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  • 発表日:2015/05/06
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「Radeon R9 380X」レビュー。ついに登場した「フルスペックTonga」の実力は?
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印刷2015/11/19 23:00

レビュー

ついに登場した「フルスペックTonga」の実力を検証

Radeon R9 380X
(SAPPHIRE NITRO R9 380X 4G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC W/BP(UEFI))

Text by 宮崎真一


SAPPHIRE NITRO R9 380X 4G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC W/BP(UEFI)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Radeon R9 380X」レビュー。ついに登場した「フルスペックTonga」の実力は?
 2015年11月19日23:00,AMDは,Radeon R9 300シリーズの新製品となるGPU「Radeon R9 380X」(以下,R9 380X)を発表した。
 これまでのRadeon R9 300シリーズは基本的にRadeon R9 200シリーズのリフレッシュ(あるいはリネーム,リブランド)品で,たとえば,先に登場した「Radeon R9 380」(以下,R9 380)は「Tonga」(トンガ)コアの「Radeon R9 285」(以下,R9 285)のリフレッシュとなる「Antigua」(アンティグア),正確には「Antigua PRO」をベースとするGPUだった。それに対してR9 380Xは,これまで一度もリリースされたことのないGPUコア「Antigua XT」を採用する,純然たる新製品というのが最大の特徴だ。

 今回4Gamerでは,AMDの日本法人である日本AMDから,短時間ながら,オリジナルデザイン採用のクロックアップ版となるSapphire Technology(以下,Sapphire)製グラフィックスカード「SAPPHIRE NITRO R9 380X 4G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC W/BP(UEFI)」(以下,NITRO R9 380X)の貸し出しを受けることができたので,Radeon R9 300シリーズ初の純然たる新製品が持つ実力をできる限り明らかにしてみたい。


「世に出なかったフルスペック版Tonga」のリフレッシュになるR9 380X


AMDが示しているR9 380Xのスペック。「FreeSync」や「Virtual Super Resolution」「Frame Rate Target」はもちろんサポートしている
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 あらためて確認しておくと,R9 285で採用されたTongaコアは,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャの最新仕様であるGCN 1.2世代のGPUコアだ。Radeon R9 Furyシリーズの「Fiji」(フィジー)コアとも,基本設計を同じくしている。そして,2014年9月2日に掲載したR9 285のレビュー記事,そして西川善司氏がレポートした同年10月2日の記事でもお伝えしているとおり,Tongaコアには,結局Radeon R9 200シリーズでは登場しなかったフルスペック版が存在していたのだが,今回登場したR9 380Xは,そんな,「世に出なかったフルスペック版Tonga」のリフレッシュとなるのである。

R9 380Xの位置づけ。「GeForce GTX 960」を圧倒しており,「GeForce GTX 660」「GeForce GTX 760」搭載グラフィックスカードを持っている人の買い換え対象として好適という
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R9 285のブロック図を改変して(4Gamerが)作った,R9 380Xのブロック図
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 そのスペックを,R9 380XやR9 285,あるいは「Radeon R9 280X」(以下,R9 280X),競合の「GeForce GTX 970」「GeForce GTX 960」(以下順に,GTX 970,GTX 960)ともどもまとめたものが表1となる。R9 380Xは,R9 380およびR9 285と基本仕様は共通ながら,“ミニGPU”となる「Shader Engine」あたりの演算ユニット「GCN Compute Unit」数が1基ずつ増えている計算だ。

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R9 380Xリファレンスカードのイメージ。ただし,R9 380X搭載カードはグラフィックスカードメーカーオリジナルモデルとして流通するとAMDは予告しているので,このデザインのカードを見ることはないかもしれない
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 最新世代のGCN 1.2ベースなので,GPUが自発的に実行中のタスクを中断できる機能「GPU Graphics Preemption」と,現在処理中のタスク状態を退避させて,別タスクの実行に切り換えられる機能「GPU Compute Context Switch」,そして,レンダーバックエンド(Render Back-Ends)側でレンダリング結果の描き込みやテクスチャユニット経由の読み出しにあたって,ピクセルの色情報に対し差分量子化圧縮展開を行う「Lossless Delta Color Compression」機能は,もちろん搭載している。「High Bandwidth Memory」対応ではないものの,GPUコアの根本はFijiと同じと考えていい。
 このあたりの詳細は,Tongaコアの技術解説をチェックしてもらえれば幸いだ。

 なお,AMDは,Radeon R9 300シリーズを,1920×1080ドットおよび2560×1440ドット解像度でプレイするのに向くGPUと位置づけている。とくにR9 380Xの場合,最新世代の3Dゲームタイトルで高いグラフィックス設定を行っても,1920×1080ドットなら70fps以上,2560×1440ドットでも50fps以上出るというのが,AMDによるメッセージである。

現行のRadeonがターゲットとする解像度(左)と,R9 380Xのターゲットフレームレート(右)
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堅牢性を追求したデザインのNITRO R9 380X


