レビュー
PS4とPS3で「キーパッドとマウスでの操作」を可能にするデバイスを試す
HORI タクティカルアサルトコマンダー for PlayStation 4
FPSがPCゲーマーのものだったのもいまは昔。もはや,ゲーム機のみで展開されるFPSシリーズは珍しいものではなくなった。また,かつてはPCでプレイしていたが,PCハードウェアの進化についていけなくなって,ゲーム機へとプラットフォームを変える人も少なくない。
ただいずれにせよ,PCでFPSやTPSを長くプレイしていた人がゲーム機でFPS/TPSをプレイしようと考えたとき,最大のハードルとなるのがゲームパッドだ。ゲームパッドが持つ独特の操作性に慣れず,「マウスならもっと上手く狙えたのに……」と思ったことは,一度や二度ではないだろう。
ハードウェア選択の自由があるPCゲーマーからすると信じられない話ではあり,また,ゲーム機市場でも世界ではあまり聞かない話なのだが,日本のゲーム機市場においては,ゲーム機メーカーの認証を取っていないハードウェアは,いわゆるチート行為に荷担しない製品であってもすべて“ハードウェアチート”だとする人達が一定数いる。そういう人達を「黙らせる」ことができ,大腕を振って使える製品だったのが,TAC3である。
TAC3に寄せられたフィードバックを受けて改修を図った結果生まれたという新モデルのデキはいかほどか。2015年11月の発売から少し経ってしまったが,確認してみたい。
従来製品比で入力できるキーの数が増えたTAC4
このとき気になったのは,キーパッドとマウスの接続が甘いこと。最後までかちっと差し込める感じがなく,マウスケーブルを軽く引っ張っただけでグラついてしまう。販売価格が1万円を軽く超える製品の“立て付け”としては,いきなり「ちょっとどうか」と思わされた次第だ。
左手用キーパッドは本体右手前でD-Pad(十字キー)部のみがせり出した,ユニークな形状だ。TAC3には着脱可能なパームレストが付属していたのだが,TAC3からそのパームレストを取り外したような外観と言っていいかもしれない。本体サイズは実測約200(W)
本体側面から見ると,キーの数は少ないながらもステップスカルプチャ仕様だと分かる |
キーパッドの右側面には,DUALSHOCK互換のミニピン端子を搭載。ここにヘッドセットを取り付けられる |
残りは,(標準ではD-Padと同じ機能になる)黒抜き三角キーが4個,[QUICK]キーが1個で,あとは左端に[OPTIONS/SHARE/L3]キーといった配置である。
ケーブルはビニール皮膜仕様で,若干の固さはあるものの,クセのついた部分を指で逆方向に曲げれば対処できるレベルである。
このうち,左サイドの凹んだ場所には滑り止め用のラバーが貼られているのだが,右サイドにはこれといった滑り止め対策がない。そのため,実際に握ってみると,親指はばしっと設置場所が決まるのに対し,右サイドは指がスカートに合わせて少し滑って位置を定めにくい。そのため,指を伸ばし気味に配置する「かぶせ持ち」は難しい印象だ。指を立てる「つかみ持ち」「つまみ持ち」であればスカートの底面側に指を立てて乗せる感じになるため問題ないが,持ち方をやや選ぶことは押さえておきたい。
先ほど,キーパッド側に[QUICK]キーがあることは指摘したが,マウス側の[QUICK]ボタンも効果は同じだ。もったいぶっても何なので,ここで説明しておくと,「QUICK」は,押している間だけ,マウスの感度を高くできる機能である。
ほとんどのキーやボタンで割り当てを変更できるが,変更の仕方はやや面倒
ここからは,前段で後述すると述べた部分を含む機能面を見ていこう。
まずはプロファイル機能からだが,なぜTAC4でプロファイルの保存と切り替えが必要かというと,ある意味で「DUALSHOCK向けゲームを無理矢理キーパッドとマウスで操作する」TAC4の場合,そのままでは相性がよろしくないケースが出てくるからだ。
しかも,そもそもがDUALSHOCK向けとなっているPS4&PS3用タイトルの場合,PCのようなキーコンフィグの柔軟性はなく,せいぜいが「メーカー側が提示する『ゲームパッドに最適なプリセット』のいくつかから選択する」程度であり,そのままでは相性問題を解決できるか分からない。そこで,キーやボタンの割り当てをプロファイルとして本体側に保持し,切り替えられるようにしておけば,さまざななFPSやTPSで,おおむね近い操作によってTAC4を利用できるようになるだろうというわけである。
最初はプロファイルを切り替えるところからスタートする。というのも,デフォルトの設定は何か設定ミスを生じてしまった場合の緊急回避として利用できるので,設定できる3つのプロファイルのうち,1つは安全策として未設定で残しておくべきだからだ。
ということで,残り2つあるどちらかのプロファイルへとスイッチを切り替え,LS/DPスイッチが奥側(上側)の標準状態にあることを確認し,そのうえで,本体奥側にあるASSIGNスイッチを[ON]にする。すると,キーのバックライトが消灯し,キーおよびボタンの割り当てを行えるようになる。
変更したいキーやボタンを押すと,「押したキーやボタンに割り当てられている機能」が表示されるので,割り当てたいキーあるいはボタンを押しながらD-Padの上下を押すと,ディスプレイパネルに表示されるキー/ボタン割り当てが切り替わっていく。
