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男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた
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印刷2016/01/16 00:00

インタビュー

男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた

一度決めた「コンセプト」と「方針」は一切ブレていません


男色ディーノ:
 ところで,お二人が考える三國志シリーズの魅力や面白さとは?

利川氏:
 そうですね……三国志の世界に自分が入って歴史を左右するところや,プレイヤー自身の三国志観がゲームを通じてどんどん広がっていくところが魅力だと思います。

画像集 No.011のサムネイル画像 / 男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた
鈴木氏:
 三国志を追体験できるところですね。官渡の戦いや赤壁の戦いのエピソードを初めて聞いた時は「すげえ!」と誰しもが感じたのではないかと思うんですよ。そういったドラマチックな戦いや歴史を自分の手で動かせるのがこのゲームの面白さだと思います。

男色ディーノ:
 やっぱり三国志の世界を体験できることなのね。その世界を表現するためのハードも,これまでにどんどん進化しているけど,それに伴ってできることは増えたと思うの。今回,進化によって三國志13で初めてできたっていうことは何なのかしら。

利川氏:
 うーん,やはり相関図ですね。

男色ディーノ:
 なるほど。膨大なデータでしょうし,ある意味,力押しだものね……。この企画を初めて見たときに鈴木さんはどう思ったの?

鈴木氏:
 正直なところ,最初に提案を見たときに「できるのこれ?」と思いました。700人以上いる武将の関係を表現することになるので。

利川氏:
 すみません,私が提案者です(笑)。ただ,やりきるしかないと思って頑張りました。

男色ディーノ:
 それはかっこいいわね。これは構想として元々温めていたものなの? それともふと思いついたのかしら。

利川氏:
 コンセプトを練り上げる段階で,ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウから「三国志は人間ドラマだ」ということを伝えられ、何とかこれまでとは違った形で表現できないかを考えた時に出てきたのがこの「相関図」でした。

男色ディーノ:
 先ほど,“勢力をダイナミックに動かす面白さ”といった話があったけど,基本的に三国志の世界観に忠実とは言え,ゲイムである以上,面白さのためにウソをついている部分もあるわけじゃない。例えば,情報の伝達は当時だと凄く時間がかかっていたはずだけど,ゲイム内だと一瞬だったりする。そういったエンターテイメントの部分と世界観の部分を天秤にかけて,どちらを取るかという判断基準はどこに置かれるのかしら。

利川氏:
 三國志13に限りませんが,どのタイトルも世界観についてはとても気を配っていると思います。一方で確かにゲーム的な表現というのは存在するので,そこは,そのゲームの楽しみをどこに据えるのかを考えながらのギリギリの判断になります。他勢力の武将能力が見えるのが良い例です。

男色ディーノ:
 相手勢力のパラメータなんて,現実じゃ分からないわよね。

利川氏:
 ええ。ですが,「相関図」を見たり,プレイヤーが目標を立てたりするためには,各勢力の情報をオープンにしたほうが良いと判断して採用しました。
 その一方で,リアルな部分は残していて……例えば任務状で指示を出した武将は,一瞬で街を移動しているわけではなく,内部的にしっかりと時間をかけて移動しているんですよ。ちゃんと,コツコツと任務を果たしているというのをシミュレートしないといけませんから。

男色ディーノ:
 なるほど。いや,いろいろお話を聞いていると,三國志13は太閤立志伝シリーズに近いイメージを感じるのですが,まったく別物と考えたほうが良いのかしら?

利川氏:
 別物で考えてほしいですね。

男色ディーノ:
 でも光栄(コーエー)マニアとしては,全武将プレイと言われると真っ先に太閤立志伝シリーズが頭に浮かんでしまうの。ほかにもそんな人がいるんじゃないかと。そういう人に対して,三國志13ならではの武将プレイの楽しみ方や要素を教えてちょうだい。実はちょっと突き放してほしい部分もあってね。「過去に縛られるな!」って(笑)。

画像集 No.010のサムネイル画像 / 男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた

一同:(笑)

利川氏:
 そうですね。太閤立志伝とはよく社内でも比べられますし,ファンの皆さんから続編を望む声も多いです。太閤立志伝は武将や商人など,いろいろな立場から自由気ままに戦国時代を楽しめるところが魅力のゲームですが,三國志13の武将プレイは,中華統一を大前提にやれることを絞り,それぞれを深めていますから。

男色ディーノ:
 その時代を楽しむ作品と統一を目指す作品とで,テーマがそもそも違うというわけね。その深くなった部分は,一ファンとしては早くプレイして,いろいろと試してみたいわね。
 そういえば,今回新しく英傑伝というモードが搭載されているけど,これはどのような位置づけなの?

