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まもなく発売のPC版「Ancestors: The Humankind Odyssey」プレイレポート。1000万年前から人類誕生の歴史を追体験する異色の猿人アクション
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印刷2019/08/26 22:00

プレイレポート

まもなく発売のPC版「Ancestors: The Humankind Odyssey」プレイレポート。1000万年前から人類誕生の歴史を追体験する異色の猿人アクション

 Take-Two Interactive傘下のPrivate Divisionは2019年8月27日に,人類の誕生をモチーフとした新作サバイバルアクション「Ancestors: The Humankind Odyssey」PC版を発売する。PlayStation 4Xbox One版は,2019年の12月にリリース予定だ。

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 本作は「アサシン クリード」シリーズの生みの親として有名なPatrice Desilets(パトリス・デジーレ)氏が率いるPanache Digital Gamesの新作で,“らしさ”を感じるパルクールアクションをベースにしつつ,テーマを「人類の誕生の歴史」に置き,実際に操作するのは「まだ原人にすら到達してない猿(猿人)」という極めて異色な作品だ。ここまでの説明を読んでも,どんなゲームで何をするのか,まったく予想がつかない人も多いのではないかと思う。

 今回は発売前に本作をプレイする機会を得たので,さっそくそのプレイレポートをお届けしよう。アクション要素が高いだけでなく,無事にホモ・サピエンスとなった我々ゲーマーも,かつての人類の歩みを体験できるような,何とも興味深いプレイフィールの作品になっている。

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ゲームの主役は人類……以前の“猿”だ


 本作は約1000万年前のアフリカの大地から始まる。人類発祥の地と言われるこの大陸には雄大なジャングルが広がり,動植物の宝庫と呼べるような豊かな自然が広がっていた。プレイヤーが操作することになるのは,そこに住む小規模な猿の群れ(作中では「氏族」と表記)の一つ。現状は食料には困らないほど恵みは豊かだが,その反面,捕食者による生命の危機とは常に隣り合わせにあることは,ゲームを始めてすぐに,嫌というほど思い知ることになる。

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群れの定住地や樹木の上は比較的安全だが,基本的にプレイヤーはまだ“狩られる”存在だ
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 本作の基本はごく一般的なTPS(三人称視点)のアクションゲームとなっており,軽いチュートリアルとしてまずは迷子になった子猿を操作し,その後に群れの大人の猿を操作してその救出に向かう。コントローラを使用していればスティックでキャラを操作し,壁や木に捕まれば(触れば)自由に登ったり降りたりができるという,パルクール要素を持つゲームとしてはごく一般的な操作方法だ。
 壁などで移動可能な時間や距離は,操作するキャラのスタミナや体力,あるいは体調によって変化し,当然ながら元気な方が素早く,そして長く移動し続けることができる。“猿”なので人間とは比べものにならない野性的な動作が可能だが,高所から落ちれば骨折してしまうし,落下場所が高すぎれば死んでしまう。また何をしてもスタミナが減っていくので,永久に崖や樹木にしがみついていられるわけでもない。感覚としては「普通の人間より数段上の運動能力を持つが,肉体は意外とデリケート」といった雰囲気で,あらゆる場所をぐんぐん登っていくらでも進んでけるようなヒーローを期待すると,肩すかしを食らうかもしれない。

猿なので木登りやジャンプは得意中の得意……なのだが,実際の腕前はプレイヤー次第。ちなみに筆者は下手な方なので,しょっちゅう「猿も木から落ちる」を実演してしまう
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画面下部の中央にあるのが,現在のステータスを表すゲージ。円が大きくて緑色が強いほど健康な状態だが,大まかにしか情報は分からない。寝て起きると乾きや空腹の状態が確認できるので,朝食に出かけたりしよう
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 さて群れの子猿を助け出すとチュートリアルらしきものは終わるのだが,それ以降のプレイにはとくに縛りも指示もない。というか明確なクエストやおつかいといったものはなく,要するにプレイヤーは“できる範囲”で何をしてもかまわない。
 大目標としては「人類に進化するため,子供をもうけて世代をつなぎ,段階的に人間としての能力を開花させていく」といったものがあるのだが,短期的にはそんなことを気にする必要はない……というか,気にしている余裕はおそらくない。なぜなら本作はサバイバル要素が強く,まずは「生き延びなければいけない」からだ。

