インタビュー
今を代表するバトルプランナー陣が語る,格闘ゲームの作り方。アークシステムワークス×フランスパン合同座談会
そんな対戦格闘ゲームを生み出すうえで欠かせないものの一つに,バトルプランナーという役職の存在がある。ゲームシステムやバトルコンセプトを決定し,往々にしてコミュニティの議論の中心となるゲームバランスを司る,我々格闘ゲーマーにとって身近で,そして重要な役割を果たす役職だ。そんな彼らは普段何を考え,どう仕事に向き合っているのだろうか。
今回4Gamerでは,アークシステムワークスの対戦格闘ゲームでバトルデザインを担当してきたパチこと関根一利氏,遠藤良平氏,謎のマスクマン1号氏,そしてアトラスのマスクマン2号氏,フランスパンの芹沢鴨音氏といった5名に集っていただき,バトルプランナーに焦点をおいた座談会を企画してみた。
格闘ゲームのゲームデザインに必要なスキルから,システムのトレンドやキャラクターの作り方,バランス調整の在り方,さらには未来の格闘ゲームについてなど,さまざまなトピックについて話してもらったので,格闘ゲームファンはぜひご一読をいただきたい。
※The English version of this article is here.
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集まったバトルプランナー達の格闘ゲーム遍歴
4Gamer:
まずは自己紹介を兼ねつつ,皆さんの格ゲー歴からうかがわせてください。
じゃあ自分から。アークシステムワークスの統括バトルディレクターをやっている関根です。開発のキャリアとしては,「BLAZBLUE CALAMITY TRIGGER」(以下,BBCT)でのアンリミテッドキャラクターの企画,実装から制作に関わりはじめて,今は「GUILTY GEAR Xrd」(以下,GGXrd)シリーズのバトルデザインを担当しています。
格ゲー歴は……ファミコンの「キン肉マン マッスルタッグマッチ」からなので,30年ぐらい(笑)。アーケードの「ストリートファイターII」(以下,ストII)から数えるなら,24年になるのかな。当時は親の目を盗んでゲーセンに通ってましたね。
4Gamer:
では,格闘ゲームでオールタイムベストを挙げるとしたら?
パチ氏:
そこはやっぱり,ゲーメスト杯で準優勝した「サイキックフォース 2012」かな。あとは「GUILTY GEAR X」(以下,GGX)。人生のターニングポイントという意味では,その2タイトルになります。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,“統括”バトルディレクターというのは,何をどう統括しているのでしょうか。
パチ氏:
全体的な部分……例えば段位やスタイリッシュタイプなど,バトルに関わる外回りの規格の統一や,方針などを示す役割ですね。あとはバトルデザインについて,ほかのチームの相談に乗ったり,たまに口を出したりといった感じで。BLAZBLUEシリーズは,今は加藤(加藤京平氏)が中心になって回していますから。
4Gamer:
その加藤さんは,残念ながら今日は都合が合わず同席いただけなかったのですが,なんでもお手紙を預かっているとか?
遠藤良平氏(以下,遠藤氏):
はい! えー,BLAZBLUEシリーズ現メインプランナーの加藤曰く「ロジカルに考えてプレイした初めての格ゲーは『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』で,ベスト格ゲーは『GUILTY GEAR XX #RELOAD』(以下,GGXX#R)。一番やり込んだタイトルで,パチさんともここで知り合いました」とのことです。
4Gamer:
加藤さんは,闘劇の「GGXX#R」部門本戦で,あのウメハラ選手を倒したイノ使いの人ですね。ごく一部では,“神殺し”として伝説になっているとか。
パチ氏:
その神殺しを「あーくなま」で倒した完二使いが,この遠藤さんです!
ええと,私自身の自己紹介をさせていただきますと,「GUILTY GEAR2 -Overture-」(以下,GG2)のプログラマー兼プランナーとしてアークシステムワークスに入社しまして,「BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA」(以下,BBCP)ではディレクターを務めておりました。私自身のベスト格ゲーは「餓狼伝説スペシャル」(以下,ガロスペ)で,今でも会社にNEOGEOを持ち込んで遊んでたりしますね。
4Gamer:
え,現役ガロスペプレイヤーですか! ちなみに,格ゲーそのものにハマったきっかけは?
