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「あんさんぶるスターズ!」のユニットを知るにはこの過去イベがおすすめ! 第3回:Knights,Ra*bits,MaM編

 Happy Elementsがサービス中のアイドル育成プロデュースゲーム「あんさんぶるスターズ!」iOS / Android / PC)。各ユニットの歴史や魅力を知るために,膨大なストーリーの中から筆者がオススメしたい過去イベを紹介する企画記事第3回では,Knights,Ra*bits,MaMの3ユニットについてお送りします。

 記事内では,ストーリーを時系列順に整理しながら語っていきますが,まだ「あんスタ!」のストーリーを読んだことがない人や途中の人は,できるだけ公開順に読むことをおすすめします。また紹介するおすすめストーリーの数は,ユニットのイベント登場数などによって異なりますのでご了承ください。

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※読みたいユニットのユニット名をクリックorタップしよう!

 なお,考察の内容はあくまで筆者の見解であり絶対的な正解ではありません。また,ストーリーの核心的ネタバレには極力触れていませんが,未読の方はご注意ください。

「あんさんぶるスターズ!」公式サイト



おすすめストーリー〜Knights編〜


  • メインストーリー第一部
  • ジャッジ!白と黒のデュエル(2015年6月)
  • 反逆!王の騎行(2015年9月)
  • 対決!華麗なる怪盗VS探偵団(2015年12月)
  • リメンバー 真夏の夜の夢(2016年7月)
  • 光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル(2016年11月)
  • 追憶*モノクロのチェックメイト(2017年5月)
  • 初興行★祝宴のフォーチューンライブ(2018年1月)
  • 噪音◆渦巻くホラーナイトハロウィン(2018年10月)
  • レクイエム*誓いの剣と返礼祭(2019年2月)
  • (※公開順)



■Knights[ナイツ]
〜優美かつ華麗な騎士道ユニット!〜


 洗練されたパフォーマンスで,生徒会勢力ではないユニットの中では強豪の1つと言われていたユニット。フルメンバーは5人だが,リーダーのレオが不登校だった時期があり,メインストーリー第一部で解散危機にあったTrickstarの対戦相手として,リーダーを除く4人のメンバーが登場した。その後しばらくしてレオが復活し,5人のKnightsとして学院に存在感を示す。高いパフォーマンスのステージはもちろん,ファンサービスが手厚いことでも有名。

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■Knights以前〜黎明期


 夢ノ咲学院の中で流星隊に次いで2番めに歴史の古いユニット,それがKnightsです。その歴史を紐解くうえでも,かつての夢ノ咲学院に何があったのかを知る意味でも,「追憶*モノクロのチェックメイト」は非常に重要なストーリーとなっています。
 Knightsは当初“チェス”というユニット名で活動しており,その後は“オセロ”“バックギャモン”と変化していきました。「チェックメイト」では,リーダーに指名された月永レオがユニット名を“チェス”に戻したところからの物語を追うことができます。
 その後レオと泉は自分たちを “Knights”と名付け,ドリフェス【チェックメイト】で1年生の鳴上 嵐と朔間凛月,この頃すでにfineを結成していた天祥院英智と青葉つむぎ,さらにレオと親しい三毛縞 斑も加えたメンバーでステージに上がりました。Knightsは長い歴史を紡いできたかつてのチェスからの本流を継ぐユニットとなりますが,ここまでの戦いでひどく疲弊していたレオは表舞台に出てくることができなくなり,学院から姿を消してしまいます

「追憶*モノクロのチェックメイト」より
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 その後のKnightsには泉,凛月,嵐に新入生の朱桜 司が加わり,リーダー不在の4人で活動をすることになりました。その春に起きたのが,Trickstarによる革命です。メインストーリー第一部で語られるこの一連のストーリーでは,Knightsはいわゆる“ヒール”側,物語の主人公と敵対するポジションとしての登場でした。なお【DDD】での監禁事件については,前述の「チェックメイト」で,泉が直前の心情を明かしています。

 リーダー不在のKnightsの活動は,ここから秋ごろまで続きました。この時期のストーリーとしては,【DDD】で対決したTrickstarに司が決闘を申し込む「ジャッジ!白と黒のデュエル」,同じくTrickstarと地方でライブを行う「リメンバー 真夏の夜の夢」などがあります。また,上記のリストには入れていませんが,4人がお菓子作りに奮闘する「スカウト!スイーツパティシエ」(2015年5月公開),春の学院祭でRa*bitsとバレエをモチーフにしたライブを行う「跳躍*湖上のPrincipal」(2016年5月公開)なども。この時期のKnightsは【DDD】で起こしてしまった事件からイメージアップを図るためにボランティアなども行っており,リーダーがいなくても,なんとか4人で頑張っていこう……という結束を固めつつあったように感じられます。

「メインストーリー第一部」より
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■Knightsに訪れた2つの転機と変化


 そんな4人の前に,長らく不在だったレオが突如現れます。それをきっかけにKnightsに大きな転機が訪れるわけですが,その1つは「あんスタ!」きっての名イベント,「ジャッジメント」こと「反逆!王の騎行」。そしてもう1つは,「噪音◆渦巻くホラーナイトハロウィン」だと筆者は考えています。

 「ジャッジメント」でレオは,彼いわく「腑抜けてしまった」今のKnightsに,内部粛清のためのデュエル【ジャッジメント】を開催することを宣言します。そして,自らがメンバーを集めた臨時ユニット“ナイトキラーズ”(騎士殺し)と対決し,Knightsが負ければ解散するようにとも告げるのです。このストーリーは戦いを挑んだレオ側ではなく,司を王としたKnightsの4人それぞれの心情や行動にスポットが当てられました。このストーリーがKnightsという唯一無二のユニットの価値や魅力を確固たるものにしたことに,異論を唱える人はおそらくいないでしょう。

「反逆!王の騎行」より
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 とはいえ【ジャッジメント】後のKnightsは,「それでは明日からユニット5人で頑張りましょう!」とはなりませんでした。なぜなら,かつての抗争でレオが受けたダメージはとても深いもので,すぐにはステージに本格復帰できなかったからです。
 そして,「噪音◆渦巻くホラーナイトハロウィン」です。反論を覚悟で言えば,筆者はこのイベントをある意味で“喧嘩祭”(「決別!思い出と喧嘩祭」)の図式に近いものなのではないかと考えています。「ホラーナイトハロウィン」では非常に強い言葉が使われている場面もあり,動揺した人も少なくないかもしれません(筆者もそうでした)。しかし,こじれてしまった関係や険悪になった空気にケリをつけるべく「だったらライブで勝負をつけようぜ!」と正々堂々ステージでぶつかりあった姿に,彼らが上辺だけでなく骨の髄まで“アイドル”なのだと強く胸を打たれたことも事実です。言葉は相手を傷つける武器にもなるけれど,愛を伝え,心と心をつなぐ橋にもなります。このときのできごとをきっかけにお互いを理解し合えたアイドルは何人かいましたが,なかでもKnightsの原点であるレオと泉はようやく本当の意味で向き合うことができ,そういう意味で非常に重要なストーリーだと感じます。