鈴木氏:
 英傑伝は三国志のストーリーを楽しんでもらうことが目的で,時系列ごとに主人公を変えながら歴史を追体験できるモードになります。

男色ディーノ:
 追体験ということは史実と異なる行動は取れない?

鈴木氏:
 史実どおりではない行動は,ほぼとれないですね。あくまで追体験がコンセプトですし,チュートリアルも兼ねているので,できることはあえて狭めています。

男色ディーノ:
 なるほど,チュートリアルなのね。

利川氏:
 ええ。三国志演義の流れは,チュートリアルにぴったりなんですよ。劉備は何も持っていないところから始まりますし,桃園の誓いで絆システムの説明。少し勢力が大きくなったと思ったら曹操という強敵が出てくる。

男色ディーノ:
 段階的にできることが増えていくあたり,たしかにぴったりね。

画像集 No.012のサムネイル画像 / 男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた
利川氏:
 シミュレーションゲームはシステムが複雑じゃないですか。それにどうやったら馴染んでもらえるかを考えたとき,出てきたのがこの英傑伝でした。30周年の節目ですし,新規の人や,しばらく三國志に触れていなかった人に,改めて三国志の流れを掴んでもらいながら,ゲームの遊び方も学べるというのがコンセプトです。

男色ディーノ:
 30周年というワードが聞こえたけど,シリーズ30周年でどのようなことを意識されたのでしょう。

鈴木氏:
 先ほどの話にもあったように,昔は三國志をプレイしていたけど,今はプレイしていないという人にどうやったらまた遊んでもらえるか……ということですね。ですから,分かりやすさと奥深さの共存は意識しました。

男色ディーノ:
 するとターゲットは,過去に三國志をプレイしていた人になるのかしら。

鈴木氏:
 一番はそこですね。昔はプレイヤーだったけど,今は遊んでいないという人はたくさんいますから。そう考えると30代,40代くらいの男性がターゲットになるでしょうね。

男色ディーノ:
 まさに私ね(笑)。逆に今の若年層は,三国志をどう思っているのかなと疑問に思ったりするんだけど。

鈴木氏:
 もともと三国志は,日本でIPとしてかなり強いんです。現にスマホ向けのゲームにも三国志を題材にしたものがたくさんありますよね。ですから,三国志という名前は知っているし,概要も何となくだけど知っているという若い人は,かなりいらっしゃると思います。そういう人に「三国志ゲームのベーシックな形はこうですよ」という提示が出来ればと考えていますね。

男色ディーノ:
 ただ,三國志シリーズってどうしても複雑なイメージを持たれてしまうとは思うの。そのあたりはある程度割り切って作ってる?

鈴木氏:
 そんな事はないですよ。逆に難しそうと思っている人に「一度手に取ってやってみてください」とおすすめしたいです。先ほども話題にあがっていましたが,今回は昔のようにコマンドがたくさん用意されていて,一つ一つを細かく指示できますが,勢力の方針を決めて後は部下に任せることもできますから。

利川氏:
 今作は,無骨に王道を行くという思いで作っています。プロデューサーが話したとおり,浅く遊びたい人,深く遊びたい人どちらも楽しめる内容になっています。

男色ディーノ:
 では,具体的に初心者,中級者,上級者それぞれのプレイヤーに楽しみ方を教えていただけますか。

鈴木氏:
 初心者はまず英傑伝をプレイすることをお勧めします。三国志を追体験しながらゲームのハウツーが分かるので,これだけでも十分に楽しめます。そこから三国志の世界を広げてもらえればと思います。

男色ディーノ:
 初心者の人に「三國志13は難しくないよ」と,言い切ってしまっていいわけね?

