インタビュー
「トーラムオンライン」開発者インタビュー。プレイヤーとして感じたMMORPGの面白さをスマートフォンで表現するその“こだわり”とは
そんな本作はどのようにして生まれ,どのようなプレイヤーに愛されているのか。3周年に至るまでの軌跡とともに気になるアレコレを、プロデューサーを務めるアソビモの鈴木達也氏に聞いてきた。今後のアップデートに関する情報もあるので,ぜひ最後までチェックしてほしい。
「トーラムオンライン」公式サイト
「トーラムオンライン」ダウンロードページ
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プレイヤー感覚で面白いMMORPGに磨き上げる
本日はよろしくお願いします。まずは鈴木さんが「トーラムオンライン」にどのように関わっているかを教えてください。
鈴木達也氏(以下,鈴木氏):
プロデューサーという立場ですが,タイトルのプロデュースだけでなく,ゲーム内のディレクション業務も行っています。開発チーム内で人手が足りないときは,イベントシーンやモンスターのパラメータといったデータの調整を行うこともあります。
プレイヤーの皆さんの目に映る部分では,アソビモ公式生放送のビーモチャンネルで情報発信もしています。
4Gamer:
一般的なプロデューサーというよりも,より開発現場に近い立ち位置なんですね。
鈴木氏:
はい。ゲーム内に実装する要素の仕様書を書いたり,UI(ユーザーインターフェース)の設計も担当したりしているので,プロデューサーというよりも便利屋のような感じです(笑)。
4Gamer:
そういった多岐にわたる業務を3年も担当されてきたと。そもそも,「トーラムオンライン」の開発のきっかけは何だったのでしょうか?
鈴木氏:
もともとアソビモでは,フィーチャーフォン向けに「イルーナ戦記Online」(※)というタイトルを配信していたのですが,その続編を作れないかという話の中で生まれたのが「トーラムオンライン」なんです。
ただ純粋なナンバリングタイトルというわけではなく,新しいタイトルとしてサービスを展開する考えだったので,「イルーナ戦記Online2」ではなく「トーラムオンライン」として,スマートフォン向けに開発がスタートしました。
※現在は「イルーナ戦記オンライン」としてiOS / Android向けに配信中。
4Gamer:
アソビモでは当時からスマートフォン向けにさまざまなMMORPGタイトルを配信されていましたが,ほかのタイトルとの差別化はどのようにはかられたんでしょう。
鈴木氏:
じつは,差別化についてはそれほど考えていませんでした。
というのも,「トーラムオンライン」をリリースする前に配信していた「アヴァベルオンライン」(iOS / Android)や「イザナギオンライン」(iOS / Android)といったタイトルは,アクション要素が強めだったんです。
対する「トーラムオンライン」では,当初からターゲット式のセミオートバトルという古き良きMMORPGのようなシステムを採用しようと考えていたので,プレイヤー層はおのずと違ったものになるだろうと想定していました。
4Gamer:
なるほど。企画時の段階で自然と差別化されていたということですか。
鈴木氏:
そうですね。とはいえ,当然操作感などはPCとスマートフォンでは全然違うので,スマホ向けに最適化する必要がありました。その一環として,レベル上げはかなりスムーズに行えるようにしています。
一方で,システムを簡略化しすぎて「MMORPGってこんなものか」と,底が浅いと思われないよう,ゲームシステムは本格的なMMORPGを目指しました。
4Gamer:
間口の広さと奥深いゲーム性の両立を目指されたと。レベルが上がりやすいと,新規プレイヤーのモチベーション維持にも繋がりますよね。
鈴木氏:
始めたばかりの新規プレイヤーから「今から始めても追いつけますか?」という質問をされるのですが,その質問に対して「無理」と答えられてしまうような状況は作りたくなかったんです。
4Gamer:
スマホ向けゲームは気軽に始められる反面,離脱してしまうときもちょっとしたことがきっかけになったりしますからね。では,開発されるうえでとくに注力された点はどうでしょうか?
鈴木氏:
これは自分が遊んでいて感じたことなのですが,MMORPGは「ゲームが遊べるコミュニケーションツール」のような印象があるので,開発でとくに意識したのはリアルタイムチャットの使いやすさでした。
4Gamer:
確かにチャットはMMORPGでとても大事な要素です。
ちなみに,ご自身でもMMORPGを遊ばれていたとのことですが,鈴木さんのプレイヤー歴は?