「噪音◆渦巻くホラーナイトハロウィン」より
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 そして強い絆を得たKnightsはますます成長していきます。クリスマス時期のお話「光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル」では,自分たちが背中を預けられる仲間のためならどんなに重く,苦しいことでも受け止め合おうと,揺るぎなくつながった絆を感じることができます。そして年明けの「初興行★祝宴のフォーチューンライブ」では,唯一の1年生である司にスポットが当てられ,これからのKnightsを予感させるストーリーが展開されました。

「光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル」より
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 最後に紹介するのは「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」です。3年生を含むユニットの大きな課題である,「3年生の卒業後,ユニットはどうなっていくのか?」が描かれていますが,この物語では戦いを繰り返してきたユニットらしく【デュエル】【ジャッジメント】に続く第3の決闘,【レクイエム】が展開されます。卒業したらアイドルを辞めると宣言したレオの真意とその後とは,そしてKnightsの次期リーダーたる“王”には誰がふさわしいのか――。さまざまな課題,メンバー1人1人の内面やこれからについてしっかりとスポットを当て,じっくりと語られていきます。長い歴史のあるユニットらしく大変ボリュームのあるストーリーですが,彼らの歩みを振り返りながら,1つ1つの言葉の意味や表情を味わいたい一作です。

「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」より
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■キャラクター別おすすめストーリー


■月永レオ

 多くの方が知るとおり,月永レオは「あんスタ!」における初めての“新キャラクター”でした。リリース時から実装され,人気を集めていたユニットに新たに加わるとあって,当時は「Knightsは新キャラが加わったらどうなるのか?」と話題になった記憶があります。しかし,登場後すぐに公開された「ジャッジメント」のインパクトは相当なもので,あっという間にレオ個人もKnightsもすさまじい人気を集めたのでした。

 彼はいわゆる天才肌の人で,常人が理解しにくい行動を取ることが多くあります。しかしそんな彼も,不登校だった頃は傷ついた心を抱え,今とは非常に対照的でした。その頃のストーリーが読めるものには,「お祭り男の帰港」(三毛縞 斑キャラストーリー/春)や「スカウト!コンチェルト」(2017年7月公開)があります。いずれも親友である斑が絡んでいる物語で,彼が守ろうとするナイーブな時期のレオの姿を見られます。

 そして,レオが学院に復活後,かつ【ジャッジメント】を開催する前の彼を見られるのが「十五夜*玉兎跳ねるムーンライト」(2018年8月公開),「箱の中の楽園」(月永レオキャラストーリー/夏)などです。また,不思議な感性でつながりあった宙との会話が夏の美しさに満ちた「スカウト!ブルーフィラメント」(2018年9月公開)もこの時期の物語としておすすめしておきます。
 【ジャッジメント】後は,彼にとっての(おそらく)癒やしの場所である弓道部でのひとときが描かれた「スカウト!ロビンフッド」(2016年8月公開)や,アドニスとみか,つむぎといった“繊細で優しいキャラ”が勢揃いした「スカウト!テディベア」(2017年11月公開),一夜限りのナイトキラーズが復活した「リバイバル☆一夢のダイナーライブ」(2019年1月公開)など多くの物語を経て,ときに穏やかに,ときに賑やかな集団のなかでリハビリし,次第に元気を取り戻していったように感じます。

「スカウト!ブルーフィラメント」より
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 レオは心の中が描かれることが決して多くはないので,捉え方の難しい人だと思います。けれど彼のセリフの中には,「スタフェス」における「他人に深入りするということは,戦場に足を踏み入れること」という印象的な言葉があります。この言葉からは,レオがもともと戦いを好まない人でありながら仲間には幾度となく戦いを挑むのは,非常に重要なことだと感じられます。なぜならそれだけ仲間を信じる心が強いということであり,ぶつかりあい,すべてを受け止める覚悟ができているのだろうと思えるからです。


■瀬名 泉

 まだストーリーを読み込んでいない人にとっては,「ああ,あの“ゆうくん”がめちゃくちゃ大好きな……」という印象(かもしれない)の泉。しかし彼の登場するストーリーを読めば読むほど,持ち前の愛情深さや内面の複雑さに,気づけば沼落ちしてしまったという人も多いのではないでしょうか。

 というわけで,彼が登場するストーリーは突飛な言動がコミカルに描かれたものと,(おそらく本人は外に出そうとはしていない)優しさがにじみ出てしまっているものと,振り幅が大きいように思います。ユニットメンバー以外で彼と絡む人物としては,やはり“ゆうくん”ことTrickstarの遊木 真が最多となるでしょう。ユニットの項で挙げたものにも多く絡んでいますが,そのほかでコミカルな泉が見られるものとしては「対抗!夢ノ咲学院体育祭2」(2016年9月公開)がおすすめです。
 一方,モデルとしての彼のストイックさが光る「スカウト!ランウェイ」(2017年5月公開),真や司たちへの“いいお兄ちゃん”ぶりが見られる「スカウト!胡蝶の夢」(2018年12月公開),真との関係性の変化が感じられる「奇跡☆決勝戦のウインターライブ」(2017年12月公開)あたりも違った一面が見られるのでぜひ。泉が真を追いかけて入部したテニス部の様子が描かれたストーリーも名作が多く,こちらは「ひねくれてぴったり」(姫宮桃李キャラストーリー/春)や「スカウト!お医者さん」(2015年10月公開)をチェックしておきたいところです。

 また彼は,“年下にはとても甘い”ということがのちに明らかとなりますが,そのなかでもお気に入りとなった葵 ゆうたとの関係性が描かれるのは「スカウト!夜の怪談」(2015年7月公開)や「悠々自縛」(瀬名 泉キャラストーリー/夏)など。とはいえクラスメイトとも仲良くやっているようで,その様子は「スカウト!荒野のガンマン」(2016年6月公開)で見られます。

