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「年を重ねるにつれ,下品なものや低俗なもの,パンクロックなどにますます惹かれます」――「ドローン・トゥ・デス」のクリエイター,デイビッド・ジャッフィー氏メールインタビュー
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印刷2017/04/29 00:00

インタビュー

「年を重ねるにつれ,下品なものや低俗なもの,パンクロックなどにますます惹かれます」――「ドローン・トゥ・デス」のクリエイター,デイビッド・ジャッフィー氏メールインタビュー

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアが,PlayStation Storeにて配信中のPlayStation 4用ソフトウェア「ドローン・トゥ・デス」は,全編ラクガキ風のビジュアルやきわどいセリフ,ハチャメチャな対戦で話題を呼んでいる作品だ。

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 ゲームの詳細については,先日掲載したプレイレポートをご覧いただくとして,今回は本作でゲームディレクターを務めたデイビッド・ジャッフィー(David Jaffe)氏へのメールインタビューをお届けしよう。
 ジャッフィー氏は,「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズのディレクターとしても知られる実力派ゲームクリエイターで,現在はThe Bartlet Jones Supernatural Detective Agency(バートレット・ジョーンズ心霊探偵事務所)という,なかなかエッジの効いた名前のスタジオで,クリエイティブディレクターを務めている。
 一体,どんなアイデアから本作は生まれたのか。気になるところを聞いてみた。

「ドローン・トゥ・デス」公式サイト



「ドローン・トゥ・デス」を作ったのは

こんなゲームを作りたい時期だったから


――日本でデイビッド・ジャッフィーさんは,硬派で大作感あふれる「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズを手掛けたクリエイターとして知られています。ところが今回の「ドローン・トゥ・デス」は,同じクリエイターが作った作品とは思えない世界観を持っていることに驚かされました。「Twister Metal」(ツイステッド・メタル)シリーズをさらにパンクで下品にしてジョークを効かせたような,ここまで振り切った作品も,以前から作りたかったのでしょうか?

デイビッド・ジャッフィー氏
新規スタジオ,The Bartlet Jones Supernatural Detective Agency(バートレット・ジョーンズ心霊探偵事務所)のクリエイティブディレクターであり,今作「ドローン・トゥ・デス」のゲームディレクター。ゲームクリエイターとしてのキャリアは20年にわたる。代表作は「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズ,「Twisted Metal」シリーズ
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デイビッド・ジャッフィー氏(以下,ジャッフィー氏):
 ラッキーなことに,業界で働き始めてからずっとソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)と仕事をしてきました。ゲームクリエイターが熱くなれるアイデアを追及させてくれる会社なんです。
 作品はヒットすることもあれば,残念ながら失敗に終わることもありますが,この姿勢があるからこそ,SIEが提供するゲームの多くが,「空っぽで平凡なゲーム」ではなく,魂と多様性のあるユニークな経験をさせてくれるのでしょう。その自由な環境は,私とチームが作り上げてきたこのゲームにも反映されていると思っています。
 長い説明になりましたが,ひと言で言うと,ドローン・トゥ・デスを作ったのは,こんなゲームを作りたい時期だったから……ということです。「10年間ずっと温めてきたアイデアがやっと実現できた!」といったものではありません。
 一般的には,年を重ねると下品なものや低俗なもの,パンクロックなどへの興味をなくすことが多いようですが,どうやら私は特殊みたいですね。興味をなくすどころか,ますます惹かれているので。まあ,もうしょうがないですよね(笑)。

――ですね(笑)。本作は,中高生男子が妄想するラクガキノートがモチーフになっています。日本では,こうしたノートを他人に見られると恥ずかしく感じ,「黒歴史」などと呼ぶこともありますが,アメリカの中高生男子はどのようにとらえているのでしょうか。

ジャッフィー氏:
 うーん。どうなんでしょう。私には13歳になる娘がいるんですが,彼女は空想ノートもクールだと思っているみたいです。でも,「ハミルトン」(※アメリカで人気を博しているブロードウェイ・ミュージカル)とは比べ物にならないそうですが(笑)。
 正直なところ,実際の若者がどう思うのか聞こうと思ったことはありません。というのも,このゲームの想定ターゲットはもう少し年齢の高い層だったからです。
 私個人は,中高生時代やあの頃の創作を恥ずかしいと思ったりはしません。子供っぽくて未熟で,でも生命とエネルギーと希望と情熱に満ちていました。モンスターやロボット,吸血鬼といった子供の世界に心を躍らせつつ,大人の世界にもワクワクしていたあの頃が大好きです。
 あの時期のいろいろとごちゃまぜになっている強烈な感覚は,私の手掛けるすべてのゲームに現れていると思いますし,そのことを誇りにも思っています(笑)。

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――思春期のジャッフィーさんも,オリジナルのヒーローや兵器を描いていたんですか?

