イベント
TRPGファンの為の宿泊型イベント「TRPGフェスティバル2018」レポート。ゲーム三昧だった濃密な3日間を写真と共に振り返る
1998年より毎年開催されていた「JGC」を引き継ぐ形でスタートし,今回が2度目となるこのイベント。静岡県の熱海にある「ホテル大野屋」を全館貸し切って,2泊3日でゲームを遊び続けられるという,テーブルトークRPG(以下,TRPG)ファンにとって夢の様な催しであり,今年も約600名の参加者が集まった。またゲームデザイナー陣によるトークショーや新作のお披露目,気軽に参加できるLARPなどの企画も目白押しで,クリエイターとファン達が交流を楽しむ場面も見られた。
本稿ではこうしたトークショーの模様を中心に,イベント全体の模様をレポートする。
開会式前からすでに始まっている「TRPGフェス」。東京から熱海の大野屋に向かうツアーバスには,冒険企画局の桜葉星菜。氏,古町みゆき氏,平野累次氏による「平成最後のバスツアー」トークショーが行われた |
バスガイドに扮した桜葉星菜。さん。この日のために冒険企画局の旗を新しく作ったとのこと |
「TRPGフェスティバル」公式サイト
安田 均氏が語るGen Con 2018とオールドスクールRPG
「GENCON報告トークショー&オールドスクールRPGを語る会」と題されたトークイベントでは,グループSNEの安田 均氏とこあらだまり氏から,2018年8月2日から5日にかけ,アメリカのインディアナ州で開催された「Gen Con 2018」の報告が行われた。
ちなみにGen Conとは,1968年にスタートした北米最大のアナログゲームコンベンションで,TRPGをはじめトレーディングカードゲームやミニチュアゲーム,ボードゲームなどが出展されるというもの。2003年以降はインディアナポリスが開催地となり,2018年は8月2日から5日までの日程で開催された。トークではそんな会場の模様をスライドショーで見せながら,注目作としていくつかのタイトルが紹介された。
日本語版がヒット中の「テストプレイなんてしてないよ」(原題:We Didn't Playtest This At All)の作者・Chris Cieslik(クリス・チースリク)氏の新作「1001 Odysseys」はパズルや脱出ゲームの要素が強いタイトルで,“植物を育てると建物になる”など,さまざまなルールの世界を冒険し,次の世界に進んで行くのが目的の協力ゲームとのこと。
また妙な世界観が話題の「STARSHIP SAMURAI」は,巨大ロボット“サムライ”を従え,宇宙の覇権を争う大名達によるストラテジーゲーム。切り札となる巨大ロボットは大型のフィギュアとして表現されていて,コンポーネントも豪華である。
安田氏は今回のGen Conの特徴として,「1度しか遊べないLegacyシステムのゲームが流行している」「オールドスクール的な作品が,最近のトレンドに合わせてブラッシュアップされたものを多く見かけた」とも語っていた。
「パンデミック:レガシー」に代表される“Legacyシステム”を使ったゲームには,「Ultimate Werewolf Legacy(究極の人狼)」「Machi Koro Legacy(街コロ)」「We Didn't Playtest This: Legacies(テストプレイなんてしてないよ)」などがある。
例えば「Ultimate Werewolf Legacy」は,ある村で起こった人狼事件の顛末を,キャンペーン形式で追いかけていくもので,前回のゲーム結果によっては登場人物や役職の能力が変化することもあるという。再プレイ性に欠けるのが欠点だが,物語が進行と共に前提条件が変化していく,濃密なプレイが楽しめるというわけだ。
また「オールドスクール的作品のブラッシュアップ版」として,ゲームブックの元祖「きみならどうする?」(原題:Choose Your Own Adventure)が,しっかりとしたコンポーネントのボードゲームになって登場している例が挙げられた。さらに汎用TRPGシステムの「ガープス」やカードゲーム「マンチキン」の作者として知られるSteve Jackson氏は,TRPG「The Fantasy Trip」のリメイク版を制作しているとのことだ。