 最初の頃は他人を寄せ付けない鎧を身に着けているような振る舞いをしていた彼も,のちに公開されたストーリーでは「自分の愛情は重い」と心情を明かしていました。彼は意外と不器用で,これまで綺麗に人とお別れをした経験がないことを想像できますが,そんな彼を周囲のみんなが溺れさせるくらいの愛で包んだのは,やはり「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」ではないかと思います。幸せになるべき人が見せた嬉し泣きには,こちらも思わずつられ泣きをしてしまいました。

「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」より
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■鳴上 嵐

 彼について考えていて気づいたのは,私たちの知る限りでは,この人は周囲との人間関係でトラブルを起こしていないということです。一方的に苦手だと言われることはあっても,彼が誰かを避けたり嫌ったりすることは決してありません。自分では「なんでもほどほど」なんて言うけれど,本当に愛に溢れた美しい人だと思います。

 そんな彼がいつも穏やかに楽しく過ごしている陸上部のストーリーが楽しめるのは,「嵐に揺れて」(鳴上 嵐キャラストーリー/春)や「花吹雪*皐月の藤紫」(2017年4月公開)など。クラスメイトの“頼れるお姉ちゃん”ぶりが堪能できるものなら「満喫♪秋の修学旅行」(2015年11月公開)も非常にキュートです。

 また,あとから登場した“新キャラクター”ながら,Valkyrieの影片みかとはその仲の良さがかなりの数のストーリーで描かれています。今とは違う1年前の姿の嵐も見られる「追憶*マリオネットの糸の先」(2016年3月公開)や,現在軸では「夏空*駆けるシュヴァルライブ」(2018年8月公開),「リアクト★マジカルハロウィン」(2016年10月公開),「モーメント*未来へ進む返礼祭」(2018年2月公開)などで,お互いにかけがえのない親友であることが綴られており,優しい2人がお互いを思う姿が心に染み入ります。

「夏空*駆けるシュヴァルライブ」より
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 先ほど彼を「愛に溢れた人」と書きましたが,それはおそらく,かつて深く傷ついた経験があり,心の痛みをよく知っているからなのだと思います。そのあたりの内面はユニットのおすすめで挙げた「光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル」で読めますが,彼のジェンダーについて少しだけ突っ込んだ話がされた「スカウト!ケダモノ」(2018年3月公開)も,ぜひ読んでおくべき物語かと思います。

 自ら「求められた姿を完璧に演じる」と口にする彼は,根っからのモデルでありアイドルだと思うのですが,ある意味でそれは常に“仮面をつけている”ようなもので,個人的には(レオではありませんが)どんな彼も全部受け止めるから,もっと重い部分を見せてくれてもいいのにとも思います。けれど彼自身がなかなかそれをしようとしないのは,ひょっとしたら自分の中の汚いものを見せたくないということではなく,それを見せることで相手に負担をかけたくない優しさと愛の表われなのかもしれません。


■朱桜 司

 以前から筆者は,「夢ノ咲学院の1年生は,ゼロからスタートしてあらゆるものを受け取っていく可能性の物語。2年生は,受け取ったものを見つめ,手に入れたいものを目指す成長の物語。3年生は,これまでに得た大切なものを手渡していく愛の物語」だと考えていました。「ジャッジメント」をあらためて読み返すと,1年生である司は,Knightsにとってまさに可能性であり,未来であり,光そのものであることが証明されているように感じます。

 彼は由緒ある家に生まれ,その名に誇りを持って生きてきました。そんな彼は,同じく御曹司であるfineの姫宮桃李となにかとぶつかり合うことが多いのですが,そのやりとりのほとんどはコミカルでほほえましいものです。「貴族と従者」(朱桜 司キャラストーリー/春)や「スカウト!冬の初詣」(2015年12月公開)などはその筆頭ですが,「スカウト!高貴なる遊戯」(2017年3月公開)では,夢ノ咲学院を卒業する英智も交え,御曹司でなければできない彼らの覚悟のようなものも見られ,ぜひ読んでいただきたいストーリーとなっています。

 年相応のかわいらしさやクラスメイトとの賑やかな様子が楽しめるものでは,「スカウト!フルーツパーラー」(2016年9月公開)や「B組のBは」(姫宮桃李キャラストーリー/夏),「弾む!心と花咲くモールライブ」(2016年3月公開)あたりがおすすめです。また,彼の趣味であるカードゲームで晃牙と対決する「スカウト!カードバトラー」(2017年4月公開)も良いですし,「スカウト!胡蝶の夢」では,Knightsに加入した当初の様子や,年下らしさと責任感の間で揺れる姿を見られます。とはいえやるときはやる姿が見たい! という場合は,Knightsらしくステージではバッチリ決めてくれる「メルティ♥甘くほどけるショコラフェス」(2017年2月公開)をぜひ。

「スカウト!フルーツパーラー」より
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 なお,彼がアイドルになった理由とKnightsとの出会いは,ユニットのおすすめで挙げた「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」で詳しく語られています。彼は出自に対して不満も疑問も持っていませんが,この物語からは「人から与えられるものでなく,自分で見つけた“人生”を手に入れたかった」のではないか,ということも伝わってきます。彼はKnightsに出会えたからこそ,痛みも愛も責任も,己にふりかかるすべてを背負って歩むことができるのだろうと思うのです。


■朔間凛月

 凛月はこの学院で1年留年しているため現在軸では2年生ですが,年齢は3年生と同じです。そのせいというわけでもないでしょうが,周囲に比べてどこか大人びており,独特の空気感を持っているように感じられます。まるで1人だけ違う時間を生きているというか,彼のまわりだけ時間がゆっくりと流れているような。

 そんな彼にとってKnights以外でとくに重要なつながりは,幼なじみであるTrickstarの衣更真緒と,紅茶部と,兄であるUN

DEADの朔間 零でしょう。真緒との関係性は,1年をとおして少しずつ変化していくのですが,およそ1年前の「追憶*春待ち桜と出会いの夜」(2017年3月公開),現在軸の最初の春の「宵の宴♪バンドアンサンブル」(2016年4月公開)あたりは,子供から成長して少しだけお互いの関係に“ズレ”を感じ始めている様子がうかがえます。ここからはどことなく不穏な空気が続きますが,前述の「ホラーナイトハロウィン」ではこれ以上ない和解のシーンが見られ,カタルシスが得られますのでぜひ。
 紅茶部としては,ある日のお茶会の賑やかな様子を描いた「スカウト!ティーパーティー」(2016年1月公開)や,部の成り立ちを見ることができる「スカウト!アフタヌーン」(2018年10月公開)をとくにおすすめしておきます。

