「バンやろ」は人生の変革期にあった作品――「デュエル・ギグ!vol.3」CDリリース記念「バンドやろうぜ!」対談企画・Cure2tron編
アニプレックスとソニー・ミュージックが贈る,青春×バンドリズムゲームアプリ「バンドやろうぜ!」(iOS / Android。以下,「バンやろ」)の最新アルバムCD「デュエル・ギグ!vol.3」「DUEL GIG RIVALS」「DUEL GIG EXTRA」が2018年11月21日に発売されます。そのCDの発売を記念して,4Gamerでは全4回の対談企画を行いました。第1弾のOSIRISに続き,第2弾ではCure2tronチームに話を聞きました。Cure2tronは,一見するとかわいらしい女の子に見える“男の娘”のユニット。ボーカルのマイリーを演じるのは,舞台やアニメで精力的に活躍されている黒沢ともよ氏です。黒沢氏といえば幻想楽団「Sound Horizon」にもゆかりのある方としておなじみで,バツグンの歌唱力をお持ちなのですが,「バンやろ」のレコーディングはこれまでとは違う“何か”を感じたとのこと。制作スタッフと収録やレコーディングを振り返ってみて,どのようなエピソードが飛び出したのでしょうか……?
黒沢ともよ氏(Cure2tron ボーカル・マイリー役)
千葉“naotyu-”直樹氏(Cure2tron楽曲の作編曲などをご担当)
足立和紀氏(「バンドやろうぜ!」プロデューサー)
安谷屋光生氏(「バンドやろうぜ!」音楽制作ディレクター)
「バンドやろうぜ!」公式サイト
Cure2tronの今だから話せるレコーディングエピソード
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。OSIRISに続きCure2tronの対談となるのですが,このメンバーでお話を聞くのも初めてですね。さっそくですが,自己紹介から始められればと。
足立和紀氏(以下,足立氏):
はい。「バンドやろうぜ!」プロデューサーの足立です。よろしくお願いします。
安谷屋光生氏(以下,安谷屋氏):
「バンドやろうぜ!」音楽制作ディレクターの安谷屋です。
千葉“naotyu-”直樹氏(以下,naotyu-氏):
Cure2tronの楽曲を担当しております,千葉"naotyu-"直樹です。
Cure2tronマイリー役の黒沢ともよです。
安谷屋氏:
女性がいると(OSIRIS回と)空気がまた違って華やかになりますね(笑)。
黒沢氏:
小林さんも華やかじゃないですか!
安谷屋氏:
華やかかもしれないですけど,話している内容がそんなに華やかじゃないというか。
足立氏:
泥くさい感じだったからね(笑)。
4Gamer:
それではいよいよ本題へ……。まずは楽曲の振り返りからいきましょうか。
足立氏:
そうですね。まずは黒沢さん,お疲れさまでした! 本当にありがとうございました。
黒沢氏:
こちらこそありがとうございました! お世話になりました〜(笑)。
足立氏:
ゲームの運営としては2年くらいでしたが,レコーディングで黒沢さんに歌っていただいた曲はたくさんありましたね。
4Gamer:
マイリーのソロと,各バンドのボーカル4人で歌った曲を含めるとちょうど20曲です。
安谷屋氏:
ボーカル4人曲はクリスマステーマの「Ding-Dong Rock Night」ですよね。
黒沢氏:
懐かしい〜! すごく素敵な曲でした。
この曲も今回発売する「デュエル・ギグvol.3」に収録されています。CDのリリースが11月なので,クリスマスの曲を聴き始めるにはちょうどいい時期なんですよね。さっきも歌詞をチェックしながら「テンション上がるわ〜!」って思っていたところでした。
安谷屋氏:
「Ding-Dong Rock Night」はゲームをリリースしてすぐの曲でしたよね。その年(2016年)の12月に出した曲でしたが,すごい勢いで作った記憶があります。
黒沢氏:
レコーディングしているときに,「実はこの曲が一番急ぎなんだよね」と言われたのを覚えています(笑)。
足立氏:
本当は各バンドでそれぞれのクリスマス曲を作りたかったんですけどね。ちょっとあまりに時間がなさすぎて4曲分の作業するのが不可能だったので,まとめて作っちゃいました(笑)。
それはそうと,黒沢さんにもかなり前からお付き合いいただいて……最初のオーディションはもう4年前になるのかな。
安谷屋氏:
「メガメガトロン」がオーディションの課題曲だったんですよね。あれは難しい曲だったんですが,黒沢さんはめちゃくちゃ上手に歌われていて,すぐに「あ,もう黒沢さんに決まりだなと」と。
黒沢氏:
そうだったんですか!