目的のキー/ボタン割り当てを表示できたら,そこまで押し続けていたキー/ボタンを離す。すると,目的のキー/ボタンに新しい割り当てを行える,という流れだ。すべての作業が終わったら,ASSIGNスイッチを[OFF]に戻せば,割り当て完了である。
TAC4では,DUALSHOCKの左アナログスティックをキーパッド上のキーで,右アナログスティックをマウス移動でシミュレートするわけだが,キーパッド上のキーはもちろんデジタル入力だ。DUALSHOCKでアナログスティックを倒したときのような,「倒し具合に応じた入力の変化」は再現できない。
つまりどういうことかというと,TACにおける“左アナログスティック”は,基本,まったく倒れていないか,完全に倒しきったかのどちらかの入力になる。FPSやTPSでいえば,走りっぱなしになるわけであり,狭い足場で,慎重な移動が求めら得る場合ではミスを招きかねない。
そこで[WALK]ボタンの出番だ。[WALK]ボタンを押した状態で移動用のキーを押した場合,TAC4は「左アナログスティックを少しだけ倒した状態」として,入力信号をゲーム機へ送るようになっている。一方の[SNIPE]キーは,PC用の一部ゲーマー向けマウスがサポートする機能と同じ,押している間だけマウスの感度を下げ,細かなエイム(AIM)を可能にするためのものとなる。
[WALK]ボタンでどの程度の傾きを入力するか,[SNIPE]キーで感度をどの程度落とすかは,先ほど紹介したキー/ボタン割り当てと同じような操作で行える。
まず[WALK]ボタンのほうは,ASSIGNスイッチを[ON]に入れてから,今度はLS/DPスイッチを手前側(=[DP/LS]側)入れる。そのうえで[WALK]ボタンを押しながら,D-Padの上下でターゲット入力量を調整するという流れだ。このとき,LEDインジケータ部の,○の中にiがあるアイコンが,消灯(10%)
好みの入力量を選択したら,[WALK]ボタンから指を離し,最後にASSIGNスイッチを[OFF],LS/DPスイッチを標準の奥側に戻せば設定完了だ。
まず,水平方向(X軸)の感度を調整したい場合は,[SNIPE]キーではなく,その右にある黒抜き&上向き三角形のキーを押しながら,D-Padの上下で調整する。垂直方向(Y軸)の感度を調整するときは[SNIPE]キーを押しながらD-Pad操作だ。
LEDインジケータに表示される感度のカラーパターンは[WALK]ボタンと基本的に同じで,異なるのはパーセンテージだけだ。具体的には消灯(10%)
むしろ非PCゲーマー向け? PCゲーマーからすると違和感が最後まで拭えない
ゲームで使う前に,キースイッチの話を済ませておくと,キーの押下感は「ザ・メンブレン」といったところで,微妙に柔らかく,かつ安っぽい。決して「使い心地が悪い」わけではないのだが,最近はゲーマー向けキーボードだけでなくキーパッドでも操作感を重視したものが出てきており,そういった製品と比較すると,一段落ちるとはいえるだろう。
では,どれくらいのアドバンテージが得られるのか。実際にFPSやTPSで使ってみたわけだが,結論からいえば,「PCと同じように操作するのは,不可能とまでは言わないが困難」である。
なので,「PCゲームにちょっと近い操作ができる」程度のイメージを超えて期待してしまうと,この違和感が重くのしかかるだろう。個人的には,「あーもう,PCだったらこんなエイムミス,絶対しないのに!」と,何かを叩きたい気持ちになった。
もちろん,その違和感をなんとかするための[WALK]ボタンと[SNIPE]キーであり,ここを細かく調整すれば,マウス操作の“出が遅い”問題以外は,ある程度解決できる。ただ,ゲームごとに,左アナログスティックを用いた移動量や,右アナログスティックの感度は異なるわけで,タイトルごとに毎度毎度細かく設定し直すというのは,設定方法の煩雑さを踏まえるに,正直言って面倒だ。しかも,そこまでやっても,マウス操作時の反応が鈍い問題は解決しない。
まとめると,PCのFPS/TPSプレイヤーが,PCのキーボードとマウスの操作性を求めてTAC4を買うべきではない。一方,これまでゲームパッドしか使ったことがないなら,試すことで,新たな地平が開けるかもしれない。PCゲームへのとっかかりになる可能性もあるだろう。TAC4というのは,そういうデバイスである。
筆者は,ゲーマー向け入力デバイスというものは,デバイス側でゲーマーの好みに合わせてくれるという点で,通常の入力デバイスとは決定的に異なる存在であると考えている。しかし,少なくともPCゲーマーから見たTAC4は,「ゲーマーがデバイス側に合わせる」必要のあるデバイスだ。いま述べたとおり,非PCゲーマーからは異なる意見が出てくる可能性があると思うが,個人的には,ゲームとTAC4に“引っ張られる”印象が強い。PCゲーマーが期待するほどには,TAC4はこちらに合わせてくれないのだ。
PCゲーマーの立場から言わせてもらうと,「国内でハードウェアチートと呼ばれないため最善を尽くした」というのはよく分かるが,本末転倒ではないかと思う。
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※2016年2月13日再入荷予定
HORIのTAC4製品情報ページ
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