ドラマ「フォールアウト」でゲームに興味を持った人へ――大型アップデートが行われた「Fallout 4」で危険な魅力にあふれた荒野へと旅立とう

画像は2024年4月19日に発表された，ドラマのシーズン2のものと思われるキービジュアル（関連記事）

　2024年4月11日にAmazon Prime Videoで配信がスタートした「フォールアウト」は，Bethesda Softworksの同名ゲームシリーズを原作とする実写ドラマだ。
　
　配信されてすぐに作品は評判を呼び，Steamでは「Fallout」シリーズのプレイヤーが急増（関連記事）。さらにAmazon MGMスタジオのトップのJennifer Salke氏が早くもシーズン2の制作を発表するなど，ゲームファンだけに留まらない世界的な盛り上がりを見せている。
　実際にSNSなどで絶賛の声を目にすることも多く，シリーズ作品のプレイヤーが急増しているという話も納得できる作品だ。

Amazon Prime Video「フォールアウト」視聴ページ

　……と，ここまでの説明は不要といったくらい大きな話題となっているドラマ「フォールアウト」だが，あの“いかにも”なウェイストランドの世界を体験したら，原作であるゲームをプレイしたいと思うのは必然だろう。


　そこでオススメしたいシリーズ作品のひとつが「Fallout 4」。日本では2015年12月17日にPC，PS4，Xbox One向けにリリースされた，オープンワールドのアクションRPGだ。
　リリースから9年近く経つ作品だが，昨日（2024年4月25日）PlayStation 5とXbox Series X|S向けのアップグレードを含む大型の無料アップデートが行われ，今こそが遊びどきと言えるタイミングなのである。


　本稿ではそんな「Fallout 4」を，ドラマから入った人や久しぶりにプレイしようと考えている人に向けて紹介したい。
　なお，ドラマのネタバレには留意しているが，一部それを匂わせる箇所も含まれている。そのあたりを注意いただくか，ドラマを観終えてから読み進めてもらえると幸いだ。

危険な魅力にあふれたウェイストランドを旅しよう。ドラマとともに楽しむ「Fallout 4」

　ドラマ版「フォールアウト」はゲームシリーズの歴史や出来事をベースに物語が作られており，ドラマとゲームのどちらも核戦争後の荒廃した未来世界が主に描かれる。もちろんそのゲームシリーズには，今回紹介する「Fallout 4」も含まれている。
　核戦争が起こる前の世界は我々が生きる現代の延長上ではなく、文化的には1950〜60年ごろに描かれていたような未来――いわゆるレトロフューチャー的な雰囲気だ。


　世界は2077年に勃発した最終戦争によって放射能に汚染され，文明は崩壊。それから約200年が経過したアメリカが物語のメインとなるのも共通だ。時代は少し異なるものの，ドラマはカリフォルニア，「Fallout 4」はマサチューセッツのボストンといったように“アメリカのどこか”が舞台となる。


　全米に100以上あるという核シェルターのひとつ，Vault 33の監督官を父に持つ令嬢ルーシーに，200年前の世界を知るグールの男。軍事組織B.O.S（Brotherhood of Steel）の訓練生マキシマス。ドラマでは，3人の主人公の運命が幾度も交差する先で，この世界の知られざる真実の一部が明かされていく。


　「Fallout 4」は，シリーズのキーとなる200年前，“運命のあの日”からゲームが始まる。
　突然の戦争勃発でVault 111へと逃げ込んだ主人公とその家族だが，ある出来事によって主人公だけが2287年の未来を冒険することに。その出来事については実際にゲームをプレイして確かめてほしいので明言は避けるが，ドラマのシーズン1を最後まで視聴した人はこの導入を見て「なるほど，それか……」となるはず。


　ドラマの見どころのひとつが，現代とはだいぶ異なる形で“倫理的”な核シェルター（Vault）の住人たちと，地上世界（ウェイストランド）を生きる人々との対比だろう。
　分断が進む現代社会の風刺的な意味合いも感じられ，あらゆる人が楽しめる──と，それは少し誇張し過ぎかもしれないが，いろいろな楽しみ方ができる作品であることは間違いない。