遠藤氏:
中学2年生の頃,ゲーセンで「サムライスピリッツ」に出会ったのが最初で。その流れでガロスペを遊んだら,もうめちゃくちゃ楽しくて! その後,ちょっとお金のありそうな友達を焚き付けてNEOGEOを買わせ……。
パチ氏:
格ゲーあるある(笑)。
遠藤氏:
「クリスマスプレゼントとお年玉をかき集めれば,お前なら買える! このあと『龍虎の拳2』も出るし!」って(笑)。その後,そいつの家に毎週泊まってプレイしたのがきっかけです。さすがに悪いことしたと思って,結局後から自分でも買い,そいつ含めて皆で遊びましたけどね。そこからずっとNEOGEO勢です。
4Gamer:
では,次は鴨音さん,お願いします。
フランスパンの芹沢鴨音です。「UNDER NIGHT IN-BIRTH」(以下,UNI)と「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」(以下,電撃FC)の,ディレクター兼バトルプランナー兼バトルプログラマーを担当しています。つまり,ゲームバランスが悪かったら大体自分のせい(笑)。
(一同笑)
鴨音氏:
まあそれはともかく,格ゲーを初めたのは……スーファミ版のストIIから。うちの兄が格ゲー好きで,毎日練習相手にさせられていたんですよ。
パチ氏:
ああ,うちと一緒※だね(笑)。
※いわゆるアークゲー,最近では「ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド」の強豪として知られるDIEちゃん氏は,パチ氏の実弟。
鴨音氏:
そこから自分も格ゲーにハマりまして。中高生の頃は,朝早く家を出て8時ぐらいに無理やりゲーセンを開けてもらい,登校前にしこたま遊んだあと学校で寝て,終わったらまたゲーセンに行く,というような生活でした。ゲーセン友達がたくさんできて,遠征なんかもするようになったのは「GGXX#R」のときかなあ。
4Gamer:
鴨音さんは,加藤京平さんと同じホーム(ゲームセンター)の出身なんですよね。当時は,よく対戦されましたか?
鴨音氏:
ええ,京平さんには一方的に歯軋りさせられていました(苦笑)。そのあと,「THE QUEEN OF HEART」からPC向け同人格ゲーを遊び始めて,アーケード版「MELTY BLOOD」(以下,メルブラ)にハマったといった流れです。なので,オールタイムベストを挙げるなら,「GGXX#R」と「メルブラ」ですね。
4Gamer:
分かりました。では次に……。
あ,アトラスで「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」(以下,P4U)シリーズのディレクターをやっています,謎のマスクマン2号です。今日は覆面座談会と聞いてやって来ました。
(一同笑)
マスクマン2号氏:
ええと,P4Uシリーズはアークシステムワークスさんとの共同開発で,当然格ゲー部分はアークさんが担当されているわけですが,僕はアトラス側の代表として,コンセプト部分のディレクションや,ファン目線の要望をアークさんに伝える仕事を担当しました。なので,今回の座談会の主旨からすると,ちょっと場違いかも……。
4Gamer:
ちなみに,格闘ゲームは普段から遊ばれますか?
マスクマン2号氏:
もちろん遊びます。ベスト格ゲーを挙げるなら,大学生の頃にハマった「バーチャファイター2」(以下,VF2)でしょうか。動きの一つ一つに“重さ”を感じさせるゲームで,すごく可能性を感じたんですよね。その感動がきっかけで,ゲーム業界の扉を叩くことになったという。
4Gamer:
えっ,そうなんですか?
マスクマン2号氏:
今でこそこんな格好をしていますが,業界に入った当初は,デザイナーとして3Dモデルやイベント演出を作っていたんですよ。
マスクマン1号氏:
2号さんは,アトラスに入るかどうかでかなり迷われたと聞いています。
マスクマン2号氏:
ああ,当時はプロレスラーになるか,ゲームクリエイターになるかで,ちょっと悩んでまして。
一同:
すごい二択だ!
