連載
結のほえほえゲーム演説:第11回「『勇者ヤマダくん』公式飲み会! 時代に逆行する恋を見守り隊」
先日(2016年5月14日),「勇者ヤマダくん公式飲み会 〜音楽のゆうべ〜」というイベントに,ゲスト出演させていただきました。イベントの模様はこちらの記事でもレポートされているのでぜひご覧ください。ここではステージの上や下で私が見聞きしたことなどをまとめて紹介させていただきます。
ちなみに,このイベントに出演するきっかけとなったのは,連載第3回で「チュウリップ」と「勇者ヤマダくん」(iOS / Android)にまつわる記事を書いたこと。これを両タイトルでディレクターを務められた木村祥朗さん(現Onion Games)がツイートして下さったんです。それを目撃したとき,瓶に詰めて海へと流したラブレターが想い人の元へ届いたような感動がありました。
そんなこんなで今回のイベントにお声かけいただき,緊張しながら新宿のロフトプラスワンへ。打ち合わせを終え,楽屋でお酒を入れ始める出演者の皆さん。ロフトプラスワンの楽屋は,狭い階段を登って入る小さなロフト部屋。まるで秘密基地のような雰囲気が好きです。
〜おとのおはなし〜
勇者ヤマダくんにおける音作りについてのコーナーでは,音楽担当の杉山圭一さん,プロデューサーであるDMM.comの岡宮道生さん,そしてディレクターであるOnion Gamesの木村祥朗さんのお話をうかがいました。
未公開のボツ曲を披露していただいたのですが,採用バージョンと微妙に違うもの,大きく異なるものなどさまざま。中でも,ダンジョンのボツ曲には,客席から思わず「カッコイイ!」という声が上がるほどでした。「こんなにカッコイイのになぜ,ボツだったんですか?」とうかがうと,「カッコイイからですね」と木村さん。
確かにヤマダ君の楽曲は「程良く力の抜けたゆるさ」がチャームポイントです。しかし,カッコイイのにボツにしなければならないとは……。ついMOTTAINAIと感じてしまいますが,それでもあえて捨てる勇気が,もの作りにおいて必要不可欠なのですね。
杉山圭一さん |
木村祥朗さん |
木村祥朗さん |
また,「これイイネ!」と思うものから発展させた結果,前の段階の曲が採用されるパターンもあるそうです。
デンジャーゾーンに入った時は「デーンデデーンデデデデーンジャゾーン♪」(プレイ中に聴くと本当に耳から離れなくなるんですよこれ……)という曲がかかるのですが,ボツ曲は同じリズムで「あーぶあーぶあぶあぶなーい♪」というもので,思わずお腹を抱えて笑ってしまいました。
「デーンデデーンデデデデーンジャゾーン♪」ですら,「言っちゃうんだ! それ,そのまま言っちゃうんだ,曲で!」感があるのに,「あーぶあーぶあぶあぶなーい♪」は,「いや危ないって言われても! そのゆるさでそのまま言われても!」と思わずツッコんでしまいたくなります。
どちらの曲も,始まった瞬間には危険だということを微塵も感じさせないゆるさを持っていますが,後者だとあまりに緊張感がないということだったのかもしれません(笑)。絶妙なさじ加減ですね。
木村さんの「最初から具体的に指示をし過ぎると,面白さの幅が狭まる」という意見には,思わず強く頷いてしまいました。私も,もの作りにおけるTake1というものは,設定されたお題に対する「これのことだろ!?」を全力でぶつける場であるんじゃないかと思っています。
そうそう,「ブロンソンは大塚周夫をイメージした」という杉山さんの形態模写能力にも驚かされました。
〜ヤマダくんのおはなし〜
その名も……くんろくさん! なんと役者経験のないサラリーマンの方! って,ええええっ!?