 零のところで書いた内容とかぶりますが,零との関係性も1年をとおして静かに,しかし大きく変化していきました。その様子はいくつものストーリーで見られますが,とくにこの兄弟について深く掘り下げられた「スカウト!悪魔の館」(2018年5月公開),「開演 ダークナイトハロウィン」(2015年10月公開),「スカウト!初夢物語(前半)」(2018年12月公開),「招福*鬼と兄弟の節分祭」(2017年1月公開)を時系列順に読んでいくと,その変化がさらに分かりやすいのではないかと思います。締めくくりはもちろん,「コーラス★始まりのオペレッタ」(2019年4月公開)で。

「コーラス★始まりのオペレッタ」より
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 凛月はユニット活動でも自分から積極的に動くタイプではありませんが,思えば,決して仲間のそばを自分から離れようとはしなかったということにも気づきます。ただ静かにそばにいて,ずっとみんなのことを見つめていた凛月だからこそ,仲間たちの変化や心の動きに気づける。そうしてさりげなく手を差し伸べ,相手に寄り添ってあげられる人なんだと感じます。


■大嫌いで大好きな仲間たちへ


 これまでに公開されているたくさんの物語を読むと,Knightsというユニットの軌跡はまさに“戦い”の歴史だったのだと思います。Knightsという名前になるまでもそうですし,今のメンバーになってからも,【デュエル】ではライバルと戦い,【ジャッジメント】では仲間内で戦い,【レクイエム】では王を弾劾し,革命するために戦っていました。
 傷を受けない,血が流れない戦いはありません。けれど幾度も傷を受けるたび,それは“記憶”となって彼らの心に刻まれていったようにも感じます。それは,この世界には自分1人ではなく戦った相手が存在していた,共に剣を振るった仲間がたしかにいたという証でもあるわけです。

 言い方が難しいのですが,Knightsは長い歴史を持つがゆえに自分たち自身が“過去”に囚われすぎていたようにも筆者は感じます。そうしたつらい記憶を忘れることができず,傷を受けた者も,それを見ていた者もその痛みを抱えて生きていたのではないかと。そこに登場した唯一の1年生である司が皆を鼓舞し,希望を見つけた騎士たちは再び立ち上がりました。そうして5人で過ごしていくうちに,彼らはお互いがかけがえのない存在になっていき,未来に向けて力強く進み始める力を得たのだろうと感じます。

 また筆者の中には,Knightsのメンバーには“内面に小さな子供の自分が住んでいる人”という共通したイメージがあります。あるいは,強固な鎧を脱ぎ捨てたその下には無防備で無垢な自分がいるというような。そしてその姿は,彼らが本当に心を許している人にしか見せないのだろうと思います(余談ですが,このあたりは「Knightsは日常とステージのオンオフがきっちりしている」ということに通じるのかもしれません)。
 誰だって自分以外に泥や血や涙にまみれた格好悪いところは見せたくないものだけれど,それを見せても,相手にそういう部分があると分かっても受け入れるのは,揺るぎない信頼と愛があることにほかなりません。最初の頃のKnightsは「利害の一致で組んでいる,個人プレイが得意なユニット」といったイメージでしたが,仲間同士の結束力という意味では,今となっては決して他のユニットにも引けを取らないのです。

 Knightsに唯一無二の価値を与える天才のレオ。はじまりからずっと,どんなに傷ついてもKnightsを守り続けていた泉。仲間に寄り添い,絶え間なくあたたかな愛を注ぐ嵐。そばを離れることなく,陰ながら皆をそっと支える凛月。彼らを癒やし,共に成長しながら進む道を光で照らす司。彼らはもう過去を振り返らず,この先のまだ見ぬ未来に向かって駆け抜けていくのでしょう。血と涙を養分にして,戦場の跡には美しい花々が咲き乱れる。そうしていつか,彼らが輝く聖杯を掴む日が来るのかもしれません。

「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」より
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おすすめストーリー〜Ra*bits編〜


  • メインストーリー第一部
  • 挑戦!願いの七夕祭(2015年7月)
  • 対決!華麗なる怪盗VS探偵団(2015年12月)
  • 追憶*マリオネットの糸の先(2016年3月)
  • スカウト!BADBOYS(2016年11月)
  • お化けがいっぱい☆スイートハロウィン(2017年10月)
  • モーメント*未来へ進む返礼祭(2018年2月)
  • 十五夜*玉兎跳ねるムーンライト(2018年8月)
  • キャロル*白雪と聖夜のスターライトフェスティバル(2018年11月)
  • エール*広がるハッピースプリング!(2019年4月)
  • (※公開順)



■Ra*bits[ラビッツ]
〜ほわほわ可愛いが売りの初心者ユニット!〜


 1年生3人とリーダーの3年生で結成された,できたてほやほやのユニット。リーダーの仁兎なずなは,生徒会の勢力が及んでいない放送委員会の委員長でもある。メインストーリー第一部で彼らが出場したS2ステージでの悲劇は,この“革命”の起爆剤の1つともいえる事件だった。だがこれらの経験が,その後の彼らの結束や成長につながっていったことも確かだろう。

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■Ra*bitsの成り立ち


 1年生3人に3年生1人というちょっと珍しい構成のRa*bitsは,ほかにはない流れで結成されたユニットです。現在ユニットのリーダーを務める3年生の仁兎なずなは,かつて夢ノ咲学院で帝王として君臨していた“Valkyrie”に籍をおいていました。しかしなずなはある事件をきっかけにValkyrieを脱退することになり,ちょうどそのとき出会った1年生の真白友也と紫之 創,天満 光の3人で結成されたユニットを導き,共に活動する仲間として彼らに加わったのです。そのいきさつは,「追憶*マリオネットの糸の先」で読むことができます。

 強豪ユニットの一員だったとはいえ,なずなが育てるのは生まれたばかりで右も左も分からぬ子うさぎたち。けれど何にも染まっていない彼らには,言ってみれば伸びしろしかありません。彼らはお互いに助け合い,励まし合いながら活動をスタートさせました。しかしメインストーリー第一部で描かれた最初の【S2】は,Ra*bitsと紅月との対戦ではあったものの,当時の学院の環境のせいで戦いにすらなりませんでした。そのことはTrickstarの“革命”のきっかけの1つにはなりましたが,彼らは革命の成功に満足して終わらせず,このときの悔しさをバネに成長していきます。【DDD】後のそんなストーリーの1つが「エール*広がるハッピースプリング!」です。現状に甘んじず,ただひたすら上を目指して頑張ろうという気概に溢れ,爽やかな空気が流れています。

