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「RAGE Shadowverse 2024 Summer」GRAND FINALSレポート。最後のトロフィーを手にしたのはN/S選手
なお,本大会の様子はYouTubeで無料配信されているので,こちらもあわせてチェックしてほしい。
GRAND FINALSの舞台となったのはベルサール秋葉原。現行の「Shadowverse」では最後のRAGEとなるためか,入場者数は過去の大会を大きく上回っていたように見えた。
とくに地下1階のメインステージは盛況で,対戦開始前には入場制限がかかるほど。すでにプロシーンが終了していることもあり,現在の競技環境の“答え”を求めているプレイヤーも多かったのではないだろうか。
GRAND FINALSの対戦を準決勝からプレイバック
●準決勝第1試合
藤原 優斗(エルフ/ウィッチ/ヴァンパイア)
vs
Hirobosu(ウィッチ/ネクロマンサー/ヴァンパイア)
準決勝の第1試合は藤原 優斗選手とHirobosu選手のマッチアップ。藤原 優斗選手は昨年のRAGE Shadowverse 2023 Winterで準優勝を果たしたWinter選手とまるで生き写しだが,本人が否定していたので,あえて触れないでおく。
さて,そんなWinter……もとい藤原 優斗選手はファーストマッチにエルフを選択,対するHirobosu選手はネクロマンサーを選択した。
ゲーム中盤から《大自然の抱擁・ラティカ》による特大ダメージを狙っていく藤原 優斗選手の「自然エルフ」に対し,守護の多さやダメージカットなどディフェンス能力に秀でたHirobosu選手の「機械ネクロマンサー」,まさに矛と盾の激突といった構図だ。
お互いに準備を整えつつ序盤を過ごすなか,先攻4ターン目に藤原 優斗選手は《大自然の抱擁・ラティカ》を次のターンに引いてきた場合を見据えたリソースの温存を行う。Hirobosu選手はこの温存に反応して,《刻限の調律・クロノス》の進化で相手の最大PPを停滞させて,《大自然の抱擁・ラティカ》を出させないことを選択する。
《刻限の調律・クロノス》にコストを費やすことで,本来はそのコストを使って増やしたいはずの機械カードのプレイ枚数が停滞してしまうため,藤原 優斗選手のプレイングに誘導されてしまった形だ。
結果的にこのプレイは相手に猶予を与えてしまう形となり,藤原 優斗選手は悠々と《刻限の調律・クロノス》を無力化,さらには《大自然の抱擁・ラティカ》の引き込みに成功する。
防衛体制を築くための準備が進まず,盤面も縛られてしまったHirobosu選手はプランを切り換え,藤原 優斗選手の体力を詰めにかかる。しかし,体力管理を完璧にこなした藤原 優斗選手が2ターン連続の《大自然の抱擁・ラティカ》を突き刺して鮮やかに勝利。プレイングの妙を見せつけた結果となった。
続く2セットめに藤原 優斗選手が選択したのはヴァンパイア,Hirobosu選手はネクロマンサーを続投した。
現環境のヴァンパイアは自身の山札を削っていき,残り10枚以下になると大幅に強化されるカード群で一気に勝負を決める「U10(Under10)ヴァンパイア」と,7回の自傷をトリガーに強化されるカードを使ったバーンダメージと継戦能力がウリの「狂乱ヴァンパイア」が存在する。
そして今回,藤原 優斗選手が持ち込んだ型は「狂乱ヴァンパイア」だ。序盤にフォロワーを並べることで機械カウントを稼ぎたい「機械ネクロ」に対し,相手のフォロワーを利用した自傷稼ぎを行いたい狂乱ヴァンパイアは,やや相性がいい組み合わせだろうか。
テンポよくお互いがカウントを稼いでいき,早期にリソースを吐き出して体力を削り取る藤原 優斗選手。Hirobosu選手は待っていましたとばかりに,体力を戻しつつ守りを固めるが,藤原 優斗選手がさらに押し込みで投げつけた《混濁の魔獅子》からリソースとバーンがつながってしまう。
なおも体力を回復しつつ,追いすがるHirobosu選手だったが,狂乱ヴァンパイアの豊富な火力を耐えきれず,藤原 優斗選手の2連勝となった。
3セットめ,2連勝で勢いに乗る藤原 優斗選手は自動的にウィッチを,後がないHirobosu選手はヴァンパイアを選択した。
2セットめの意趣返しとばかりに狂乱のバーン能力で押しきりたいHirobosu選手。なんとか4ターン目に自傷7回を達成すると,《混濁の魔獅子》の融合によりコストダウンを開始し,5ターンめからの巻き返しに出る。
