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印刷2017/02/09 14:17

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誰の生き血を吸うべきか? アクションRPG「Vampyr」のディテールが,パリで開催されたゲームイベントで明らかに

 2013年にカプコンからリリースされたアクションアドベンチャー「Remember Me」,そして2015年にはスクウェア・エニックスから発売されたエピソード型アドベンチャーの「ライフ イズ ストレンジ」と,新作が出るたびに存在感を増しつつあるフランスのデベロッパ,DONTNOD Entertainment。同社が2017年内のリリースを目指して開発を進めているのが「Vampyr」PC/PlayStation 4/Xbox One)だ。そのパブリッシングを担当するFocus Home Interactiveが2017年2月1日と2日に開催したイベント「What’s Next de Focus?」において,同作の詳細を聞いてきたので,ここで紹介したい。

人の命を助ける医師なのに,人を殺して生き血をすする吸血鬼に成り下がってしまったジョナサン。果たして治療法は見つかるのだろうか?
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 「Vampyr」の舞台となるのは,1918年のロンドンだ。第一次世界大戦の戦場にはならなかったものの,世界人口の2〜5%が感染死したといわれる史上最大のパンデミック,スペイン風邪が大流行しており,ゲームに描かれるロンドンは,陰鬱とした廃墟のような無法地帯になっている。
 本作の主人公は,戦争で軍医として活躍したことで名声を得たジョナサン・リードという人物で,本来なら,人の命を救うべき彼が吸血鬼になってしまったという苦悩と葛藤が,ゲームの重要な要素になる。

ちなみにスペイン風邪は,第一次世界大戦の中立国だったスペインからの感染情報が多かったために付けられた名称で,そもそもの発生源は北米東部だと考えられているようだ。本作では,そんなスペイン風邪とヴァンパイアの因果関係も描かれるのだろうか?
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 スペイン風邪の感染と暴力への恐怖から,警察も機能しなくなったロンドンの夜は森閑としており,よほどの理由がない限り,人々は外を歩こうとしない。医者,看護師,軍人,新聞記者,売春婦など,必要に駆られて外に出る者もいるが,往来の少なさは,古くからロンドンの闇に巣食うヴァンパイア達の出現を招いているという設定だ。ジョナサンは自分が吸血鬼であるという苦しみと戦いつつ,ミュータントのようなヴァンパイアや,彼の命を狙うヴァンパイアハンターと戦っていくことになる。
 ジョナサンが,危険を冒しながらも夜ごとロンドンの街中を放浪し続けるのは,ヴァンパイア達の過去と由来を暴き,できれば治療法を見つけたいと思っているからだ。

 「ヴァンパイアに遭遇しないために,昼間に歩き回れば良いのでは」と考える筆者のような人は浅はかだ。ジョナサンは吸血鬼なので,太陽光に弱いのだ。とはいえ,日中,暗がりでじっとしているだけではゲーム的につまらないので,「Vampyr」に昼夜の表現はなく,基本的には薄暗い夜だけが描かれているとのこと。

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 たとえヴァンパイアでも,敵と戦って勝つためには,戦闘能力を上げていく必要がある。公開されている映像では,敵の立っている場所に,影のようなものを湧き出させてつかみ上げたり,瞬間移動で敵をあざむくといったスキルの存在が確認できるが,こうしたスキルを得たりパワーアップするには,経験値が必要になるという。この経験値は戦うことより,人の生き血を吸うほうが効率良く得られるというから,吸血鬼であることに苦しむジョナサンにとっては悩ましい。そのへんの人を路地裏に連れ込んで生き血を貪りたい気もするが,本作では,血を吸われたNPCはそのまま死んでしまうというから,ジョナサンとしてはいたたまれない。

