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    デベロッパを蝕む「受託病」,その特効薬は“ガンヴォルト”。會津卓也氏が登壇した「ゲーム開発とデジタル販売の実態:経験を元に」聴講レポート
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    印刷2017/05/13 00:00

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    デベロッパを蝕む「受託病」,その特効薬は“ガンヴォルト”。會津卓也氏が登壇した「ゲーム開発とデジタル販売の実態:経験を元に」聴講レポート

     2017年5月10日にスタートしたゲーム関係者向けイベント,「Tokyo Sandbox 2017」。5月12日には,「ゲーム開発とデジタル販売の実態:経験を元に」と題された講演が行われた。登壇したのはインティ・クリエイツの代表取締役社長を務める會津卓也氏で,同社がなぜダウンロードタイトルを手がけるようになったのか,またNintendo Switchにいち早く参入した理由などが,実際のダウンロード数といった貴重なデータを交えて語られた。

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    「TOKYO SANDBOX 2017」公式サイト


    デベロッパに蔓延する「受託病」,特効薬は「蒼き雷霆 ガンヴォルト」


    インティ・クリエイツ 代表取締役社長 會津卓也氏
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     まずは,インティ・クリエイツの紹介から。同社は1996年に設立されたゲームデベロッパで,カプコンの「ロックマンゼロ」,バンダイナムコエンターテインメントの「デジモンユニバース アプリモンスターズ」など,受託開発を請け負っている。一方で,2014年には初の自社パブリッシングタイトル「蒼き雷霆 ガンヴォルト」PC/ニンテンドー3DS 以下,ガンヴォルト)を発売,2016年には「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪」をリリースするなど,オリジナルタイトルを開発し,合わせてダウンロード販売も行っている。
     2017年3月3日に発売されたNintendo Switchでは,ローンチタイトルとして「ブラスターマスター ゼロ」Nintendo Switch/ニンテンドー3DS)を開発して話題を呼んだ。つまり,「受託をメインとしつつ,最近は自己資金で開発も行い,ダウンロードゲームに力を入れている」メーカーであるわけだ。

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     受託の場合,パブリッシャから開発資金が提供されるが,オリジナルタイトルは自分で資金を出さなければならないためリスクは大きい。では,インティ・クリエイツはなぜオリジナルタイトルに力を入れるようになったのだろうか?
     會津氏は,「これから語る内容は個人的な見解を多く含んでいるため,参考として聞いてほしい」と前置きして,講演を始めた。

     インティ・クリエイツがオリジナルタイトルを出すようになった理由は,2012年に「受託病」が蔓延したためだという。これは受託開発のスケジュールの厳しさに加え,オリジナルタイトルを手がけたことのないスタッフを中心にモチベーションが低下し,「納期さえ守ればいい」といったネガティブなムードが社内で感じ取れたというのだ。

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     こうした状況を受託病と命名した會津氏は,これを解決すべく模索し,その結果,モチベーションを上げるには「好きなものを作れる自社開発タイトルだ」という結論を得た。そして,退職を考えるなど,著しくモチベーションが低下した人達を集め,自己資金,自社開発,初パブリッシュのオリジナルタイトルとして,副社長の津田氏を中心に横スクロールアクションゲーム,ガンヴォルトの企画が立ち上がった。

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     しかし,開発には時間がかかり,20%ほど完成したところで會津氏の中に「これは売れるのだろうか?」という疑問が生まれたという。受託病を治療するために開発に着手した作品とはいえ,やはりメーカーとしては利益を出さなければならない。
     当時の日本では今ほどダウンロード販売は一般的でなく,売上は厳しいかもしれないと會津氏は考えたそうだ。

    會津氏は,「虫けら戦車」ですでにダウンロード販売を行っていた稲船敬二氏に相談したが,返ってきたのはゲームのアクション面のダメ出しと,別のアクションゲームを立ち上げるためにKickstarterをやらないかという誘いだった。のちに同社は「Mighty No. 9」「Bloodstained: Ritual of the Night」といったタイトルでKickstarterを使い,これがまた一つの転機をもたらしたという
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     會津氏がガンヴォルトのダウンロード販売を決めたのは,北米で開催されたゲームイベント,PAX2013のインディーズゲームを集めたブース,Indie MEGABOOTHを訪れ,そこで大きな衝撃を受けたことがきっかけだったという。
     日本の昔のゲームを思わせる作品が多数展示されており,開発者達が楽しそうにしているのを見て「これが,ゲーム開発の本来の姿ではないか」と感じたという。ガンヴォルトもまた,ここに出展されているゲームのように昔懐かしいスタイルの作品であるため,「アメリカのインディーズゲームシーンでこうしたものが受けているなら,イケるだろう」と手応えを感じた。