元々は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のコンベンションとしてスタートしたGen Conだが,2018年には50周年を迎え,今ではTRPGのみならず,さまざまなアナログゲームが集まるイベントになってきている。安田氏は,(このTRPGフェスのような)日本のゲームイベントも今後,この規模にまで成長するのでは,と展望を語ってトークを締めくくった。
富士見書房の新作「トリニティセブンRPG」の制作秘話が語られた「Wサイトウトークショー」
映画化もされている人気アニメ「トリニティセブン」の原作者・サイトウケンジ氏と,「リアリティショーRPG キルデスビジネス」などをデザインした冒険企画局・齋藤高吉氏によるトークショーでは,同作の世界観で遊べる2019年春発売予定の新作「トリニティセブンRPG」(富士見書房/著:泉川瀧人)の開発秘話を語るものとなった。深夜に行われたプログラムということもあって,その内容はかなりぶっちゃけたものに。
もともとTRPGが好きだというサイトウケンジ氏は,TRPGを盛り上げたいということで,「トリニティセブンRPG」を企画したのだとか。ちなみに原作では劇場版の第2弾の制作が進行中であり,公開日程などは明らかになっていないが,もくろみとしては「合わせて発売すれば売れるのでは?」とのことだった。
サイトウケンジ氏から齋藤氏へは,「キルデスビジネス」の“その辺にいるおっさんが相撲取りになってイケメンとダンスしながら空に舞い上がる”といったことが日常茶飯事な妙な世界観は,どうやって生まれたのかという質問が。齋藤氏は,“殺し屋がやるショー”という企画が初めにあり,グラフィックデザイナーとバカ話をしているときに,「テレビで放送している設定にしたら面白いんじゃないか?」というアイデアが出て,現在のような形になったと答えていた。
反対に齋藤氏からは,「トリニティセブンRPG」はどのようなゲームなのか,という質問が。サイトウケンジ氏によれば,「プレイヤーは原作の主人公達と同じぐらいの強さを持つキャラクターになり,歴史に語られない事件を解決していく」とのことで,原作の世界観を再現したものになるとのこと。またクライマックスでは,5000ダメージといった派手な数字が飛び交うゲームになるそうだ。
富士見書房「トリニティセブン 7人の魔書使い」特設ページ
次の1年へ,TRPGの未来に向けた閉会式
閉会式では,1年以内に新作TRPGをリリースした,もしくは近日中に新作を出す予定のある気鋭のゲームデザイナー7人の紹介が行われた。「チェンジアクションRPG マージナルヒーローズ」(F.E.A.R.)の三枝チャージ氏と,「英雄武装RPG コード:レイヤード」(新紀元社)のからすば晴氏,「神聖課金RPG ディヴァインチャージャー(仮)」(アークライト)の番棚 葵氏,「サムライブレイドTRPG 華札舞う退魔の剣戟」(冒険企画局)の倉樫澄人氏,「銀剣のステラナイツ」(富士見書房)の瀧里フユ氏,「スチームパンク飛空艇RPG 歯車の塔の探空士」(同人)のLord_Phantasm氏,そして「ふしぎもののけRPG ゆうやけこやけ」(新紀元社)の清水ミケ氏だ。
朱鷺田氏は「新人デザイナー達が1年後どうなっているのか見届けよう!」と新人達に檄を飛ばし,最後に安田氏による「来年も来るぞ! 一緒に来るぞ! みんなで来るぞ! 約束だぞ!」のかけ声で,2泊3日のイベントは幕を閉じた。
洋の東西を問わず,また商業と同人の別もなく,多くのプレイヤーがさまざまなゲームを大いに楽しんだ今回の「TRPGフェスティバル」。とくに大きな事故もなく,TRPGをはじめアナログゲームの勢いが感じられるイベントだった。来年2019年の第3回にも期待したいところだ。
「TRPGフェスティバル」公式サイト
- 関連タイトル:
ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版
- この記事のURL:
Copyright (c) 1993 - 2023 Wizards of the Coast LLC, a subsidiary of Hasbro, Inc. All Rights Reserved.