「エール*広がるハッピースプリング!」より
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■うさぎたちの成長〜未来への花束


 そんななか,1年生それぞれに成長のきっかけが訪れます。まずは,光が自分の才能と夢の間で揺れ動く姿が描かれた「挑戦!願いの七夕祭」と,これからのユニットの方向性や,そのなかでの自分の存在意義に思い悩んだ「スカウト!BADBOYS」です。光は自由奔放な行動をとって周りを振り回す場面も多いのですが,本音ではRa*bitsのみんなを心から大切に思っているし,いつも仲間のことを考えているのが強く伝わってきました。

「挑戦!願いの七夕祭」より
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 その後,それまではどちらかというと“良い子”なポジションだった創と友也にそれぞれ転機が訪れるのですが,それを描いたのが「お化けがいっぱい☆スイートハロウィン」,そして「対決!華麗なる怪盗VS探偵団」だと筆者は考えます。「スイートハロウィン」では,中学の頃からずっと仲良しだった創と友也が,アイドルとして目指す方向性の食い違いをきっかけに,お互いのあり方を再構築します。個人的には,創の「アイドルとしての自分が決めた1つの覚悟」に,ある意味で非常に“男の子”らしい潔さを感じました。「怪盗VS探偵団」では,ずっと“普通”と言われ続けていた友也が演劇部の先輩である日々樹 渉とのやりとりをとおして,自分が目指すべきものへの想いを新たにします。

「対決!華麗なる怪盗VS探偵団」より
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 紹介の順番が時系列的に前後しますが,「十五夜*玉兎跳ねるムーンライト」では,いつものように天真爛漫に振る舞う光を見て,日頃から光を注意してばかりいた友也が「今まで自分は光の才能を押さえつけてきたのでは?」と考えます。筆者が思うに1年生の3人は秋から冬にかけて,種類は違えど全員が似た悩みを抱えていたように思います。彼らはそれぞれの悩みによって「アイドルとして,あるいは集団のなかの1人として」のアイデンティティの確立と,「他人のそれをどう認めていくか」が課題として浮き彫りになったように見えます。平たく言えば,これこそが彼らの“成長”の1つなのかもしれません。
 年末の「キャロル*白雪と聖夜のスターライトフェスティバル」では,ある理由からなずなが一瞬だけValkyrieの元へと戻ります。それを送り出した3人の様子はそれぞれ異なっていて,成長した部分と成長しようとしている部分,そのどちらも感じられて胸が熱くなりました。

「キャロル*白雪と聖夜のスターライトフェスティバル」より
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 そしてラストはもちろん,3年生卒業直前の「モーメント*未来へ進む返礼祭」です。これについてはもう何も補足することはありません。か弱かった彼らは懸命に努力し,本当に強く大きく成長しました。本来であれば,この記事でおすすめするストーリーは公開順に読むことを推奨していますが,「返礼祭」に関しては最後に(あるいは一周してからもう一度ラストに)読んでいただきたいです。送り出されるなずな,なずなを送り出す友也,創,光,どのアイドルの胸のうちを想像しても,このうえなく深い感動を味わえるのではないかと思います。

「モーメント*未来へ進む返礼祭」より
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■キャラクター別おすすめストーリー


■仁兎なずな

 前述のとおり,仁兎なずなは“Valkyrie”“Ra*bits”の2つのユニットに籍をおいたことがあります。さらに臨時ユニット“ナイトキラーズ”も含めれば3つとなり,こうしたアイドルはほかにもいるといえばいるのですが,彼ほど“ユニットごとに見せる顔がまったく異なる人”はいないのではないかと思います。

 Valkyrie時代後半のなずなは体調的にもつらい時期ではありましたが,その当時の彼を「追憶*マリオネットの糸の先」以外で見られるものとしては,斎宮 宗とフルーツパーラーを訪れる「スカウト!十二支(前編)」(2017年12月公開)や,ある日の屋上で紅郎と出会う「Folk Song」(鬼龍紅郎キャラストーリー/前年度の春)があります。
 そして月永レオが組んだ臨時ユニット・ナイトキラーズについて語られるのは,「反逆!王の騎行」。この話は「スカウト!BADBOYS」にもつながるのでぜひ読んでおきたいところです。なお,クリスマスライブの様子が描かれる「彩光!瞬きの星夜祭」(2015年11月公開)も,実は臨時ユニットの話だったりします。

「彩光!瞬きの星夜祭」より
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 なずなにはもう1つ,ほかの人とは違うポイントがあります。それは自分が所属しているすべての集まり(Ra*bits,テニス部,放送委員会)で代表を務めていることです。これは彼自身が「命じられた役割を果たすのが得意」である(つまりは責任感が強い)のと,物事を客観視することに長けているためだと筆者には感じられます。彼はかわいらしい見た目ながら,仕事に関してはいい意味でシビアな面があり,社会に出ても成功するタイプではないでしょうか。

 彼が個性豊かなテニス部の面々と絡むおすすめストーリーは,「スカウト!お医者さん」「姫君のご機嫌」(姫宮桃李キャラストーリー/夏),感動のあまり号泣必至の「レクイエム*誓いの剣と返礼祭」です。放送委員会はメインストーリー第一部から活躍を見せてくれていましたが,ほかには「本日のゲスト」(遊木 真キャラストーリー/春),「スカウト!夢ノ咲青春RADIO♪」(2016年2月公開)などがあります。また彼が良い保護者ぶりを見せる「スカウト!ホリデー」(2015年8月公開)もぜひ。

 創が明かしていましたが,なずなはあの【S2】のつらいステージのときも,ショックを受けていた1年生3人に向かって「泣くのはステージを降りてからにしろ」と言っていたのだそうです。けれど本当は,なずな自身こそ泣きたかっただろうし,涙ではおさまらないくらいに悔しかったはずです。ValkyrieでもRa*bitsでも,彼は周りの大切な仲間のためなら自分の気持ちすら殺せる人だったのかもしれません。だからこそ最後に「モーメント*未来へ進む返礼祭」のステージで彼が涙を見せたことが,余計に胸を打つのだろうと思います。彼が初めてみんなの前で見せた涙が,幸せな涙で本当に良かったと。