 プレイヤーは群れの猿の中から,操作するキャラを自由に選べる。世代によって「子供」「大人」「老人」と分かれており,近くにいれば任意のタイミングで切り替えられるが,万全の状態なのは大人だけで,老人になると(大人に比べ)体力やスタミナの最大値が大幅に低下し,子供は拠点となる定住地以外で一人になると,怯えてしまってまともにプレイできなくなる。基本的には,大人を操作してプレイすることになるだろう。詳しくは後述するが,危険なジャングルで“弱者”を待っているのは死のみだ。
 またキャラにはステータスとして「空腹」「乾き」「睡眠」パラメーターが設定されていて,のどの渇きや空腹を満たすには食料を食べ水を飲み,眠くなったら寝なければ死ぬ。ゲーム中はリアルタイムで時間が進んでいくので,1日程度なら飲まず食わずでも何とかなるが,無理に活動を続ければ体力やスタミナはどんどん低下していくので,そのうちまともに動くことすらままならなくなる。
 眠るのは平たい場所があれば(危険度はともかく)どこでもできるが,大自然には安全に食事や給水ができないところも多く,下手に遠出をすると戻ってこられなくなることもあり得る。

のどが渇いたら水を飲み,腹が減ったら何かを食べよう。当然ながらコンビニなど1000万年経たないとできないので,現地調達だ
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 とくに悲惨なのが,「気がついた時には腹が減ってのども渇いている → 近くに食べ物や水場がない。またはそういった場所の近くに危険な捕食者がいる → 動き回って食料を探すうちに体力を消耗する → 体力の低下で動きが鈍り,ますます探せなくなる」といった悪循環のコンボだ。「食い物なんてどこにでもあるだろう」と甘く見ていると,意外と見つからなかったり,あるいは怪我をしたり,雨が急に降ってきて体温が低下したりなど,予想外のトラブルに見舞われると割と詰むのだ。
 本作には明確なインベントリといったものはないのだが,実は片手に1つずつアイテムを持つ(握る)ことができ,水は無理だが食料は持ち歩くことが可能だ。遠出になりそうなときは,定住地にある手近な食料を“お弁当”として持って行くと,飢える危険を多少は軽減できるだろう。


新たな食料を探し,役立つ道具を作り出そう


 前述のとおり,飢えをしのぐためには食事をするしかないが,実はこれもそんなに簡単な話ではなかったりする。というのも,定住地に最初からあるごく基本的な食料を除けば,そもそも「何を食べられるのか分からない」からだ。
 これは操作するキャラクター(猿人)も,そしてプレイヤーも同じで,広大な自然の中で食料になりそうなものをまず見つけ,それを手に取り,食べられるかどうか確認しないといけない。実際に口に入れられるのはその後だし,場合によっては中毒になってしまうこともある。文明どころか言葉すらないこの時代では,何が食べられて何が毒なのかなどということは誰も教えてくれないので,自分の身で確かめるしかない。

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感覚を研ぎ澄ますと周囲のオブジェクトがアイコンとして表示され,すでに知っているものは正体がすぐに判明する。また動くものは音を発するし,有機物は臭いがする可能性が高いので,聴覚や嗅覚でも周囲の状況を判断できる
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見知らぬ場所は恐怖を感じやすく,場合によっては幻覚を見始めて正常に状況を判断できなくなる。恐怖に打ち勝つには,周囲の状況を“知る”必要がある
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 こういった食料に限らず,フィールドでアクセス可能なオブジェクトを探すのに便利なのが,視覚や聴覚といった五感だ。立ち止まって「感覚」を研ぎ澄ますことにより,目で見て遠くから物体を判別したり,聴覚で物音を聞いたりして,自分の周囲に何があるのかを大まかに判別できるようになる。プレイヤーが操作するキャラクターは,自分の縄張りではない見知らぬ土地に行くと恐怖を感じ,普段どおりの活動ができなくなってしまう。そういった事態を避けるためにも,周囲の状態を確認しておくのは重要なのだ。
 また「感覚」から「記憶」すればその場所を遠距離からマークすることも可能で,地図やミニマップがない本作では,重要なナビゲーションとなるだろう。

 ただ一部の食料は,固い皮や殻に覆われていてそのまま食べることができなかったり,そもそも直接手に取ることができない場所にあったりする。こういった状況を打破するためには,まさに“人間らしさ”の一大要素ともいえる「道具」が必要だ。道具となるものは食料と同じくフィールドの至るところに存在しており,手にとって調べることで名称を(プレイヤーは)確認でき,その後は遠くから「感覚」でその存在をキャッチできる。

