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ゲームをうたう:第6回はなかにしけふこさんと「アイドリッシュセブン」。和泉一織さんに捧げる一篇をお送りします

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 「ゲームをうたう」は,詩人がゲームからインスピレーションを受けて詩を作る企画です。詩人の言語によって,あなたの知っているゲームはより新鮮に,あなたの知らないゲームはより好奇心を誘う姿へと,新たに再構築されるでしょう。

 第6回は,宗教史学者であり詩人のなかにしけふこさんが,スマホ向けリズムゲーム「アイドリッシュセブン」iOS / Android)を題材に,和泉一織さんをイメージした新作「夜空を織る」を書き下ろしてくれました。ステージから神話的世界へ拡張される詩の味わいを,どうぞお楽しみください。

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夜空を織る
なかにしけふこ

和泉一織さんに


私も準備ができました、ライヴに行きましょう。ときみは言う。
幕があがる。輝くがらすだまの楽譜を撃つ。
Hello, Hello, ななつぼし。
あたらしいうたをうたうきみたちの そのあたらしいうたをおぼえる。

私についてきてください、ときみは言う。
すらりとのばした指先からつめたい空がひろがる。
星々を輝かせるために。ひそかに夜空の青を織る。

和やかな山 水を照らす春の月
いもうとに編むしろつめくさの環。
壮麗な坂からみはるかす夕凪の海。
燃える髪 訴求力 常若のうた
わかれてもいつかは逢える瀬に立って。
はるばると陸はどこまでもつづく。

(薄氷踏むいたましいいのち。どうか悪に用いられませんように)
 かならず私があなたを、わたしたちを輝かせてみせる。)

消えた星 消えた詩人の
おとなたちの思い出の鎖を
傀儡師の悪意を 闘技場の悪意を
うちすてられるかなしみを
あたらしいうたをうたうものたちがほどく
(なんですかおじさん。それは旧世代の遺物ですよ)
運命にまきこまれてもきみの眼には翳りがない
わかれてもきっとまたいつか逢える
導かれるままに消えない虹を 永遠を追って
わたしたちの星図を描く最高の遊びをみつけたから
夜明けを待って旅立つ船に
神聖多面体のあかりを吊す。

私たちはひとりとして欠けてはならないのです、ときみは言う。
常若のうたをうたう願いの結晶の
外套の襞は夢の翼。
だれひとりみすてられることのない世界を。
歌え、歌の外に生きられぬものの歌を。やちまたに立つ者の歌を。
星は星に、花は花に。天にたのしく龍は舞い舞う。
はるかなる波を冬の馬と虎とがわたる。
百年も千年も万年も、そして来世も、風景を
うたを結び、うたを紡ぎ。
いつか、ではなくてきみたちはもう むかえにきていて。
猛禽のかげをのがれてはれやかに遊び 私たちはうたの葉をしげらせてゆく。


■なかにしけふこ
詩・短歌・散文。詩集に「The Illuminated Park 閃光の庭」(書肆山田、2009年、第15回中原中也賞最終候補作品)。中西恭子名義での単著に,「ユリアヌスの信仰世界 万華鏡のなかの哲人皇帝」(慶應義塾大学出版会、2016年),訳書にエドワード・J・ワッツ著「ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人」(白水社、2021年)がある。

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