■天満 光

 これは筆者がかなり前から言っていることなのですが,光のアイドルとしてのポテンシャルは相当に高く,可能性が未知数だと思っています。彼は生まれついてのアイドル気質というか,アイドルになるべくしてなっている人で,素質もそうですし,ものごとを判断するものさしや発想力が人とはちょっと異なっている天才肌だと感じます。

 彼はユニットおすすめで挙げた「エール*広がるハッピースプリング!」「十五夜*玉兎跳ねるムーンライト」を見ると分かるように,ユニットのために行動を起こしたり自らアイデアを出したりすることが多くあります。一見すると自分の好きなことをひたすら追求する子供っぽい人に見えますが,これらを読むと,自分だけでなく常にユニットのみんなの幸せも考えているところがしっかりと伝わります。なお「ハッピースプリング」および「挑戦!願いの七夕祭」では彼がアイドルになった理由が語られており,応援したくなる気持ちがより強くなるでしょう。なお,彼を知るうえで重要な「スカウト!BADBOYS」については,前日譚として「良い子悪い子普通の子」(真白友也キャラストーリー/春)も必ずおさえておきたいところです。

 そんな愛すべき彼にとっての大好きな場所は,ユニットのほかには陸上部があります。陸上部の面々と絡むものには「花吹雪*皐月の藤紫」「飛脚」(天満 光キャラストーリー/春),「ママと鬼ごっこ」(天満 光キャラストーリー/夏)などがありますが,光の健気さに胸を打たれる個人的なイチ推しは「感謝!ほろ苦ショコラフェス」(2016年1月公開)です。陸上部ものではありませんが,何かとなついているアドニスと遊ぶ様子が微笑ましい「清夏!サマーキャンプ」(2016年7月公開)や「公演!悲喜劇のロミオとジュリエット」(2018年4月公開)もぜひ。

「感謝!ほろ苦ショコラフェス」より
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 光はときどき物事の本質をついた発言をしてこちらをドキッとさせることも多いのですが,思うにその発言はたまたま的を射たわけではなくて,普段は単に“思考に言葉が追いついていないだけ”のような気がします。彼はたくさんの人と出会って毎日成長しているものの,まだ少しだけ,意見や想いを伝える手段を十分に得られていないだけなのではないかと。なので,彼が理想とするものを表現できる技術を得た暁には,私たちを見たことのないワクワクする世界に連れて行ってくれるに違いないと期待しています。


■真白友也

 彼を語るうえで重要なキーワードは“普通”。いやいや友也は普通というか十分かわいくて格好いいのでは……? とも思いますが,突飛な個性やプロフィールの見本市のような夢ノ咲学院では,ごく普通の家庭に育ち,ごく普通にアイドルに憧れ,努力して入学した友也のようなタイプは,“普通”と言っていいのかもしれません。

 とはいえ由緒ある学院のアイドル科に入学できるくらいなので,彼は一般の人よりずっと高い“アイドル力”を持っているのだと思います。けれど周りを見渡せば,見たことのないスキル持ちや,とんでもない美形がいるわけで,それだけで落ち込んだり焦ったりすることも多かったことでしょう。それでも負けずに頑張り,学院生活を楽しんでもいるところは,やっぱり彼は“普通”よりずっとタフで勇敢な人なのだと思います。
 友也が学院生活を楽しんでいる様子が見られるストーリーは多数ありますが,ここではUNDEADの大神晃牙のスパルタ教育を受ける「清夏!サマーキャンプ」,貴重なKnights衣装姿の友也が見られる「メルティ♥甘くほどけるショコラフェス」,プールイベントで友也がナイスプレイを見せた「ショット☆弾けてSplashPool!」(2018年7月公開)あたりを推しておきます。

 ユニットを除けば,彼に大きな影響を与えたのはやはり演劇部の存在でしょう。部長であるfineの日々樹 渉とTrickstarの氷鷹北斗が所属するたった3人の部活ですが,比較的活発に活動しており,その様子はたくさんのストーリーで楽しめます。
 彼らの日常が見られるものでおすすめは「響き愛」(日々樹 渉キャラストーリー/春),「裏返るジョーカー」(日々樹 渉キャラストーリー/夏),「火刑台上のシンデレラ」(真白友也キャラストーリー/夏),そして日常生活で友也がお姫様ロールプレイを頑張った「スカウト!薔薇十字物語」(2016年10月公開)など。公演本番に臨むものでは,友也の試練をコミカルに描いた「なりきれ!灰かぶりの大舞台」(2017年5月公開),入り組んだシナリオ構成に唸る「公演!悲喜劇のロミオとジュリエット」がおすすめです。
 そしてもちろん,演劇部版返礼祭こと「スカウト!透明と仮面」(2019年1月公開)は必須中の必須ストーリーです。“普通”だった友也は,“人間”でありながらあらゆる姿に変身できる天才の日々樹 渉と,“何者でもなかった自分”が夢を叶え,今なお挑戦を続ける氷鷹北斗という2人がいたからこそ,力を得られたのだと思います。白いけれど透明ではない友也は,もうすっかり“普通”の殻を破ったのだなと感じさせてくれました。

「スカウト!透明と仮面」より
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■紫之 創

 メインストーリー第一部39話といえば,Ra*bitsが好きな人にとっては非常につらい展開でした。誰もいないステージで懸命に歌う彼らの姿は涙を誘うものでしたが,ステージに臨む前,創が言った「自分はとろいから,人の何倍も努力しなくてはいけない」というセリフこそが,あの悲しさを余計に増幅させたように思います。

 彼が何かと周りの人や先輩たちに助けられるのは女の子みたいにかわいいからではなくて,そういう健気で努力家なところが皆の気持ちを掴むからかもしれません。そんな一生懸命さが光るストーリーはたくさんありますが,まずはぜひ「創の一歩」(紫之 創キャラストーリー/春)を。そして,「弾む!心と花咲くモールライブ」「アミューズメント☆ネコとウサギのライブパーティ」(2018年6月公開),「夜光*サマーナイトフェスティバル」(2019年7月公開),あとは彼の大好きな明星スバルと絡む「スカウト!サロン・ド・テ」(2017年1月公開)などを挙げておきます。それともう1つ,桃李と仲良くなるきっかけとなった「スカウト!ベストショット」(2016年7月公開)でのメーターを振り切ったキュートさも忘れてはいけません。