オブジェクトは調べれば名称が判明し,食べ物も手に取れば正体は分かる。ただ,それをそのまま利用できるかどうかは別だ
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慣れないものを食べるとおなかを壊し,プレイに影響が出ることもしばしば。ただ世代を経ることによって,きちんと消化吸収できるようになっていく
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 とはいえ,道具は手にとって終わりではない。「何に使えるのか。そもそもどう使うのかが分からない」という,食料より大きな問題が横たわっているのだ。道具を手に取っても直接アクションボタンやヒントが表示されるようなことはなく,最初にできるのは「(地面に)置く」「加工」「持つ手を変える」といった動作だけ。つまりプレイヤーは操作する猿人と同じ立場に立って,「これは何に使えるのか」から試行錯誤していかなくてはならない。近年の懇切丁寧なヘルプが充実した作品から考えると,とてつもなく“不親切”な塩対応だろう。

 ただ,筆者はこれがかなり面白かった。例えば枯れた木の枝は序盤から入手でき,感覚的に「色々な木の棒にできそうだ」とは推測できても,実際に“尖らせた木の棒”にできたのはずいぶん先の世代でだった。理由は単純に加工の方法が分からなかったからで,あまりヒントは出したくないが,重要なのは「組み合わせ」「タイミング」なのだ。また言い訳ではあるが,冒険や食糧確保に時間をとられて,じっくり試せなかったのも理由としては大きい。“正解”への道はそれだけ険しいのだ。
 しかもこの話にはさらにオチがあり,完成後に「この尖った棒を何に使えばいいのか分からない」という,次なる問題に頭を悩ませることになった。とはいえ,“正解”を見つけたときの喜びがひとしおなのは間違いない。

木の枝を拾って調べているところ(上)。仮に正体はすぐわかっても,どう使えるかは別。枝を木の棒に加工できたあと(下)。さて,何に使うのだろう?
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石で石を加工すれば石器ができるのでは? と思って「加工」してみたが……失敗。素材が悪かったのか,何かのタイミングが悪かったのか,それとも根本的にスキル(進化度)が足りなかったのか?
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 すでに正解を知っている,21世紀のホモ・サピエンスである自分ですらこうなのだから,人類の祖先は長い長い試行錯誤の果てに,道具の作り方と使用方法を取得していったんだろうな……と筆者はプレイしていて妙に感慨深い気持ちになってしまった。本作のテーマは「人類の進化の追体験」だが,こういった部分はかなりうまくシミュレートされているように思う。


さまざまなスキルをアンロックし,人類につながる道を拓く


 道具や食糧確保は人類へとつながる重要なポイントだが,それ以外にも重要なことがある。人間としての「能力の開花」だ。
 前述のとおりにゲーム開始直後のキャラクターはほぼ完全に“猿”だが,さまざまな経験を積むことによって「脳内の回路」がつながっていき,新たな能力に目覚める。具体的には二足歩行可能な時間が増えたり,さまざまな未知の恐怖に強くなったり,オブジェクトを両手で扱えるようになったり,といったものだ。
 どれもこれも人間になるためには重要な要素で,「どう見てもただの猿」から徐々に人類の面影を追えるようになるのは楽しい。ゲームプレイとしても実行可能な動作が増えたり,奥地への探検が楽になったり,新たな道具を扱えるようになったりと,一歩一歩“進化”が実感できるのも見逃せない。またアンロックされた能力は群れで共有されるので,たとえ操作するキャラが死んでしまっても大丈夫だ。

脳の回路を模したスキル盤のようなものを使用し,順番に能力をアンロックしていく。本人と群れには即座に反映されるが,世代をまたぐ場合は「定着」させる必要がある
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フィールドでさまざまな行為を行うこと自体が,脳の成長を促していく。特に狙って何かをする必要はない
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 とはいえこのスキルの強化については,いくつか注意点もある。一つは単に発現するだけでは,使うことができない点だ。スキルをモノにするには前述のように“回路をつなぐ”手順があるのだが,これには「ニューロンエネルギー」と呼ばれる一種の経験値のようなものが必要だ。そしてこのニューロンは,「子供の近くで活動する」とか「亡くなった群れの仲間を調べる」といった手順を踏まないと獲得できない。そのために大人は子猿をだっこして活動できるようになっているのだが,要するに基本は“子連れで活動”しなければならないわけだ。
 子供を未知の場所で連れ歩くのは危険だし,ゲームのキャラとしてはほぼ何もできず足手まといに近い存在だが,次世代に経験を積ませるために,子連れ狼ならぬ子連れ猿として活動していこう。