足立氏:
その時点でほかの3バンドのボーカルは決まっていたんですよ。生田くん(BLAST 東雲大和役・生田鷹司氏)と小林くん(OSIRIS 高良 京役・小林正典氏)と蒼井くん(FairyApril 鳳 葵陽役・蒼井翔太氏)というメンツで,全体の歌唱力のハードルが思いのほか上がっていたところだったんです。「Cure2tronはプロ志向バンドじゃないから,そこまで上手くなくてもいいんじゃない?」という意見もあったんですが,歌が上手くてピッタリな人を考えたときに「そうだ,黒沢さんがいる!」とお声がけしました。
黒沢氏:
知らなかったです。普通のオーディションだと思っていました(笑)。
足立氏:
“男の娘キャラ”の正解が僕や安谷屋の中でまだはっきりしていない状態だったんですが,黒沢さんの歌を聴いて,僕らの中でCure2tronの「これだ」っていうイメージが見えたんです。
安谷屋氏:
Cure2tronはハネる感じの曲が多くて,正直日本人には歌いこなすのが難しいんですけど,なんの違和感もなく歌っていただけて。
黒沢氏:
いやいや,大変でしたよ(笑)。
足立氏:
レコーディングでの印象的な思い出はありますか?
黒沢氏:
naotyu-さんとも話していたんですけど,最初の5曲がとくに難しかったです。
naotyu-氏:
制作側としての最初の5曲は「メガメガトロン」「ぐるぐるマジック」「廻々ストーリー」「祝福の花束」「Hello My Future」ですね。
足立氏:
OSIRISのインタビューでもその話になったんだけど,制作の順番とお客さんに届けてる順番が違うんですよね。
黒沢氏:
そうでしたね。
レコーディングでは「メガメガトロン」「ぐるぐるマジック」「廻々ストーリー」まではとても苦労しました。17歳の頃に今の仕事を始めてからずっとキャラクターソングを歌ってきたのもあって,言葉やニュアンスをしっかりと届けることを大切にしていたんです。
足立氏:
これまではキャラクターらしさを求められていたということですよね。
黒沢氏:
そうです。そういう世界でずっと歌ってきたのもあって,「バンやろ」のディレクションで言われることが,それまでとまったく違っていて戸惑いました。自分がこだわるところと,スタッフさんがこだわるところが違うんです。
4Gamer:
たとえば,どんな違いがあったんでしょう。
黒沢氏:
自分ではこの言葉よりもこっちの言葉を立てたいから,こっちをクレッシェンドにしたいと思っても,「バンやろ」のレコーディングでは通用しなくて(笑)。演奏はこうなっているからここのベースに合わせてほしいと言われて,「はい!」って返事はするものの,よく分からないまま進んでいつの間にかレコーディングが終わっていた,というのが最初の頃は続いていました。
いや,すごくちゃんと取り組んでいただいている印象でしたよ。こちらがディレクションしたことには普通に応えてくれていたイメージでした。
足立氏:
今話を聞くと,すごく温度差があったんだね(笑)。
黒沢氏:
携わらせていただいて本当に幸せな作品ではあるんですけど,最初の頃の自分にとっては,レコーディングが“習いごと”みたいな感じでした(笑)。行く前はちょっと気が重くて,行けば楽しいんだけど,上手く歌えなくてへこむこともあって,結局反省して帰ってくるという……。
安谷屋氏:
えっ,そうだったんですか。
黒沢氏:
キャラクターとして“その子の想い”を歌うのがキャラソンだけど,「バンやろ」の場合はキャラクターとして作曲家の意図を汲んで歌う,アーティストを演じるってこういうことなんだなとすごく勉強になりました。
安谷屋氏:
Cure2tronの場合はnaotyu-さんが曲のアレンジも担当されていたので,歌のほうを試行錯誤できたらと考えていて,そういったディレクションになっていたんだと思います。僕も普段キャラソンを作るときは,言葉の聞き取りやすさやニュアンスを大事にするんですけど,この作品では“バンド”というテーマだけは忘れないようにしたくて。どうすればバンドっぽくなるかを試行錯誤しながらの制作だったんです。
黒沢氏:
初めての経験をたくさんさせてもらえてすごくありがたかったです。たしかに最初の頃は不安のほうが強かったですけど,ちょうどゲームがリリースされて少しした頃にボイストレーナーの先生が変わって,私の意識に変化が生まれました。それまではクラシック,ミュージカル系の先生だったんですが,R&B系の先生になって,その頃に生の音楽を聴く機会も増えたことで意識が180度変わったんです。おかげでレコーディングがすごく楽しかったんですよ。
足立氏:
そうだったんですね。
naotyu-さんは,初期曲のレコーディングのことは覚えてますか?
