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「グランツーリスモSPORT」のアジア・オセアニア最速プレイヤーが決定した,FIA公式大会の模様をレポート
「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ」は,FIA(国際自動車連盟)と「グランツーリスモ」が提案する新しいモータースポーツの大会だ。2018年6月から9月にかけてオンライン予選「ネイションズカップ」が開催され,10月6日にはアジア・オセアニア地域(日本,オーストラリア,香港,ニュージーランド,台湾)のポイントランキング上位30名が腕を競い,世界大会「ワールドファイナル」出場者10名が決定した。
今回行われた決勝戦は,そのワールドファイナル出場者の中で誰が一番速いかを決めるというもので,全3レースで構成され,獲得ポイントのもっとも高いプレイヤーがアジア・オセアニアチャンピオンとなる。
獲得ポイントはレースの順位に応じて,1位:12ポイント,2位:10ポイント,3位:8ポイント,4位:7ポイント,5位:6ポイント,6位:5ポイント,7位:4ポイント,8位:3ポイント,9位:2ポイント,10位:1ポイントとなる。また最終レースはポイント2倍で,合計ポイントが同じ場合は最終レースの結果で順位が決まる。
●FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権 決勝 出場選手
・日本ブロック
Ryota Kokubun選手
Yuki Shirakawa選手
Shogo Yoshida選手
Tomoaki Yamanaka選手
・オーストラリアブロック
Daniel Holland選手
Matthew Simmons選手
Cody Nikola Latkovski選手
Adam Wilk選手
・香港/台湾/ニュージーランドブロック
Kai Hin Jonathan Wong選手(台湾)
Yat Lam Law選手(台湾)
第1レースの舞台となったのは鈴鹿サーキットで,使用マシンのカテゴリーはN500。全8周のうち,最低1回はピットインしタイヤを交換するというルールだ。
レースは,ポールポジションでスタートしたKokubun選手が序盤から2位以下を引き離し,トップを保ったままゴールするという展開に。また3位のYamanaka選手は,レース終盤で2位のWong選手にバトルを仕掛けたが,Wong選手がミスのない落ち着いた走りでかわしていた。
第2レースの舞台となったのは,ドラゴントレイル・ガーデンズ11で,使用マシンのカテゴリーはGr.3。タイヤはレーシングハード/ミディアム/ソフトの3種類を最低1回ずつ使わなければならないというルールのため,全13周のうち2回はピットインすることとなる。
レースは,第1レース同様にKokubun選手がポールポジションでスタートしたものの,1周めで0.4秒のペナルティを受け,3位に転落。その前にWong選手を抜いていたYamanaka選手がトップとなった。以降はYamanaka選手,Wong選手,Kokubun選手の順でレースが展開していったが,終盤に路面の食いつきがいいソフトタイヤを使ったWong選手が12周めでトップに躍り出て,そのままゴールした。
第3レースの舞台となったのは富士スピードウェイで,使用マシンのカテゴリーはGr.1。タイヤは第2レース同様に,レーシングハード/ミディアム/ソフトの3種類を最低1回ずつ使わなければならないため,全19周のうち2回はピットインすることとなる。
この時点での上位3名の獲得ポイントは,Wong選手が22ポイント,Kokubun選手が20ポイント,Yamanaka選手が18ポイントとなっており,いずれも第3レースでトップになればほかの選手のポイントと関係なく優勝となる。
レースは,Kokubun選手が第1コーナーでWong選手をかわし,トップに立った。そののちYamanaka選手が3秒ものペナルティを受けて4位に転落してしまうことに。
以降,Kokubun選手とWong選手は,激しい首位争いを展開。そして第2レースでWong選手が使った戦術と同じく,レース終盤にソフトタイヤを選択したKokubun選手が後続を大きく引き離して,そのまま逃げ切る形でゴールし,見事,初代アジア・オセアニアチャンピオンの座を獲得した。
●FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権 決勝 最終結果
1位:Ryota Kokubun選手(44ポイント)
2位:Tomoaki Yamanaka選手(38ポイント)
3位:Kai Hin Jonathan Wong選手(38ポイント)
4位:Shogo Yoshida選手(26ポイント)
5位:Cody Nikola Latkovski選手(22ポイント)
6位:Yuki Shirakawa選手(20ポイント)
7位:Yat Lam Law選手(15ポイント)
8位:Matthew Simmons選手(12ポイント)
9位:Adam Wilk選手(11ポイント)
10位:Daniel Holland選手(6ポイント)
