レビュー
シリーズ誕生からちょうど10年,節目の年にリリースされたシリーズ最新作
Forza Motorsport 6
ドライブ&レースゲームに目がない筆者は,初代からForzaシリーズをプレイし続けており,「●●派」という呼び方ならば,明らかにForza派となる。
Forzaシリーズの魅力は,コテコテのレースシムにも関わらず,初心者から熟練者まで幅広い層が楽しめる難度設定や充実したアシスト機能にあると思う。リアルだが難し過ぎず,迫力あるレースを思う存分に楽しむことが,Forzaシリーズでは誰でも可能なのだ。
ファンの間では,2011年にリリースされたXbox 360用ソフト「Forza Motorsport 4」(以下,Forza 4)を傑作とする声が多い。車種やコースの充実ぶりだけでなく,デザイン機能を使ってアニメやゲームのキャラクターをボディに貼り付けた「痛車」も大きな話題となり,その人気に拍車をかけた。
ただ,その翌々年にXbox One向けに登場した「Forza Motorsport 5」(以下,Forza 5)は,レースシムとしての完成度は依然として高かったものの,収録車種やコースのボリュームダウンや,プラットフォームの変更に伴いForza 4のデザインデータを移行できなかったこともあり,あまり評価されていないようだ。
そんなForzaシリーズの節目の年に登場したのが,シリーズ最新作となるXbox One用ソフト「Forza Motorsport 6」(以下,Forza 6)だ。Forza 4とまではいかないもの,収録車種やコースは前作のForza 5よりも大幅に増え,良かった点はさらに伸ばし,直すべき点はしっかりと改善されている印象を受ける。あらゆる面でブラッシュアップが図られたForza 6は,どのような進化を遂げたのか。少々前置きが長くなってしまったが,そのあたりをじっくりと紹介したい。
「Forza Motorsport 6」公式サイト
車をドライブする楽しさを味わえる
バリエーションに富んだゲームモード
Forza 6のゲームモードには,「キャリア」「フリープレイ」「テストドライブ」「マルチプレイヤー」「リーグ」「ライバル」という6つが用意されている。
もちろん,メインとなるのはキャリアだ。プレイヤーは1人のドライバーとなって下位カテゴリのレースに参戦,ポイントを積み上げて上位カテゴリにステップアップし,トップドライバーを目指すことになる。
キャリアモードで選べるレースのカテゴリは,「スーパー ストリート」「スポーツ アイコン」「グランド ツーリング」「プロフェッショナル レーシング」「アルティメット モータースポーツ」の5つ。それぞれのカテゴリは3つのシリーズで構成されており,1つずつ順にアンロックしていく仕組みだ。
1つのシリーズでは複数のレースを戦うことになる。レースには,スポーツカーのみ,日本車のみ,ヒストリックカーのみといった参加条件が異なる8つのカーディビジョンが存在するため,さまざまな車種を乗りこなす必要があるというわけだ。
レースを戦うとその結果に応じてクレジット(賞金)が獲得できるほか,綺麗なオーバーテイクやコーナーリング,ドラフティングを駆使するなど,プレイヤーのテクニックに応じてXP(経験値)が得られる。このXPが一定値に達するとドライバーレベルが上がる仕組みで,レベルアップの際には「賞品スロットマシン」とでも呼びたい「プライズスピン」に挑戦できる。運頼みではあるものの,高額な車やクレジット,「MOD」(詳しくは後述)が獲得できるとあって,ドライバーレベルが上がるたびにワクワクしてしまう。
Forza 6で初登場となるMODとは,キャリアのみで利用可能なカードのことだ。車の性能を向上させる,レースのクレジットを上乗せするなど,さまざまな効果を持ったMODが存在し,最大3枚までセットできる。MODを入手するにはプライズスピンのほか,レースで獲得したクレジットで「MODパック」を購入することも可能だ。なお,MODの中には使用回数が設定されているものがあるので,とくに重要なレースで投入するようにしたいところ。
キャリアでレースを戦っていくと,「ショーケース」と呼ばれるスペシャルレースが開放されることがある。これは指定された車で挑むイベント色の強いレースで,コースに配置されたコーンの間を走り抜ける「オートクロス」,追い抜いたライバルの台数を競う「オーバーテイクチャレンジ」,コース上のボーリングピンを倒していく「Top Gear ショーケース」など,10カテゴリに全87種のスペシャルレースが用意されている。英国BBCの人気番組「Top Gear」に出演している覆面ドライバー「The Stig」と対決するレースもあり,モータースポーツファンにはたまらないはずだ。
ショーケースは,タイトルメニューから任意のレースを選んで挑戦できるのも嬉しいポイント。あまりにも楽しくて,キャリアそっちのけでプレイしてしまったのはここだけの話である。
キャリア以外のゲームモードにも触れると,走行中でもチューニングやアシスト設定を変更して,即座に挙動の変化を確認できるテストドライブが便利だ。苦手なコースの走り込みやセッティングの微調整に重宝している。
もちろんオンライン対戦も健在で,最大24人の世界中のプレイヤーと戦える。通常のレースだけでなくドリフト対決やドラッグレース,“鬼ごっこ”などのバリエショーンもあり,前作と比べてもマルチプレイの要素は非常に充実しているといえる。
世界中の有名サーキットを舞台に
シリーズ初のレインコンディションを走る
