プレイレポート
「ロゼと黄昏の古城」プレイレポート。茨を背負う少女と,うずまき模様の巨人の可愛くて残酷な物語を楽しもう
“古城探索アクション”と銘打たれた本作は,呪われた茨を背中に宿した少女と,うずまき模様の巨人の2人のキャラクターを操作して,謎多き古城を探索し,脱出を目指すというタイトルだ。本稿ではそのプレイレポートをお届けする。
PS Vitaの画面に浮かびあがるモノトーンの世界
ゲームは薄暗い牢屋のような場所で少女「ロゼ」が目覚めるシーンから始まる。物語を描くようなプロローグはなく,彼女がなぜそこにいるのかも分からない。色あせた水彩画のように少し黄色みがかったモノトーンで描かれたグラフィックスが,ゴシックホラーのステリアスな雰囲気を盛り上げている。
そんな黒と白の世界に,時折見えてくる対照的な色が,鮮やかな血の赤だ。血は,ロゼが命を落としたときに流れるだけでなく,ゲームシステムとしても重要な要素となっている。今回筆者は初期型のPS Vita(PCH-1000)でプレイしたのだが,黒色が美しく映る有機ELディスプレイでは,モノトーンで描かれる世界と,そこにアクセントとして入る赤の表現が映える。部屋を薄暗くしてプレイすれば気分も高まるはずだ。
ちなみに,雰囲気の良い日本一ソフトウェアの横スクロールアクションというと,「htoL#NiQ −ホタルノニッキ−」が思い出されるが,本作のディレクターは,ホタルノニッキと同じく古谷優幸氏が務めている。可愛らしいキャラクターグラフィックスと儚げなイメージは,本作でも健在だ。
か弱きロゼと,屈強な巨人,2人のコンビネーションで城の脱出を目指す
ゲームの内容はステージクリアタイプの2Dアクションゲームで,ロゼと巨人,個性の異なる2人のキャラクターを切り替えてステージのゴールを目指すという,比較的オーソドックスなものだ。
最初に操作することになるロゼは,アクションゲームのプレイヤーキャラクターとしてはあまりに弱々しく,デリケートだ。ジャンプの高さは自分の身長の半分程度がやっと。身長程度の高さから落ちると転んでしまい,それより少し高い場所なら死んでしまうこともある。攻撃手段なども一切持っていない。
とてもか弱いロゼだが,彼女にしか使えない特別な力を持っている。それが彼女の背中に生えている「呪いの茨」が持つ「茨の力」だ。
本作の舞台となる古城は,色と時間を失っていて,モノトーンで見えているものは時間が止まっているので,その場から動くことがない。城の中の動くものは,冒頭でも触れた赤い色をした「血の力」を宿しているものだけなのだ。
ロゼが持っている茨の力は,この血の力を奪って他へと移し替えるという能力であり,赤いものから血の力を奪ってその動きを止めたり,逆に動かないものに対して血の力を移して動くようにしたりできるのだ。この力を使うことで,先へと進む足場を作ったり,彼女に害をなす敵の動きを止めたりして進んでいくという仕組みだ。なお,ロゼは血の力を1つしか持てず,捨てることもできないので,そのキャパシティの中でどうやりとりして先に進むかも考えどころとなっている。
一方,道中でロゼと出会い,血の力を与えられたことで行動を共にすることになる巨人は,「怪力」がその能力だ。目の前にある障害物を動かしたり,物体を積み上げて足場にしたりするなど,か弱いロゼにはできないことをやってのける頼もしい存在となっている。
また,穴に落ちたりしなければ基本的に無敵であり,ロゼが触れるとミスになってしまう茨が生い茂る場所や,敵の中などを通過できるので,その安心感は絶大だ。
高いところが苦手なロゼも,巨人に抱きかかえてもらえば落ちても大丈夫になるし,彼(?)に放り投げてもらえば高い場所に行くのも容易だ。ただ,巨人がどんなに力強くても,血の力が通っていないものは動かすことができないので,ステージを進むためにはロゼの茨の力が必須となる。能力や手触りのまったく異なる2人が協力するシステムは,ゲームプレイにより深みを与えている。
よく練られた城のギミックが,ロゼを死へと誘う
ロゼと巨人の2人が脱出を試みる古城は,「地下牢」「武器庫」「中庭」複数のエリアでステージが構成されていて,エリアによってギミックや謎解きの方向性が異なっている。その作りはパズル的でありつつ,トライ&エラーを繰り返して少しずつ攻略法を掴んでいく要素が濃い。初見殺しは当たり前だ。難度はどちらかというと,パズル的な部分に振られており,プレイヤーにはアクションゲームとしての腕よりも,ひらめきの能力が求められるので,指先のテクニックはそれほど必要はない。
そんなゲーム中にミスをしたときのロゼの死に様は,ある意味本作の見どころの一つ。ギミックごとにそのパターンが異なり,妙に滑らかにアニメーションするという演出も,本作の方向性を表している。
とくに各エリアへと進むために通る「処刑ノ間」では,扉を塞いでいる「血の封印」を解くために,さまざまな処刑器具にロゼの血を捧げる必要があり,そこでもまた彼女が凄惨な目にあう。キャラクターがデフォルメされているので多少マイルドな表現ではあるが,好みにも左右されると思うのでご注意いただきたい。
なおゲームは残機制ではないため,何度ミスしてもゲームオーバーになることはない。前述の血を捧げるときも同様だ。ミスをしたときはステージか,道中の復活ポイントである「光を放つつぼみ」からやり直しとなる。
ステージに残された「血の記憶」が,ゲームのストーリーを語る
オープニングの演出も含め,ゲームのストーリーを表すような演出は,背景に現れるテキストが主体なので比較的サクサク進んでいく。また,それとは別に,ステージ中には過去にその場所で何が起きたのかを映像で見られる「血の記憶」が残されている。若干抽象的ではあるものの,それを見つけることで,ストーリーのバックボーンが少しずつ分かっていくという仕組みだ。
いわゆるコレクション要素ではあるものの,前述の血の封印を解くために特定の数が必要な場所も存在している。ゲームを進めていくと,血の記憶がある場所がマップに示される「血の水晶」も登場するが,中には取るためにかなり頭をひねらなければならないものもあり,コンプリートするのはかなりの根気が必要となるのではなかろうか。クリア後のステージはいつでも選んでプレイできるので,じっくり挑んでみてほしい。
雰囲気重視に見えて,しっかりと手応えもあり,完成度の高いアクションゲーム
その見た目や世界設定などから,雰囲気重視のゲームにも見えるが,実際にプレイをしてみると,2人のキャラクターの個性がしっかり差別化されていて,ギミックも彼らのアクションをうまく連動させられるよう,よく考えられて作られている。ステージの大まかな構成もエリアごとに異なっていて,飽きずに進められるという印象だ。
ロゼと巨人,あるいは一部の敵の挙動や判定に若干荒削りなところがあり,それによって何度もやり直しをしなければならず,イラつくステージも存在していたが,最終的には筆者の腕でもクリアできているので,そういった部分も含めたゲームバランスに収まっているということだろう。
決して斬新なタイプのゲームではないものの,ひらめきによる謎解きの面白さや,独特のグラフィックスなど,光るものは十分に持ち合わせているタイトルだ。アクションゲームが好きで,この世界観やグラフィックスに惹かれるという人は,ぜひそのライブラリーに本作を加えてみてほしい。
「ロゼと黄昏の古城」公式サイト
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ロゼと黄昏の古城
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