マスクマン2号氏:
当時はムービー用のCGをレンダリングするのに,ものすごい時間がかかる時代でして,就職活動用のサンプルを作りながら,待っている時間で筋トレをしてました。3Dモデルを作りながら,体も作るという感じで。
パチ氏:
そう聞くと,VF2っていうのはしっくりきますね。
あ,申し遅れました。P4Uシリーズのバトルプランナー兼ディレクターをやっている,アークシステムワークスの謎のマスクマン1号です。アークシステムワークスに入社したのが「GUILTY GEAR XX / -SLASH-」の頃で,それからずっと格闘ゲームの制作に携わっています。
パチ氏:
彼の家にはですね,コンシューマゲーム機の格ゲーがたくさんあって,遊びに行くたびに色んな“グルメな”ゲームを出してくれるんですよ!
マスクマン1号氏:
コンシューマのキャラもの格ゲーって,良い意味でバトルデザインが雑なものが多くて(笑)。どこかしらに尖ったところがあるゲームが好きなんです。
4Gamer:
ゲーセンよりコンシューマ派なんですか?
マスクマン1号氏:
格闘ゲームに触れたのは,やっぱりストIIが最初ですが……出身が広島なので,近くにゲームセンターがなくって。駄菓子屋のMVS筐体でSNKのゲームを遊んだり,「ジョイメカファイト」や「ドラゴンボールZ 超武闘伝」「幽☆遊☆白書2 格闘の章」といったコンシューマゲーム機のタイトルをメインに遊んでいました。
4Gamer:
なるほど。では,その中でベストグルメを挙げるとしたら?
マスクマン1号氏:
グルメな方ですか? それなら……PlayStation 2の「魁!! 男塾」かなあ。20キャラ前後から3人を選んでチームで戦うゲームなんですが,キャラクター交代時の跳び蹴りの発生がめちゃくちゃ早くて。相手を1人倒した瞬間に,なぜかこっちが飛び蹴りを食らっているという(笑)。
パチ氏:
しかも,そこから永パ(※永久コンボ)にいけるんだよね(苦笑)。
マスクマン1号氏:
ある意味,ものすごくスピーディなゲームで,そこが面白い!
4Gamer:
一応,オールタイムベストのほうも聞かせてもらえますか(笑)。
マスクマン1号氏:
真面目に選ぶなら,「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」(以下,3rd)ですね。ブロッキングのおかげで,遊ぶたびに上達を感じられるのが楽しくて,本格的にゲーセン通いを始めるきっかけにもなりました。それこそ,アークの面接を受けたとき,「好きな格ゲーは3rdです」と答えたぐらいで。社長から「ギルティじゃないんかい!」ってツッコまれましたけど……嘘はつけなくて(笑)。
バトルプランナーに必要なスキルとは
4Gamer:
自己紹介も済んだところで,ここからは各論に移っていきたいのですが……実は今回,日本の格闘ゲーム制作者にどんなことを聞いてみたいか,海外の格闘ゲームコミュニティで質問を募ってみたんです。そこで一番多かったのが……「どうすればバトルプランナーになれるの?」という質問でした。
マスクマン1号氏:
それはやっぱり,格闘ゲームを作っている会社の面接を受ける……んじゃない?
遠藤氏:
まあ,それが普通ですよね。僕の場合は,転職を考えていたときに石渡さん(ギルティギアシリーズディレクター 石渡太輔氏)に声をかけてもらったのが,アークシステムワークスに入社したきっかけです。
4Gamer:
ちなみに,どんなお誘いだったのでしょうか。
遠藤氏:
「ギルティギアの最新作を作るんだけど,どう?」って言われて。それで格闘ゲームを作る気で入ったら,GG2だったんですけど(笑)。
4Gamer:
RTSじゃんっていう(笑)。ともあれ,お二人の場合は,普通に就職してバトルプランナーになったパターンだと。一方で,パチさんと鴨音さんはプレイヤー出身のバトルプランナーですよね。
鴨音氏:
僕の場合は,自分のWebサイトで,当時プレイしていたゲームの攻略みたいなことを書いていて,それがきっかけです。攻略というか,「これ永パじゃん,浅いじゃん」みたいなアラ探しばっかりで……今思うと,かなり痛い子でしたね(苦笑)。
4Gamer:
「MELTY BLOOD」の頃ですか?