鈴木氏:
中学生の頃にハマって,それからどっぷりです(笑)。当時いっしょにMMORPGで遊んでいた友だちは現実で面識があったわけではなかったのですが,今でもつながりがあります。そういった関係性もチャットがなければ生まれなかったものなので,チャット周りの開発には力を入れています。
「トーラムオンライン」では,自分で遊んで感じた“MMORPGの面白さ”を再現したいと思っているんです。
ほかのプレイヤーとの繋がりはMMORPGの面白さのひとつですよね。
2018年9月には,「トーラムオンライン」のプレイヤーが現実で繋がれる場でもある3周年記念オフラインイベントが開催されました。来場者からの反響はいかがでしたか?
鈴木氏:
ありがたいことに,イベント後にアンケートを取ったところおおむね好評でした。地方でも開催してほしいという声もあったので,大阪など,東京以外の場所でも開催したいと考えています。
4Gamer:
そういった要望が出るということは,ユーザーの熱量もかなり高いですね。
鈴木氏:
3周年イベントでは,来場者からゲームに関する要望を聞く時間を1時間設けていたのですが,その後に用意していた1時間の自由時間でも要望の声が絶えず,質問攻めにあいました……(笑)。
4Gamer:
その要望の中で実現に向けて動き出しているものもあったり?
鈴木氏:
すでに実現しているものも多いのですが,スキルツリーの拡張などの要望は現在検討中です。オフラインイベント以外でも要望を募っているのですが,そこで集まったものの中だと,PvPと結婚システムが多いですね。
4Gamer:
PvPと結婚システムは,ほかのMMORPGタイトルでも人気の要素ですね。
鈴木氏:
どちらもすでに実装へ向けて開発に着手しています。ただ,ターゲット式のMMORPGでPvPを成立させるのは難しくて,どうやって形にしようかを考えているところです。PvPはただ単純にキャラクターの強い人が勝つというのも1つの面白さだと思うのですが,それ以外にもバリエーションを用意して,パーティーゲームのように遊べるものも作れたら面白だろうなと。
国内プレイヤーと海外プレイヤーどちらも満足するものを
「トーラムオンライン」は4周年に向けて歩き始めましたが,これまでの運営の中でとくに印象に残っているエピソードはありますか。
鈴木氏:
一番印象に残っているのが,2014年の6月に始まったαテストです。サーバーの動作確認をするのが主な目的だったので大々的に告知をしたわけではなかったのですが,インドネシアから参加してくださっている方がいたんです。ダウンロードページは日本語しかなかったこともあり,まさか国外から参加していただけるとは思っていなかったので衝撃的でした。
それから1週間ほどサーバー全体の様子を見ていましたが,チャットで流れるのはインドネシア語や英語ばかりで。そのため,αテストなのにローカライズ対応を始めたり,サーバーも国別に分けることが決まったりしました。
4Gamer:
それは予想外ですね……。
鈴木氏:
それから1年ほどαテストを続けてから開始したβテストを経て,2015年7月に正式サービスが始まりました。今でこそ笑い話にできますが,リリース当時はゲーム内でレベルが上がりやすかったこともあって,レベルを最大まで上げたプレイヤーが「やることがなくなった」と離脱してしまう時期があり,危機を感じていました(笑)。
4Gamer:
リリース早々に危機的な状況を迎えてしまったわけですか(笑)。
鈴木氏:
なんとか1周年を迎えたときに「スマホ向けは大変だな」と思ったのを覚えています。2周年のときにはコンテンツがかなり増えていたこともあり,プレイヤー数が増えて,同時接続数もリリース時の何倍にも成長させられました。
その勢いで「これだけ多くの方に遊んでいただけているなら,オフラインイベントもやろう」ということになり,初のオフラインイベントを2017年に7月に実施しました。我々としては,来場者は70人くらいだと想定していたのですが,その数を大きく上回る200人ほどの方に集まっていただき,プレイヤーの皆さんの熱量を肌で感じることができました。
4Gamer:
他社さんの話を聞いても,こういったイベントで数百人集めるのは相当大変らしいですし,それはすごいですね。ところで,「トーラムオンライン」のプレイヤー層はどういった比率なんでしょう?
鈴木氏:
少し前のデータですが,男女比にあまり差がなく,6:4くらいの割合でした。層としては,学生の方が多かったですね。お金を投じれば簡単に強くなるゲームではないので,殺伐とせずのんびり気軽に遊んでいただけているのかなと。
4Gamer:
女性の比率も高めなんですね。先ほどお話にあがった海外のプレイヤーと国内のプレイヤーでは,性質が違ったりするのでしょうか?