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 そんなロンドンで日常生活を送っているNPCは,ヴァンパイアやヴァンパイアハンターなどの敵となるキャラクターを除いて,60人ほどしかいないそうだ。オープンワールド型のゲームとしては少ない気もするが,前述のように,スペイン風邪に怯えるロンドンの夜は,ほとんど誰も歩き回らないため,人がいるだけでも珍しいわけだ。
 しかも,「太陽光に弱い」や「銀製品やニンニクを恐れる」といった吸血鬼の掟の1つ,「招待されなければ,建物には入れない」というルールにも従っているため,人の家に押し入って,誰にも見つからないよう生き血を吸うことはできないのだ。

 さらにゲームを複雑にしているのが,これら約60人のNPCは,それぞれ,ストーリーを進めていくうえで重要になる何らかの情報を持っているかもしれないということだ。それは,NPCとの会話の中で明らかにされるかもしれないし,自分の魅力(Charm)スキルを利用して,相手の部屋に招待され,そこで見つけた日記などから情報が得られる場合もあるという。基本的には,NPCのためにクエストをこなし,信頼を得ていくことで新たな展開がアンロックされていくというシステムになっている。

ヴァンパイアハンターなら,ストーリーに影響することなく餌食にできるらしい
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 こうした手間を嫌い,経験値を得たいという欲望に従って闇雲にNPCの生き血を吸うこともできるし,なんならNPC全員を餌食にしてしまうことさえ可能らしいが,ご想像のとおり,そんなことをすると物語が進まなくなり,バッドエンドを迎えてしまう。ジョナサンの究極の目的はヴァンパイアの能力を身に着けたり高めたりすることではなく,治療法を見つけ出すことであり,そのためには60人それぞれの素性を確認し,治療のための情報を持っているかどうかをチェックすることが重要になるのだ。

 担当者の話では,NPCを何人殺したかで主人公の容姿が変化し,その変化の程度に応じた異なるエンディングが用意されているという。エンディングは合計で4つあり,そのうちの1つは,60人のNPCの誰も殺さずにゲームを進めた場合のものらしいが,当然ながら,スキルは低いままなのでクリアはかなり難しくなる。また,戦闘でヴァンパイアの能力を使うとジョナサンの血が減ってしまう(つまり体力がなくなる)ため,戦闘中でも捕食する必要がありそうだ。
 したがって,ゲームに慣れないうちは,まずNPC達をつけ回し,情報の有無をしっかり確認したうえでダークサイドにはまる必要があるだろう。

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 さらに言えば,NPCにはそれぞれの生活があり,素性の調査を十分にしないままに捕食したりすると,例えば残された子供が吸血鬼を憎悪してヴァンパイアハンターになったり,居酒屋の店主を餌食にすれば,その店は休業になり,情報を持っているはずの人が集まりにくくなるといった状況に陥る。こうした,さまざまなモラルチョイスと,自分の行動に対する結果が本作には散りばめられており,アクションだけでなく,調査や探索,ステルスなど,多様な要素を持つゲームになっている。

今回のイベントでは,DONTNOD Entertainmentのオフィス見学の機会にも恵まれたが,そこはなんともモダンなオフィスビルの一角。しかも,表札には「DONUT Entertainment」とスペルミスの表記になっていた。ドーナツ?
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 舞台となるロンドンは完全なオープンワールドではなく,工場地帯や商業地区,教会の多いエリア,そして広大な地下空間など,複数の地区に分かれており,これらがNPCとの会話や与えられたクエストをこなすことで,順を追ってアンロックされるというシステムとのこと。
 それぞれの区域には隠れ家も用意されており,そこで就寝して体力を回復させたり,スキルやアイテムのアップグレード,さらにはクラフティングなどが行えるとのことだった。

 DONTNOD Entertainmentにとって初のアクションRPGとなる本作だが,複雑で遊び応えのあるゲーム展開は彼ららしい部分だと言える。発売は2017年第4四半期となっており,続報を楽しみにしたいところだ。

スタジオツアーのガイド役は,「Vampyr」のアニメーションディレクターであり,つい最近までコナミの小島プロダクションにいたという竹花鉄平氏。日本語はもちろん,フランス語と英語も巧みに操る
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