イベント
HTC Vive国内店頭販売開始,VR版「装甲騎兵ボトムズ」などVR ZONEの新作も紹介された発表会レポート
ニュースリリースでお伝えしているように,ツクモ,ドスパラ,パソコン工房などユニットコム系の全国36店舗で,Viveの店頭販売が本日より開始された。価格は9万9800円(税別,税込み価格10万7784円)だ。
価格については,かなり努力したとのことで,ほぼオンライン販売と同じところに抑えてあり,オンラインは税込み10万7800円なので若干安いところに落ち着いている。オンライン版の発送が7月中旬以降なのに対して,店頭で即日持ち帰れるとなると,そちらをメリットと考える人もいるだろう。
ただ,体験しないことには安心して購入できないことから,各店舗には体験コーナーを設け,オンラインで体験予約ができるシステムを導入していることを説明していた。
さらに,体験者を外から見たときに「この人はなにをやっているんだろう?」となちがちなVRデモで,グリーンバックMRのシステムが導入されるという。これは背景が緑色の小部屋でVRデモを行い,それを外部カメラから撮影した映像とVCG映像を合成したものを設置したディスプレイに表示することで,体験者がVR空間でどのような動作をしているのかを,外部からも確認できるようになっている。HTCやOculus VRのデモビデオではよく使われている表現なのだが,これは実際に見てもらったほうが理解が早いだろう。
デモスペース全景 |
コントローラ付きのカメラで撮影し,空間内の撮影位置を検出している |
こういった施設があれば見物している人にもVR体験についての理解が深まるかもしれない。黄緑色のところにCG画像を当てはめていくため,ガチャピンの着ぐるみを着てVR体験に行くのはお勧めしない。
また,B2Bの需要も多いようで,今後もB2Bビジネスは発展していくと見ているようだ。玉野氏は,ルームスケールVRの優位性を改めて強調し,無限の可能性を持ったハードウェアであり,無限のビジネスチャンスが生まれてくるとの考えを示していた。
Tong氏は百聞は一見にしかず,と体験がもたらす世界の革新について言及し,例として手術用のアプリでもたらされたアイデアについて説明した。脳の中をウォークスルーしたり,血管や神経を可視化したり,疾患を解析したりといったものをVRで実現する。これは脳神経外科に衝撃的なチャンスをもたらすだろうと氏は示唆している。
これにはいろいろな事例があり,VRは言語では説明できないものを体験させ,新たな世界へのチャンネルを開くものになるとTong氏は語っていた。Viveで実現されているVRの実用例として,Audiは狭いショールームのスペースでも多くの種類のクルマやその内部を見せることができるようにしている。IKEAでは,さまざまな税量での家具の仕上げを確認できる。BMWではステアリングや内装のデザインを変えたり,シミュレーションやテストなどで使われている。中国の不動産屋ではViveを使って遠隔地から部屋の中を確認したりインテリアを変更したりできるようなシステムが作られているという。
日本のゲーム業界について,Tong氏は,世界でもリーダー的な実績を持っており,Viveの登場で,より強力なエコシステムを構築できると説明する。コラボレーションなどで,業界を加速させ,さまざまなメリットを提供できるとし,日本を起点に世界を驚かせるようなコンテンツを発信することに自信を見せていた。とくに東京オリンピックを大きなチャンスだと見ているようだ。HTCは東京オリンピックのスポンサーではないので直接的な展開は無理だろうが,自社アピールにVRデバイスを使いたいと考えるところは出てきそうなのは確かだ。最後にTong氏は「一緒に夢をかなえていきましょう」と呼びかけていた。
Viveを構成する3要素については,基本となるヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD),は高精細で90Hz動作をし,フロントカメラで周りも確認できる。しかし,HMDでVR空間に入っても,コントローラがないとなにをしていいのか分からない人が大半なのだという。コントローラはきわめて重要な要素だと述べていた。そしてHMDとコントローラを組み合わせて,ようやくVR空間を探検に出かけることになる。そこでベースステーションによる高精度かつルームスケールのトラッキングが重要になってくるわけだ。
