テストレポート
「Z170 PRO GAMING」を細かくチェック。2万円台半ばで買えるASUSのゲーマー向けマザーは新たな定番になるかも
Skylake世代のCPUが持つ特徴や性能の詳細は,掲載済みのレビュー記事や基礎検証レポート,解説記事を参照してもらいたいが,エンドユーザーにとって重要なポイントは,CPUパッケージが新しい「LGA 1151」となった結果,Intel 100シリーズチップセット搭載マザーボードが必要になったことだ。Skylake世代のCPUを導入するためには,マザーボード(と,多くの場合,Skylakeで組み合わされるDDR4 SDRAMメモリモジュール)も刷新しなければならなくなったわけである。
従来製品の機能を継承しつつ,「PRO Clock」など見どころも多い
Skylake-Kのレビュー記事でも少し触れたが,PRO GAMINGのマザーボードは,Intel 100シリーズで新設されたASUSの新しいゲーマー向け製品だ。ASUSのゲーマー向けブランドといえば「R.O.G.」(Republic of Gamers)ブランドがよく知られているが,R.O.G.ほど高価ではなく,かつ,ASUSのスタンダードなマザーボードと比べるとゲーム用途に向けた機能が多く搭載されている,というのがコンセプトで,今後,シリーズ化される予定にもなっている。
そんなZ170 PRO GAMINGの外観は,一言でまとめるならシンプル。黒を基調に,一部で赤があしらわれた外観は“それっぽい”が,「どこから見ても機能てんこ盛り」なR.O.G.マザーボードとは一線を画したデザインなのも分かるだろう。
CPU Installation Toolの上からソケット側の金具でCPUを固定してしまうので,ものすごくネガティブに言えば,CPU冷却に負の影響がある可能性は否定できないが,LGAパッケ−ジを採用するCPUの取り付けに慣れているわけではないというゲーマーでも,さくっとCPUを取り付けられるという点では,これはとてもすばらしいアイデアだと思う。
Skylake世代のマザーボードで,注目すべきポイントの1つに電源回路がある。HaswellおよびBroadwellではCPUに内蔵されていた電圧レギュレータが,CPUの外に出されたため,電源回路周りの仕様が,再び差別化のポイントになってきたからだ。ASUSはZ170 PRO GAMINGの電源フェーズ数を公開していないのだが,実機を見る限りでは,8+2フェーズ仕様のようである。
なお,Z170 PRO GAMINGでは,ASUS独自のデジタル電源回路「DIGI+ VRM」の採用も特徴の1つとして挙げられている。負荷に応じて変動するCPUの電力を,より早く,より正確に供給することが可能で,結果,システムの安定性が向上するというのがASUSの主張だ。
PRO Clock。IDT製のクロックジェネレータだ |
こちらはPCI Expressスロットの近くにあったTPU |
同時に,CPUの電圧制御を行う「TurboV Processing Unit」(TPU)や,電力供給を制御する「Energy Processing Unit」(EPU)といったASUSのゲーマー向けマザーボードで見られる機能は,Z170 PRO GAMINGでも採用されているので,Z170 PRO GAMINGにおいて,CPUを制御するICは,これらとPRO Clockと合わせて計3つという計算だ。ASUSによれば,これら3つのチップが連携することで,より安定性の高いオーバークロック動作が可能になるという。
気になる拡張スロット構成は,PCI Express(以下,PCIe) x16が3本,PCIe x1サイズも3本。2-way SLIおよび2/3-way CrossFireをサポートしている。
なお,PCIe x16スロットの構成は,CPU側から順に以下のとおりだ。
- スロット1本使用時:PCIe 3.0 x16
- スロット2本使用時:PCIe 3.0 x8+PCIe 3.0 x8
- スロット3本使用時:PCIe 3.0 x8+PCIe 3.0 x8+PCIe 3.0 x4
ちなみに,SupremeFXの最新世代は「SupremeFX III」だが,EMIシールド部に「II」「III」と書かれていないことから,Z170 PRO GAMINGで採用されるのは,最もシンプルな第1世代ということになるだろう。
背面のI/Oインタフェース部には,USBポートが計8基用意される。内訳はUSB Type-A 3.1
ビデオ出力インタフェースは,DisplayPort 1.2,HDMI 1.4,Dual-Link DVI-D,アナログRGB(D-Sub 15ピン)各1。どうせグラフィックスカードを差すのだから,ゲーマー向けマザーボードでこんなに用意しなくてもいいのではないか,という気はしなくもない。
