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東京レトロゲームショウ2015:第26回 新作「Detroit」が発表されたQuantic Dreamの「Fahrenheit」で,同社の原点を探る
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印刷2015/11/05 12:00

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東京レトロゲームショウ2015:第26回 新作「Detroit」が発表されたQuantic Dreamの「Fahrenheit」で,同社の原点を探る

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今週のテーマ:栴檀(せんだん)は双葉より芳し,みたいな

 日本時間の2015年10月28日,フランスで行われたSony Computer Entertainment Europeのプレスカンファレンスで電撃発表された「Detroit」関連記事)は,フランスのゲームデベロッパQuantic Dreamの新作だ。ゲームの詳細は未発表ながら,暗鬱な未来のデトロイトを舞台に,意思を持ったアンドロイドの物語が描かれるという。日本では「Detroit(仮)」として,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアから発売されることもすでに発表されている。


 そんな同作を開発するQuantic Dreamは,寡作なメーカーだ。デビュー作の「Omikron: The Nomad Soul」が発売された1999年から2013年までの14年間で,わずか4本の作品しかリリースしていない。だが,それにも関わらず,世界中から次回作が期待されるトップデベロッパとして認識されているのは,2010年の「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」,そして2013年の「BEYOND: Two Souls」と,いずれも高い評価を獲得している作品を生み出してきたからだ。

今週取り上げるのは「Fahrenheit」
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GOG.com「Fahrenheit」紹介ページ

Steam「Fahrenheit: Indigo Prophecy Remastered」紹介ページ


「Fahrenheit」のチュートリアルには,デイヴィッド・ケイジ氏が自ら出演(CGモデルだが)して,操作方法などを説明してくれる
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 2012年にサンフランシスコで開催されたGame Developers Coference 2012では,「Heavy Rain」に続く同社の新作が発表されるという噂が事前に流れたため,Quantic Dreamの創設者であるデイヴィッド・ケイジ氏レクチャーは立ち見が出るほどの超満員になった。結果として新作発表は行われなかったものの,次回作の準備のために制作されたというCGムービー「KARA」が公開され,そのクオリティの高さに来場者全員が驚いた。ケイジ氏のそのときの講演は,「GDC2012における最高のレクチャーの1つ」として記憶されている。
 「KARA」は現在でも見られるので,興味のある人はPlayStation.Blogの公式YouTubeチャンネルなどを見てほしいが,発表された「Detroit」との関連は明白だ。アンドロイドを組み立てる場面はほとんど同じだし,主人公の名前もKaraで見かけはそっくりだ(モデルは,女優のValorie Curryさん)。3年の歳月を経て彼女が帰ってきたわけで,期待感を高めている人も多いだろう。

物語は,雪の降りしきるニューヨークの街外れ,小さなダイナーのトイレから始まる。1人のおじさんが,人生最後の用足しをしている
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 さて,ここから本文になるのだが,そんなQuantic Dreamがちょうど10年前の2005年にリリースしたのが,今週の「東京レトロゲームショウ2015」で,新作登場に便乗してピックアップした「Fahrenheit」だ。北米では,2004年の映画「Fahrenheit 9/11」(邦題「華氏911」)との混乱を避けるため「Indigo Prophecy」に改題されているが,ともあれ,Quantic Dreamが飛躍する最初のステップになった作品といえるだろう。いえるよね。
 ゲームジャンルはアドベンチャーで,テーマはサイコスリラーといったところだが,中盤から後半にかけては,かなりオカルト色やSF色が強くなってくる。

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 主人公のルーカス・ケインは,2009年の大雪の降る日,ニューヨーク・イーストサイドのダイナー(簡易食堂)で行きずりの他人を刺し殺す。ただ,それはルーカスの意思ではなく(画面を見る限り)何者かに憑依されて無意識のうちにやったように見える……という,なかなかショッキングなオープニングだ。