Forza 6には,実在の有名サーキットを含む計26コースが収録されている(Forza 5では計17コース)。収録リストは以下のとおりだが,ほとんどのコースにおいてフルサーキットやショートサーキット,グランプリサーキット,東サーキットなど,複数のコースレイアウトが用意されており,オリジナルコースにいたってはリバースコース(逆走コース)も選べるようになっている。
<収録コースリスト>
アメリカ
- インディアナポリス モーター スピードウェイ
- ロード アメリカ
- テスト トラック エアフィールド ※
- マツダ レースウェイ ラグナ セカ
- ロングビーチ
- ライムロック パーク
- ロード アトランタ
- サーキット オブ ジ アメリカズ
- ワトキンズ グレン
- デイトナ インターナショナル スピードウェイ
- セブリング インターナショナル レースウェイ
アラブ
- ヤス マリーナ サーキット
イギリス
- ブランズ ハッチ
- Top Gear テスト トラック
- シルバーストン サーキット
イタリア
- ソノマ レースウェイ
- モンツァ サーキット
オーストラリア
- マウント パノラマ モーター レーシング サーキット, バサースト
スイス
- ベルナー アルプス ※
スペイン
- カタルーニャ サーキット
チェコ
- プラハ市街地コース ※
ドイツ
- ホッケンハイムリンク
- ニュルブルクリンク
ブラジル
- リオデジャネイロ ※
フランス
- ル・マン サルト サーキット
ベルギー
- スパ フランコルシャン サーキット
※はForza 6のオリジナルコース
ブランズ ハッチ,スパ フランコルシャン サーキット,ル・マン サルト サーキット,ニュルブルクリンク,セブリング インターナショナル レースウェイ,シルバーストン サーキット,Top Gear テスト トラックの7コースでは,新要素のレインコンディションも選べる。
2015年8月27日の記事でも紹介しているとおり,Forza 6の開発陣が注力したというレインコンディションは,コックピットビューでプレイするとその凄さが分かる。フロントガラスに当たって流れていく雨粒の一つ一つまでもが精細に描かれ,レースの臨場感や緊張感を一段と高めてくれる。
タイヤが水の上に乗ってコントロールを失うハイドロプレーニング現象も再現されており,一見何の変哲もないストレートでさえ,ドライコンディションと同じ感覚で走っていると唐突に車の向きが変わってしまうから怖い。ただ,水の抵抗を利用して減速することもできるので,ぜひレインマイスターを目指してほしい。
レインコンディションではレコードライン上の水たまりに要注意。ハイドロプレーニング現象が起こり,唐突に車の向きが変わることも多い |
フロントガラスに当たって流れていく雨がリアル。ぜひコクピットビューで確認してほしい |
このようにForza 6では,同じコースでもコースレイアウトや天候,時間帯の変化によってさまざまな表情を見せるので,バリーエションは数知れず。ただ,すでにお気づきのことと思うが,鈴鹿や筑波,ツインリンクもてぎのサーキット,そしてForza 4に収録されていた富士見街道といった,日本を舞台にしたコースは収録されていない。追加コンテンツという形でも構わないので,日本のコースが登場することを熱望しているのは筆者だけではないだろう。
高級スポーツカーをオリジナルデザインや“痛車”にして乗り回そう
国内外の自動車メーカーのマシンが460車種以上,すべて実名で登場するのもForza 6の魅力だ。日産,トヨタ,レクサス,ホンダ,スバル,三菱,マツダといった国内メーカーをはじめ,海外ではフェラーリやランボルギーニ,マクラーレンなどの名門に加え,ドンカーブート,ノーブル,シャパラルといった日本では馴染みの薄いメーカーまで網羅されている。自動車の外観や内装,エンジンルームまでじっくりと眺められる鑑賞モード「Forzavista」は本作にも搭載されているので,高級スポーツカーのオーナーになった気分で細部にいたるまでチェックできるというわけだ。
なお,スポーツカーの代名詞とも言えるポルシェのマシンは未収録だが,2016年に海外で追加コンテンツを配信予定であることがアナウンスされている。おそらく日本でも購入できると思うので,少々待たされるが楽しみにしたい。
シリーズ従来作と同じく,全車種においてカスタマイズパーツを装着したり,サスペンションやブレーキバランスなどのセッティングを細かく設定したりと,自分好みの車に仕上げることが可能だ。こうしたカスタマイズ要素も特筆ものではあるが,実車さながらに再現された車のボディをデザインできる機能こそ,Forzaシリーズの最大の魅力であると強く推したい。
冒頭でも触れたとおり,Forza 4の決して使いやすいとは言えないデザインツールを駆使して,“職人”が作り上げた痛車は,Turn 10 Studiosの開発陣を含む世界中のプレイヤーを魅了した。そのデザインデータはForza 5に移行できなかったものの,Forza 6ではForza 5と「Forza Horizon 2」の自作デザインデータを引き継げるようになっている。
実際,Forza 6の発売直後からハイクオリティな痛車のデザインが続々とアップロードされており,入念にラインナップをチェックしているこちらの立場も大変だ。あいかわらず検索機能には難ありと言わざるをえないが,あらゆる職人達に感謝しつつ,デザインを使わせてもらっている。
最高峰のレースシムここにあり!