鈴木氏:
ゲームの遊びかたからしてかなり違いますね。ゲーム内でボス戦に挑むときに,日本のプレイヤーはバトルに集中して効率的に戦うことを重視される傾向が強いのに対して,海外のプレイヤーは戦闘中でもチャットを打っていることが多いんです。「クリアできればOK」という印象ですね。
それから,「トーラムオンライン」ではキャラクターの外見を着せ替えで変更できるのですが,国内外でどうしても好みは分かれてしまうのでグラフィックスのデザインに苦戦しています。
4Gamer:
国内に向けて作るのか,それとも海外に向けて作るのか,舵を取るのが難しそうですね。
鈴木氏:
もともと「トーラムオンライン」は国内に向けて作っていたはずなのですが,海外のほうがプレイヤー数が多いくらいなので装備のデザインは慎重に決めています。
そうした背景もあって,ゲーム内の要素に関する要望は海外の方からも募っています。幸い,寄せられる要望に国内外でそれほど差はないので,今のところ迷うことはありません。
PvPと結婚システムの実装については,海外からのほうが要望の熱が高かったりします。とくに結婚システムは,海外のMMORPGで実装されているケースが多いので,海外の方にも満足してもらえるようなものを作りたいですね。
4Gamer:
国内でも海外でも満足できるようなものを作っていくと。
鈴木氏:
それから,装備のデザインなど見た目の好みだけが問題ではなく,さまざまな国や地域の方に遊んでいただいていることもあり,どうしても端末のスペックにもばらつきが出てしまっています。日本基準でコンテンツを作ってしまうと,海外の方のマシンスペックではプレイできなくなるケースもあるんです。そのため,ゲームプレイに必要なスペックは現状のままで新しいコンテンツを追加することになるのですが,それがなかなか難しく,アップデートの際にはかなり悩みますね。
4Gamer:
アップデートでは,装備の強さなどゲーム内でのバランスにもかなり気を使うと思うのですが,装備の追加に関して何か意識されていることはありますか?
鈴木氏:
「この装備が最強です」と強い装備を追加するだけでは,プレイヤーにとっては敷かれたレールの上を進んでいるようで,なかなか面白いと感じてもらえないと思うんです。
「トーラムオンライン」は,「自分はこういうスタイルでプレイしたい」というプレイヤーごとの個性が実現できるゲームでありたいので,アップデートで追加する装備は,たくさんある“答え”の中の1つでしかありません。
4Gamer:
その“答え”となりうる装備がいくつもあるというのは,プレイヤーとしては嬉しいのですが,開発サイドからするとバランス調整が大変そうです。
鈴木氏:
当然,3年の運営の中で装備の数も増えていますし,アップデートでレベルキャップが開放されたり,スキルツリーに新しいものを追加したりすることもあります。そうすると,ゲーム内のバランスが変わるので,その中でベストなラインを見つけるのは簡単な作業ではありません。
ただ,考えることを放棄して最強装備を実装してしまうと,「トーラムオンライン」の面白さからはかけ離れていってしまいます。だからこそ,自分だけの“答え”を見つけてもらえるようなゲームデザインを心がけているんです。
4Gamer:
アップデートごとにバランスが大きく変わってしまうと,それを追いかけるプレイヤーが走り疲れてしまう可能性もありますしね。アップデートでは今後,装備以外にもさまざまなコンテンツが実装予定だと思いますが,その中から現状でお話しできるものはありますか?
鈴木氏:
現在,最大8人で参加できるレイドバトルがあるのですが,さらに盛り上がれるように,ログインしているプレイヤー全員で挑戦できるようなコンテンツがあれば面白いのではないかと考えています。
そのほかにも,プレイヤーの皆さんからはサポート職を実装してほしいという要望もあるので,そちらも前向きに考えています。ただ,その職業も“絶対に必要”という立ち位置ではなく,アタッカーのみでも問題なく遊べるようにするつもりです。
4Gamer:
サポート職がいたら攻略が楽になるという感じでしょうか。
鈴木氏:
そうですね。職業に関してもう少し言えば,現状ではタンクがいないとつらい場面もあるので,そこは今後の課題だと認識しています。
あと,これまで「トーラムオンライン」の“トーラム”という言葉が何を意味するのか,ゲーム中で一切触れていないのですが,その意味が今後のシナリオで明かされていきます。サブタイトルの「DEPARTURE FROM IRUNA」という言葉の意味も,まだはっきりと伝わっていないと思いますが,シナリオが進んでその意味が分かったときには,皆さんに「あ〜!」と思っていただけるはずです。
4Gamer:
楽しみにお待ちしています! 本日はありがとうございました。
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