「スカウト!サロン・ド・テ」より
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 そして,創と言えば紅茶部のストーリーもぜひ。fineの天祥院英智とKnightsの朔間凛月というかなりクセのある先輩2人に囲まれている創ですが,それはもう大切にかわいがられています。そんなストーリーが楽しめるのは「かわいい悩み」(紫之 創キャラストーリー/夏),「紅茶ガーデン」(朔間凛月キャラストーリー/夏),「スカウト!ティーパーティー」です(凛月の項でも書きましたが,紅茶部の成り立ちを知るなら「スカウト!アフタヌーン」もぜひ)。

 どのストーリーでも安定して読む者を癒やしてくれる良い子な創ですが,ぎくりとさせられたのが「スカウト!ノクターン」(2016年12月公開)です。ここでの創の「『都合の良い子』が自分の役目」というセリフからは,彼の“大人”な部分が垣間見えたように思います。なおこれはSwitchの青葉つむぎとの会話で出てきたものですが,そのつむぎと,かつて【S2】で戦った紅月の蓮巳敬人との会話が深い「スカウト!ビブリオ」(2017年6月公開)も合わせておすすめしておきます。


■うさぎたちは笑い合って,次の季節へ


 高校生にとっての2歳差は,大人のそれと違ってかなり大きいものだと思います。けれどそのぶん,1年間での成長も大人とは比べ物にならないくらい大きいのではないでしょうか。したがってRa*bitsの4人は,出会った頃と3年生の卒業時では関係性は変わらずとも,その中身は大きく進化したように感じます。

 前述のとおり,リーダーのなずなはかつてValkyrieに所属していました。完全なる円満な脱退というわけではなかったため,なずなの心にはずっとそのことが引っかかっていたのかもしれません。彼は「宗とみかのためにも幸せになる」と言っていましたが,ひょっとしたらそれが「幸せにならなければいけない,1年生たちを幸せにしなければいけない」という,ある種の呪いになっていたようにも感じるのです。
 でも彼が出会った友也,創,光という3人の小さなうさぎは,彼が思うよりもずっとあたたかい熱を持っていました。なずなは3人を導き,守り,後押しをしてたくさん助けてきたけれど,彼もまた,3人に癒やされ,救われたのだと思います。「スタフェス」や「返礼祭」は,そのことが非常によく分かるストーリーのように感じます。

 筆者はRa*bitsの4人の共通項を,ユニットの仲間たちと過ごすことによって“自分らしさを見つけられた,あるいは自分らしい自分にたどりつくことができた”人たちではないかと考えています。前述のユニットおすすめではストーリーごとにメンバーの転機や変化のきっかけについて触れましたが,Ra*bitsの場合はその変化が話の中心となる人物だけではく,全員に大きく影響しているように感じます。それによって彼らは揃って成長していくわけですが,さらにすごいと思うのは,4人は目の前の課題をこなすだけで終わらず「これから自分は/自分たちは何を目指していくべきか」を,それぞれがしっかりと見据えているように感じられることです。
 未来について考えるには“自我”という地盤がしっかりしていなければいけないはずですが,彼らはお互いの良いところを見つけ,それをきちんと伝え合っているから,みんなが自分自身を認め,受け入れられるようになったのだと思います。

 彼らはスタートから大きな試練を経験しました。けれどそれに屈せず,少しずつ脚力をつけ,次第に高くジャンプできるようになっていきました。つらいことがあれば涙は流れてしまうけど,そばにはいつだって仲間がいるから笑顔を取り戻せるのでしょう。彼らが目指すのは,ほんの1年前にはまだ夢でしかなかったところかもしれません。けれどきっとその足で,どこまでも高いところへたどり着けるのではないかと思います。

「モーメント*未来へ進む返礼祭」より
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おすすめストーリー〜MaM編〜


・花吹雪*皐月の藤紫(2017年4月)★
・スカウト!ランウェイ(2017年5月)
・追憶*モノクロのチェックメイト(2017年5月)
・スカウト!コンチェルト(2017年7月)★
・ドロップ*遠い海とアクアリウム(2017年9月)
・金色の風*励ましのウィッシングライブ(2017年11月)
・スカウト!十二支(後編)(2018年1月)
・躍進!夜明けを告げる維新ライブ(2018年5月)★
・スカウト!バディ(2018年7月)★
・Saga*かけ上がるレインボーステージ(2018年9月)
・追憶*流星の篝火(2019年3月)
(※公開順/「★印」はユニット“MaM”としてのストーリー)



■MaM[マム]
〜祭のある場所どこへでも! 東奔西走のソロユニット!〜


 「あんスタ!」唯一のソロユニット。MaM=三毛縞 斑は昔から月永レオと親しく,レオを不登校に追いやった英智や生徒会に対しては思うところがある様子。彼はどちらかというと物語の本流に入り込むというより,どこか俯瞰で世界を見る立場であろうとするように見えることも。のちに公開されたイベントストーリーでは,第一部で革命を起こしたTrickstarに対し, 彼が思う“革命”について語る姿が見られた。

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 MaMは夢ノ咲学院で唯一の“ソロユニット”であり,現在の「あんスタ!」における夢ノ咲学院の生徒としては最後の新キャラクターです。登場が遅いため,MaMとしてのストーリーは4つしかありません。上記で挙げたストーリーは,“MaM”としてのもの(★印付き)と,“三毛縞 斑”個人としてのものの両方を挙げているため,「ユニットおすすめストーリー紹介」と「キャラクターおすすめストーリー」を1つにまとめる形とします。


■流星パープル〜お祭り男の帰港


 本稿ではほかのユニット同様,おすすめストーリーを公開順に挙げたのち,基本的には時系列順にストーリー紹介をしています。ですが,MaM/三毛縞斑については,最初はぜひ公開順で物語を追うことを推奨します。なぜなら最初にご紹介する「追憶*流星の篝火」は,しばらく伏せられていた彼の生い立ちや素性について詳しい種明かしがあるためです。彼についてまだよく知らない方はぜひ,最初に公開された「花吹雪*皐月の藤紫」から順を追っていただき,彼の“得体の知れなさ”を堪能していただきたいと筆者は考えます。

 それでは本題に入りましょう。時系列としてはもっとも古い斑のストーリー「追憶*流星の篝火」は,現在軸から2年前のストーリーとなっています。それはちょうど元「五奇人」の1人,現流星隊の深海奏汰が生徒会によって“討伐”される頃の話です。当時の斑は,国外にある夢ノ咲学院の姉妹校との交換留学生として海外を飛び回っていたのですが,そもそもなぜ海外に行くことになったのか,彼の両親や奏汰との関係は,流星パープルとは……といったことが分かります。

