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AMD,Athlonを冠したZenベースのAPU「Athlon 200GE」発表。ビジネス向けの第2世代「Ryzen PRO」と「Athlon PRO」も
ZenベースのプロセッサにAthlonの名が付いたのは,今回の製品が初めてのことだ。各製品について簡単に紹介していこう。
Zen&VegaのAPUでAthlonブランドが復活
Athlon APUは,開発コードネーム「Raven Ridge」と呼ばれるAPUの製品ラインナップでは,最も下位となるプロセッサであり,IntelのPentiumやCeleronプロセッサを競合とする製品だ。それゆえに,スペック面では,既存のRyzenベースAPU(関連記事)よりも下となっている。
14nmプロセスで製造するZenベースのCPUと,VegaベースのGPUコアを統合するという点は,Raven Ridgeの下位モデル「Ryzen 3 2200GE」と同様だが,Ryzen 3 2200GEがZenベースで4コア4スレッド仕様のCPUを採用していたのに対して,Athlon 200GEでは,2コア4スレッド仕様のCPUと,コア数が半減しているのが大きな違いだ。自動クロックアップ機能「Precision Boost」によるブーストクロックについての情報がまったくないので,自動クロックアップはサポートしていないのかもしれない。
それに加えて,VegaベースのGPUコアも,Ryzen 3 2200GEの8基から,Athlon 200GEでは3基まで減らされている。
Athlon 200GEと,Ryzen 3 2200GEの主な仕様を表1にまとめてみた。
Athlon |
Ryzen 3 |
|
---|---|---|
製造 プロセス |
14nm | 14nm |
CPUマイクロアーキテクチャ | Zen | Zen |
コア数,スレッド数 | 2C4T | 4C4T |
ベースクロック | 3.2GHz | 3.2GHz |
ブースト最大クロック | ― | 3.6GHz |
L2+L3キャッシュ容量 | 5MB | 6MB |
Compute Unit数 | 3 | 8 |
GPU最大クロック | 未公開 | 1100MHz |
TDP | 35W | 35W |
AMDでは,Kaby Lake世代の2コア4スレッド対応CPU「Pentium G4560」と比較した場合,Athlon 200GEはCPU性能こそわずかに下回るものの,GPU性能は67%上回り,電力当たりの処理性能では2倍に達すると主張している。TDP(Thermal Design Power,
次のスライドは,各種ベンチマークソフトや,写真・ビデオ編集,暗号化処理を行うアプリケーションにおける性能を,Athlon 200GEとPentium G4560,TDP 35Wの第7世代APU「A6-9500E」と比較したものだ。CPUコアの性能がものを言うテストだと,Athlon 200GEはPentium G4560にやや劣る程度の性能だが,3Dグラフィックスやシステム全体の総合力が問われるテストでは,大きく突き放しているのが分かる。
AMDは,Athlon 200GEのゲームにおける処理性能も明らかにしている。1つめの比較はグラフィックスカードと組み合わせた場合のテストで,Pentium G4560に加えて,第7世代APUの「A10-9700」と比較したものだ。
解像度1080pは,Athlon 200GEにはやや荷が重いようで,Pentium G4560と同等か,やや下回る結果となっている。一方,A10-9700比では,同等から上回る程度の結果となった。
一方,解像度720pで統合型GPUを使った場合のゲーム性能テストでは,
AMDは,Athlon 200GEの用途として,「Casual Gaming」を挙げている。720pでのテストは,その用途を想定したものと言える。グラフィックス負荷が軽めのゲームであれば,Athlon 200GEでも快適にプレイできますよと,AMDはアピールしているわけだ。
AMDでは,Athlon 200GEのメーカー想定売価を55ドル(約6100円)としている。国内におけるPentium G4560の実勢価格が6000円台半ばから7000円前後なので,同等か,やや下回る程度の価格で登場すれば,競争力のあるCPUとなるかもしれない。
第2世代Ryzen PRO&Athlon PRO
先代のRyzen PROシリーズは,デスクトップPC向けRyzenにハードウェアベースのセキュリティ機能「GuardMI Technology」(以下,GuardMI)を組み込んで,ビジネス用途向けを打ち出した製品であった。それに続く第2世代Ryzen PROは,CPU部分をZen+ベースに更新することで,さらに高い処理性能を狙った製品と言えよう。
そんな第2世代Ryzen PROのラインナップは,表2のとおり。
Ryzen 7 |
Ryzen 7 |
Ryzen 5 |
|
---|---|---|---|
製造プロセス | 12nm | 12nm | 12nm |
CPUマイクロアーキテクチャ | Zen+ | Zen+ | Zen+ |
コア数,スレッド数 | 8C16T | 8C16T | 6C12T |
ベースクロック | 3.6GHz | 3.2GHz | 3.4GHz |
ブースト最大クロック | 4.1GHz | 4.1GHz | 3.9GHz |
L2+L3キャッシュ容量 | 20MB | 20MB | 19MB |
TDP | 95W | 65W | 65W |
先述したとおり,Athlon APUはZen+世代ではなく,Zen世代のマイクロアーキテクチャを採用するCPUであるため,それをベースとしたAthlon PROも,Zen世代のCPUである点には注意してほしい。
- Athlon PRO 200GE:
2C4T,定格3.2GHz,L2+L3キャッシュ容量5MB,Compute Unit数 3基,TDP 35W
これら2製品に加えて,2018年5月に発表となったZenベースのRyzen PRO APUも現行製品であるため,AMDのビジネス用デスクトップPC向けCPUは,Ryzen PRO,Ryzen PRO APU,そしてAthlon PRO APUというラインナップになるわけだ。
AMDでは,第2世代Ryzen PROの性能面を大きくアピールしており,第1世代Ryzen PRO比では10〜16%程度,競合となるIntel製CPU比では,ベンチマークテストにおけるスコアで24〜28%程度も高いスコアを記録したという。
ビデオ編集や3D CGレンダリングといったアプリケーションレベルでの性能でも,第2世代Ryzen PROは競合CPUに大きな差を付けており,事務用途だけでなくコンテンツ製作用途にも優れた性能を発揮できることをアピールしていた。
ビジネス用途向けの第2世代Ryzen PROやAthlon PROを,ゲーマーが自分で使うPCに導入するということはあまりないだろうが,一般消費者向けのRyzen以外にも,Zen+ベースのCPUが広がってきたことは,覚えておいてもいいだろう。
AMD 日本語公式Webサイト
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Ryzen(Zen,Zen+)
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