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「あんぷらぐど☆げーまーず」第5回:出目を操る快感がやみつきになるダイスゲーム「王への請願」
アナログゲーマーにとって最大の敵は,相手プレイヤーでも自分自身でもなく,もしかするとダイス(サイコロ)かもしれない。その出目のままならなさときたら,見えない誰かがこっそり目を変えてるんじゃないかと疑いたくなるほど。なんでピンゾロ以外なら何でもいいってときに限って,ピンゾロが出るんですかねぇ……。
そんなこんなで鬱憤がたまっているプレイヤーも,今回紹介する「王への請願」をプレイすれば少しはすっきりするかもしれない。2006年にTom Lehmann(トム・レーマン)氏が発表し,このたびcosaicから日本語版が発売された本作では,ダイスの出目を思うがままに操る快感が味わえる。「自分,ダイス運悪いし……」という人にこそプレイしてほしい一作だ。
cosaic「王への請願」紹介ページ
臣下を味方につけ,国王に近づこう
プレイヤーの目的は,国王への請願を果たし,自らの望みを叶えてもらうこと。そのためには,王に届くだけの十分な発言力が必要となる。発言力を決めるのは,各プレイヤーに3個ずつ与えられるダイスだ。
自分の手番になったら,プレイヤーはこの3個のダイスを振り,出た目の中から少なくとも1個を確定させる(2個以上確定させてもかまわない)。確定させなかったダイスがある場合はそれを振り直すことができ,そこでも最低1個を確定させれば,残る未確定のダイスの振り直しを続けることができる。これを繰り返し,すべての目を確定させると手番は終了。確定したダイスの目が発言力となる仕組みだ。
しかし,王に請願するための条件は「7個のダイスの目を揃えること」。ゲーム開始時点では,そもそもダイスが3個しかないので,どう転んでも条件を満たすことはできない。そこで必要なのが,王の臣下に働きかけ,宮廷での発言力を強めていくことだ。
ゲームの盤面には,国王に加えて「司教」「騎士」「狩人」といったさまざまなカードが並べられている。それぞれのカードには獲得条件があり,確定させたダイス目がそれを満たしていれば,1ターンに1枚自分のものにできる。カードはそれぞれ異なる能力を持っており,ダイスを増やしたり,ダイス目を操作したりできるようになる。
たとえばダイス2個がゾロ目になったときに手に入る「農夫」があれば,振れるダイスの数が1個増える。出目の合計が15以上のときに手に入れられる「職人」なら,振ったダイスとは別に,出目が1のダイスを新たに加えられる(加えたダイスはそのまま1として確定させてもいいし,未確定のダイスとして振り直してもいい)。この2枚を獲得すれば,合わせてダイスを5個まで振れるようになるというわけだ。
ほかにも「メイド」のカードがあれば,ダイス1個の出目を1〜3増やせるし,「哲学者」なら,ダイスひとつの出目を減らした分だけ,ほかのダイスの目を増やせる(たとえば,3と1のダイスを2個の2に変更できる)。このようにしてカードでダイスを増やし,出た目を変化させ,より強力なカードを獲得し,どんどん自分の発言力を高めていくのだ。すべては,王への請願を果たすために……。
カードの能力を操り,ダイスを味方につけろ
このゲーム最大の魅力は,なんといっても大量のダイスの目を自在に操る楽しさだ。
カードの獲得条件の中には,「ダイス6個をゾロ目にする」とか「3個のゾロ目を2組作る」といった,一見「できるわけがない」と思うようなものがある。だがゲームが進み,手元のカードが充実してくると,それが決して難しくないことが分かってくるはずだ。
たとえば出目が“1,2,2,3,4,6”のようにバラバラでも,手元に「天文学者」「貴婦人」「錬金術師」のカードがあれば,
- 4の目を確定させる[1,2,2,3,4,6]
- 貴婦人(任意の個数のダイス目を+1する)の効果で“2,2,3”を“3,3,4”に変える[1,3,3,4,4,6]
- 錬金術師(出目の合計数を変えずに,ダイス3個の出目を変更できる)の効果で,(2)でできた“3,3,6”を“4,4,4”に変える[1,4,4,4,4,4]
- 天文学者(ダイス1個の出目を,すでに確定したダイスと同じに変化させる)の効果で,残った1を4に変化させる[4,4,4,4,4,4]
といった感じで,ダイスを一切振り直すことなく4を6個揃えられるのだ。ままならないはずの出目を,狙い通りに揃える気持ちよさは,大げさにたとえるなら,運を操る神になったかのようだ。
もちろん,いつもうまくいくとは限らない。カードを駆使してもどうにもならないほどに,ダイスの目がふるわないこともあるし,各カードの枚数には限りがあるので,欲しいと思っていたカードを先に取られてしまうこともある。その時の手番でどのカードを獲得すれば,以降のプレイをより有利に進められるか,プレイヤーは常に出目と相談しつつ考えることになり,それがまた,悩ましくも面白い。
そうやってゲームを進めていくと,ついにダイスの目を7個そろえ,国王のカードを獲得するプレイヤーが現れる。だが,ゲームはここで終わりではない。勝者の座を賭けて,各プレイヤーが,どれだけ多くのゾロ目を出せるかという最後の一発勝負に挑むことになるのだ。
目を揃えたダイスの個数が同じ場合は,そのダイス目が大きいほうが勝者となる。国王を獲得したプレイヤーは手番が最後になり,ほかのプレイヤーの結果を確認してから挑めるうえ,ダイスを1個好きな目で加えられる「王妃」が手に入るため,この最後の勝負ではかなり有利ではあるが,ダイス目がふるわなければ敗北も十分にあり得る。最後まで緊迫した勝負が味わえるはずだ。
ほどよく頭を使うパーティゲームとしてオススメ
カードの種類が多く,人によっては最初は混乱するかもしれないが,一度通しでプレイすれば把握できるはず。プレイ時間も1時間はかからない程度と,ほどほどにお手軽なので,シンプルなパーティーゲームではちょっと物足りない……というときにいかがだろうか。
なお,オリジナル版を作ったトム・レーマン氏は,ほかにも「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」や,前回も紹介した「パンデミック」の拡張セットといった数々の名作ゲームを手がけている。これらも日本語版が発売されているので,興味がある人はぜひ手に取ってみてほしい。
cosaic「王への請願」紹介ページ
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王への請願
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