「追憶*流星の篝火」より
画像集 No.026のサムネイル画像 / 「あんさんぶるスターズ!」のユニットを知るにはこの過去イベがおすすめ! 第3回:Knights,Ra*bits,MaM編

 斑が登場するもう1つの過去ストーリーは,Knights黎明期,月永レオが“チェス”と戦うことになる【チェックメイト】が描かれた「追憶*モノクロのチェックメイト」があります。あるきっかけで仲良くなったというレオとの関係はその後も続いていきますが,ここでの斑が【チェックメイト】に関して一枚噛んでいたことも明らかとなります。
 なお,その後のレオとの関係性としては,不登校となったレオと春先に再会する「お祭り男の帰港」(三毛縞 斑キャラストーリー/春),レオの密やかな“復帰”を手助けする「スカウト!コンチェルト」で見られます。なお,「チェックメイト」で少しだけ語られた「最近は,“ロビンフッド”と名乗って暴れている」という斑の話は,「スカウト!ロビンフッド」で少し触れられています(※「スカウト!ロビンフッド」に斑は登場しません)。

 そして,斑がたった1人のユニット“MaM”として,夢ノ咲学院に驚天動地の登場を果たしたのが「花吹雪*皐月の藤紫」です。ほかにはない唯一のソロユニットであること,身体も声も人より大きいことは,周囲に大きなインパクトを与えました。なお,全員が「藤祭」に参加することになった陸上部への最初の登場の様子は「母なる大地」(三毛縞 斑キャラストーリー/春)で見られます。まさに,“帰ってきたお祭り男”といった雰囲気でした。

「花吹雪*皐月の藤紫」より
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■夢ノ咲学院でのMaM/斑


 その後の斑は,ときにMaMとして,ときに個人としてさまざまなストーリーに顔を出します。そのなかでもとくに重要と思えるものの1つは,時期としては序盤(春)の「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」が挙げられるでしょう。ここで斑は“最初の春”の革命を起こしたTrickstarの明星スバルと氷鷹北斗に向けて,その革命に意味があったのかと疑問を突きつけたのです。この物語で彼はある思惑があって「維新ライブ」に参加していたのですが,これを読むと,彼の仄暗い一面と“恐ろしさ”が垣間見えたように感じます。とはいえ「ひょっとしたら,わざと自分をそう見せているのでは?」とも感じさせられるのですが。

「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」より
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 そして,幼い頃からのつながりがあった奏汰と再び絡む「ドロップ*遠い海とアクアリウム」,上記おすすめでは挙げませんでしたが「お化けがいっぱい☆スイートハロウィン」など,斑はあちこちで助っ人として活躍するのですが,比較的長いスパンで関わっていたことが明らかになったのが,教師陣がアイドルとして復帰するプロジェクトを描いた「Saga*ぶつかり合うリバースライブ」です(1話のみですが「Saga*ぶつかり合うリバースライブ」/2018年12月公開)も)。ここでは,佐賀美 陣率いる臨時ユニット“Rain-bows”と対決する椚 章臣の臨時ユニット“Ba-barrier”の一員となった斑を見られます。

 また,“幼なじみ”だと斑が話す転校生との関係性などが描かれるものは,「金色の風*励ましのウィッシングライブ」「スカウト!ランウェイ」など多数あります(「ランウェイ」ではKnightsの瀬名 泉との会話にも注目)。なかでも筆者が気になるのは,年明けの物語である「スカウト!十二支(後編)」で,ここで彼によって語られるアイドルや夢に対する想いに注目しておきたいところです。なお転校生は,幼少期の斑との記憶があまりないようなのですが,その理由は前述の「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」で明かされます。

「金色の風*励ましのウィッシングライブ」より
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■アンチヒーロー・三毛縞 斑


 「あんスタ!」には真意が掴みにくい,あるいは本当はどんな人なのかが分かりにくいアイドルが何人かいると思いますが,斑はその筆頭であると筆者は感じています。そのときどきで印象を変え,基本的には味方でありながらある種の怖さも感じさせる彼のことは,以前から“トランプのジョーカーのような人”と思っていました。そんなあるとき見かけた,メインライターの日日日先生による「斑はアンチヒーロー」というTwitterでの発言がとても腑に落ちました。

 “アンチヒーロー”の一般的な定義は,「正統派ではない(英雄的でない)ヒーロー」です。一般的なヒーローの資質とは異なる主人公がアンチヒーローで,同じカテゴリに属する“ダークヒーロー”は,ときに悪ともいえる価値観を持つ闇の主人公といったところでしょうか(なお日日日先生は,「あんスタ! におけるヒーローが『流星隊』なら,アンチヒーローが斑。同じ区分ではあるが個人的に英智(生徒会長)はダークヒーローと呼びたい」といった内容をつぶやいています)。

 彼は目的のためなら手段を選ばないところがあるのですが,むしろ筆者が悩むのはそこよりも,発言が彼の本意なのかどうか(本当は嘘なのではないか)と常に思わされることなのです。本人が「自分は零の後継者のつもり」と言うとおり,かつての彼が海外を飛び回って問題を解決していたりするところは零によく似ていると感じるのですが,真意が掴みにくいという意味では,英智にも近いような気もします。

 桁外れの能力,たいていの泣く子が黙る(あるいはねじ伏せることのできる)バックボーン,彼には人を恐れさせる要素がたくさんあります。でも,たとえば「追憶*流星の篝火」では千秋に,「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」では紅郎に,「汚れていない人間なんていない」と言葉をかけられた彼が見せた表情から,ほんの少しだけ“本当の三毛縞 斑”がつかめるような気がするのです。斑は“ママ”と名乗る理由をあちこちで語っていますが,個人的には「追憶*流星の篝火」で奏汰が言った「幼い頃に,男の子が誰もやりたがらなかった“ママ”役をやってくれた」という事実に心を動かされます。
 また,筆者が好きな彼のセリフに「俺は人間でいたい,人間のことが大好きだから」(「花吹雪*皐月の藤紫」より)というものがあるのですが,きっとこれが彼という人の核であり,揺るぎない軸なのではないかという気がします。

 登場が遅いこともあるかもしれませんが,まだまだ斑については知りたいことがたくさんあります。自分ではない人間を完全に理解するのは不可能だけれど,その声に耳を傾けて,少しずつ距離を縮めていくことはできます。これからまた1歩ずつMaM/斑というアイドルに近づき,ますます魅了される日を楽しみにしています。

「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」より
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第4回の記事もお楽しみに!



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