《混濁の魔獅子》や《深紅のロンド》により一気に自身の体力を20まで戻し,藤原 優斗選手の体力を残り5まで詰める。
しかし,手札にリソースカードばかりが寄ってしまいHirobosu選手の猛攻はここでストップ,藤原 優斗選手の体力を詰めきれない。
対する藤原 優斗選手は《ランペイジワード・ジンジャー》がもたらすコピースペルの《鮮烈の言霊》によって,無尽蔵に火力が供給可能な状態だ。Hirobosu選手は,ターンを渡せばまず生き残れないが,かといって手札に解決手段もなく,ドローカードを使って解決手段を引いても使うコストが足りない。
盤面を処理し,体力を完全回復させて一縷の望みをかけてターンを渡すHirobosu選手だったが,藤原 優斗選手はこれを悠々と焼き切り,準決勝第1試合を3−0のストレート勝利で決勝に駒を進めた。
●準決勝第2試合
iDeal|よしだめ(ウィッチ/ネクロマンサー/ヴァンパイア)
vs
N/S(ヴァンパイア/ビショップ/ネメシス)
準決勝第2試合,1セットめはiDeal|よしだめ選手がネクロマンサーを,N/S選手がネメシスを選択した。
手数による盤面処理や細かいバーンダメージの積み重ねを得意とする「アーティファクトネメシス」は「機械ネクロ」のディフェンス手段と相性がよく,ここはN/S選手の選択勝ちといった印象だ。
機械ネクロの防衛体制が整う前に倒し切る,または防衛体制が整うのを遅延するためにボードロック気味に立ち回るなどの対策を必要としないため,N/S選手は悠々と準備を進めていく。後攻4ターンめには《純真の模範・アギル》を着地させて準備が完了する。
iDeal|よしだめ選手も強固な盤面を組み上げ続けるが,ネメシスの突破力を耐えきれず,N/S選手が押し切って勝利した。
続く2セットめはお互いにクラスを変え,iDeal|よしだめ選手がウィッチ,N/S選手がビショップでの対戦となった。
盤面ロックを嫌ったiDeal|よしだめ選手がやや遅れる立ち上がりとなり,先にN/S選手が盤面を作り仕掛けていく。この盤面をiDeal|よしだめ選手は返すことができず,ここでもそのまま押し切ってN/S選手が勝利した。
準決勝第1試合に続き,またもストレートが見えてきた3セットめ。自自動的にヴァンパイアとなるN/S選手に対し,iDeal|よしだめ選手がぶつけたのはヴァンパイア。
お互いに「狂乱ヴァンパイア」ではなく「U10ヴァンパイア」なので,どちらが先にデッキを10枚以下に削った状態でターンを迎えるかの勝負だ。
初手で1枚多くカードを引ける後攻のiDeal|よしだめ選手が有利と目されるが,N/S選手も先攻のPP有利を生かしてガンガンデッキを削っていく。しかし,手札がどんどん細くなっていき,N/S選手はドローがつながらず手が止まってしまう。
悠々とデッキを10枚以下に削ったiDeal|よしだめ選手は,N/S選手の盤面を突破してフィニッシュ。1セットを取り返すことに成功する。
4セットめは,N/S選手のヴァンパイアにiDeal|よしだめ選手はネクロマンサーをぶつける。
「U10ヴァンパイア」には,相手のフォロワーすべての能力を失わせる《真相究明》が搭載されているため,「機械ネクロ」が得意とする守護の多面展開はやや信頼性が薄くなってしまう。その反面,「機械ネクロ」側のダメージカットは機能しやすいので,難しいマッチアップだ。
守りの不安定さを鑑みてのことか,iDeal|よしだめ選手は序盤から盤面で押し込むプランを選択する。これが功を奏し,N/S選手は盤面を捌ききることもできず苦しい展開となる。さらにiDeal|よしだめ選手は,ダメージカットも火力に転化して押し込みをかけ,そのまま勝利。2-2まで巻き返して最終戦につなげる。
最終セットはiDeal|よしだめ選手がウィッチ,N/S選手がヴァンパイアを選択する。
特大打点に必要なカードが欲しいウィッチと,山札をガンガン削りたいヴァンパイア。序盤はややN/S選手が優勢でターンが進行していく。6ターンめには山札を10枚以下まで削り,ダメージカットと守護2枚を置いた状態でN/S選手がターンを渡す。
未だキーカードが引けないiDeal|よしだめ選手は盤面を返しつつ,次のターンにワンターンキルもケアしなくてはならないという厳しい状況でターンを終える。
その後は1ターンの猶予を得るが,iDeal|よしだめ選手の粘りもここまで。今度はしっかり打点を揃えたN/S選手が一気に21点を叩き込み,接戦を制して決勝に名乗りを上げた。
●決勝戦
藤原 優斗(エルフ/ウィッチ/ヴァンパイア)
vs
N/S(ヴァンパイア/ビショップ/ネメシス)