鈴木氏:
 はい。次に,中級者の人は細かく決めたいところは自分でプレイして,任せたいところは任務状で部下に命じる。といった良いとこ取りのプレイを楽しんでください。

男色ディーノ:
 部下に委任して作業を簡略化すると,どうしても喜びが薄れてしまう部分が出てくると思うんだけど,そのあたりは何か意識されているのかしら。

画像集 No.013のサムネイル画像 / 男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた
鈴木氏:
 プレイのフィードバックがただの数値の変動だけだと味気ないので,命じた任務の作業途中の様子が見られるようになっています。例えば,内政を命じるとそこで実際に部下が作業を始めます。途中で部下が「作業がはかどっていない」と独り言をつぶやくこともあって,そのときプレイヤーが介入して手伝うこともできます。

男色ディーノ:
 任せた後も見ているだけではなくて,介入できるんだ。

鈴木氏:
 ええ。さらに上級者には「相関図」に注目してほしいと思います。先ほど説明したように,今回は外交に関しても根回しをしたり,直接交渉する前に回りの人間関係から固めていけるので,これをほかのゲームシステムとうまく絡めて利用することでプレイの幅が大きく広がると思います。

利川氏:
 あとは三国志の世界を知っていると,人物の関係図でニヤニヤできるんじゃないかと。ほかにも“実際にはあり得ないifの絆関係”を結んでみるというマニアな遊びもできますよ。

男色ディーノ:
 そうした面白さを追求するために,やはり開発途中には言い合いやぶつかり合いもあったんでしょう?

利川氏:
 たくさんありましたね。やはり物づくりの現場では避けて通れないと思います。

男色ディーノ:
 二者の意見がぶつかったときにどちらの意見を取るかを決める基準は何だったの?

利川氏:
 ゲームを作るにあたってコンセプトと方針を決めているのですが,それを物差しにして判断しました。例を挙げると,戦闘システムで「陣に特殊効果を持たせたい」という意見があっても,「今回は士気がコンセプトで,その狙いがボヤケてしまうから見送ろう」といった具合です。陣の特殊効果はとても良いアイデアですが,士気システムと共存させるとお互いの要素がぶつかってしまい,“なぜそうなったのか”や“次にどうすればいいのか”といった,戦局判断がしづらくなることを嫌いました。ほかにも,世界観の説得力を損ないたくなかったことも大きな理由です。

男色ディーノ:
 折衷案をとるという手段は……。

鈴木氏:
 それはないです。実のところ折衷案は,中途半端で結局一番ダメな案であることが多いので。

男色ディーノ:
 なるほど,最初に決めたコンセプトが非常に重要だということなのね。

鈴木氏:
 ですから,コンセプトや方針はじっくりと時間をかけて決めました。そのかわり,一度決めたらそれはもうブレることなく守り続けました。合致しないものは切り,足りないものは補うという形で。

男色ディーノ:
 不安はありませんでしたか。

鈴木氏:
 ディレクターもゲーム制作に携わっている期間が長いので,不安はなかったです。若いころは,自分の判断に対してプレイヤーがどう反応するのかというイメージが浮かばないし,それが正しいかどうかも分からなかったのでものすごく不安でしたけど。ですが,経験を積んでいくうちに“ブレる”ことが一番ダメなのだと分かってきましたからね。

利川氏:
 一度どこかを変えると,その影響がいろいろな部分に波及していくので,結局全体を見直さないとダメになるんですよ。逆に決められたコンセプトを活かすような案については積極的に採用しました。

男色ディーノ:
 目指しているものが,最後まで揺らがなかったという強みがあるのね。

利川氏:
 大規模な開発なのに,手戻り(※作業工程のやり直し)はほとんどありませんでした。それとは別に,私が一番不安を感じていたのは三国志のスケール感が表現できているのかという部分でした。三國志シリーズのツボをちゃんと押さえようと頑張ってはいたのですが,最後に全体を見たときに,それがしっかり描けているか。見通しが付くまではピリピリしていましたね。