ほかのキャラのボイス収録が進む中,ヤマダくんのキャスティングだけがうまくいかず,「36歳のサラリーマンっぽくってダメな感じ」というイメージのみで,杉山さんは同級生のくんろくさんを思い浮かべたのだそう。そして杉山さんがくんろくさんの声を送ったところ,木村さんからGOサインが出ていざ収録へ。
収録当日,木村さんが待ち合わせ場所へ向かうと,そこに居たのは会社帰りでスーツ姿のくんろくさんで,たいそう驚かれたそうです。
ちなみに,くんろくさんは初めての収録中に思わず身振り手振りをつけて演技をされていたそうですが,木村さんからバッサリ「その身振り手振り,いらないから」と言われてしまったのだとか。くんろくさんは,そこで初めて収録ブースにカメラが存在していることを知り,それはもう恥ずかしい思いをしたのだそうです。
思わず木村さんに「ヒドいじゃないですか!」(笑)と言うと,真顔で「服が擦れるノイズが入っちゃうからね」とのこと。なるほど。まったくもってそのとおり。演技経験のないサラリーマンを会社帰りに捕まえている形とはいえ,のっけから真剣勝負で挑むあたり,木村さんが本気でもの作りをしようとしている姿勢が伝わってきます。
また,「ヤマダくんの演技はハイテンションなものが多いじゃないですか,我に返っちゃう瞬間はなかったんですか?」と尋ねると,「いつも帰りの電車で我に帰ってましたね」と即答するくんろくさん。「これ,本当にゲームに使われるんだろうか(何に使うんだろう……まぁ使わないだろう)」といったことも思っていたそうですが,それらも含め,実際のゲームに思いっきり詰めこまれていたそうです。
確かに「ポキューン!」とか「アラベスクッ」とか訳も分からないまま,言われるがままに収録していたら,そう思いますよねきっと……。
しかし,このイベント内で同じ檀上に立って思ったことは「くんろくさん,絶対にただものじゃない……」ということです。
台本にもまったくない「『ポキューン』やって下さいよ」という杉山さんの無茶振りにも,たじろぐことなく応えていくサービス精神。肝の座り方がどう考えてもただのサラリーマンじゃないんです。くんろくさん,一体何者なんだ。
〜カオリ―ニョ藤原さんのおはなし〜
ライブの感動のあまり恐れ多くなってしまったのか,同行者の杉山さんに声をかけてもらったという木村さん。カオリ―ニョ藤原さんによると,「木村さんに会ったとき,第一声で普段こういう場所,来ないんですよって言っていたのが印象的だった」とか……。
ともあれ,カオリ―ニョ藤原さんにとって完全に未知の存在であったという「ゲームクリエーター」の木村さんが,何らかの覚悟と意思をもって,その場を訪れていたことはしっかりと伝わっていたようです。
まるで片思いの女子中学生が告白するときに友達に呼び出してもらったかのようなエピソードに,何だかすっかり恋バナを聞いているかのような気分に。
その後,カオリ―ニョ藤原さんによるライブでは,会場を虜にする素晴らしいパフォーマンスが披露されたのですが,ステージの横でライブを聴いている木村さんの横顔は,まるで恋する乙女のよう。思わずチラチラと盗み見ては幸せな気持ちに浸っていました。
そしてサビでは,「時代に逆行 時代に逆行」という歌詞を大勢のお客さんと一緒に合唱する,不思議な体験をしました。あの瞬間,私達は流れるプールを大勢で逆行し,流れを逆にして泳ぎきってしまったんじゃないでしょうか。
そしてイベントの最後には,勇者ヤマダくんのサントラ企画が進行中であること,植松伸夫氏やTHELONIOUS MONKEESの楽曲が使用されたダンジョンの企画が進行中であることが明かされました。
また木村さんからは,「勇者ヤマダくんを配信しました,はいじゃあそれで(終わりで)という作品にはしたくない。運営を続けていくので,これからも一緒によろしくお願いします。」とお客さんに向けてメッセージが送られました。
個人的に,木村祥朗さんほど御自身の作品と,御本人の醸し出す雰囲気がシンクロする方もいらっしゃらないんじゃないかと思います。自由な少年がそのまま大人になったような,シャイでピュアな,脱力系なのに,真っ直ぐな気持ちに思わずドキッとしてしまうような。
ヤマダくんの恋路を見守るような気持ちで,ゲームに恋をする木村さんをこれからも陰ながら応援していきたいです。
〜イベント後 番外編〜
キャラクターに話しかけると数パターンのハナモゲラ語を話す,あの現象を「おもじゃん」と例えていたのが印象的でした。杉山さんと谷口さんは逆再生のやり方が違うそうで,この辺りのお話をまたの機会に詳しくうかがいたい!
〜結の告知〜
大阪のシネ・ヌーヴォーにて,6月4日〜10日の各日19:00から高橋 泉監督作品「あたしは世界なんかじゃないから」が上映されます。私は10年前にいじめられた相手への復讐を企む,芝野という役で出演しております。
最近プレイしているゲーム(2016/05/28)
PlayStation 4:「ドラゴンクエストヒーローズII 双子の王と予言の終わり」
PlayStation 4:「GUILTY GEAR Xrd -REVELATOR-」
PlayStation 4:「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」
ニンテンドー3DS:「逆転裁判6」(体験版),「カルドセプト リボルト スタートダッシュVer.」
iOS:「勇者ヤマダくん」
iOS:「VALKYRIE ANATOMIA -THE ORIGIN-」
iOS:「スマッシュドラグーン」
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」
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(C)DMM.com POWERCHORD STUDIO / Onion Games
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