30回めにして現行Shadowverse最後のRAGE,決勝戦は準決勝をストレートで勝ち進んだ藤原 優斗選手と,接戦を制してきたN/S選手の対戦カードだ。
近年の「Shadowverse」にしては珍しく,お互いデッキ被りがひとつもないマッチアップとなった(双方ヴァンパイアを選択しているが,藤原 優斗選手は狂乱型,N/S選手はU10型)。
歴史を振り返るようにRAGE歴代優勝者が映し出されるなか,ついにオープニングマッチが始まった。藤原 優斗選手はエルフを選択し,N/S選手は準決勝の勢いそのままヴァンパイアを選択した。
初戦ではN/S選手の駆け引きが光る。序盤からテンポよく山札を減らしつつ,スタッツの低いフォロワーを盤面に並べ,藤原 優斗選手が得意とするボードロックを誘導する。
その後,N/S選手は辛抱強く《コラプトフュージョン》を抱え続け,ロックを引き出したここぞのタイミングで使用する。一気に自陣を巻き込んで盤面を更地にしたところで,空いたところに疾走持ちフォロワーを着地させ,完全に藤原 優斗選手をコントロールする形で勝利を収める。
得意のボードロックを逆手に取られた藤原 優斗選手は2セットめもエルフを続投,1セットめの雪辱を果たしにいく。対するN/S選手の選択はビショップ,ボードロックが有効だが,だからこそのタイミングで差し込んだのだろうか。
お互いにロックを盾にした妨害の応酬がメインになると思われたこの試合だが,5ターンめまでにダメージソースである《大自然の抱擁・ラティカ》を3枚引ききっていた藤原 優斗選手がすぐに仕掛ける。
5ターンめに11/11の《大自然の抱擁・ラティカ》を立てつつ相手の体力を削り,これの処理にリソースを費やさせて,残りの《大自然の抱擁・ラティカ》で押し込む算段を採る。しかし,N/S選手はこれを楽々処理すると,失った体力もある程度取り戻すプレイを見せる。
2枚めの《大自然の抱擁・ラティカ》で押し込めなくなってしまった藤原 優斗選手にとっては苦しい展開となり,手が止まったところを逆にバーンダメージで焼き切ったN/S選手が鮮やかな逆転勝利を掴んだ。
あとがなくなった藤原 優斗選手は,なおもエルフを選択。優勝に王手をかけたN/S選手は自動的にネメシスを選出することに。
守護の薄いネメシスは,早期の《大自然の抱擁・ラティカ》で体力を持っていかれるのをやや苦手とするイメージがあるが,なんと藤原 優斗選手は5ターンめ,盤面に残った1/1含め16点のダメージを叩き込み,N/S選手をノックアウト! ネメシス側の準備が整ったタイミングで待ったをかけるように1勝をもぎ取った。
4セットめ,ネメシスが確定しているN/S選手に対する藤原 優斗選手の選択はウィッチだ。
盤面を組み上げることでプレッシャーをかけながらウィッチのワンショットを避け続けるN/S選手に対し,防戦気味だった藤原 優斗選手は6ターンめに強固な盤面を組み上げてカウンターを図る。
しかしここで長考が祟り,相手の盤面のフォロワーを除去する前に時間切れを迎える痛恨のミス! そればかりか,本来であればしておきたかった火力カードの《蒼の先導者・テトラ》のコピーもできず,次のターンの攻め手も失ってしまう。
盤面も返され,藤原 優斗選手の命運はもはや風前の灯火。Winter選手がRAGE 2023 Winter決勝で時間切れをしていた記憶がよみがえるが,セットカウント1−1だったあの時と違い,今回は正真正銘の致命傷だ。
その隙にN/S選手はつぎつぎと舞い込んでくるカードを叩き込み,藤原 優斗選手の再起を許さず体力を削り切って勝利。30回にわたり開催されたRAGE Shadowverseの最終王者がN/S選手に決定した。
「Shadowverse」最後のRAGEを振り返って。N/S選手へインタビュー
見事な優勝を果たしたN/S選手へのインタビューをお届けして,本稿の締めくくりとしたい。
4Gamer:
優勝おめでとうございます。まず,今日の感想をお願いします。
N/S選手:
率直に言うと,薄味な勝ち方が多かったと感じています。なので,自分がうまくて勝った試合があるのか分からず,あまり優勝の実感がありません。賞金が入れば実感するかもしれないですね。
4Gamer:
賞金の使い道は何か考えていますか。
N/S選手:
スカイダイビングをやってみたいです。
4Gamer:
カードゲーム歴自体はどれくらいになりますか。
N/S選手:
歳の離れた兄がいて,小学生のころに兄のあまったカードなどで遊んでいたことはありますが,本格的に始めたのは高校生のころにプレイした「Shadowverse」からになります。
4Gamer:
元「Shadowverse」プロのであるリグゼ氏の調整を手伝っていた,というエピソードを耳にしたのですが,どのような経緯でプロの調整を手伝うまでに至ったのでしょうか。
N/S選手:
リグゼさんがプロになる前の話ですけど,一緒に調整する仲間をSNSで募集していたのを見かけて応募したのがきっかけです。そこでBO3だかをやって勝って加入して,内部にいた有力プレイヤーに触発されて深みにはまっていきました。
トッププレイヤーのアプローチに実際に触れたことがターニングポイントになりましたし,そこを境に「Shadowverse」に触れる時間も増えたと思います。
4Gamer:
今回のRAGEはプロシーンがすでに終了していることもあり,デッキの持ち込みに明確な指針がないなかでの開催になったと感じています。今回持ち込んだ3デッキはどのような経緯で決めましたか。
N/S選手:
最初に決めたのは「アーティファクトネメシス」で,現在の攻めに寄せた構築に固まったあたりでは持ち込みを決めていました。このデッキはキルパターンの再現性が高く,かつ上振れも見込めて勝率も出ていたので,まずはこれありきでほかのデッキを決めていきました。
「U10ヴァンパイア」はアディショナル後のデッキですが,これも再現性が高く,かつデッキ切れしない限り隙が無い点を評価しています。とくに再現性が高い点は重視しています。
自分の予想でも周囲の下馬評でも「アミュレットビショップ」が最大勢力かと思っていて,これに対して優位性がある,という点も「U10ヴァンパイア」を選ぶ動機でした。ただ,実際はそこまでビショップは多くなかったので少し驚きましたね。
最後の「ビショップ」は出力が高く,調整を手伝ってもらったプレイヤーたちからも持ち込みを強く勧められたので選んでいます。
4Gamer:
持ち込まなかった中で有力なデッキはありますか。
N/S選手:
少し違う答えかもしれませんが,「機械ネクロ」が多かったのは意外でした。自分も持ち込みを考えた時期はありますが,メタ寄りのデッキであること,自分はほかのプレイヤーと比べて「機械ネクロ」のプレイングに自信がないこと,メタ側よりも押し付ける側のほうが強いゲームだと感じていることを考慮して今回は選びませんでした。
予選のときは「機械ネクロ」や「自然エルフ」を使っていましたが,これらにはあまり手ごたえを感じられなかった,というのもあります。どこに照準を定めるかで構築が変わるメタ側のデッキは諸刃の剣だと感じていて,相手の選択とかみ合わなかったときの不安定さが気になりました。
「機械ウィッチ」も出力が高いとは思いますが,勝っても負けても大味な印象があります。リソースの切りどころが難しいというか,6ターンでキルする前提で動いたときに7ターンまでもつれた場合,一気に細くなってしまうイメージです。
そのあたりの難度を考えた場合,同程度の出力があるもっとカンタンなデッキがあれば,そっちを選ぶほうがいいと思いました。
4Gamer:
大会中のメンタル面についてお聞きしたいのですが,長丁場による疲弊や大舞台のプレッシャーは感じていましたか。
N/S選手:
どちらもないことはありませんが,自分の試合はけっこうアッサリめに終わるものが多かったので,そこまで感じたわけではありませんでした。「機械ウィッチ」に上振れ展開をされた場合などは割り切るつもりでいたのですが,そういうシーンもなかったので。
4Gamer:
「Shadowverse」の魅力について一言お願いします。
N/S選手:
圧倒的なファスト感ですね。とにかく手軽に遊べる。スマホに通信制限がかかっても遊べると聞いたこともあります。ちょっとした空き時間や出先でも遊べるのは魅力だと思います。
あとはUIですね。そこまでデジタルTCGに詳しくないので恐縮ですが,操作性や直感的なインタフェースは群を抜いていると思います。そのあたりは新作のワールズビヨンドでも大事にしてほしいです。
4Gamer:
最後にワールズビヨンドに期待する点を聞かせてください。
N/S選手:
最初は複雑すぎないことですね(笑)。「Shadowverse」の現環境は複雑すぎて強力なカードの低コスト化が進行しているので,最初はもっと簡単なゲームをやりたいです。
今回,「Shadowverse」最後のRAGEで優勝できたことですし,新作の盛り上げで,私になにかお力になれることがあれば協力したいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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