覚えてます。それこそ最初の頃は二人三脚というか,安谷屋さんに真ん中に座っていただいたりしている時期が長くて,僕自身も試行錯誤したり,言い方は失礼かもしれないですけど,いろいろと実験したりしていました。でもその試行錯誤は悪い意味でなく,本当にアーティストを作っているような感覚でしたね。作家もディレクターも,エンジニアもそうだったから。
安谷屋氏:
そもそも座組がそういう感じでしたよね。現場でいろいろやってみて,発注はああだけど実際こうなりましたが,「どうですか?」と足立さんに確認してOKをもらえたらまた進める感じで。歌詞やアレンジも調整していました。
naotyu-氏:
僕はレコーディングの現場で,安谷屋さんと黒沢さんが話をしているのを横で見ていたことをよく覚えています。とくにゲームがリリースされていない初期の頃は,作品やキャラクターの理解もこれからというところで,黒沢さんにすごく頑張っていただいて。
黒沢氏:
私は「バンやろ」のプロジェクトが始まったとき10代だったんです。今22歳になったんですけど,クリエイターの方とお話しする機会が増えてきて「実はみんな,正解が分からないままやっている」っていうことに気付きました(笑)。
足立氏:
黒沢さんにとって大人たちはちゃんとゴールを決めていて,そこに向かって走ってこいと言われているものだと思っていたら,実は大人たちもゴールをどこに設定するか迷いながらやっていたということだよね(笑)。
黒沢氏:
昔はそれが分かっていなかったから,「さっきはこう言ったけど,やっぱりこうやって」とディレクションが入ると,私ができなかったから違うアプローチにしろと言われているんだっていうへこみ方を、どの現場でもしていました。試しても無駄だ,必要ないって思われたんだって……。
今は,こっちの意見も求められていることが分かったし,あの頃にもっと楽しんでレコーディングできていたら良かったのにと思っています。とはいえ,そう思えるようになったのもここ1年くらいで……。だから,子どもだった私に,みなさんすごく丁寧に接していてくださっていたんだなってあらためて感じています。
足立氏:
この4年間で黒沢さん自身の成長まで感じられる作品になっているとも言えそうですね(笑)。でも,正解なんて分からない状態でnaotyu-さんに楽曲を作っていただいて,僕らにとっても未知の“男の娘”という存在を黒沢さんに演じてもらい,歌ってもらったからこそ「Cure2tronはこういうこと」ってイメージが掴めたんです。だからこそ,それをゲームのシナリオやキャラのセリフにフィードバックしていけた。そうやって手探りでみんなで作品を作ってこられたのは,本当に良かったと思います。
4Gamer:
naotyu-さんと黒沢さんによってマイリーに魂が吹き込まれたわけですね。
黒沢氏:
あらためて曲を聴きかえしてみたら,最初の頃の曲は,歌っている私の声が硬かったです。でもそれがそのときの正解なので,今オーディションを受けたら落ちる気がします(笑)。芝居もそうだけど,今の私はあのマイリーのアプローチをしないでしょうし。でも,もっと違うタイミングでやれたら良かったのにとは一切思わないんですよ。
安谷屋氏:
その頃にしかできなかった演技や歌ってことですね。
黒沢氏:
シェリーに言われるがまま,スカートを履かされてステージに立っていたけど,男の娘としてはだんだん前向きになっていったじゃないですか。
足立氏:
マイリー自身も最初から男の娘のプロフェッショナルじゃなくて,これから「男の娘になる!」っていうキャラクターなので,まさに黒沢さん自身の成長とシンクロしてますよね。
黒沢氏:
当時の私は,「やっぱりこっちで」と言われるのが怖い,求められているものを出さなきゃって緊張感を自家発電しちゃっていました。喉がガラガラになる歌い方をして……とか。だから,もしまたライブでCure2tronの曲を歌えるようなことがあったら,全然違う感じになる気がします。
安谷屋氏:
収録曲をマスタリングしていて,昔の曲を聴くと,やっぱりいい意味でマイリーが成長してくさまが見えますね。
黒沢氏:
そう言っていただけると嬉しいです。
足立氏:
MV撮影も楽しかったですね。1日かけてじっくり撮って。
4Gamer:
初期に公開された各バンドのMVですか?