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     こうして2014年8月10日に発売されたガンヴォルトだったが,結果として,ニンテンドーeショップのダウンロード数が18万を突破するヒット作になった。

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     ダウンロード販売を行ううえでは,ブログやTwitter,FacebookなどのSNSを使って積極的に情報を発信したという。全世界で作品を売るには,日本で話題になっていなければダメだという考えから,国内向けにニコニコ生放送を使ったアピールも行った。

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     また,ガンヴォルトが北米のファンに受け入れられたことで,やがてイベント主催者から「費用はいらないので,出展してもらえないか」というオファーが届くようになったという。会場では,ファンサービスとしてガンヴォルトのグッズの販売を行い,その売上で渡航費用を捻出。残ったグッズは自社サイトで販売して,宣伝と実利の両立に成功している。

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     ガンヴォルトでダウンロード販売のノウハウをつかんだ會津氏は,2016年8月に続編である蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪を配信した。とはいえ,ニンテンドーeショップでのダウンロード数は2017年5月1日までに3万8000と,前作より低い数字に留まっている。

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     この結果を見て,最初は「ダウンロード販売の市場が縮小したのでは?」と考えた會津氏だったが,同じくインティ・クリエイツが手がけた「ぎゃる☆がん だぶるぴーす」は,パッケージ版16万本が店頭で消化されたあとでダウンロード販売の売上を伸ばし,4万2000ダウンロード(2016年12月31日現在のPlayStation Storeでの販売数)を達成していることから,この考えは正しくないと判断したという。

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     そして,「プラットフォームの販売動向などを考慮していなかった」ことが原因であるという結論に至った。発売するプラットフォームを選ぶに当たっては,自分の好みや,「続編も同じ機種で出そう」という気持ちが入りがちだが,このときに「プラットフォームの選定はしっかり考えなければならない」という教訓を得たという。

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    Nintendo Switchでの開発は好感触


     続いて話題は,インティ・クリエイツがNintendo Switchのローンチタイトルとしてリリースした「ブラスターマスターゼロ」に移った。
     これはサンソフトがファミコン向けに発売した「超惑星戦記 メタファイト」(1988年)のリメイクで,当初はニンテンドー3DS用に開発が進んでいたが,Nintendo Switchが2016年10月に発表されたことを受け,急遽そちらにも対応することにしたという。

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     2016年10月24日にNintendo Switchの開発機材を発注し,50%ほどが完成していたニンテンドー3DS版の移植を始めた。12月26日にはNintendo Switchの「事前版」を提出し,2017年の3月3日にはローンチソフトとして配信を開始したというのだから,ピッチは急だ。

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     わずか2か月で移植作業を終えられた理由は,「ブラスターマスターゼロ」がガンヴォルトと同じエンジンで開発されていたことにあるという。このエンジンは,ガンヴォルトをSteamで販売するため,すでにPCへの移植作業が終了しており,これをNintendo Switchに再移植するだけで済んだため,開発期間の短縮が図れたという。ダウンロード販売における多機種展開の大切さが分かるエピソードといえそうだ。

     ブラスターマスターゼロの開発期間は,ニンテンドー3DS版と並行で6か月かかり,開発に担当した人数は35人。2017年5月10日までの総ダウンロード数は8万とのこと。

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     會津氏は,Nintendo Switchについて「非常に開発しやすい」と述べた。また,参入手続きもポータルサイト「Nintendo Developer Portal」を使えばスムーズに進み,開発機材も5万円ほどで買えるといったメリットを挙げて,「ぜひNintendo Switchで開発してはどうでしょう」と語って,講演を締めくくった。

    ダウンロード販売で売上を伸ばすには注目を集めることが大事だが,そのための秘策として「プラットフォームホルダーのサポート」「ショウに出展」「VRタイトルを出す」「新ハードでリリースする」といった工夫が挙げられた
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