鴨音氏:
今に直接つながっているのは,「MELTY BLOOD Re・ACT」ですね。発売当時,毎日アラを探しては,調整案を考えてサイトに掲載していたんですが,それがそのまま反映された形でバランスを修正したパッチが出てきた。そうこうしているウチに,いつの間にかフランスパンの中に引っ張り込まれて,作る側にまわっていたという。
パチ氏:
俺の場合は,ゲームライター時代にアークによく取材に来ていて,そこで「今度こういうのがあるんだけど,手伝ってもらえない?」という話をもらったのがきっかけですね。
遠藤氏:
制作側としては,やっぱりコアな意見も欲しいですから,上級プレイヤー達を呼んでヒアリングする場を作ることがあります。そういった関わりの中から,良さそうな人を採用することはありますね。
4Gamer:
この,「どうすればバトルプランナーになれるの?」という質問で彼らが聞きたいのは,バトルプランナーにはどういうスキルが求められるのか,ということだと思うんです。もちろんゲーム制作は共同作業ですから,いわゆるコミュニケーション能力とかは必須だと思いますが……。
パチ氏:
いやむしろ,それが一番大事ですから。プランナーは人にどう伝えるか,どう伝わるかを意識することが大切で,そこがダメだったらいくら格ゲーがうまくても採れません。批判するのは簡単だけど,具体的にどう良くすべきかを示せないと。あとは……余計なことをインターネットに書かない!
4Gamer:
確かに(苦笑)。ではちょっと聞き方を変えて,作り手に回ったことで,初めて得られた視点とかってあるでしょうか。
マスクマン1号氏:
自分は技術面への興味が大きくなりましたね。制作中は処理落ちだったりバグだったりがたくさん出てくるので,ほかのゲームを遊ぶときも,そういった問題に“どうやって対処しているのか”を観察するようになりました。
パチ氏:
攻略ライターをしていた頃の話ですが,格闘ゲーム作りのノウハウという意味では,そこで多くのことを学んだ気がします。攻略というのは,ゲームを分解していく仕事ですから。自分の場合,格ゲーのみならず,ジャンルを問わず色々なメーカーのデバッグロムを触らせてもらっていたので,それがすごく勉強になったかな。
鴨音氏:
僕の場合は,Webに調整案を載せていた頃から,各キャラクターの強さを平等に揃えるのではなく,キャラごとの個性を残すにはどうすれば良いかをずっと考えていました。それがきっかけで,バトルバランスに関する視野は広がったように思います。
4Gamer:
ちなみに,そのときの調整案を今振り返ってみると,どう感じていますか。
鴨音氏:
今考えると……浅かったですね(苦笑)。それなりにまとまっていたとは思いますが,もっと個性を出したり,コンセプトを活かしたりすべきだった。
パチ氏:
自分も作り手に回ってからは,そのキャラでしか味わえない見せ場の作り方や,演出を考えることが多くなりました。尖っているところを丸める方向でバランスをとっていくと,結果的にどのキャラクターもプレイフィールが似てしまいます。それでバランスが良くなったとしても……ねえ?
マスクマン1号氏:
極端な話をすると,ゲームバランスがものすごく悪くても,プレイヤーが面白いと言ってくれるならそれで良いわけです。もちろん商品としてバグはなくすべきですし,多くの人に長く遊んでもらうためにはバランスも重要です。でも,面白くないゲームは触ってすらもらえないですから。
パチ氏:
ゲームは結局,体験だからね。
4Gamer:
キャラクターの個性につながると思うのですが,格闘ゲームのキャラクターを制作するときって,どういう風にコンセプトを考えていくのでしょうか。例えばキャラクターのビジュアルありきで,それに合ったバトルコンセプトを考えていくのか,あるいはその逆なのか,とか。
パチ氏:
うちの場合はキャラクターデザインありきですね。ストーリーや性格といったものも含めた設定があって,そこからバトルデザイン──仕様を切っていくという流れです。
4Gamer:
以前のインタビューでも,GGXrdのベッドマンはまさにそのパターンだったとおっしゃってましたね(関連記事)。
パチ氏:
ごく稀に,キャラクターデザインより先にバトルコンセプトを考えることもあります。(GGXrdの)ラムレザルなんかはそのパターンで,デザインより先に「二刀流で戦うキャラクター」であることが決まっていました。あと(BBCPの)アズラエルも,完全にバトルコンセプトありきのキャラクターですね。
マスクマン1号氏:
キャラクターデザインの細かい部分が決まる前に,大まかなバトルデザインを考えておくことはよくありますね。そのうえで,FIXしたデザインに摺り合わせていくという。
鴨音氏:
僕らも基本的にはアークさんと同じで,どちらかといえばデザインありきです。ただ,ウチの場合はスタッフが少ないこともあって,デザインの作業が始まる前に,大まかなバトル仕様をデザイナーさんに伝えておくことが多いかも。例えばバージョンアップで新キャラが2名追加されるなら,一方はスタンダードタイプで,もう一方はちょっとテクニカル寄り,といったように。
4Gamer:
その方式だと,デザイナー側にもバトルデザインの知識が必要になりませんか?
