連載
結のほえほえゲーム演説:第64回「『Detroit: Become Human』,こうして私の物語は幕を閉じたのです」
ごきげんよう。女優・タレントとして活動しております。結です。
さて,私の「Detroit: Become Human」の初回クリアがどんな物語になったのか,前回の続きをお話させていただきたいと思います。前回も今回もネタバレはありますので,そのあたりはご容赦を。
もしネタバレは読みたくない! ということでしたら,前々回の記事をお読みいただくか,今すぐにでも本作をプレイしていただけると嬉しいです。
交わる運命
チャプター「天敵」で,マーカスの起こした事件の現場をコナーが調査することになります。主人公達の運命がどこでどう交わるのか。ハラハラしっぱなしです。
コナーは任務を持つアンドロイドとして,マーカスは意思を持つアンドロイドとして,どちらも平和を望んでいるだけなんじゃないかと感じるようになります。だって,ほかでもない私自身がそう思いながら,彼らの運命を選択しているのですから。
とはいえ二人の目的は正反対のもの。それを感じれば感じるほど切ない気持ちに……。
そんな二人が,チャプター「交わる運命」でとうとう出会ってしまいます。なんと,対峙したコナーとマーカスの操作が交互に入れ替わるのです。
いやいやいや待って勘弁して!!!!
まさかこんなにつらくて逃げだしたくなる場面がくるなんて。
コナーとマーカス,どちらにも幸せになってほしいんです。でもこの場で二人が争わずに済む方法がまるで分からない……。
マーカスから「仲間になるか,機械のままでいるか」選択を迫られるコナー。ここで私はどちらも選べずに「時間切れ」となりました。プレイ中,選択肢で時間切れになるのは初めてでした。初めてだったので,ゲーム的にどちらが選ばれるかも分かりませんでした。
あのときの私は,ゲームという垣根を越え,コナー自身に選択してほしかったのだと思います。
アンドロイドだけど,確かに意思を持っているように見えるコナー。その意思を尊重させてあげたいけれど,それがマーカス達の仲間になることなのかと考えると,違う気がしました。
なぜなら,あれだけ協力してくれたハンクのことを裏切れないと思ったからです。ここでマーカスの仲間になってしまえば,ハンクとは二度と会えないような予感がしたのです。
任務を成功させて,ハンクのもとへ帰ることができたなら,きっと相棒になれるはず。
時間切れの結果「機械のままでいる」となりました。コナーはマーカスの仲間にならず,マーカスを妨害しようとします。
「目的を果たせるのはどちらか一人」
マーカスのセリフが胸にグサッと刺さります。このセリフがまるで私自身に向けられているようで。
どちらの望みを叶えたいかなんて決められません。ここまでいろんな決断をしてきたけれど,これは無理だと感じました。それぐらい私は,コナーとマーカスの二人に感情移入していたのです。
戦いの末,マーカスがコナーを撃ち,まさか自分の手でコナーを殺してしまうとは……とショックを受けます。
マーカスの仲間になっておけば良かったのかな? とも思いましたが,やはりハンクのことを思うと,こうするしかなかったと私自身に言い聞かせます。
マーカスの帰省
チャプター「魂の夜」が始まり,カールの家の玄関だと気付いた時点で涙が止まりませんでした。ずっとこの家に帰りたい! 帰れる日は来るのか? と思いながらプレイしていたので,不意打ちにびっくりしました。
新しいアンドロイドはいるのだろうか。いや,いないと不便だろうし。いてほしいんだけど。カールはマーカスの活動を知っているだろうか。どう思っているのだろうか。
カールの反応をあれこれ想像し,死ぬかもしれなかった戦地よりも怖さを感じながら家の中へ入ると,カールは体を悪くしていましたが,なんとか再会することが叶い,「お前は私の息子だ」という言葉を聞くことまでできました。
久しぶりの再会にも関わらず,リーダーとしての悩みを遠慮なくぶつけまくるマーカスを見て「もっとカールに想いを伝えてよ! 会いたかったって言ってよ!」とじれったく思っていましたが,現実世界の私にも,マーカスのように大事な人へ悩みや葛藤をぶつけてしまうことがあったことを思い出し,ハッとしました。
こんな話をしたいわけじゃなかったんだって思いながらも感情をぶつけてしまうことや,沸き上がる不安から目を逸らせないこと,今まで生きてきてたくさんの人に甘えていたなぁと思い返しながら,よりマーカスのことを近しく感じました。
エンディング
最終的に,私のマーカスは武力ではなく,平和を訴えることを選びました。その大きな理由になったのが,カールの家を訪ねたとき,以前マーカスが描いた絵がそのまま置いてあったことでした。
その絵は「穏やか」というテーマを選んで描いたもので,カールが素晴らしいと絶賛してくれたものでした。カールと家族になれたからこそ,自分の平穏を信じる心を貫きたいと決めました。
本作では,必ず通るわけではないシーンや,見逃すかもしれないもの,聞き逃すかもしれないセリフが数え切れないほど存在します。その偶然の出会い一つ一つに影響され,私の中で確かな意思が生まれていったことに,感動せざるを得ませんでした。
ハンクを裏切りたくないという理由でマーカスの仲間にならなかったコナー(※捜査官であるコナーだけはバックアップに記憶が移植されるため,新しいボディで復活できるんです)。ですが,その後,ハンクに命を狙われてしまいます。しかし,やはり最後までハンクのことを裏切ることができず,QTEを入力せず,ハンクとの戦闘を放棄しました。それほど私の意思が頑なであることにも驚きましたし,戦闘を放棄したからこその展開にも驚きました。
あらためて主人公達の結末を振り返ってみると……。
緊張からの安堵でバスに乗り遅れ,死亡したカーラ。
ハンクを裏切ることができず,QTEを放棄して死亡したコナー。
カールの息子であることに誇りを持って平和を訴えるデモを行い,アンドロイド達の自由を一時的に手に入れることに成功したマーカス。
あらゆる意味で,一般的に考えられているようなゲーム的な枠組みをはみ出たプレイをしてきたにも関わらず,ちゃんと物語として成立しているんです。どんなに心が動いても,心のままに選んだことが,物語として紡がれ続ける。これはすさまじいことだと思います。
クロエの存在
エンディング後,自分の紡いだ物語に感動していると,メニュー画面でクロエから「この物語を見ていたら心が動いた」と告白され,クロエを解放するかどうか最後の選択を迫られます。
本作をクリアした人を探して早く語り合いたいけれど,別のプレイヤーは別の物語を紡いでいるはずで,私の物語が一番面白いんじゃないか? と思っても,でもきっとそれは誰にも伝わらないんだろうなぁ……という寂しさがありました。
それを埋めてくれたのがクロエでした。この物語の素晴らしさは体験した私自身にしか分からないと思っていたら,まさかこんなところに理解者がいたなんて。
私の物語
何度繰り返しプレイしても,つい初回プレイのときと同じ選択をしてしまうこともしばしば。私の中では初回クリア時の物語がトゥルーエンドなのです。彼らと一緒に悩んで生きたことを,忘れられません。
プレイしたアドベンチャーゲームはすべての分岐を見ないと許せない私だったのですが……。ゲーマーとして変異体になってしまったのでしょうか。
本作にとって,プレイヤーの私は,部外者じゃありません。数えきれない分岐を経て,自分の物語として体験できたことを幸せに思います。
最近プレイしているゲーム(2018/6/30)
Nintendo Switch:「スプラトゥーン2」
Nintendo Switch:「OCTOPATH TRAVELER(体験版)」
PlayStation 4:「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」
PlayStation 4:「ドラゴンボール ファイターズ」
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」
■■結(女優・タレント)■■
女優・タレントとしてフリーランスで活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ,数多くのゲーム番組でMCを務め,イトキチ(糸吉)の愛称で親しまれている。
公式サイト:http://yui-monogatari.com/
公式Twitter:https://twitter.com/xxxjyururixxx
ニコニコチャンネル「結チャンネル」:http://ch.nicovideo.jp/yuichannel
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Detroit: Become Human
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