レース終了後には,「グランツーリスモ」シリーズのプロデューサーを務める山内一典氏が登壇し,「公式戦の国際大会は今回が初めて。今日,この日からeモーターレーシングがスタートします。僕はつねづね,優秀な選手がプレイしてくださって,初めて『グランツーリスモ』が完成すると考えていました。今回の戦いを見て,本当に『グランツーリスモ』を作ってよかったと感じます。選手の皆さんのがんばりが,僕と『グランツーリスモ』チームにエネルギーを与えてくれました」とコメント。
また表彰式では,Wong選手とYamanaka選手,そしてKokubun選手が,それぞれ上位に入賞した喜びとワールドファイナルに向けた意気込みを語っていた。
大会終了後には,上位入賞者3名と,山内氏に対するメディア合同インタビューが行われた。以下にその模様をお伝えしよう。
Yamanaka,Kokubun,Wong選手インタビュー
──レースを終えて,今の感想を教えてください。
Kai Hin Jonathan Wong選手(以下,Wong選手):
トップ3には入れて,すごくうれしいです。もし,もう一度最終レースに臨むことができたなら,最初のコーナーは絶対にミスしない。もっといいレースがしたかったです。
Tomoaki Yamanaka選手(以下,Yamanaka選手):
無事にワールドファイナルに行けることが決まり,ホッとしています。今日のレースを振り返ると,予選で少し失敗してしまい,その流れを最後まで戻せなかったのですが,どのレースでも2位か3位をキープした結果,最終的に準優勝という形になりました。ワールドファイナルでは,リベンジできるようにがんばりたいです。
Ryota Kokubun選手(以下,Kokubun選手)
こういったオフラインの大会に参加するのは初めてなので,優勝できて本当にうれしいです。ワールドファイナルも,今回の優勝を誇りにして挑みます。
――皆さんは毎日どのくらい練習をしているのでしょうか。
Wong選手:
時間があるときは4時間くらいです。忙しいときでも,1時間くらいは走ります。
Yamanaka選手:
夜遅くまで仕事をしていることもあるので,週に2回くらい2〜3時間の練習をしています。
Kokubun選手:
平日は基本的に2時間くらい,休日は長いときだと4時間くらいです。
──今回のレースで,ご自身のハイライトだと思うところを教えてください。
Wong選手:
第1レースの,Yamanaka選手とのバトルです。守る側としてはとても厳しかったのですが,いいバトルでした。
Yamanaka選手:
予選の1回めのアタックでいいタイムを出せたことです。さらに,最後の1周に賭けようとしていたのですが,時間配分をミスしてしまいました。もし最後のアタックができていたら,ポールポジションを獲れていたんじゃないかという手応えもあったので,残念です。
Kokubun選手:
最終レースでは,タイヤ選択の戦術的な駆け引きがあり,抜きつ抜かれつの展開となりましたが,熱いバトルになりました。
──皆さんの「グランツーリスモ」歴と,リアルのレーサーを目指しているかどうかを教えてください。
Wong選手:
初めてプレイしたのは5歳の頃で,「グランツーリスモ2」です。「グランツーリスモSPORT」を始めてから本物のレーサーになりたいと考えるようになり,今回の大会でその一歩を踏み出せたと考えています。
Yamanaka選手:
4歳のときに初代「グランツーリスモ」に触れましたので,プレイ歴は21年になります。かつては本物のレーサーになりたいという気持ちもありましたが,実現するための熱量を考えるとなかなか難しいのが現実です。
その一方で「グランツーリスモ」シリーズは,誰でも気軽に参加できるので,ある意味,本物のモータースポーツよりも競争率が高いかもしれないと感じています。その中でこうして競争できることは自分にとっての生き甲斐となっています。
また自分自身,リアルのクルマにも乗っているので,「グランツーリスモ」シリーズで学んだものをリアルに活かすということもやっています。今後は若い世代にもっとクルマを好きになってもらえるような活動をしていきたいです。
Kokubun選手:
3歳のときに初代「グランツーリスモ」を触りましたが,本格的にプレイし始めたのは「グランツーリスモSPORT」からです。今のところはリアルレーサーよりも,eモーターレーシングの道を選ぼうと考えています。
──今回のレースでは事前に考えていた戦略・戦術が成功しましたか。またワールドファイナルは,どのような戦略・戦術で臨みますか。
Wong選手:
レースの状況は常に変化するので,その場その場に合わせています。
Yamanaka選手:
今回のレースは,事前にタイヤのライフを計算し,こうするといいだろうと考えたうえで,予備のパターンを二つ用意して臨みました。ただレース中は常に状況が変わるので,臨機応変に対応することもありました。
ワールドファイナルに向けては,相手の動きやどこを走っているかなどをしっかり把握できるよう,練習を重ねて確実な戦略・戦術を練り上げたいです。
Kokubun選手:
常に自分のペースを維持することが一番だと考えています。ワールドファイナルでも,周りの状況を見つつ,自分のペースを保って走りたいです。
山内一典氏インタビュー
──「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」を終えての感想を聞かせてください。
山内一典氏(以下,山内氏):