足立氏:
そうそう。でもあれ,ものすごくお金がかかったんだよね(笑)。
安谷屋氏:
2つのバンドが向かい合って撮るのもですけど,あのセットがね……。ステージ後ろの照明も,日本に数台しかないやつで,めちゃくちゃ高いんでしたよね。
naotyu-氏:
アーティストのPVでもあそこまでこだわるのはなかなかないですよ(笑)。
4Gamer:
撮影はいつ頃だったんですか?
足立氏:
「バンやろ」はリリースが当初の予定から1年ほど延期になったので,リリース(2016年10月)の前の年の12月ですね。本当はその年の秋にはゲームが出ていて,冬にMVを出す予定だったんです。
黒沢氏:
そうだった! MVのほうがゲーム画面よりも先に世に出たんですよね。撮影はすごく楽しかったです。
曲の思い出あれこれ
あの名作映画とのシンクロエピソードとは?
安谷屋氏:
楽曲的にはどうですか,お気に入りの曲とか苦労した曲とか。
黒沢氏:
「Cutie Tune Up!!」は難しかった……。でもこれ,ライブ(2016年10月に代官山UNITで行われた「Halloween GIGS!」)でも歌ったんですよね。
naotyu-氏:
ああ,この曲も難しいですよね。
黒沢氏:
「Strange Party Night」も懐かしい。素敵な曲です。
足立氏:
ハロウィン曲は,どのバンドもすごくハロウィンぽくていいんですよね。
4Gamer:
ゲームをリリースして比較的すぐに公開されたハロウィン曲は,インパクトの強い曲ばかりでした。
黒沢氏:
(楽曲一覧を見ながら)こうして見ると,最初の2曲(「メガメガトロン」「ぐるぐるマジック」)がやっぱり手こずりましたね。でも「廻々ストーリー」はなぜか,はやく録り終わったんですよ。上手くハマって,「こういうテイストの曲が好きなんだ?」と言われたのを覚えています(笑)。
足立氏:
「廻々ストーリー」はCure2tronっぽくない曲だよね。
安谷屋氏:
それこそミュージカルとか,おしゃれな感じの曲が得意なのかなと。後半は,naotyu-さんが作る曲もどんどんおしゃれになっていって……。
黒沢氏:
おしゃれな曲ってどういう感じのものなんですか?
naotyu-氏:
「SwingNight」が完全にそれだけど,遊んでいる感じの曲と言えばいいのかな。
安谷屋氏:
「メガメガトロン」や「ぐるぐるマジック」は本当にバンドっぽくというか,ギターロックの意識で作ったんですけど,後半の曲はもっと鍵盤が活きるテイストのものが多かったですね。鍵盤が活きるとおしゃれな感じになって,それが黒沢さんには馴染むのかなという印象でした。
黒沢氏:
あと,「祝福の花束」を私は強い感じで歌いたかったんです。よく男の人のバラードで,強く歌っているけど繊細な曲があるじゃないですか。そういうイメージだったんですけど,ウエディング曲ということもあってか,レコーディングではすごく優しく歌ってくださいって言われたんですよね。そのあたりで,何度目かのマイリーが分からなくなる現象が起きました(笑)。
足立氏:
なるほど(笑)。
黒沢氏:
でもそのあたりで,これはキャラソンじゃないってことを思い出したんです。マイリーらしさとかじゃなくて,この子がアーティストとして曲を歌っていれば,マイリーらしさは必要ないんだって。これはこれで難しいですけど。
足立氏:
氣志團さんのカバー(「One Night Carnival」)のときはどうでした?
naotyu-氏:
「One Night Carnival」は後半で録った曲でしたよね。
黒沢氏:
そうですね。去年の収録はもうずっと楽しかったです。なかでも「ショコラモード」は頑張った記憶があります。
安谷屋氏:
そのあたりから,こちらも楽曲の試行錯誤というか,方向転換もありました。
足立氏:
どんどん自由になっていったよね。そのへんからCure2tronはもう独立して“生きている”状態になっていて,根を張ってすくすく育っている姿を見ていた印象があります。
naotyu-氏:
たしかに。初期の頃はいろいろ見たり考えたりしながら,細かくやっていました。
安谷屋氏:
丁寧すぎるくらい丁寧にやっていました。Cure2tronのイメージが固まってからは,ブレーキをかけずにやるようになりましたけど。
足立氏:
あと今回のアルバムには「君と夏の日」と古川(貴浩)さんが作った……。
naotyu-氏:
「ロックンロール☆ショウタイム」ですね。セリフが入ったやつ。
黒沢氏:
ああ,ありましたね! 「Rockn'Roll Show!♪」ってやつですよね。
足立氏:
あの曲はアメリカンハイスクールネタなんです。いわゆるスクールカーストの最下層だけどこれから這い上がっていくぜ感がある楽しい曲。
黒沢氏:
実は私,あの曲をレコーディングする1週間前に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にハマったんですよ。お休みの日で,シリーズものの映画でも観ようと思って,友だちに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を勧められて観始めたらハマってしまって。一晩で全3作を一気に観たんです。
安谷屋氏:
めちゃくちゃタイムリー!
足立氏:
「ロックンロール☆ショウタイム」はリファレンス曲がまさにチャック・ベリーの「ジョニー・B.グッド」ですからね。
黒沢氏:
その曲が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のダンスパーティーのシーンで流れるんですよね。観たあとにレコーディングだったから,「ああいう感じか!」って,情景が浮かんで理解しやすかったんです。
足立氏:
あのタイミングで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を観るなんて,そんな偶然ないよね!? すごいな……。
黒沢氏:
同じシリーズものでも「スター・ウォーズ」にしなくて良かったです(笑)。
足立氏:
最後の曲である「旅立ちメロディ」はどうでしたか?
黒沢氏:
「旅立ちメロディ」は,レコーディング自体がすごくスムーズでした。
naotyu-氏:
でも難度でいったらあれもすごく難しいですよ。ファンクですからね!
足立氏:
あの曲のリファレンスはDREAMS COME TRUEさんだったんですよ。そもそもリファレンスの歌唱レベルが半端ないところにあるので,あがってきた楽曲も「これは苦労する曲を作りおったな」と思ったんですけど,でもできあがったらこりゃすごいと。
naotyu-氏:
しっかり歌いこなされていました。
黒沢さんとは何十曲もご一緒させていただいたので,なにかをお願いするときは「これはできるだろうな」って確信がありました。そういうやりとりができたのは幸せでしたし,嫌じゃないといいなと思っていたので,楽しんでいただけたと聞けて嬉しかったです。
黒沢氏:
兄さん方……私以外の3人(生田氏,小林氏,蒼井氏)は“歌”を仕事としてやっている方たちだったし,例えば何度かNGテイクを重ねた後にようやくOKもらえたときとか,妥協されたのかな,みたいな自分のことを諦められているように感じていたんですよね。それが,「君と夏の日」のレコーディングでnaotyu-さんに「ハモリを増やしていいですか」って現場で急遽言われて,「諦めないでいてくれた!」ってすごく嬉しくなったんです。それは音楽が楽しいなって思い始めていた時期でもありますね。
素敵な曲がいっぱいあるし,もっといろいろやりたいなと思いつつ,その後「旅立ちメロディ」のレコーディングに行ったら,足立さんがいらっしゃって……。
足立氏:
「最後のレコーディングです」ということをお伝えしに行ったんですよね。そんな心境だったとは思ってもみませんでした。タイミングが悪くてすいません……(苦笑)。
黒沢氏:
もう少しプロジェクトが続いていたら,みなさんともっとおしゃべりできるようになっていたかもしれないし,「こんな曲もやってみたいです」って言えたかもしれないなって。そう思うと寂しいですね。
足立氏:
お互いに遠慮し合っていたというか,気を遣い合っていた時期が長かったのかもしれませんね。ちょっと悔いが残ったなあ(笑)。
Cure2tronもリアルライブはやりましたけど,ローンチしてすぐの頃に1回だけだったんですよね。ファンの方からも,「Cure2tronのライブ待ってます」って言われることもすごく多くて,蒼井くんにも「ドリームマッチ デュエル・ギグ2018 春∞宴[炎] SHUN-EN」のときに「次はCure2tronを観たいです!」って言ってもらえてて,本当はずっとライブをやりたかったんですよ。やりたくてもやれない事情もあって,でもやっぱりもっとライブやりたかったなって,今もすごく思っています。
Cure2tronのリアルライブの思い出
足立氏:
Cure2tronのリアルライブは代官山でやったハロウィンイベントがありましたが,これまでの黒沢さんのキャリアでライブハウスでライブを行ったことはありました?
黒沢氏:
お仕事だと,あとにも先にもあれだけですね。学生時代の部活で,みんなでお金を出し合ってライブをしたことはありますけど。
安谷屋氏:
軽音楽部だったんですか?
黒沢氏:
そうです。でも軽音楽部という名前だと「ちゃらちゃらしてる」って理由で部活の許可がおりなかったんですよ! だからフォークソング部で申請したらそれがとおって,フォークソング部という名の軽音楽部で活動してました(笑)。
足立氏:
「バンやろ」のファンは女性が多いので,ライブだと女性にキャーキャー言われるじゃないですか。田野アサミさんや湯浅かえでさんも言ってたんですが,あれってすごく嬉しくないですか? なかなか普段ではない感じというか(笑)。
嬉しいですね。女の子の味方は無敵だなって思います。優しいし……。
私は小さい頃に「サンホラ」(サウンドクリエイターRevo氏を中心とした音楽ユニット「Sound Horizon」)に参加していたんですが,その作品も女性のファンが多いんですよね。「サンホラ」好きの女性が成長して,男性声優やアーティストに興味が出て追いかけていたら,「バンやろ」で私を見つけてくれて,また応援してくださるということが多くて。お手紙で「おかえりなさい」って言っていただけたのも印象に残っていますね。
足立氏:
僕も「サンホラ」で黒沢さんって歌が上手いなと思ってお声がけしたいきさつがあったので,すごく感謝してます。女性ユーザーに受け入れてもらえる土壌があるというのもすごく大事なことですし。でもそうやって「サンホラ」からの女性ファンが見つけてくださったのは嬉しいですね。
黒沢氏:
でもそういうふうに,たくさんのファンの方が「バンやろ」を応援してくれたのは,リアルバンドでタイトルを引っ張ってくれた方々,例えば小林さんとかのお力も大きかったんだと思います。Twitterでの発信も,本当に京ちゃんがそこに生きているみたいで。ファンの方は嬉しいですよね。
足立氏:
彼が最前線で一番泥くさいところをやってくれました。
安谷屋氏:
OSIRISは,いわゆるインディーズ時代のバンドをイメージしてやってましたからね。
足立氏:
リアルライブで言えば,お客さん10人からスタートして,2年くらいでZeppクラスの会場でライブができるって,普通だったらないことですよ。
黒沢氏:
すごい! バンドがZeppでライブするのって夢ですよね。かっこいい。Cure2tronが今ライブをやったら,初期の曲はきっとなにもかも違っただろうな〜。
naotyu-氏:
またやれたら面白いですよね。でも,誰が演奏できるかって課題がね……見た目も揃えないといけないから。いつもレコーディングでCure2tronの演奏をしてくれているメンバーはいるんですけど,完全に男ですからね。女装しても「肩幅が広いな!」ってなりそう(笑)。
やっぱりウッドベースが問題になるんですよね。クラシック系の人は何人かいたんですけど,普通のポップスじゃなくてバンド曲をできる方がなかなかいないんですよ。湯浅さんもイベントで弾いてくださいましたけど,すごく練習が大変だったと思いますし。
足立氏:
普通以上に難度が高い演奏ですからね。もし大きいステージでやるとしたら,代官山でやった編成に加えて裏でガチでサポートのギターとベースを入れる形になるでしょうね。大構成バンドですよ。予算もスケジュールも大変(笑)。
黒沢氏:
でも本当に,もっとライブはやりたかったですね。
足立氏:
黒沢さんにそう言ってもらえるのは申し訳ないと思いつつ,嬉しいですね。
安谷屋氏:
本当に嬉しいです。20曲も歌ってもらって,まだやりたいことがあるって言ってもらえるなんて。
黒沢氏:
さっきも話に出ましたけど,この作品は10代から22歳までの私の人生の変革期にあったなって。私が携わっている作品は,ちょうど18〜19歳から始まって,まだ続いているものが多いんです。そのときから関わってくださっているスタッフさんは,私が10代で青くて頑固な頃から,仕事が楽しくなっている今までの過程を見てくれているんですよね。「バンやろ」の現場もそうでしたけど,たくさん言葉を交わしていなくても,ちょくちょくお会いして私を見てくださったみなさんのことは,勝手にお父さんたちだと思っています。
足立氏:
お兄さんじゃなくてお父さんなのか……(苦笑)。
黒沢氏:
お父さんですね(笑)。
安谷屋氏:
そうすると,僕は口うるさい親戚のおじさんですね(笑)。
黒沢氏:
頭が上がらないです。本当に感謝しています。そういえば,シャッフルのドラマCD(※)も楽しかったです。
※「デュエル・ギグ!vol.2」の各バンドエディションCDに収録されたシャッフルメンバーのドラマ。黒沢さんが出演されたのは,オリジナルボイスドラマ「ナンパやろうぜ!」(出演:マイリー役・黒沢さん,BLAST佐伯 翼役・山下大輝さん,OSIRISレイ・セファート役・花江夏樹さん,FairyApril徳田吉宗役・山本匠馬さん)
足立氏:
兄さんたちとアフレコできたよね(笑)。
黒沢氏:
「バンやろ」のキャストには,ほかの現場で会ってもよく面倒を見てくださる先輩が集まっているんですよ。芝居でも頼れるいい兄さんいい姉さんが多くて,自分たちのバンドのドラマはもちろん,ほかのバンドの兄さんたちとおしゃべりできたのも楽しかったです。
足立氏:
黒沢さんの出たシャッフルドラマはすごく下品な話だったんですよ。花江くんと山下くんのアドリブもすごくて,それを横で聞いている黒沢さんを見ながら「これはセクハラなんじゃないか」って(笑)。でも,今回のvol.3に収録されているCure2tronのドラマはすごくいい話です!
安谷屋氏:
めちゃくちゃ癒やされました。ほかのバンドの話がすごくぶっ飛んでるので……(笑)。
足立氏:
男ばっかりだからね。Cure2tronのは「ああなんてほのぼのしてるんだろう。あっ,でもこいつらも全員男だった!」って思いました(笑)。
黒沢氏:
むしろそれがいいんですよ,きっと(笑)。
オリジナルボイスドラマ
「そして男の娘になる」の試聴はコチラ
4Gamer:
それでは最後に,CDを待つファンのみなさんにメッセージをお願いします。
安谷屋氏:
naotyu-さんの楽曲と,そこに黒沢さんの歌が加わってマイリーに命が吹き込まれ,間違いないバンドの音,CDになっていると思います。Cure2tronの活動自体は少なかったですが,どの曲も素敵に仕上がっていますので,何度でも聴いていただけたらと思います。聴きどころはたくさんありますが,ドラマCDは寝ながら聴いてほしいですね(笑)。心地いい感じになっていますよ!