さらに,VRコンテンツの拡充で資金面での支援が重要だと語り,HTCはVRVCAというファンドを展開しており,多くの企業に支援していることを説明した。
ここでPao氏は,中国で2000人以上を対象に行われたという調査の結果を挙げて,人々がVRに求めているものを示していた。曰く,ゲームや360度動画,360度映像のライブ配信,教育などが上位になっている。これは男女でも異なり,男性はゲームを,女性は教育などに期待するところが大きいことが分かったという。こういった傾向は国によっても異なるとし,将来的にはいろんな国で調査をしたいと語っていた。
まず,VRは体験しないと分からないということで,体験の場を設けることに注力するという。これは今回の店頭販売においても重視された事項である。次に,VRコンテンツ自体が作られないことにはVRデバイスも普及しない。そこでUnreal EngineおよびUnityを中心に開発イベントなどへも積極的に参加し,開発者を支援していくという。
さまざまな分野で活用されるVive
ここでパートナーによるケーススタディということで,すでにViveを使ってVRコンテンツを展開している国内パートナー6社によるプレゼンテーションが行われた。
VR ZONEでは17台のViveを使って1万5000人以上にサービスを提供してきたという。その間に壊れたのは1回だけだそうで,その頑丈さには驚きを示していた。また,メガネに寛容なこと,脱着が簡単なことなどを挙げて製品としての完成度の高さを絶賛していた。
奈落から部隊にせり上がるところから始まり,マイクパフォーマンスで観客を沸かせるという得がたい体験が提供されるとのこと。公式サイトにはすでにプレイできそうな感じで掲載されているのだが,7月15日から公開される予定とのこと。体験したい人は早めに予約しておこう。
TOKYO弾丸フライトは,サンシャイン60の展望台から大砲で撃ち出されて東京の空を遊覧するといったアトラクションで,Viveを使ったVRによるものとなっている。スウィングコースターも同様に東京の空を楽しむものだが,こちらは4人乗りの空中ブランコのように動くものとなる。
広告代理店にもVRを使って何かできないかという問い合わせは増えているそうで,今後もViveを使った展開はいろいろと出てきそうだった。
グリーではソーシャルという点に重きを置いているそうで,VRであれば隣に座るのが芸能人やスポーツ選手で会話したりといったことが実現できる。今後はAIキャラクターなどの導入も視野に入れつつ開発を続けていくとのこと。
Vive(Vive Pre)の日本初公開ともなったイベントは大変注目を集めたようだが,加島氏がViveについて高く評価しているのは,コントローラで手をトラッキングできることだった。VR空間内で手があるだけで没入感は飛躍的に高まるため,デモでは手を使ってカードを選択したり,剣を振り回したりといった使い方をしていたとのこと。
当日はベースステーション1セットで同時に5人プレイを問題なくこなしたとのことだが,そのトラッキング範囲の広さも高く評価していた。少々頭を動かしてもトラッキングが外れないことで没入感が阻害されないというのはVR体験では重要なことと言えるだろう。
以上,非常に多彩な分野から数多くのゲストを招いての発表会は盛況のうちに終了した。
今回発表された店頭発売により,普通に店頭で入手できるVRHMDとしてはGear VRに続くものとなったViveだが,コンシューマ市場での需要自体は正直言って読みにくい。約10万円という価格と要求スペックによる導入障壁,キラーコンテンツ不在の状態ではまだまだ物好きな人が買うだけのものにすぎないかもしれない。
その一方でB2B分野ではかなりViveが普及してきている。Oculus VRのRiftは供給が安定しないこともあって,VRの実用的展開ではViveが多くの分野で前面に出てきており,現状ではVRの主役と言っていい位置を占めている。今回紹介されたように多くのバートナーとの協力体制が確立されていくと,いま以上にVRを代表する存在になっていくのかもしれない。
HTC Vive公式サイト
- 関連タイトル:
Vive
- この記事のURL: