでは機材トラブルによりうまく計測できていなかった。
 グラフ30を見ると,RX 5600 XTは150W弱あたりを中心に推移しており,RX 5700やRTX 2060 SUPERより消費電力が低いことはハッキリと見てとれる。150Wを超えた回数をカウントしてみると,RX 5600 XTが159回なのに対して,RX 5500 XTは126回,RX 5700は373回,RTX 2060 SUPERが285回で,RTX 2060は200回となった。RX 5600 XTは,RTX 2060よりも消費電力が低く,RX 5500 XTよりは高いと言えそうだ。

※グラフ画像をクリックすると,横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 グラフ30におけるスコアの中央値をまとめたものがグラフ31となる。RX 5600 XTの消費電力は約140Wと,RX 5700よりかなり電力が抑えられ,RTX 2060よりも低いことがはっきりした。

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 4Gamer GPU Power Checkerでは,Pulse RX 5600 XT OCの消費電力が計測できていないので,念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力も計測してみた。このテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランスに設定」。さらに,ゲーム用途を想定して,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。

 測定結果をまとめたものがグラフ32となるが,RX 5600 XTは,RX 5500 XTから7〜28W程度高いものの,RX 5700と比べて29〜50W程度も低い結果を残した。Pulse RX 5600 XT OCは,さすがにRX 5600 XTから9〜39W程度も高くなっているが,RTX 2060からは最大値で約33Wも低く,消費電力はかなり抑えられている印象だ。

画像集#048のサムネイル/「Radeon RX 5600 XT」レビュー。遅れてきたミドルレンジ級Naviは,クロックアップモデルならRTX 2060をも上回る

 最後に,「GPU-Z」(Version 2.29.0)を用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,室温約24℃の部屋で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態で,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
 その結果はグラフ33のとおり。カードごとに温度センサーの位置や温度の取得条件などが異なるため,横並びの比較はあまり意味をなさないのだが,その点を踏まえて見ていくと,RX 5600 XTは高負荷時でも70℃を下回っており,GPUクーラーの冷却性能は十分足りているように見受けられる。Pulse RX 5600 XT OCでも,温度の上昇は抑えられており,70℃に達しない点は立派だ。温度だけを見るのであれば,クロックアップの余地はまだまだあるようにも思える。

画像集#049のサムネイル/「Radeon RX 5600 XT」レビュー。遅れてきたミドルレンジ級Naviは,クロックアップモデルならRTX 2060をも上回る

 なお,筆者の主観であることを断ったうえで,Pulse RX 5600 XTの動作音を述べると,静音性に秀でるとまではいかないまでも,かなり静かな印象を受けた。少なくともRX 5700のリファレンスカードより静かなことは誰が聞いても明らかで,このクラスの製品としては十分静かと言ってよいだろう。


クロックアップモデルはかなり狙い目

安価なRX 5700として存在意義はかなり大きい


Pulse RX 5600 XTの製品ボックス
画像集#050のサムネイル/「Radeon RX 5600 XT」レビュー。遅れてきたミドルレンジ級Naviは,クロックアップモデルならRTX 2060をも上回る
 ベンチマークとゲームによるテストを見てきたが,RX 5600 XTの性能は,RX 5500 XTから3〜4割程度上回り,RX 5700の8割ほどとまとめられる。ただ,Pulse RX 5600 XTのようなクロックアップモデルは,素の状態から性能を約15%伸ばしており,GeForce GTX 1660 Tiはおろか,RTX 2060に対しても優位に立ち回るようになるのは,特筆すべきポイントだろう。

 これまで,グラフィックスカードのクロックアップモデルは,リファレンスから性能が10%以上も向上するものはあまり見られなかった。その点,RX 5600 XTは上位モデルと同じGPUコアを用いているためか,動作クロックを伸ばしやすく性能を上げやすいのだろう。実際,クロックアップモデルは,RX 5600 XTの上位モデルと言えるほど,性能が大きく向上する点は重要だ。
 国内市場においては,リファレンススペックのRX 5600 XT搭載カードはあまり出回らず,クロックアップモデルが店頭を賑わせるようになると思われる。そのため,購入するときはクロックアップモデルの動作クロック設定に気を付ける必要があるだろう。とくに,Pulse RX 5600 XTのようなメモリクロックが上位モデルと同じ14GHz相当の製品は魅力的と思われるので,予算が許すのであればそちらを選びたいところだ。

画像集#051のサムネイル/「Radeon RX 5600 XT」レビュー。遅れてきたミドルレンジ級Naviは,クロックアップモデルならRTX 2060をも上回る
 AMDによるRX 5600 XT搭載カードの想定売価は279ドルであるそうだが,日本市場では3万円台半ば〜4万円程度になる見込みだ。対するNVIDIAは,RTX 2060が4万円前後であるため,ほぼ価格帯では競合するか,やや下回ることになるだろう。もちろんRTX 2060には,RX 5600 XTにはないリアルタイムレイトレーシングという武器があるので,そこをどう評価するかもポイントになる。
 RX 5600 XTの魅力は前述のように“動作クロックの引き上げやすさ”にあると言っても過言ではない。高クロック設定のクロックアップモデルはもとより,ユーザーの自己責任になるが,RX 5600 XTでオーバークロックを試すといった用途でもおもしろい選択となるGPUではないだろうか。

SapphireのPulse RX 5600 XT製品情報ページ

AMDのRadeon RX 5600シリーズ製品情報ページ

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    Radeon RX 5000

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