興奮必至のレースシーンを体験しよう
車の動きをリアルに再現するレースシミュレータ系のForzaシリーズ。ファンにとって,やはり気になるのは「挙動」だろう。その点,Forza 6は前作よりもリアルさを増している印象だ。実際にForza 6とForza 5で同じ車を乗り比べてみたところ,Forza 6のほうが乗りこなすのに苦労すると感じた。
「リアル=難しい」と単純に結論付けるつもりはないが,オーバースピードでコーナーに進入したときのアンダーステアの出方,強引なハンドリングでタイヤがグリップを失ったときの失速具合,車種ごとの挙動特性の違いなど,Forza 6では細かい部分がさらにシミュレートされ,挙動の変化として反映されているようだ。
また,レースに登場するライバルカーは,世界中のプレイヤーの分身と言える「Drivatar」(ドライバター)だ(関連記事)。Forza 5で初めて採用されたこのAIドライバーは,何も気にせずに追突してくるかと思えば,コーナーでインを突くとムダな接触を避けるようにスッとコースを空けるものがいたり,派手にショートカットを繰り返すものもいたりと,一段と人間らしい走りを展開するようになったようだ。
ちなみに,Forza 6でも自分のDrivatarがどこかの知らない誰かのレースに参加して賞金を稼いできてくれるが,むしろハチャメチャな走りで迷惑をかけていなか心配だ……。
もちろん,Forzaシリーズの特徴として冒頭で挙げた難度設定やアシスト機能の充実ぶりは本作でも健在だ。Drivatarのレベルは8段階から選択可能で,ドライバーをサポートするアシスト機能は推奨ラインやブレーキング,ステアリングなど,豊富な項目を自分の腕前に合わせて調整できる。ゲームに慣れてきたら徐々にアシスト機能を解除するようにすれば,レースゲーム初心者でもスムーズに上達を図れるだろう。
アシスト機能のダメージを「シミュレーション」にすると,車体に蓄積されるダメージが挙動に反映される。上級者にオススメだ |
今回,筆者はXbox One純正のゲームパッド(Xbox One ワイヤレス コントローラー)を使ってプレイしているのだが,本体のみならずトリガー部分も振動するインパルストリガーとの相性は抜群だ。挙動がリアルになったForza 6では,微妙なステアリングやアクセルワーク,ブレーキングの操作が必要不可欠となっている。
その点,Xbox One純正のゲームパッドはアンダーステアやグリップを失うときの挙動変化がトリガーを通して伝わってくるため,瞬時に対応しやすい。一定の舵角を保持するロングコーナーやオーバルコースでは,さすがにスティック操作では苦しいと思うこともあるが,ゲームパッドでも十分に楽しめるのは素直に嬉しい。
さて,シリーズ10周年の節目に満を持して登場したForza 6を紹介してきたが,正直なところ,Forza 5と比べて大きな変化は感じられないかもしれない。しかし,コンテンツの充実を図り,さらに遊びの幅を広げた本作は,まさに10年めの集大成と呼ぶにふさわしい完成度に達している。ちょっとでもレースゲームに興味がある人なら楽しめる要素が凝縮されており,あとは走り出すだけ。極上のバトルをぜひ体験してほしい。
「Forza Motorsport 6」公式サイト
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