 二つ目は,例えある世代で数多くのスキルを発現させても,次世代にすべてを引き継ぐことはできないということ。群れではオスメスのペアを作って「番(つが)う」ことにより,子供(子猿)を誕生させ,世代を進めることによって子供は大人に,大人は老人に,そして老人は死を迎えるというサイクルを繰り返す。人類の進化の道を歩むのだから,当然ながら一世代で何とかなるスケールではないわけだ。
 スキルを次の世代に持ち越すには「定着」させる必要があるが,これは可能な数がある程度決まっているので,大量のスキルをアンロックできても,すべてを持ち越すことはできない。なので,ある程度のスキルが使えるようになって定着できたら,世代を進めてしまうほうがいい。悠久の歴史に必要なのは,たった1人の「何でもこなすスーパーヒーロー」ではない,ということなのだろう。

操作キャラとしては弱すぎる子供だが,次世代に血脈をつなぐために重要な存在。仮に子連れで大人が死んだ場合,子供はフィールドの各地にある隠れ場所に逃げ込むことになる
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はぐれ猿を群れに加えたり,雄雌のパートナーを作ったりして子供を誕生させることによって,群れの仲間を増やしていく。自分も含め仲間は結構あっさり死ぬので,できれば数は多めの方がいい
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 食糧を確保し,道具を作り出し,さまざまなスキルを身につけてもまだまだ人類への道は平坦ではない。人間の祖先であるプレイヤーキャラがさまざまな食料を欲するように,ほかの生き物もまた,食事をしないと生きていけない。
 大自然の中には凶暴な捕食者が多数存在し,探索などの遠出の時はもちろんのこと,場合によっては定住地にすら肉食獣が飛び込んでくる。強力な牙も,鋭く長い爪も,頑丈な甲羅も持たない我々の祖先は,天敵に襲いかかられたらひとたまりもなくやられてしまう。序盤にできることといえば,逃げることだけだ。

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さまざまな天敵に事欠かないアフリカの地だが,やはりネコ科の猛獣は恐ろしい。攻撃力と素早さを兼ね備えた彼らを見ると,「樹上生活でよかった」と思えてくる。もちろん,いずれ人類(の祖先)は地面で暮らすようになるのだが
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 具体的な天敵を挙げると大型のイノシシや大蛇,ワニなど“いかにも”な動物が多いが,その中でも危険なのがやはりネコ科の捕食者で,素早い動きでしつこく狙って来るので大変だ。ただ,ありがたいことに樹木の上まで追いかけてくる天敵は少ないので,襲われたら即座に上方向に逃げるようにしたい。猿は樹上生活をする種族も多いが,食料の取得以外にも,やはりメリットは多かったのだなと妙に実感することになってしまった。
 とはいえ樹木の上も完全に安全というわけではなく,大型のワシが襲いかかってきたりすることもあるし,当然ながら焦って高所から落ちればちょっとした怪我では済まない。定住地など群れの仲間は多い場所では,多数で「威嚇」することによって猛獣すら驚いて逃げ出すこともあるので,場合によってはあえて立ち向かうのも重要になるだろう。


とにかく「手探り感」が面白い一作。太古に思いをはせながらの試行錯誤を楽しもう


 筆者が最初に操作したキャラは,群れのオスの猿だった。基本はアクションゲームなので「まずは周囲の探索と探検だろう」と考え,子猿を抱えながら同じキャラで何度も周囲と定住地を行ったり来たりしたのだが,あるときに地面で食事をしている最中にサーベルタイガーに襲われ,命からがら逃げるハメになった。
 直接的に食われるようなことはなく,何とか定住地に逃げ込んで休むことにしたのだが,どうも様子がおかしい。定期的にダメージを受けるようなエフェクトが発生し,キャラは血まみれで,何らかの状態変化が起こっているアイコンらしきものも表示されているのだが,具体的に何が起こっているのかはよく分からない。しょうがないので「食って寝れば治るだろう」と考え,定住地の草のベッドで長めに休んでみたのだが,容態はよくならない。結果的に,思い入れのあった“最初のキャラ”はあっけなく定住地で死んでしまった。子供とパートナー(配偶者)の目の前で。