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 といったところを踏まえ,入手したNITRO R9 380Xを見てみよう。日本AMDはカードの分解を許可していないため,外観のみのチェックになることをお断りしてから始めるが,カード長は238mm(※突起部除く)と,ミドルクラスとしては可も不可もなしといった長さである。
 AMDは,R9 380Xで,グラフィックスカードメーカー各社がそれぞれクロックアップモデルを投入すると予告しているが,果たしてNITRO R9 380Xもクロックアップモデルであり,GPUのブースト最大クロックは1040MHzと,リファレンスの970MHzより70MHz高い。メモリクロックは6000MHz相当(実クロック1500MHz)で,こちらもリファレンスの5700MHz(実クロック1425MHz)から5%ほど引き上げられている。

補助電源コネクタは6ピン×2という構成。カード裏面には補強板があり,それもあってか,手に持つと,サイズの割にずっしりした印象を受けた
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カード側面にあるトグルスイッチは,どうやらRadeon R9 290シリーズで搭載されたのと同じ「Dual BIOS Toggle Switch」のようだ。ただ,2種類のVBIOSに挙動の違いは確認できなかった
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外部出力インタフェースはDisplayPort(1.2)×1,HDMI Type A(1.4)×1,Dual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×1

 製品名からも分かるとおり,NITRO R9 380Xは,耐久性を重視したという製品シリーズ「NITRO」(ナイトロ)の最新作という位置づけだ。GPUクーラーは,2ボールベアリング仕様で100mm角相当のファンを2基搭載する「DUAL-X Cooling」となっており,アイドル時にはファンの回転を完全に止める「Intelligent Fan Control 2」も組み合わされている。
 側面などから覗き込む限り,ヒートパイプの構成は6mm径が4本。これらヒートパイプによってGPUおよびメモリチップの熱を放熱フィンへ運び,それを2基の大型ファンで冷却する仕様になっているようだ。

GPUとメモリチップを覆う枕のところから,4本のヒートパイプが伸びていくデザインになっているように見える
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R9 380やR9 285,GTX 970,GTX 960と比較

Fallout 4でのテストも実施


 テスト環境の説明に入ろう。
 今回,比較対象としては,直接の下位モデルであるR9 380と,その“リフレッシュ元”となるR9 285を用意。さらに,AMDが直接の競合製品としているGTX 960と,その上位モデルとなるGTX 970も使うことにした。
 なお,R9 380搭載カード「PowerColor PCS+ R9 380 4GB GDDR5 DL-DVI-D/DL-DVI-I/HDMI/DP」をはじめ,今回利用したカードのほとんどはクロックアップモデルであるため,いずれも,MSI製オーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.1.1)を用いて,リファレンスレベルにまで下げて使用している。それは,主役となるNITRO R9 380Xも例外ではないため,以下本稿では,動作クロックをリファレンス相当にまで下げたNITRO R9 380Xを「R9 380X」,カードの定格クロック動作(=クロックアップ動作)を「NITRO R9 380X」と書いて区別するので,この点はあらかじめお断りしておく。

 Radeon 3製品のテストに用いたグラフィックスドライバは,R9 380Xのテスト用としてAMDが全世界のレビュワー向けに配布した「15.201.1151.1010-151110a-296225E」。バージョン表記を見る限り,北米時間11月16日公開の「Catalyst 15.11.1 Beta」とほぼ同じながら,少しだけ古いもののようだ。
 一方,GTX 970とGTX 960のテストにあたっては,テスト開始時点の最新版となる「GeForce 358.91 Driver」を用いた。そのほかテスト環境は表2のとおりである。

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 テスト内容は基本的に,4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0準拠となるが,冒頭でも述べたとおり,今回は時間的に厳しいものがあったため,「3DMark」(Version 1.5.915),「Far Cry 4」,「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の3つに絞った。ただし,ちょうど並行してレギュレーション18世代の基礎検証を進めていたところだったことから,今回はそんなレギュレーション18世代を先取りする形で「Fallout 4」のテストを追加している。

 Fallout 4の暫定テスト方法は,「Corvega Assembly Plant」(自動車組み立て工場)のシーンを選択のうえ,決まったルートを1分間動きし,その平均フレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で計測するというもの。ただし,1分間の進行ルートには,敵と戦闘する場面もあり,毎回同じ動作ができないことから,3回試行し,その平均をスコアとして採用することにした。
 グラフィックスオプションは「Ultra」と「Medium」をチョイス。ただし,両者のスコア差があまり大きくならなかったため,今回,Mediumでは,より描画負荷が低くなるよう,アンチエイリアシングと異方性フィルタリングをともに無効化している。

 テスト解像度は,AMDがR9 380Xで想定している2560×1440ドットと,16:9アスペクトでその一段下になる1920×1080ドットの2つを選択した。

 また,テストにあたっては,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためだ。


R9 380比で約7%高いスコアを示すR9 380X。おおむねGTX 960以上の性能を発揮


 テスト結果を順に見ていこう。
 グラフ1は3DMarkの総合スコアをまとめたものだが,R9 380XはR9 380と比べて6〜7%程度,対GTX 960でも6〜9%程度高いスコアを示している。NITRO R9 380XはそんなR9 380Xよりさらに5〜6%程度高いスコアなので,メーカーレベルのクロックアップ効果は明らかに出ていると述べていいだろう。