この選手権の構想は,今から6年前,FIAと僕らで「未来のモータースポーツを作ろう」ということでスタートしたものです。そのあと5年の歳月を経て「グランツーリスモSPORT」ができ,それから1年間各地で大会をやってきて,今日初めて公式戦を行いました。最初に構想してから長い時間がかかりましたが,今日この日を迎えられたことはとても嬉しいです。
──今,eスポーツが話題になっていますが,FIAと話を進めてきた経緯などを教えてください。
山内氏:
この取り組みは,もともとはFIAの皆さんの呼びかけで始まりました。FIAは120年くらい前からモータースポーツを手がけているのですが,彼ら自身が「グランツーリスモ」と一緒に新しいモータースポーツを作っていきたいと提案したんです。
おそらくFIAの皆さんは,もっと早く「グランツーリスモSPORT」が完成すると考えていたのでしょうが,スポーツをするために必要なゲームを設計していくことは時間がかかります。今でもパーフェクトだとは思っておらず,直したい部分はたくさんありますが,とにかくこうして始められたことは大きいですね。
──昨年「グランツーリスモSPORT」をリリースして,1年でこれだけの大会が開催されたわけですが,この盛り上がりを予想していましたか。
山内氏:
「こういう未来を作りたい」ということと,「実際にそれが起きる」ということは別物です。ただ,すごく大事なことは,「そこで確かに価値のあることが行われている」「価値のあることが起こった」「素敵なものが現にある」という事実なんです。今,そうした手応えを感じています。
──観戦していた来場者の反応をどのように捉えていますか。
山内氏:
今年に入って何回かこういったイベントをやっていますが,結局,「現に価値のあること,素敵なことが行われているかどうか」がすべてです。それに人が共感し,輪が広がっていくというプロセス以外にルートはないと考えています。その意味では,ネットを介して観戦している人達の反応も含めて,すごくいいと捉えています。
──今回のレースの感想を教えてください。
山内氏:
スポーツの主役は選手です。「グランツーリスモ」のシステムやグラフィックス,フィジックス,サウンドなどは,スポーツをやるときには裏方でいいんです。今回は,初めて大会に参加した選手がアジア・オセアニアの頂点に立ちましたが,ワールドファイナルで会うときには,まったく別人のようになっているんじゃないでしょうか。スポーツには,人をどんどん成長させ,輝かせる力があるんです。そういったことが今後起きていくと考えると,ゾクゾクしますね。
──ワールドファイナルでの日本人選手の活躍は期待していいでしょうか。
山内氏:
「グランツーリスモ」の世界で,日本人選手が高いパフォーマンスを持っていることは10年以上前から分かっていました。ただGTアカデミーが日本で行われなかったということもあり,これまではあまり日の目を見るチャンスがなかったんです。
今回,FIA グランツーリスモ チャンピオンシップが全世界規模で行われることで,日本人の選手が世界で活躍する舞台が整いました。今日のレースでは日本勢が強かったですが,欧米諸国にも強豪強選手はたくさんいます。その中で,どんなレースを見せてくれるのか,いまから楽しみにしています。
──現時点で,優勝しそうな国や地域はありますか。
山内氏:
先日,オーストリアで12か国36名のオンライントッププレイヤーを招いたエキシビションマッチを開催したところ,ハンガリーの選手が優勝しました。またイギリスも,かなりの強豪国です。
また日本人選手は単独で走っていると速いんですが,ヨーロッパの選手は競り合いでの瞬間の判断が鋭いんですね。どんなレースになるか,予想するのは難しいです。
──スポンサーをつけてプロリーグを作ったり,あるいは賞金制の大会を開催したりする構想はありますか。
山内氏:
僕らは,「参加している人が楽しめて,それを見ている人も楽しい」という小さなところから始めていくしかないと考えています。「壮大なビジネスプランがあって,それを着々と進めている」という感覚ではなく,今はまず目の前にある「選手たちに楽しんでほしい」,そして「それを見ているお客様に楽しんでほしい」というところに集中すべきだと思っています。
──10年後の「グランツーリスモ」はどうなるのでしょうか。
山内氏:
「グランツーリスモ」には20年の歴史がありますが,それは実質的にコンシューマゲームの進化とともにありました。今後の「グランツーリスモ」は,今回スポーツを始めたことでも分かるとおり,「グラフィックスやサウンドがすごい」というだけではなく,「どうやって遊ばれるのか,どうやって楽しんでいただくか」といった方向に変化していくと思います。
──最後に,世界の「グランツーリスモ」ファンに向けてメッセージをお願いします。
山内氏:
僕らはいきなりNBAやF1のようなことをやりたいわけではありません。今日参加した選手の皆さんも,普段は仕事をしながら空き時間に練習しているとおっしゃっていましたが,本来のスポーツはそうあるべきだと思います。スポーツは常に人生に寄り添い,たまに輝きを与えてくれる。「グランツーリスモ」も,そんな存在になれればいいなと考えています。
「グランツーリスモSPORT」公式サイト
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