　「Fallout 4」のプレイヤーは，Vault 111で目覚め，ある目的をもってウェイストランドへと旅立つ主人公を操作し，ドラマのルーシーのように我々の常識が通じない世界を体験することになる（と言っても，ルーシーと我々の常識もまた異なるのだが）。この世界にうまく順応するか，不器用でも守るべきものをもって生き抜くかはプレイヤー次第だ。


　Vaultの住民たちの青いスーツに，腕に装着する端末Pip-Boy。装着した者に飛び抜けたパワーを与えるパワーアーマー。Falloutシリーズの象徴であるそれらに目を惹かれた，ゲーム未プレイのドラマ視聴者は多いのではないだろうか。
　ゲームをプレイしてからあらためてドラマを観返せば，こだわりの表現や再現度の高さを再発見できるだろう。


　瀕死の犬が一発で飛び起きるほどの治療効果を見せる「スティムパック」，そこらのガラクタを弾として使える「ジャンク・ジェット」，見た目はものものしいが命中精度は怪しい「タレット」，貪欲にエサを求める「ガルパー」などなど，ドラマに登場した道具やミュータントたちにも注目だ。
　ゲームをプレイすると，ドラマではそれらが遊び心たっぷりに，見た目はもちろん効果音に至るまでしっかりと再現されていることに気がつくはず。


　無法者（レイダー）やミュータントが荒野を闊歩するポストアポカリプスものに，西部劇や騎士道ロマンスのテイストをミックスしたようなアクション活劇。シリーズの知識は問わず多くの人をグイグイ引き込む見せ方や演出が特徴のドラマ版だが，ゲームを再現した少々（？）過激な映像表現は好き嫌いが分かれるかもしれない。


　どこかチープでユーモアある表現もあるものの，人によっては直視できない不気味なクリーチャーやグロテスクなシーンに向き合う場面はある。ドラマでもいくつかのシーンで登場した，“カサカサと動き回るアレ”も出てくるし……。
　ただ，ドラマの表現が大丈夫であればゲームも問題なく楽しめるかと思う。最初は「無理！」となった敵も，気がつけばルーシーのように世界に順応できるはず。そしてそれらの表現が，敵と戦うときのスリル感や駆逐したときの爽快感を強めるスパイスとなっているだろう。


　2024年4月25日に実施されたばかりの大型の無料アップデート^※では，PS5とXbox Series X|S向けのアップグレードのほか，PC版のワイド/ウルトラワイド画面への対応，PS4版およびXbox One版向けにもクエストなどの修正，安定性の改善などの対応がなされている。


　新世代機向けアップグレードは，高解像度となったグラフィックスや60fpsでのプレイに対応した「パフォーマンスモード」への切り替えのほか，MODへのアクセスを含む機能面の改善も行われている^※。
　プレイヤーそれぞれが「現在の環境」で，自分がより重視する条件でプレイできるのは嬉しいポイントだ。
　操作の快適さを優先するか，終末世界の旅を満喫するため高精細なグラフィックスを取るか，どうかじっくりと悩みつつ選んでいただきたい。

※編集部注：記事掲載時点（2024年4月26日11：00）では理由が確認できていないが，ユーザー側の登録内容や過去の購入記録などの影響か，PS5向けアップグレードは告知どおり無料でできる場合もあれば，有償アップグレード（100円）となるケースもあるようだ。このあたりは正式アナウンスを待ちたいところ


　本アップデートの目玉となるのが，新ストーリーライン「エンクレイヴ・レムナント」だ。
　ここに登場するのが，ドラマの視聴者も聞き覚えがあるであろうエンクレイヴという名の勢力。彼らが連邦に危険なイデオロギーを広め，自らの足場を築こうとするのを阻止するという物語が描かれるという。
　シリーズ作品のひとつに，ドラマ版と同じくアメリカ西海岸近くを舞台とした「Fallout: New Vegas」があるが，同作品やドラマと地続きになっていると感じられる部分があるかも気になるところだ。


　長らく愛されているシリーズには、それだけの理由と魅力があるもの。折よく2024年のゴールデンウィークが始まるというタイミングであることも，ドラマとゲームその両方を楽しむ絶好のチャンスと言えるだろう。
　ドラマのルーシーのように，シェルターのぶ厚い鉛の扉を開け，荒野へと旅立ってみてはいかがだろうか。

「Fallout 4」公式サイト