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[SPIEL’15]世界各国から集まった1040人で同時に遊ぶ,世界最大のカタン。20周年記念イベント「1000人カタン」レポート
事実上,ドイツゲーム,あるいはユーロゲームというジャンルを生み出したタイトルといって過言ではない同作だが,広く愛されるゲームによくあるように,この20年の間には,さまざまな派生作品が生みだされてきた。海上へと移動範囲を広げた,通称「海カタン」や,宇宙カタンに騎士カタン,そのほか,さまざまな歴史的背景を持ったマップでプレイするカタンなどである。
その中の一つに,イベントなどでプレイすることを想定した「大人数カタン(Catan:the Big Game)」がある。マップの構造と各種ルールに手は入っているものの,基本的には原作であるカタンと同じ感覚でプレイできる大人数カタンは,2005年のデビュー以来,さまざまなゲームイベントにおいて大人数を動員し,楽しまれてきた。
だが20周年となる今年,カタンのパブリッシャであるKOSMOSは,ただ単に大規模なカタンを用意するだけでは満足しなかった。これまでのカタン同時プレイ人数の世界記録である922人を上回る人数で,カタンをプレイすることを試みたのである。
というわけで本稿ではSPIEL’15の3日目,ドイツ時間2015年10月10日に開催されたイベント「1000人カタン」の模様を紹介していこう。なに,誰がどんな勝ち筋で勝ったのか知りたいって? 勘弁してください,同時に1000人がプレイしてるんですよ?
日本語版「カタンの開拓者たち」公式サイト
1000人でも遊べるカタン
まずは1000人カタンがプレイされている写真をご覧いただきたい。
壮観である。
企画する方も企画する方なら,参加する方も参加する方だ。ちなみにイベントタイトルこそ「1000人カタン」だが,実際には世界25か国から,主催者発表で1040人の参加者(中にはデザイナーであるKlaus Teuber氏の姿も)が集まったとのこと。もちろん,カタン同時プレイ人数のワールドレコード更新である。
1000人カタンは,同時プレイを可能にするため,通常版とはルールが異なる部分もあるのだが,その違いを列挙してもあまり意味はない。というわけで,細かなルール説明はバッサリ割愛させていただくが,ここでは見どころとなるポイントを紹介しておこう(英語版の詳細ルールは「こちら」)。むしろ注目すべきは通常版との共通点の方だ。
- 使うサイコロは1セット カタンでは毎ターン,サイコロを2個振って,その出目によって何の資源が産出されるかを決めるルールになっている。プレイヤーは,そうやって産出された資源を使い,道や村といった施設を建て,島を開拓していくわけだ。
1000人カタンでも,この構造は同じで,そのターンのダイスの目は中央前方の大型スクリーンに表示される。つまり1040人全員が,一つのダイス目の影響を受けるのである。老いも若きも分け隔てなく,1040人が一斉に同じダイスの出目に一喜一憂するというのは,実に見応えのある光景である。
- 勝者はただ1人 通常は3〜4人で遊ぶカタンだが,最終的に勝者となるのは1人だけ。これは1000人カタンでも変わらない。約1時間ほどのプレイののち,1040人のうち,たった1人だけが勝者となる。
ちなみに1000人カタンが通常のカタンと最も異なるのは,1ターンごとに自分の手番がまわってくることだろう。例えば,4人プレイの通常のカタンなら,4ターンで自分の手番となるが,1000人カタンはプレイヤーが太陽組と月組に二分されており,それぞれの組が交互に手番プレイする。つまり,それだけ展開も早くなっている。
世界最大級の和気あいあい
そんなこんなで始まった1000人カタン。1040人もプレイヤーがいるにもかかわらず,ゲーム序盤は穏やかな立ち上がりだったようだ。とくに出目が偏ることもなく,プレイヤーは概ね,皆順調に開拓地を拡大させていく。だがゲームが進むにつれて,場はしだいに温まっていく。初期配置で既にある程度まで発展した開拓地が準備されていることと,先に紹介した手番のめぐりが早いことが相まって,手が早いプレイヤーが開拓を雪だるま式に広げていくのである。
また,交易が活発に起こりやすいのも,展開が早くなる要因だ。1000人カタンでは交易相手として自分の席の向い三軒両隣を対象とできるが,通常のカタンなら重視される「トップとは交渉をしないことで,トップが一気に勝ち抜けることを防ぐ」というプレイングが,あまり行われないからだ。……というか,そもそも1040人のうち誰がどれくらいリードしているのかなど分かるはずもないので,トップを抑え込むも何もない。それくらいなら,自分の手が進むことを最優先したほうがいいと判断する人のほうが,圧倒的に多数だったようだ。
とにもかくにも,ゲームは和気あいあいと,それも世界最大規模の和気あいあいとした雰囲気で進んでいった。
そして40ターンを迎えたとき,進行アナウンスから重要な情報がもたらされた。なんでも,これまで行われてきた大規模カタンにおいては,勝者が出るのはだいたい40ターン過ぎなのだという。正直,これは意外な数字であった。なにしろ観戦する筆者が確認できる範囲で,40ターン目の現在,勝利できそうな人はいなかったからだ。
だが,統計は正しかった。48ターンめ,1人のプレイヤーが手を上げ,勝利条件を満たしたと宣言したのだ。そして,それは1人に留まらなかった。なんと合計3人が,同じターンに勝利条件を達成したのである。うーむ,これが世界か。
ルールに基づきタイブレーカーのカウントが行われ,そしてついに,1000人カタンにおけるただ1人の勝者が決定した。かくして,カタン発売20周年のメモリアルイベントは,歓声と拍手の中で幕を閉じたのである。
いやはや,オンラインゲームで同時接続1000人といえば,正直大したことないと思えるだろう数字だが,リアルで集まるとやはり迫力が違う。1000人が同時に同じゲームを遊ぶというのは,こんなにも凄いことだったのかと,改めて実感させられるイベントだった。
あくまで完成したゲームとして
1000人カタンの面白いところは,これがお祭りであることに甘えたルールを採用しているわけではないということだ。プレイヤーの数は1000人でなくとも良く,100人でも20人程度でも,あるいは(確認は大変そうだが)おそらく1万人でも,“楽しく”遊べるものとなっている。このあたりの凝りっぷりは,さすがと言うしかないだろう。
ちなみに,ゲームが終了したあと,1040人総掛かりでゲームの片付けが始まったことも,とても印象的な光景だった。同時プレイ数の世界記録を達成したのはもちろんだが,恐らくゲームの同時片付け記録でも,ワールドレコードとなったに違いない。
SPIELのキャッチコピーである「Komm, spiel mit!(来て,遊ぼう!)」を体現したイベントでもある1000人カタン。たくさんの人が同じ空間で楽しさを分かち合う風景は,20周年記念と言わず,来年もまた見てみたい……そんな印象を,強く受けるイベントでもあった。
日本語版「カタンの開拓者たち」公式サイト
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カタンの開拓者たち
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Catan(カタン)
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