インタビュー
「キャラクターを愛する女性のために」――アニメ・ゲームのファッションアイテムを提供する「SuperGroupies」の知られざる“制作舞台裏”を取材
作品を知らない人が見ても「かわいい!」と思ってもらえるようなアイテムを,いかにしてSuperGroupiesは生み出すのか。
今回4Gamer女子部(仮)では,その仕掛け人であるアニウェア 取締役にしてSuperGroupies プロデューサーの稲田貴之氏と,広報担当のソ・ヘイン氏にインタビューを実施。ブランドの立ち上がりからアイテムの制作秘話,今後の展望に至るまで,SuperGroupiesの知られざるエピソードを深く伺ってきた。
「SuperGroupies」公式サイト
SuperGroupies誕生秘話
モデルの表情にもこだわる徹底ぶり
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。SuperGroupiesはアニメ・ゲームとファッションが融合したブランドということですが,稲田さんは元々アニメやゲームに興味を持っていたのでしょうか。
そうですね。以前は原宿のキャットストリートで自分のショップを構えていて,キャラクターとファッションのコラボグッズを販売していました。
その頃から片桐(ピクシブ創業者・片桐孝憲氏)とは付き合いがあったんですが,ある日急に電話が掛かってきて,「一緒に新しいファッションビジネスをやろうよ」と言われて。それがブランド立ち上げのきっかけになりました。
4Gamer:
いかにも片桐さんらしいエピソードですね。
稲田氏:
確かに(笑)。どうも僕に電話する前に,片桐が高橋さん(アニメイトホールディングス代表取締役会長・高橋 豊氏)に「アニメイトはイケてない」というようなことを言ったらしいんですよね。その発言が巡り巡って僕のところに来たわけです(笑)。そういう事情もあって,アニウェアとして会社化したときにはアニメイト,ピクシブ,ムービック(アニメイトのキャラクターグッズを担う事業会社)の3社から出資を受けています。
4Gamer:
片桐さんの「イケてない」とは,どういう意味だったのでしょう?
稲田氏:
アニメイトはキャラクターグッズ専門のチェーンストアとして成功しているけれども,お客様の要望に十分応えているとは言えないんじゃないか,という考えが彼にはあったんですね。もっと付加価値の高い商品を求めている人がいるのに,そのニーズを満たす取り組みができていないと。
4Gamer:
キャラクターのイラストを前面に押し出したアイテムではない,また異なるアプローチとなると,その求められている付加価値というのはハイセンスなデザイン性であったり,コンセプトにも掲げられているテーマにつながりそうですね。
稲田氏:
ええ。キャラクターの要素を反映しつつ,オフィスでも週末のオフスタイルでも自然に着てもらえるようなファッションアイテムとして成立させたかったんです。とはいえ,最初は試行錯誤の連続でした。
4Gamer:
とくに苦労したところは?
稲田氏:
SuperGroupiesというブランドができる前は,僕たちが有名ファッションブランドとアニメ・ゲームの橋渡しをする形でコラボ商品を作っていました。ですが,本当に作りたいデザインがなかなか実現できないこともあったんですね。その1つがテーマカラーの問題です。ファッションブランドはテーマとしている色が必ずあります。
一方,キャラクターも特定の色と結びついていることが多いですよね。そうなると,どれほどキャラクターの人気があっても,コラボレーション先のブランドカラーとは相性が良くないというケースもある。これは難しい問題でした。
4Gamer:
コンテンツの世界観とファッションブランドの間で板挟み,たしかに悩ましい。
稲田氏:
中途半端なものを作っても,お客様には喜んでもらえません。もっとこだわって作りたい,もっと作品の世界観を表現したいと悶々としているうちに,それなら僕たち自身で本当に作りたいものを展開していけばいいじゃないかと気付いたんです。
そうして出来たブランドがSuperGroupiesなんです。業態としても,セレクトショップから,ZARAやH&MのようなSPA(Speciality store retailer of private label apparel:製造から販売まで自社ブランドで統合されたビジネスモデル)へ変わっていきました。
4Gamer:
2014年にSuperGroupiesがスタートし,それまで築いてきたモノ作りのセオリーやビジネスに変化はありましたか。
稲田氏:
ピクシブ,アニメイト,ムービックの3社から出資を受けることで,各分野のトップ企業のノウハウとリソースを活用できるようになりました。たとえば,在庫管理や販売システムはアニメイトから提供してもらったり,pixivを通じてファンへ訴求したり,といった具合です。これまでより自由に動けるようになったので,話題作をスピーディに商品化できるところがSuperGroupiesの強みだと思います。
4Gamer:
SuperGroupiesのファンはどのような人が多いのでしょうか。パンプスやハンドバッグ,アクセサリーといった商品ラインナップからすると女性が多そうではありますが,過去のコラボ商品には男性もターゲットとなり得るものがいくつかありますよね。
ソ・ヘイン氏(以下,ソ氏):
男女の割合では女性が85%,男性が15%となっています。会員の半分以上を20代前半の女性が占めていますので,その層をメインターゲットとしてラインナップや価格帯を決定しています。
4Gamer:
コラボレーション先の選定も,やはりターゲット層を意識して?