最初に操作することになった「モ」という名前の猿。各地のロケーションを見つけるなど,そこそこ活躍したが,定住地であっさりと亡くなった
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「進化跳躍」をおこなうと数十〜数百万年単位で一気に時間が経過し,大きく時代が変わる。世代が変わるのはもちろんのこと,新たな力を身につけたり,別の種族に変わったりする
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 その後は群れの別のキャラに切り替えて,何事もなかったかのようにプレイを進行。前述のようにスキルは群れの中で共有されるのでとくに問題はないのだが,その結果,先のステータス異常が「裂傷」(出血を伴う傷)であるらしきことが判明した。捕食者に襲われるとこういった裂傷を負いやすいようで,しかも自然に治る骨折とは,どうやら事情が違うらしいのだ。
 これにより,捕食者の存在はさらに恐ろしいものとなる。天敵に襲われると時間がスローになるので,致命的な攻撃を受けること自体は少ない。だが,爪や牙がかすれば裂傷になり,しかもそれを治す方法が分からない以上,それは死の宣告と同じことだ。こうして「食われなくても死んでしまう」ことが分かり,地上を短い距離移動することすら恐ろしくなった結果,ほとんど樹木や断崖経由で移動するハメになってしまった。探索の効率はかなり低下し,自由に外で食事をとることも難しい状態に追い詰められてしまったわけだ。

 この問題が解決したのは,もうしばらく経ってのこと。あるオブジェクトを“使用”したとき,食べるのではなく,妙に変わった“動作”をし,さらにバフらしきアイコンが表示されることに気がつく。ゲーム中のニューロンのシーンではないが,そのときの感覚は,まさに自分の頭の中で“回路がつながった”ような体験だったと言えよう。結果としてその直感は正しく,“それ”を使えば裂傷が回復することが分かって,猛獣は「危険な存在だが,異常なまでに怖がる必要もない」くらいに情報は再度アップデートされることとなった。

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進化が進むと二足歩行可能な時間が長くなったり,群れの仲間に指示して「自分の行動の真似」を行わせたりできるようになる。運動能力や社会性,そしてコミュニケーション能力も高まっていくのだ
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 本作の面白さは,まさにこういったところだと思う。最低限のUIやヘルプは表示されるものの,具体的な説明を受けられるシーンはほとんどなく,フィールドに置かれているさまざまなオブジェクトを使い,単体か,あるいはパズルのように組み合わせて問題を解決していく。繰り返しになるが,かつての人類の祖先と同じように,プレイヤーも試行錯誤して“学んで”いくのだ。
 なので初プレイ時は,たとえ効率が悪く,なかなか答えが見つからなかったとしても,できればネットの攻略情報などをシャットアウトしてプレイしてもらいたいと強く感じた。プレイの区切りのタイミングには,スコアとして「現実の進化(の学説)とどれぐらい差があるのか」が表示されるが,ゲームを楽しむにあたっては,とくに気にする必要はないと思う。

 Ancestorsは美少女やイケメンが出てくるどころかメインキャラが猿人であるし,ど派手なスペクタクルや重厚なストーリー,甘酸っぱいロマンスといったものもほとんどない。パルクールは超人的だがそもそも猿だし,序盤から一騎当千で敵をなぎ倒すような爽快感とも縁遠いだろう。筆者が体験したように,お気に入りのキャラ(猿)がいたとしても,場合によってはあっさり死んでしまう。
 また完全日本語版ではあるものの,筆者がプレイしたバージョンでは一部フォントがおかしかったり,急に英語のテキストに変わったり,あるいは翻訳の精度が今ひとつな部分が散見されたりと,改善すべき点もなくはなかった(とはいえ,この原稿を書いているウチにアップデートが入って修正されたものもあったので,発売時には“完全”かもしれない)。

 しかし,そういった“今風でない”部分が多いからこそ,非常にオリジナリティが高い作品になっているように思う。紀元前の文明をテーマにしたり,地球の歴史をシミュレートした作品で部分的に猿人や原人が出てくる作品はそれなりにあるが,原人に至る人類の進化をテーマにし,かつそれをゲームシステムに直接落とし込んだ作品は,かなり珍しいのではないだろうか。しかも,それが(神の視点のような)俯瞰的なシミュレートではなく,プレイヤーの実感と一体化した作品になっているのは,なかなかの驚きである。

 前述のとおりにある程度人は選ぶとは思うし,シリーズ作ではないので知名度も高いとはいえないが,本稿を読んで興味がわいてきたら,ぜひ手にとって“ネットを見ないで”プレイしてみてほしい。名もなき我々の先祖が,1000万年前で待っているはずだ。

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「Ancestors: The Humankind Odyssey」公式サイト

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