鴨音氏:
実際には,もう少し具体的なんですよ。全体の顔ぶれを眺めたうえで,「こういうキャラクターだとまとまりやすい」「持っている武器が長いとちょっと困る」「身長が高いとマズい」といった要望をプランナーのほうから提案するという。
パチ氏:
身長は重要だよね。そこでだいたいの技のリーチが決まっちゃうから。
鴨音氏:
ええ。身長が低くて格闘技で戦うキャラクターというのも,それはそれで調整が面倒なんですよね。とはいえ,最終的にはキャラクターデザインと言っていいと思います。
4Gamer:
BBCPのアマネは,確か声優の杉田さん(ラグナ役の杉田智和氏)が森P(BBシリーズプロデューサー・森 利道氏)に送ったメールが原案だったとか。ケズりでダメージを与えていくというコンセプトは,バトルデザイン先行といっていいですよね(関連記事)。
パチ氏:
そうそう。あれは杉田さんのメールに「ドリルでケズるキャラクターなんですよ!」と書いてあって,それをそのまま採用したんです。……いやあ,あれはチューニングが大変だった。ケズりが強いっていうのは,つまりガードしてはいけないってことで,それ自体が格闘ゲームの理から外れてるんですね。だから,かなり繊細な調整を心がけました。
4Gamer:
P4Uや電撃FCのように,原作がある場合はいかがですか。
マスクマン1号氏:
P4Uは元がRPGということもあり,そもそも戦えるキャラクターばかりだったから,あまり苦労はありませんでしたね。ステータスの設定もあるので,基本的には原作に沿う形でバトルデザインをまとめていきました。
鴨音氏:
電撃FCは,原作ファンの方が持っているキャラクターイメージをしっかり調査して,その印象を崩さないことを第一に考えました。ただ,高坂桐乃や湊 智花のように,「本当に殴り合っていいの?」というキャラクターもいて,そこはかなり悩みました。とくに智花なんてJS(女子小学生)ですからね。
パチ氏:
智花は,本当によく出せたよね。
鴨音氏:
智花は,元々自分が原作を読み込んでいたこともあって,原作のテーマ……というか自分の感想をそのままキャラクターに落とし込むことにしたんです。「……そうだよね,みんなでバスケできたのが良かったよね!」っていう(笑)。だからバスケをしてたら,たまたま相手がダメージを受けている,みたいな形になっています。
マスクマン2号氏:
P4Uでも久慈川りせを追加するときは,アークさんと綿密な打ち合わせをしました。彼女のように元々戦わないキャラクターを参戦させる場合は,鴨音さんの言うように,いかに原作のイメージを壊さず,“オチ”をつけるかが大事になると思います。
パチ氏:
そういえばあれ,マーガレットのスープレックスは誰の趣味なの?
マスクマン2号氏:
あれは,1号さんが勝手に……。
マスクマン1号氏:
勝手に,じゃないですよ! 「マーガレットにスープレックスさせていいですか?」って聞いたとき,ちゃんとOKしてくれたじゃないですか。……丁度良かったんですよ。
パチ氏:
何が丁度良いのか,全然分からないんだけど(笑)。
マスクマン1号氏:
いや,タイトルにスープレックスって入っているから,誰かにスープレックスを使わせないわけにはいかないじゃないですか。で,マーガレットはお話の中でもかなりぶっ飛んだことをやっていたりするし,アリなんじゃないかって。原作ものはキャラクターイメージとアクションを合致させなくちゃいけないので,そこはどうしても難しいところですね。
「Anime Game」=「Air Dasher」?
