レトロンバーガー Order 5：どうして「エースコンバット5」がPS4版「ACE7」の特典に選ばれたのか？ オーシアとユークに挟まっちまった編

　今日のレトロゲームにフォーカスしていく連載「レトロンバーガー」。お正月の更新停止期間と何かデカい記事による時空の歪みをまたいだ第5回は，2019年1月17日に発売された「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」，そのPS4版の早期購入特典であるPS4移植版「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」（以下，ACE5）を紹介します。

　オリジナル版の「ACE5」は，2004年に発売されたPlayStation 2用のタイトルでした。もう15年前のタイトルなので，「ACE5」発売当時から見た「デンジャラスシード」や「ファイネストアワー」くらいには古いタイトルなんですね。

　エースコンバットシリーズに馴染みが薄い人は，どうしてPS4版「ACE7」の特典が「ACE5」なのか，不思議に思っていたりするのではないでしょうか。多少馴染みがある人でも，「ACE7」は第二次大陸戦争を描いているのに，なぜ第一次大陸戦争を描いた「エースコンバット04 シャッタード・スカイ」（以下，AC04）ではないのか，あるいは初代「エースコンバット」や，シリーズの中でも評価が高い「エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー」でもないのか……ちょっとした疑問は覚えるはず。個人的には，その理由は「ACE5」がシリーズの中でも特別なタイトルだからではないかと考えています

　もともとの初代「エースコンバット」は，アーケードゲーム「エアーコンバット22」の移植版として制作されたタイトルだったとか。「エアーコンバット22」はアーケードゲームなので，機体の挙動は軽快，ミサイル搭載量は実機をはるかに上回る数（と言っても，この時点では30発程度）といった味付けがなされています。今のエースコンバットも，機動力のやたら高い戦闘機が100発以上のミサイルを積んでいますが，その根底にはアーケードゲームとしての設計思想が受け継がれているということでしょう。

「エアーコンバット22」自体は，それ以前にリリースされた「エアーコンバット」を新世代の基板でリメイクしたもの。写真は埼玉・アーケードゲーム博物館計画に収蔵のSD筐体版「エアーコンバット」（修理中）

　PlayStationでリリースされた「エースコンバット」は，ちょっとリアル志向になりつつ（でもミサイル命中時には“BINGO！”など，やたら景気のいい表示が出る）ストレートに進化した「エースコンバット2」，SF志向になった「エースコンバット3 エレクトロスフィア」と同プラットフォームでシリーズを展開します。

　それらに続く第4作目の「AC04」は，プラットフォームがPS2に移ったこともあって，軽快なフライトシューティングの面白さは発展させつつ，劇中背景に“ストレンジリアル”をコンセプトとした，高いリアリティを持つ架空の世界が新たに用意されました。ナンバリングタイトルではあるものの，「AC04」は実質的にリブート作品だったと言えるでしょう。

　そんな「AC04」に続く「ACE5」は，リブートからの“2作目”にあたります。2作目は，映画で言えば「ターミネーター2」や「マッドマックス2」，「エイリアン2」など……つまり“ハネる”タイミング。ここで1作目の焼き直しなどの安牌を切ると，良くて佳作止まり，悪くて大コケとなるのが典型例ですが，「ACE5」は見事にハネました。前作のシステムに“仲間への指示”という新要素を加えつつ，過去の壮絶なベルカ戦争，超大国同士の全面対決，陰謀，悲劇，そして陣営を越えて高潔さと貪欲さがぶつかり合う決戦……それらをフォトリアルなビジュアルと，カジュアルな触り心地ながら歯応えのあるゲームプレイで楽しめるという，会心の出来！

　T-800ベースのターミネーターがコナー母子を助けたり，荒野を魔改造オフロード車で駆け抜けたり，エイリアン・クイーンが産卵したりと，いろいろな映画で“2作目”の要素がシリーズの定番となったように，「ACE5」も現在につながるエースコンバットシリーズのフォーマットを地固めしたタイトルでした。「ACE5」が「ACE7」の特典として選ばれた理由は，そこにあるのではないでしょうか。個人的にも，「エースコンバットシリーズはどれから始めるといいの？」みたいな人がいたら，オススメしたいのは「ACE5」です。

　そんな「ACE5」のPS4版は，リマスタリングなどは行われていませんが，出力解像度などが向上しているので，プレイシーンのグラフィックスは「綺麗になったなー」と感じられます。

解像度が向上してポリゴンモデルが鮮明になったほか，画面は16:9を標準として描画範囲が拡張されたり，HUDのUI配置が調整されたりしています

ムービーシーンも少しスッキリしたビジュアルに。画面比率はオリジナル準拠の4:3に切り替えることも可能です

　PS4版「ACE5」の標準操作設定は，［L1/R1］が左右ヨー，［L2/R2］が加減速といった「ACE7」準拠の仕様。Dualshock 2では感圧式だった［△/○/×/□］ボタンがDualshock 4ではON/OFF感知のみになったため，マップの拡縮はアナログズームでなく段階的切替式になるなど，一部に仕様変更もあります。

ボタン配置は，追加された設定メニューからPS2風にすることも可能

言語が日本語/英語/国内ソフト版英語の3択になるなど，細かい仕様変更も

　15年を経た今，少し綺麗になった「ACE5」を現行機で遊べるのは嬉しい限り。それにしても，「ACE5」がPS4で出たなら，ほかのPS2向けシリーズタイトルも移植してほしくなるのがファンの性（さが）。今後も展開していただけると嬉しいのですが，どうでしょう河野さん。あとPSPの「エースコンバットX スカイズ・オブ・ディセプション」をショルダーボタン4個のアフターバーナー感圧点火仕様でプレイしたい気も……。もしオフライン版「ACE COMBAT INFINITY」なんかも出てくれたならば……！

「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」公式サイト