「HIT」の一番人気キャラはキキじゃない？　世界140か国で1000万ものダウンロードを記録したグローバル版の開発秘話や各種データが明らかに

　ネクソングループが主催する技術カンファレンス，「Nexon Developers Conference 17」の最終日となる2017年4月27日，スマートフォン向けRPG「HIT 〜Heroes of Incredible Tales〜」（以下，HIT。iOS/Android）についての講演が行われた。

「HIT 〜Heroes of Incredible Tales〜」グローバル企画チームのチームリーダー，キム・ドングン氏

　HITの韓国版が最初にローンチされたあと，2016年7月に登場したグローバル版は，日本や中国を除く世界140か国で配信され，開始から2か月で累計500万ダウンロードを記録（関連記事）。現在は1000万ダウンロードを突破するなど，大きな盛り上がりを見せている。
　また，韓国版やグローバル版を通じてゲームバランスの改善を重ねたことが，2016年12月に登場した日本版にも良い影響を与えたという（関連記事）。

　講演では，開発会社のNAT GAMESでグローバル版の舵取りを行うキム・ドングン氏により，ローンチ時に留意した点などが語られた。また，HITのプレイヤーにとって興味深いグローバル版のさまざまなデータも公開された。

「HIT 〜Heroes of Incredible Tales〜」公式サイト

グローバル版開発で直面した課題

　HITのグローバル版は，世界中の140もの国で配信されている。現在，11言語に対応しており，またサーバーに関しては，アジア，ヨーロッパ，北米にそれぞれ用意された中からプレイヤーが自由に選べる仕組みだ。

　グローバル版におけるもう1つの特徴は，ワンビルド，つまり同じクライアントで提供されているところだ。NAT GAMESにとっては開発作業を一元化できるメリットがあるが，その一方でさまざまな課題も生じることになる。

　キム氏によると，グローバル版の開発期間は3か月と定められており，やるべき事をリストアップしたうえで，とくに優先度の高いモノから順に対応していったという。


　まず，テキストの翻訳作業に関してだが，たとえ同じ意味でも言語によって文字数が異なるため，メッセージウィンドウからテキストがはみ出したり，反対にウィンドウ内がスカスカになるといったことが起きる。そのため，テキストの行送りやフォントサイズの調整を自動化し，それでも対応できなかった場合は，テキスト内容そのものを細かく調整したそうだ。

　また，翻訳にまつわる大きな問題として，11言語のテキストデータをクライアントに全部入れなければならないことが挙げられた。データ量がそれだけ増えるわけで，これが後述する離脱率にも影響を及ぼすという。


　また，上記のようにグローバル版では140もの国や地域のプレイヤーが3つのサーバーに接続することになり，同じサーバーに接続しているプレイヤーでも，タイムゾーンが異なる。時間の限られたイベントなどでは，ある国のプレイヤーにとってゴールデンタイムでも，別の国のプレイヤーは深夜というケースも起こりうる。したがって，こういったコンテンツの導入は慎重に行わなければならない。


　どちらかというと，HITはハイスペックな端末向けに作られたコア寄りのゲームであり，しかもグローバル版では，クライアントのデータ量が大きい。そのため，インフラが整っていない国では，たとえHITに興味を持ったとしても，ダウンロード中に諦めてしまう人が後を絶たなかったとキム氏は述べた。

　しかし，クライアントのサイズを減らすことは難しかったため，対策として，ダウンロード中にHITの漫画を表示させることにした。これが効果を挙げたため，さらに進んで，ダウンロード中にHITのムービーを流したところ，目に見えて離脱率が減ったという。同様の問題に悩まされるハイスペック系のタイトルは，検討する価値があるとキム氏は語る。


　これらのグローバル版ならではの調整のほかにも，HIT本体のゲームバランス調整も行っている。サービス当初はゲームバランスに関連した離脱も顕著だったが，離脱するレベル帯やコンテンツを調べあげ，細かく原因を潰していった結果，大きく改善されたそうだ。


　こうしたさまざまな改善の結果，グローバル版の配信から9か月で，1000万ダウンロードを達成した。また，76の国で，AppStore/GooglePlayのランキング1位を記録するなど，現在も非常に好調だ。韓国版HITは売上が非常に高いことで知られているが，その半分に近い額をグローバルサーバーでも達成しているという。

　キム氏はグローバル版の今後の目標として，離脱率のさらなる減少を挙げた。ダウンロード数は1000万を記録しているものの，実のところ，そのうち約半数が，ゲームを起動する前に離脱したという。上述したムービー再生のほかにも，ミニゲームの導入や分割ダウンロードへの対応，SDカードへのデータ待避など，さまざまな方法を検討しているそうだ。

　キム氏の話で印象に残ったのが，韓国版やグローバル版のローンチを通じてゲームバランスを調整してから，日本版や中国版に着手したのが，結果として効果的だったという話だ。
　韓国版やグローバル版の情報を追うような熱心な日本人ゲーマーにとって，若干もどかしいだろうが，最初から遊びやすいゲームバランスで楽しめるメリットは非常に大きい。日本でのHITのサービスは好調とのことだが，このあたりの影響もあるのだろう。

グローバル版におけるサーバーデータの一部が公開に

　今回の講演では，グローバル版で稼働している3つのサーバー（アジア，ヨーロッパ，北米）の違いが，データと共に公開された。こちらに関しては，スライドとキャプションで紹介したい。
　ちなみに，キム氏によれば，メインキャラクターの中ではヒューゴやルーカスといった男性キャラの人気が高いそうだ。グローバル版向けのPR画像では現在，キキを前面に出しているが，ちょっと判断を誤ったかもしれないとも話していた。

【作成したキャラ数が多い国】
アジアサーバーではタイ，ヨーロッパサーバーではデンマーク，北米サーバーではアメリカ

【最も売上が高い国】 アジアサーバーでは台湾，ヨーロッパサーバーではフランスとドイツ，北米サーバーではアメリカ。ちなみにアメリカはユーザー1人あたりの売上も高い

【人気の高いキャラ】 アジアサーバーではルーカスとヒューゴ。そのほかのサーバーでも，ヒューゴとルーカスがワンツーを決めている。ただ，日本版に関しては，まるで違ったランキングになりそうな気もする

【トッププレイヤーの使用キャラ】
全サーバーを通じてレナがトップだ。これは，レナの実装直後にキャンペーンなどを行った影響があるかもしれないという

アバター装備に関しては，これまで5種類のセットを実装しているが，その中で最も売上が高かったのはハロウィン関連のアバター。多くの国でハロウィンが文化として根付いていることを実感させられたとのこと。また，ファンタジー系の世界観を持つHITにしては，SF関連のアバターが意外なほど人気を得たらしい。オリンピック関連のアバターは，全然売れなかったそうだ

アジアサーバーでは熱心なプレイヤーがとくに多く，コンテンツの消費スピードも速い。また同時に，アップデートを実施すると反応が即座にデータに表れ，売上にも影響を及ぼす。そのため月に2〜3回のアップデートの実施を心がけているそうだ。ただし，これがほかのサーバーになると話は逆で，頻繁なアップデートに戸惑うプレイヤーが多いという

「HIT 〜Heroes of Incredible Tales〜」公式サイト

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