男色ディーノ:
 でも私の第一印象では,三國志13のスケール感は過去一番だと思うわよ。

利川氏:
 ありがとうございます。その言葉で開発スタッフも報われると思います。

男色ディーノ:
 今作は,これまで以上に遊んでしまいそうな予感がするもの。

鈴木氏:
 今回は,本当にいろいろな武将で遊びたくなるようなシステムになっていますよ。プロデューサーの私が自分で言うのも何ですが(笑)。私は三國志シリーズは,繰り返しプレイすることも一つの醍醐味だと思っています。有名どころの武将で統一した後に「厳白虎でやってみるか」みたいな。

男色ディーノ:
 そう,それよ! 俺TUEEEE!とマゾプレイ,どちらもあるわよね。じゃあ,いっそ聞いてしまうけど,今回,俺TUEEEE!を味わいたい場合は,どの武将を使ってどの時代でプレイするのがお勧めなの?

画像集 No.023のサムネイル画像 / 男色ディーノが「三國志13」のプロデューサー鈴木氏,ディレクター利川氏にインタビュー。ファン目線で本作の面白さを探ってみた

利川氏:
 王道でいくなら,やはり群雄割拠以降の足場が固まった曹操が強いですね。人材も揃っていますし,「どうやって敵を倒すか」という段階を越えた「どう敵を料理してやろうか」という遊びが楽しめます。あともう少し深めるなら,すべて自分で決めるのではなくて,夏侯淵なんかを都督にして任せてみるといった楽しみ方もできます。

男色ディーノ:
 逆にマゾプレイでは,今回一番過酷なシチュエーションは,どの時代のどの武将?

利川氏:
 先ほど鈴木が厳白虎でプレイすると言っていましたが,私もバランス調整のテストプレイで高い難度が欲しいときは,王朗や厳白虎のような揚州の小さい勢力で始めるんです。人はいないし……周りは敵だらけだし辛いと思いますよ。その勢力の一配下で始めようものなら,もうマゾ中のマゾでしょうね(笑)。

男色ディーノ:
 マゾプレイマニアは注目ね。じゃあ,一番スタンダードなのはやっぱり劉備なのかしらね。

利川氏:
 劉備は初期の勢力としては小さいですが,配下が優秀で思いどおりに物事が進められるので,勢力を拡大していく楽しさが味わえると思います。

男色ディーノ:
 ある意味,王道のサクセスストーリーよね。そういえば,今作にも武将を○○人登用するとコンテンツが開放されるといったやりこみ部分はあるのかしら?

利川氏:
 あります。シナリオをクリアしたら新しいシナリオが開放されたり,エディット用の武将CGが獲得できたりという実績ボーナスにあたる要素も準備しています。

男色ディーノ:
 ゲイムによっては実績要素って「こんなの誰がやるの?」みたいな,とてつもない目標が示されていたりしますが……三國志13はそういった入手困難な実績ってあるのかしらね。

利川氏:
 「これは無理だろう」というような実績はなくしました。ちゃんと時間をかけて頑張れば獲得できるものにしています。最初は「武将全員と絆を結ぶ」というのがありましたが,厳しすぎるのでやめました。

男色ディーノ:
 700人だったわよね……それは勘弁してほしいわ。

利川氏:
 ですよね(笑)。一番時間かかるもので,「全シナリオクリア」程度のものです。

男色ディーノ:
 それを聞いて安心したわ。ついつい,いろいろと聞いちゃって時間も迫ってきたわね。最後に読者へのメッセージをいただけるかしら。

利川氏:
 三國志シリーズ30周年のメモリアルタイトルということで,三国志のスケール感を活かすような舞台や武将をしっかり描いています。三国志に興味を持っている人だけでなく,これから三国志を知ろうと思う人も,ぜひ手に取って遊んでください。

鈴木氏:
 シリーズの集大成を目指して作りました。今回の目玉はやはり「相関図」で,主役である武将達の魅力を十分に引き出せるシステムであると確信しています。全武将プレイというシステムも相まって「止め時のない面白さ」を実現できたと思います。「相関図」を見ながら誰と絆を結ぼうかプランを練ったり,どの武将とどの武将が深い関係なのかを調べたりしながら三国志という世界の魅力を感じてください。

男色ディーノ:
 ありがとうございます。

男色ドライバーこそ炸裂しなかったが,熱い抱擁は忘れなかった男色ディーノ
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