稲田氏:
本来はそうあるべきなんですけどね。SuperGroupiesのデザイナーはみんなアニメもゲームも大好きな“ガチ勢”なので,市場のトレンドよりも自分の愛で企画を起こしてきてしまうことが多くて。もちろんキャラクターへの愛も大事ですが,まずは他のブランドに引けを取らないプロのモノ作りをしなくてはと思っています。
ロゴマークやキャラクターがプリントされた単純なデザインじゃなくて,キャラクターの個性や作品の世界観をアイテムに織り込んでいく。ファッションと作品への深い理解があってこそのSuperGroupiesでありたいんです。
4Gamer:
なるほど。そうして出来上がった企画から実際の商品になるまで,どのようなステップがあるのでしょうか。
社内で企画を選定したあとは,まずアイテムの大まかなラインナップを検討します。トップスとボトムス,あるいはバッグやシューズ,ベルトといった小物もありますから,予算を鑑みながら色々と調整します。アイテムが偏ってしまうとコーディネートの幅も広がらないので,その辺りもみんなで相談しています。
それが決まると,次はアイテムひとつひとつの詳細なデザインを作る段階です。小さなチャームなど細部に至るまで,ストーリーの重要なシーンやキャラクターの要素を反映して作り込んでいきます。
4Gamer:
そうしてサンプルが出来上がり,販売へ向けて準備するターンですね。
ソ氏:
SuperGroupiesのアイテムは受注生産なので,商品サンプルが完成したらすぐに予約受付のWebページを制作し,プロモーション活動を始めます。ここからが私の担当分野ですね。デザインとコンテンツがリンクしているポイントを伝えるため,作品の象徴的なセリフやシーンを引用してバナーを作ったりしています。
着用時の写真にもすごくこだわっているんですよ。「おそ松さん」では六つ子たちをモチーフとした商品を展開しているんですが,それぞれのキャラクターを示すカラー6色を背景にして撮影しました。ポージングも,トド松モデルならラブリーな感じですし,カラ松モデルはクールでカッコイイ雰囲気を醸すようにして,それぞれキャラクターに寄せた表情を作ってもらっています。
4Gamer:
写真1つにもコンセプトが徹底されているとは驚きです。
ソ氏:
ありがとうございます。作品とファッション,どちらも大切にしたいという想いからですね。
女性はカルチャーを牽引する存在に
積極的なトータルコーディネートの提案も
4Gamer:
SuperGroupiesでは,「うたの☆プリンスさまっ♪」や「あんさんぶるスターズ!」,「アイドリッシュセブン」といった女性に人気のタイトルはもちろん,「魔界村」や「THE KING OF FIGHTERS」のような意外なコラボも実現されてきました。これまでのラインナップを振り返って,最も人気のあったアイテムは何だったのでしょうか。
稲田氏:
ダントツで「刀剣乱舞-ONLINE-」のバッグですね。作る端から売れていって,ファンの熱量を感じました。今でも「刀剣乱舞-ONLINE-」は高い人気を誇っていますが,最近は「あんさんぶるスターズ!」のアイテムも好調です。新作のバッグとリストウォッチを公開したところ,多くのファンからご好評をいただいています。
「刀剣乱舞-ONLINE-」より「三日月宗近」「加州清光」「鶴丸国永」「小狐丸」4モデルのバッグが新たなデザインとしてリリース |
アイドル育成プロデュースゲーム「あんさんぶるスターズ!」よりアイドルユニット「流星隊をイメージした腕時計とバッグ |
4Gamer:
次々とコラボレーションを打ち出されていますが,SuperGroupiesとして大切にしているポイントを教えてください。
稲田氏:
アニウェアという社名のとおり,アニメなどのコンテンツを掛け合わせた新しいファッションというのがコンセプトです。従来はファングッズの一種でしかなかったアパレル商品を,ファッションとしても成立させていくことが僕たちのミッションになります。
一昔前ではオタクと呼ばれていたかもしれませんが,今やゲーマー女子,アニメ女子こそがカルチャーを牽引する存在です。そういう女の子たちに毎日楽しんで身につけてもらえるようなアイテムを作っていきたい。だからこそ,キャラクターの要素と自然な着こなしを両立させることにいつも挑戦しています。
4Gamer:
“カルチャーを牽引する存在”いいですね。
稲田氏:
自分でも結構遠回りなやり方だな,とは思っているんですよ。キャラクターを前面に押し出したデザインのほうが分かりやすいし,作るほうも楽だし,価格ももっと低く抑えられるかもしれない。でも,誰も踏み入ったことのない分野で成功できたら,そのほうが「イケてる」じゃないですか。
4Gamer:
確かに,そういった女性ファンの需要は高まってきていると思います。ますます人気を集めるSuperGroupiesですが,今後はどのようなことに挑戦していくのでしょうか。
稲田氏:
SuperGroupiesをもっと確固としたブランドに育てていきたいですね。お陰様で会員数は右肩上がりですが,知名度が高いブランドではまだありません。これまではコアなファンに向けて話題作,最新作を中心にコラボレーションを展開してきましたが,より広い層にアプローチが必要だと考えています。
具体的には,年齢層を問わず長年愛されてきた作品をモチーフにしたいと思っていて,夏には「ストリートファイター」の春麗とキャミィをイメージしたランジェリーセットを販売しました。こういったトガった商品をとおして,より多くの方にSuperGroupiesのことを知っていただけたら嬉しいですね。
稲田氏:
さらにもう1つやりたいことがあって,SuperGroupiesでトータルコーディネートを提案していこうと施策を進めています。アイテム単品で逐次リリースしていくのではなく,1人のキャラクターをモチーフにして,アウター,トップス,ボトムス,バッグ,アクセサリーで全身のコーディネートを楽しんでもらえるようにしたいなと。アニメ女子・ゲーム女子のほしいファッションアイテムが全部ある,そんなブランドを目指しています。
ソ氏:
稲田の言うとおり,SuperGroupiesがブランドとして確立できるよう,プロモーションも工夫を凝らしています。Web広告では,キャラクターを強調したバナーがある一方,SuperGroupiesの商品であることをメッセージとした広告も展開しています。キャラクター起点ではなく,ファッションブランドとして認知を高める戦略です。
実験的に始めた施策だったのにも関わらずかなり良い効果が出ていて,少しずつSuperGroupiesのファンが増えているようです。Instagramの公式アカウントもフォロワー数が約8,500人となり,写真やLIVE配信でさまざまな着こなしを紹介しています。
4Gamer:
現在はECサイトでの販売が中心となっているようですが,今後実店舗を構える予定はありますか。
稲田氏:
今のところは未定です。実際の商品を手に取ってみたいというご要望はたくさん寄せられていて,時々ですが百貨店やショッピングビルの一角で展示を行うこともあります。ただ,SuperGroupiesにとって,どんなお店作りが必要なのか,もう少しアイデアを固めたいというのが本音なんですよね。
ソ氏:
あとは,海外のお客様もいらっしゃいますから,今後しばらくはECサイトを主力としていくつもりです。
4Gamer:
では最後に,SuperGroupiesのファンの方や4Gamer女子部(仮)の読者へ向けてメッセージをお願いします。
稲田氏:
SuperGroupiesはまだまだ成長途中のブランドですが,キャラクターを愛する女の子のためのファッションを作っていきたいと思っています。同時に,アニメやゲーム,キャラクターグッズに対する先入観を覆す存在でもありたいです。
毎日の通学・通勤にキャラクターものの服を着ていくなんて,今までだったら考えられなかったことですけど,SuperGroupiesならそれができる。週末は「おそ松さん」のファンイベントに行ったり,「Fate」の劇場版を観たりして,好きなキャラクターをイメージしたコーデでのお出かけも楽しんで,それをまたInstagramに投稿する。そういったカルチャーの発信源として皆さんに認められるよう,がんばっていきたいと思います。
ソ氏:
街中でSuperGroupiesの服を着た人同士がすれ違って,「あの人も同じキャラクターが好きなんだ」って気づけたら,すごく嬉しいじゃないですか。その場で友達になれちゃうかもしれない。そういう楽しみ方が今の女の子には向いているのではないでしょうか。SuperGroupiesは,今よりもっと面白くお洒落を感じることのできるブランドだと思います。Instagramもますます力を入れていきますので,ぜひフォローしてくださいね!
4Gamer:
これからの展開が楽しみですね。本日はありがとうございました。
――2017年10月19日収録。