Serial ATA(以下,SATA) 6Gbps対応のインタフェースは計6ポートで,そのうち2つはSATA Express互換。それに加えて,M.2タイプのSSDを接続するため,Socket 3タイプのM.2スロットが1基用意されている。M.2スロットは,PCI Express 3.0 x4でZ170 PCHに接続されているという。
ちなみに,Intel 100シリーズを採用するASUSのゲーマー向けマザーボードでは,SSD関連でユニークな機能が用意されている。それは「RAMCache」と呼ばれるもので,メインメモリの一部をSSD用キャッシュとして利用することにより,読み書きの速度を向上させるというものだ。同じような機能は,SSDメーカーが自社SSD用のソフトウェアで提供していることもあるのだが,RAMCacheでは,SSDのメーカーを選ばないのが利点となる。
SATAポートは6ポート。うち2つをSATA Expressとして使うことも可能だが,肝心の対応ストレージは事実上存在しない |
SATAポートの隣にはM.2スロット(写真右)を装備。Type 2242/2260/2280/22110サイズのM.2対応SSDを装着可能だ |
UEFIに目新しさはほとんどないものの,オーバークロック関連の設定は充実
Z170 PRO GAMINGのUEFI――UEFI BIOSと呼ばれることも多い――は,基本的なシステム情報表示や設定変更をグラフィカルなUIで行える「EZ Mode」と,細かい設定も行える「Advanced Mode」という2種類の設定モードを備えるという,ここ数年のASUS製マザーボードでお馴染みの仕様になっている。
機能面も従来製品と似たような感じであり,UEFIから自動オーバークロックの設定を行う「EZ Tuning Wizard」機能も,変わらず用意されていた。
オーバークロックの話題が出たので続けると,オーバークロック関連の設定は,これまたASUS製マザーボードでは定番の「Ai Tweaker」にまとめられている。
ベースクロック(BCLK)を設定する「BCLK Frequency」では,40.00MHzから650.00MHzの範囲を,0.025MHz刻みで設定可能だ。また動作倍率も,「CPU Core Ratio」を8倍から83倍の範囲を1倍刻みで変更できるなど,きめ細かな設定が可能である。ただし,オーバークロック設定は自己責任となるので,その点はくれぐれもご注意を。
通常,UEFIの更新といえば,Windows上でアップデートツールを実行したり,USBフラッシュメモリに保存したBIOSファイルをUEFIから読み出したりして行うのだが,EZ Flash 3では,UEFIからインターネットに接続して,ASUSのサーバーから最新のアップデートファイルをダウンロードし,アップデートすることが可能になっているのだ。Windows上のツールで同様の機能を持つものは,他社製品でも珍しくないのだが,UEFIから直接アップデートできるのは,かなり使い勝手がいい。
Windows上で動作するユーティリティ「AI Suite 3」には細かく変更が入る
Windows上で利用できるASUSの独自ユーティリティ「AI Suite 3」には細かくアップデートが入っていたので,簡単に紹介しておこう。
AI Suite 3自体は,新しいユーティリティというわけではないが,オーバークロック設定を行う「Dual Intelligent Processors 5」機能に,CPUの電圧制御で言及したTPUの設定が用意されており,UEFIと連動する形でBCLK Frequencyの設定を行えるようになった。これは,Skylakeに対応したZ170 PRO GAMINGならではの要素といえそうだ。
AI Suite 3にはほかにも,EPUから電源プランを細かく調節したり,DIGI+ VRMから電源フェーズ設定を適宜変更できたりする機能が用意されている。細かく調整したいときに,それらの設定がどのような意味を持つのかが,画面の右側に表示されているのもありがたい。
日本語による説明を見ながら各種設定を変更できるため,UEFIから設定するよりも,AI Suite 3のほうが変更は容易だろう。
明滅させたり,流れるように動かしたりといった程度の調整しかできず,色も赤色のみだが,「ゲーマー向けマザーボードは光らないと!」という考えの人には歓迎されるかもしれない。
高価すぎず,基本機能が充実したZ170 PRO GAMING。ゲーマー向けの定番Z170マザーとなるか
前世代でZ97-PRO GAMERが好評を博したように,シリーズ化されての第1弾となるZ170 PRO GAMINGも,Skylake対応のゲーマー向けマザーボードとして,定番的な存在となりそうである。
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ASUSのZ170 PRO GAMING製品情報ページ
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