プレイレポート
ロールバックネットコード「GGPO」で快適なオンライン対戦が実現。Steam版「GUILTY GEAR XX AC+R」のパブリックβテストレポート
なお,本記事では,前半はロールバックネットコードについての解説を行い,後半で動画と共に実際のプレイフィールを記載する。手っ取り早くプレイフィールを確認したい人は後半から読み進めてもらってもいいだろう。
「GUILTY GEAR XX ΛCORE PLUS R」公式サイト
ロールバックネットコード「GGPO」とは
GGPOとは,格闘ゲームトーナメント「Evolution」の生みの親の1人として知られるTony Cannon氏が開発したネットコードとそのミドルウェアだ。2019年10月にMITライセンスの元でオープンソース化されている。
これまで国内の格闘ゲームで主流とされてきた「ディレイ方式」のネットコードは,お互いに優良な通信環境であれば快適な対戦を行えたが,個人の通信環境に影響される部分が大きく,常に遅延問題がつきまとってきた。その遅延を徹底的に排除する仕組みとして作られたものが,今回βテストで実装されたGGPOだ。
ロールバックネットコードの仕組みを説明する前に,ディレイ方式のネットコードについて説明する必要があるだろう。ディレイ方式は,簡単に言ってしまえば「意図的な遅延を加えて同期を取る」仕組みのことだ。重要なのは対戦相手とのPing値※で,この数値が高くなるほど“意図的な遅延”が大きくかかり,ボタンを押してから画面に反映されるまでの動作に違和感を覚えてしまう。
※Ping値:インターネット通信におけるデータ送受信の応答速度のこと。数値が低いほど応答速度が優れている
また,Ping値は常に一定ではないため,一時的にPing値が高くなった場合は意図的な遅延に加えて,一方の画面を停止して同期を維持する必要が出てくる。対戦中に突然不安定になる挙動の原因の多くはこれであり,操作ミス,ひいてはネット対戦のストレスにつながってしまうわけだ。
意図的に遅延させて帳尻を合わせるディレイ方式に対し,ロールバックネットコードは,「遅延している側のフレームをスキップして画面に表示する」仕組みとなっている。ここで重要となるのは“自分の操作に意図的な遅延が追加されない”ことで,これがロールバックネットコードの最大の特徴と言っても差し支えないだろう。
ただし,オンライン対戦の問題をすべて解決できるほどロールバックネットコードは万能ではない。通信が不安定な相手との対戦でPing値が跳ね上がってしまった際に,ゲーム画面を止めずに同期を維持するため,相手キャラクターがコマ跳び(ワープ)したように見えてしまう。もちろん,それを差し引いても自身のキャラクターの操作に影響が少ないというメリットは大きく,極端に通信環境が悪い相手と対戦をしなければ,デメリットを感じることはないはずだ。
また,ディレイ方式が国内では主流と紹介したが,すでに海外ではさまざまなタイトルでロールバックネットコードが導入され,多くのプレイヤーに支持されている。それを受けてか国内でも,「ストリートファイターIII 3rd STRIKE ONLINE EDITION」や「スカルガールズ」などのタイトルで導入されているほか,2021年4月9日に発売予定の「GUILTY GEAR -STRIVE-」でも導入が発表されている。
今後,国内のプレイヤーから好意的な意見が寄せられれば,国内のオンライン対戦の主流がロールバックネットコードに移っていく可能性も決して低くはないだろう。
想像を超えた快適なオンライン体験が実現
前置きが長くなったが,ここからは実際にβテストに参加して得られたプレイフィールを対戦動画と共に紹介する。オンライン対戦では物理的な距離や回線相性により,Ping値が大きく変動してしまうため,今回は4パターンのPing値それぞれのプレイフィールをお伝えしたい。
平均Ping値30以下は,今回のβテストでもっとも遅延を感じなかった対戦環境に該当する。国内同士やネットワーク相性がいい相手であればほとんどがこの数値に落ち着くが,遅延はほとんど感じられず,入力猶予が2フレームしかないフォースロマンキャンセルを絡めた高難度の連続技も問題なく決められた。言い過ぎかもしれないが,ゲームセンターの筐体で遊ぶのとほとんど変わらないほど快適なオンライン対戦を楽しめるだろう。
回線相性がやや悪い相手の場合,平均Ping値は60程度に上がってしまうが,30以下の場合と変わらず,シビアな入力のフォースロマンキャンセルやリバーサル必殺技も繰り出せた。このあたりは,自分の操作に意図的な遅延が追加されないロールバックネットコードの利点が強く出ている部分だろう。目立ったコマ跳びも見られなかったので,対戦するうえで大きな支障は出るようには感じられなかった。
平均Ping値100付近からはロールバックネットコードの欠点ともいえるコマ跳びが見られてくる。自身の操作自体に違和感はないが,要所でフレームが飛んでしまい,キャラクターがワープするように見えてしまうため,確定反撃や対空といった精度が要求される動きは難しく感じられた。
おそらくは海外かつ回線相性が悪い相手との数値になると思われるが,平均Ping値300超は,常にキャラクターがワープしているような状態となり,格闘ゲームの対戦として成立するレベルにはならない。ただし,この場合でも自身の操作はフレーム通りに動くので,簡単な連続技であれば問題なく決められる。この点はディレイ方式と大きく異なる部分となっている。
以上がβテストレポートとなる。「GUILTY GEAR XX AC+R」は格闘ゲームのなかで特にシビアな入力や操作が要求されるタイトルだが,対戦相手との回線相性に問題がなければ,オフラインのような感覚で対戦を楽しめた。
また,βテストは前述したとおり,11月16日まで期間延長されているうえ,シリーズでも傑作と言われる「GUILTY GEAR XX AC」でもオンライン対戦が可能となっている。久しぶりに本作を遊びたい人やGGPOでのオンライン対戦を体感してみたい人はぜひβテストに参加して,開発に意見を届けてほしい。
「GUILTY GEAR XX ΛCORE PLUS R」公式サイト
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