黒沢氏:
声優としてのキャリアが浅い10代の頃からこのコンテンツに参加できたのは,すごく幸せなことだったなとあらためて思っています。恥ずかしいところもいっぱい見せつつ,私なりに一生懸命頑張ってきました。こんな素敵な作品の先が「まだ見たい」ってみなさんに言っていただけたら,やる気を出すお兄さんやお父さんたちがいっぱいいます(笑)。これからも楽曲を愛して,忘れないでいただけたら,マイリーたちもずっと生き続けていけると思います。ありがとうございました。
naotyu-氏:
僕が最初に「バンドやろうぜ(仮)」の企画書をいただいてから3〜4年経っていますが,すごく思い出深く,一緒に成長させていただいた作品でした。今回の収録曲は「Hello My Future」から「旅立ちメロディ」までいろいろありますが,これまでの楽曲とも並べて聴いていただくと成長が見られて面白いと思います。いろんな聴き方をして,曲をずっと愛していただきたいです。
足立氏:
「バンやろ」としてはひとつの節目を迎え,こういう機会に黒沢さんやnaotyu-さんに当時の話や今の想いを聞かせてもらえて,あらためて作品を一緒に作れたことに感謝しています。願わくはこれで終わりではなく,このメンバーでまたなにかできればと思っています。と,それはさておき目先にはCDの発売が控えていますので,本当にいいCDだと思っていただけるように引き続き制作をがんばります(笑)。お手に取ったら,ぜひ感想を聞かせてください。
Cure2tronのライブが観たいという声もちゃんと届いていますし,それも含めて頑張りますので,これからもよろしくお願いします!
naotyu-氏:
足立さんもなかなか忙しさが落ち着かないですね(笑)。
足立氏:
いいんです。「バンやろ」はライフワークみたいなものなので。ゲームは更新を終了しましたけど,楽しんでくださるファンと,一緒に作ってくれる仲間がいるかぎりはいろいろやりたいですね。赤字にならない限りは(笑)。
安谷屋氏:
MVにお金かけなきゃ大丈夫ですよ(笑)!
4Gamer:
本日はありがとうございました!
ファイナルライブは膝をついてでも歌いきりたかった。「デュエル・ギグ!vol.3」CDリリース記念「バンドやろうぜ!」対談企画・OSIRIS編
アニプレックスとソニー・ミュージックが贈る,青春×バンドリズムゲームアプリ「バンドやろうぜ!」の最新アルバムCD「デュエル・ギグ!vol.3」「DUEL GIG RIVALS」「DUEL GIG EXTRA」の3タイトルが,2018年11月21日に同時発売されます。4Gamerでは,楽曲制作に携わったスタッフとOSIRISのボーカル・高良 京役の小林正典氏に,本作の思い出やCDの聴きどころを聞きました。
絶望のなかの光,忘れられない想いが込められた1曲とは? 「デュエル・ギグ!vol.3」CDリリース記念「バンドやろうぜ!」対談企画・BLAST編
アニプレックスとソニー・ミュージックが贈る,青春×バンドリズムゲームアプリ「バンドやろうぜ!」の最新アルバムCD「デュエル・ギグ!vol.3」「DUEL GIG RIVALS」「DUEL GIG EXTRA」の3タイトルが,2018年11月21日に同時発売されます。4Gamerでは,楽曲制作に携わったスタッフとBLASTのボーカル・東雲大和役の生田鷹司氏に本作の思い出やCDの聴きどころを聞きました。
“Fairy April星”の住人たちが曲を作り上げてきた!? 「デュエル・ギグ!vol.3」CDリリース記念「バンドやろうぜ!」対談企画・Fairy April編
アニプレックスとソニー・ミュージックが贈る,青春×バンドリズムゲームアプリ「バンドやろうぜ!」の最新アルバムCDが2018年11月21日に発売されます。その発売を記念して,楽曲制作に携わったスタッフとFairy Aprilのボーカル・鳳 葵陽役の蒼井翔太氏に本作の思い出やCDの聴きどころを聞きました。
「バンドやろうぜ!」公式サイト
「RE:SHUN-EN 〜また春に会いましょう〜」
チケット購入ページ
「バンドやろうぜ!」ダウンロードページ
「バンドやろうぜ!」ダウンロードページ
(C)BANYARO PROJECT
(C)BANYARO PROJECT