4Gamer:
これも海外からの質問ですが,「Anime Gameは何故,Air Dasherになりがちなのか」というのがあります。
鴨音氏:
「ストリートファイター」や「Mortal Kombat」(以下,モーコン)のようなクラシカルなバトルデザインのシリーズを除いたら,今は概ねAir Dasherですよね。
4Gamer:
そうかもしれません。ただ面白いのは,海外ではこの二つのスラングが,ほぼ同じ意味の言葉として使われているところで。なので,今日お集まりいただいた皆さんが手がけているタイトルは,Anime GameでAir Dasherということになります。
パチ氏:
日本ではそういう括り方はあんまりしないよね。アークゲーとかフラパンゲー,エクサムゲーみたいな感じで,メーカーで語ることが多いから。でもさ,それなら「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」(以下,UMvC3)もAnime Gameなの?
4Gamer:
UMvC3は日本人から見るとこれぞAnime Gameという感じですが,どうもそこがボーダーみたいで,意見の分かれるところです。
マスクマン1号氏:
アニメっぽいビジュアルだと空中ダッシュができるようになるのは,やっぱり見た目との親和性じゃないですかね。実はBBCTでも,制作当初は空中ダッシュやハイジャンプがないプロトタイプを作っているんです。ギルティギアシリーズとは違うものにしようということで。でも,それだと全然面白くないんですよね。
鴨音氏:
ああ,UNIもプロトタイプの時点では,もっとじっくり地上で差し合いをやるようなゲームでした。でも,やっぱりキャラクターの見た目と合わないんです。バトル部分がストイックだと,モーションや性能の制限が多くて。「え……,虚ろの夜の人達って,なんか弱そうじゃない?」って,世界観までそっちに引っ張られかねない。
マスクマン1号氏:
逆に,(ストIIの)リュウが空中ダッシュしてたら,ちょっと違和感があるじゃないですか。UMvC3はうまくやってますが,それでも違和感は覚えてしまう。ストイックなバトルデザインの格闘ゲームは,やっぱり世界観もストイックでなくちゃ。
4Gamer:
なるほど。キャラクターのデザインによってバトルコンセプトが決まるように,世界観によって,全体のバトルデザインが決まるわけですか。
パチ氏:
もっと単純な話をすると,格闘ゲームはそもそもアクションゲームなんだから,好きに動き回れた方が楽しいわけです。もちろん,ストイックに我慢を重ねるが故の面白さもあるんだけど,そういう格ゲーはほかにあるので,だったら違うものを作りたい。……となると,空も自由に飛びたくなるってもんです。
(一同笑)
4Gamer:
ちなみにストイックでクラシカルな格闘ゲームを作りたい,と思うことはありませんか?
パチ氏:
うちの会社の場合,「バトルファンタジア」がクラシカルなタイプだよね。
マスクマン1号氏:
あれは当時,2D格闘ゲームを3Dグラフィックスで表現することに挑戦したタイトルなんですね。開発中にいわゆるチェーンコンボのシステムを入れてみたことがあったんですが,3Dグラフィックスだからか,モーションが途中でキャンセルされると気持ち悪くなってしまった。あれはそういう理由から,ストイックなゲームデザインになっています。
4Gamer:
うむむ,やはりバトルデザインはビジュアル面からの要求で決まるものなのですね。
パチ氏:
もし今Anime Gameでないものを作るとしたら,個人的にはモーコンを作ってみたいかな。ストリートファイターにはもう確固たるデザインがあるから,あまり自由には作れなそうだし。モーコンのほうが楽しそう。
4Gamer:
おお! いいじゃないですか。
マスクマン1号氏:
でもアークが作ったら,やっぱりアーク風のAnime Gameになるんじゃない? 僕は以前に「Hard Core Uprising」※に関わったことがあるけど,あれもいつの間にか空中ダッシュや2段ジャンプができるようになってたからね。「あれ? 魂斗羅じゃないの?」ってなったから(笑)。
※KONAMIから発売された,魂斗羅シリーズの精神的後継作。アークシステムワークスが開発を担当した。
パチ氏:
そうかもしれない(笑)。でも「スカルガールズ」みたいに日本を意識して作った海外の格闘ゲームも出てきたわけだし,海外を意識した日本の格闘ゲームがあってもいいと思う。外伝でも良いので,ぜひアークシステムワークスに「モータルコンバット The Animation」のオファーを!
4Gamer:
なんとなく,「ニンジャスレイヤー」みたいな雰囲気のゲームになりそうですね。
パチ氏:
ありえるかも(笑)。
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