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東京レトロゲームショウ2015:第26回 新作「Detroit」が発表されたQuantic Dreamの「Fahrenheit」で,同社の原点を探る
日本時間の2015年10月28日,フランスで行われたSony Computer Entertainment Europeのプレスカンファレンスで電撃発表された「Detroit」(関連記事)は,フランスのゲームデベロッパQuantic Dreamの新作だ。ゲームの詳細は未発表ながら,暗鬱な未来のデトロイトを舞台に,意思を持ったアンドロイドの物語が描かれるという。日本では「Detroit(仮)」として,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアから発売されることもすでに発表されている。
そんな同作を開発するQuantic Dreamは,寡作なメーカーだ。デビュー作の「Omikron: The Nomad Soul」が発売された1999年から2013年までの14年間で,わずか4本の作品しかリリースしていない。だが,それにも関わらず,世界中から次回作が期待されるトップデベロッパとして認識されているのは,2010年の「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」,そして2013年の「BEYOND: Two Souls」と,いずれも高い評価を獲得している作品を生み出してきたからだ。
GOG.com「Fahrenheit」紹介ページ
Steam「Fahrenheit: Indigo Prophecy Remastered」紹介ページ
「KARA」は現在でも見られるので,興味のある人はPlayStation.Blogの公式YouTubeチャンネルなどを見てほしいが,発表された「Detroit」との関連は明白だ。アンドロイドを組み立てる場面はほとんど同じだし,主人公の名前もKaraで見かけはそっくりだ(モデルは,女優のValorie Curryさん)。3年の歳月を経て彼女が帰ってきたわけで,期待感を高めている人も多いだろう。
さて,ここから本文になるのだが,そんなQuantic Dreamがちょうど10年前の2005年にリリースしたのが,今週の「東京レトロゲームショウ2015」で,新作登場に便乗してピックアップした「Fahrenheit」だ。北米では,2004年の映画「Fahrenheit 9/11」(邦題「華氏911」)との混乱を避けるため「Indigo Prophecy」に改題されているが,ともあれ,Quantic Dreamが飛躍する最初のステップになった作品といえるだろう。いえるよね。
ゲームジャンルはアドベンチャーで,テーマはサイコスリラーといったところだが,中盤から後半にかけては,かなりオカルト色やSF色が強くなってくる。
主人公のルーカス・ケインは,2009年の大雪の降る日,ニューヨーク・イーストサイドのダイナー(簡易食堂)で行きずりの他人を刺し殺す。ただ,それはルーカスの意思ではなく(画面を見る限り)何者かに憑依されて無意識のうちにやったように見える……という,なかなかショッキングなオープニングだ。
いろいろあってルーカスがなんとか逃走したあと,殺人事件の捜査のために2人の刑事がダイナーを訪れる。ルーカスに続いてプレイヤーはこの2人,女性刑事のカーラ・バレンティと相棒のタイラー・マイルズを操作し,ついさっき自分が隠滅した証拠を見つけたり,目撃者に話を聞いたりして,ルーカスを追っていくのだ。
この,刑事と犯人という立場が正反対のキャラクターを使ってゲームを進めていくスタイルがまずはユニークだ。テレビドラマ「24 -TWENTY FOUR-」のように画面を分割して,起きていることを同時に見せる演出もクールでカッコイイ。
赤いボタンを押してからスイッチを下げて,それから鍵を回す……といった,アドベンチャーゲームではおなじみのパズル要素をシンプルなアクションに置き換えたことで,ゲーム展開がよりスピーディなものになっている。こうしたアクション要素は会話シーンにも使われており,会話の選択肢を制限時間内に選ぶ必要があったりする。著名なゲームデザイナーのウォーレン・スペクター氏は,GDC 2007の講演で,こうした「会話にアクションを盛り込んだ」システムを絶賛していたことを記憶している。
自由度は高く,ゲーム中にはたくさんの選択肢が用意されており,プレイヤーの判断によって,ゲームの流れが変化する。たいていは会話の内容が異なったりする程度のささやかものだが,後半の4チャプターあたりでのいくつかの決断によっては,ゲームのエンディングが変わるというマルチエンディングシステムになっている。噂によれば,ケイジ氏はシナリオ執筆に約1年を費やし,完成したスクリプトは実に2000ページにも及んだというから,並々ならぬ力の入れようだ。
おなじみのMetacriticのメタスコアは,PC版が85点,PlayStation 2版が83点,Xbox版が84点と,なかなか高評価だが,レビューではやはり,前半の面白さに比べて,中盤以降のストーリー展開に不満を持つ人が多い。思いがけない方向に話がどんどん広がっていき,ある意味,月並みな物語になってしまっているのだ。このへんは,ケイジ氏入魂の一作ながら思いが強すぎてやや空回りしてしまったという感じだろうか。
とはいえ,演出や音楽などのセンスは圧倒的で評価も高く,のちの作品の礎として一度はプレイしてみる価値があるだろう。
現在,PC版はGOG.comで入手が可能で,またSteamでは,インターナショナル版をベースにして2015年に作られたリマスター版「Fahrenheit: Indigo Prophecy Remastered」が売られており,ここに掲載したスクリーンショットは同作のものになる。以前は日本語PC版が販売されていたが,現在では入手困難である模様。会話が多く,英語というハードルはかなり高いものの,Quantic Dreamファンだけど本作は未プレイという人は,レッツトライよ。
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