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 続いてグラフ2,3はFar Cry 4のテスト結果だが,ここでもR9 380XはR9 380に6〜9%程度のスコア差を付けた。メモリ周りの優位性を生かし,2560×1440ドット解像度でGTX 960に対して14〜18%程度高いスコアを示している点にも注目しておきたい。
 4Gamerのベンチマークレギュレーションでは,平均60fpt以上を合格ラインとしているが,ULTRA設定の1920×1080ドットでR9 380Xがあとわずかに迫り,NITRO R9 380Xだと超えてきたのは,大いに評価できそうだ。

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 グラフ4,5は,初お目見えとなるFallout 4における結果だが,ここまでのテスト結果とは若干異なり,MediumだとR9 380XとGTX 960はほぼ互角。Ultra設定の2560×1440ドットでようやく約9%のスコア差が開いた。Far Cry 4でも出た「グラフィックスメモリ周りの優位性」が,Fallout 4ではより高いグラフィックス設定のみで有効に働いたというわけだ。

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 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチのスコアをまとめたものがグラフ6,7だが,ここでR9 380Xのテスト結果はあまり芳しくない。FFXIV蒼天のイシュガルドがもともと「GameWorks」タイトルで,GeForce有利ではあるのだが,1920×1080ドットでGTX 960の後塵を拝したのはやはり気になる。
 ただ,2560×1440ドットでは,メモリバス帯域幅の優位性で持ち直した。R9 380Xは,GTX 960と比べて約2%高いスコアを示せている。

グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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R9 380からの消費電力上昇はわずか

Dual-X Coolingの冷却性能と静音性は優秀


 性能は見えたが,フルスペック版Tongaの消費電力はどれほどなのだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみたい。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定して,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果はグラフ8のとおり。まず,アイドル時におけるR9 380Xのスコアは62Wで,比較対象と横並びだ。一方,各アプリケーション実行時だと,R9 380Xの消費電力はR9 380比で1〜3W程度しか増えていない。同じAntiguaコアなので,そう大きくは変わらないだろうと思ってはいたが,なかなか衝撃的な結果だ。正直,ここまで変わらない理由は分からないが,Sapphireがそう設定している,という可能性はある。
 ただ,NITRO R9 380Xは,R9 380から7〜23W高いスコアを示してもいる。前述のとおり,R9 380Xではカードメーカー各社からクロックアップモデルが出てくると見込まれているので,実態に即したスコアはこちらのほうではないかとも思う。
 競合製品と比べた場合は,R9 380XがGTX 970を超えてしまっており,GTX 960とは勝負にもなっていないのが気になるところである。やはり,現行世代の消費電力対性能比は第2世代Maxwellアーキテクチャに軍配が上がるということなのだろう。

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 Dual-X Coolingの冷却性能を確認するために,GPUコア温度も確認しておきたい。今回は「GPU-Z」(Version 0.8.6)を用い,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」とアイドル時のそれぞれの時点の温度をスコアとして採用した。テスト時の室温は24℃で,システムはケースに組み込まない,いわゆるバラックの状態に置いてテストを行っている。その結果がグラフ9だ。

 カードごとに温度センサーの位置が異なり,もちろん搭載されるクーラーも異なるため,横並びの比較に意味はない。そのため,ここではあくまでもNITRO R9 380XとR9 380Xの温度がどの程度なのかを確認するに留めたいが,アイドル時は,ファンが停止するため,50℃以上と高め。ただ,高負荷時の温度はR9 380Xが66℃,R9 380X OCでも68℃で,いずれも70℃を下回っているので,冷却性能は十分に高いといえる。
 また,気になる動作音は,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,かなり静音性が高いように感じられた。

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GPU自体は魅力的ながら,今回も内外価格差が最大のハードルに


NITRO R9 380Xの製品ボックス。小さい
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 以上のテスト結果から,R9 380Xの実力は,おおむねAMDの主張するとおりだといえる。256bitメモリインタフェースを持つGPUらしい,高解像度環境における強さは,ミドル〜ミドルハイクラスのGPU市場にあって,かなり魅力的ではなかろうか。

 そんなR9 380Xだが,問題になるのは今回も価格である。R9 380Xカードの北米市場におけるメーカー想定売価は249ドル(税別)と言われているが,日本におけるNITRO R9 380Xの初値は税別で4万円台前半。競合となるGTX 960搭載カードの税込実勢価格は2万4000〜3万3000円程度(※2015年11月19日現在)なので,まったく釣り合わない。もっというと,税込実勢価格で3万9000〜4万7000円程度(※2015年11月19日現在)のGTX 970搭載カードといい勝負になってしまっている状況だ。
 他社製では,税別3万円台前半に落ち着くR9 380Xカードもあるようだが……。

 北米市場における想定売価を見る限り,AMDによるR9 380Xの価格設定は間違っていないように思う。むしろアリといえるレベルだが,日本市場においてゲーマーの選択肢となるには,もう少し時間が経って,価格がこなれるのを待つ必要があるだろう。

AMDのRadeon R9シリーズ製品情報ページ

Sapphire日本語公式Webサイト

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