このように,画面が分割されて,各所で起きていることが表示される。この場合,死体とか証拠品とかをアレして,警官が来る前にダイナーを出ないと,ゲームオーバーだ
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 いろいろあってルーカスがなんとか逃走したあと,殺人事件の捜査のために2人の刑事がダイナーを訪れる。ルーカスに続いてプレイヤーはこの2人,女性刑事のカーラ・バレンティと相棒のタイラー・マイルズを操作し,ついさっき自分が隠滅した証拠を見つけたり,目撃者に話を聞いたりして,ルーカスを追っていくのだ。
 この,刑事と犯人という立場が正反対のキャラクターを使ってゲームを進めていくスタイルがまずはユニークだ。テレビドラマ「24 -TWENTY FOUR-」のように画面を分割して,起きていることを同時に見せる演出もクールでカッコイイ。

市警の刑事,カーラ(左)とテイラー(右)。基本的に,主人公のルーカスと,この2人を操作してゲームを進めていくのだが,それ以外のキャラクターを操作する場合もある
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テイラーでなければ聞けない話や,カーラでなくては見つけられない証拠品などがあるので,2人を適宜切り替えていかなくてはならない。切り替えは,だいたいいつでも可能
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 アクションを多く導入しているのも,本作の特徴の1つだ。具体的には,画面に表示された方向にスティックを倒したり,L/Rボタンを連続して押したりなどのQTE(クイックタイムイベント)がメイン。本作はコンシューマ機をターゲットにして開発されたため,PC版はキーボードでもプレイできるものの,コントローラを使えば各種の操作が格段に楽になる。QTEに成功すると,敵の攻撃をうまく回避したり,逃走に成功したりするわけだ。
 赤いボタンを押してからスイッチを下げて,それから鍵を回す……といった,アドベンチャーゲームではおなじみのパズル要素をシンプルなアクションに置き換えたことで,ゲーム展開がよりスピーディなものになっている。こうしたアクション要素は会話シーンにも使われており,会話の選択肢を制限時間内に選ぶ必要があったりする。著名なゲームデザイナーのウォーレン・スペクター氏は,GDC 2007の講演で,こうした「会話にアクションを盛り込んだ」システムを絶賛していたことを記憶している。

会話は,時間内に選ばなければならない。うわー,読んでるヒマがない
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光った方向に,スティックを倒す(この場合,右のスティックを右に倒す)。戦闘や逃走だけでなく,なんでもないときにQTEが始まる場合もあるので,緊張感が高い
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こちらは,L/Rボタンを順にタイミング良く押していくタイプのQTE。失敗しても直前からやり直しになる場合がほとんどだが,たまに,失敗するとそれっきり,というのもある
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 自由度は高く,ゲーム中にはたくさんの選択肢が用意されており,プレイヤーの判断によって,ゲームの流れが変化する。たいていは会話の内容が異なったりする程度のささやかものだが,後半の4チャプターあたりでのいくつかの決断によっては,ゲームのエンディングが変わるというマルチエンディングシステムになっている。噂によれば,ケイジ氏はシナリオ執筆に約1年を費やし,完成したスクリプトは実に2000ページにも及んだというから,並々ならぬ力の入れようだ。

ルーカスは不意に,謎のビジョンに襲われることがある。その理由は,彼の過去と関係しているのだが,もう言えない
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 おなじみのMetacriticのメタスコアは,PC版が85点,PlayStation 2版が83点,Xbox版が84点と,なかなか高評価だが,レビューではやはり,前半の面白さに比べて,中盤以降のストーリー展開に不満を持つ人が多い。思いがけない方向に話がどんどん広がっていき,ある意味,月並みな物語になってしまっているのだ。このへんは,ケイジ氏入魂の一作ながら思いが強すぎてやや空回りしてしまったという感じだろうか。
 とはいえ,演出や音楽などのセンスは圧倒的で評価も高く,のちの作品の礎として一度はプレイしてみる価値があるだろう。

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 現在,PC版はGOG.comで入手が可能で,またSteamでは,インターナショナル版をベースにして2015年に作られたリマスター版「Fahrenheit: Indigo Prophecy Remastered」が売られており,ここに掲載したスクリーンショットは同作のものになる。以前は日本語PC版が販売されていたが,現在では入手困難である模様。会話が多く,英語というハードルはかなり高いものの,Quantic Dreamファンだけど本作は未プレイという人は,レッツトライよ。
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