ジャッフィー氏:
 もちろん! ……もっとヘタでしたけどね。12歳の時に,「ライトニング」という,今考えたらひっどいキャラクターをマーベルコミックスに送りつけたこともありました。等身大のスーパーヒーローを作ろうとしてね。
 マーベルからはていねいなお断りの手紙が届きましたよ。あああぁ,もう!(笑)

――黒歴史ですね(笑)。ところで,ジャッフィーさんは日本のゲームやクリエイターへの造詣も深いとお聞きしています。どのゲームのどんなところが好きか,いくつか教えてください。

ジャッフィー氏:
 何を隠そう,私は任天堂の大ファンです。宮本さんが手がけた初期の作品から,監修に回った比較的新しい作品までね。藤林さんや阪口さんのような最近のクリエイターの作品も楽しませていただいています。
 そしてもちろん,小島監督の大ファンです。ゴッド・オブ・ウォーの発売時にお会いする機会があって,直接お話しできたことに大興奮しました。
 さらに,上田文人さんの大ファンでもあります! 
 でもやっぱり一番は,現在SIE JAPAN Studioのヘッドであるアラン・ベッカーですね。アランは素晴らしい人で,彼のお陰で今の私のキャリアがありますし,スタジオの開発者に作品を通して自分自身を表現させてくれるんです。クリエイターのために,作品をアートにするために,戦ってくれるんです。たとえそのアートが下品なものであっても……私の作品のことなのですが。我ながらアートの為に戦うにはこの上ない作品だと思いますよ! 何より,ミスター・ナイスガイですしね。


敵と撃ち合う時間を充実させるべく

“Time to kill”を長めに設定


――では,本作に登場するキャラクターのデザインで,こだわったポイントを教えてください。

ジャッフィー氏:
 キャラクターデザインに関しては,「パワーストーン」シリーズのような乱闘ゲームから,そして一部「スマッシュ・ブラザーズ」シリーズからも,インスピレーションを受けました。
 と言っても,ドローン・トゥ・デスのキャラクターがスマッシュ・ブラザーズシリーズのキャラクターと同じくらい作り込まれていると主張したいのではありません。乱闘ゲームをプレイしているときに感じる気持ちと,シューターをプレイしているときの気持ち,それらをミックスした気持ちになれるような作品を作りたかったんですね。だから,キャラクターにはたくさんの特殊能力や特徴,必殺技を持たせて,ユニークなものにしようと力を入れました。
 そうすることで,例に挙げたゲームのように,選んだキャラクターによってゲームプレイや戦略が変わるようにしたかったんです。

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――本作に登場する武器はどれも個性的です。これらのアイデアはどのように生まれたんでしょうか。また,お気に入りの武器があれば,それも教えてください。

ジャッフィー氏:
 まず,アイデアを元に武器をデザインするケースがあります。例えば,サルのエミリーは私が考え付いたアイデアで,単純にサルが出したウンコを武器として投げられたらおバカで面白いだろうなーと思ったのです……かなり頭の悪いアイデアですが,そういうことを考えているとハッピーになる自分がいるんですよね(笑) 。
 逆に,仕様から作った武器もあります。例えばドッジボール・ダン。この武器はリロードに弾倉ではなくキャラのスタミナを消費するんですが,この特殊なリロードの仕様を先に考え付いて,それを元にデザインしました。

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――本作は,ほかのアクションシューターに比べてキャラクターの耐久力が高く,一撃で倒されるような場面はありません。いわゆる,“Time to kill”(倒すまでの時間)を長めに設定したゲームデザインの意図を教えてください。

ジャッフィー氏:
 そこがドローン・トゥ・デスで気に入っている部分の一つです。現代は素晴らしいシューターがたくさんあります。でも,ほとんどのシューターのテンポが私にはしっくりこないんですよ。やられたりリスポーンしたりに時間を使いすぎて,敵と撃ち合う時間が少ないんじゃないか,と。
 だから,ドローン・トゥ・デスでは,プレイヤーが敵と戦っている時間にさまざまな機微や夢中になれる要素を足したかった。起死回生したり,敵の行動を読んだり,マップ内の武器やアイテムの位置を覚える意味があるほど長時間生き残れたりしたら面白いか,確かめたかったんです。Time to killが長めなのはこういった目的を達成するためです。

――ゲーム中やリザルトで表示される“挑発”は,非常に多くの種類が用意されています。なぜ,これほどのバリエーションを用意したのでしょうか。

ジャッフィー氏:
 作るのも,ゲーム内やロビーで使うのも楽しいからです! 新しい挑発を発見する喜びもあると思いましたし。ローンチ時点でも100個以上あるので,私自身すべてを覚えているわけではありません。プレイ中,倒されたときに敵のプレイヤーが見覚えのない挑発を出してきて驚いてしまうこともありますね。

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――このゲームでなかなか勝てずに悔しい思いをしているプレイヤーに,制作者としてどんなアドバイスを送りますか?

ジャッフィー氏:
 まずは,チュートリアルをプレイしてみてください。私もチュートリアルは嫌いです。だから楽しいものになるようにしました。
 それから,シューティング・ギャラリーへも行ってみてください。すべてのキャラクターや武器を試すことができ,ゲームシステムをしっかり理解できます。
 とにかく試合に参加して,普通のシューターのようにプレイするだけだと,ドローン・トゥ・デスの面白さを分かってもらえないのではないかと思います。いうなれば,「ストリートファイター」をパンチだけでプレイしているようなものですからね(笑)。

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――分かりやすい例えですね(笑)。では最後に,日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

ジャッフィー氏:
 私達の手掛けたゲームで,日本で幅広く受け入れられたものは,実はありませんでした。どうも,私の手掛ける作品は日本のプレイヤーから,「アメリカンすぎる」と言われることが多いんですよね。それは分かりますし,認めます。
 その上で,それでも私達のゲームを好きだと言ってくれる人達が日本にいてくれるのは,本当に嬉しいことです! ですから,日本のファンの方々には「私達の作品を気に入ってくれてありがとう! 応援してくれてありがとう!」と伝えたいです。

――ありがとうございました。


 ドローン・トゥ・デスの販売価格は2460円(税込)だが,2017年5月9日までの期間は,PlayStation Plusの「フリープレイ」の対象となっており,PlayStation Plus会員であれば無料で入手可能だ。ゴールデンウィークに,ネジが飛んでいるゲームを遊んでみたいと考えている人は,この機会をお見逃しなく。

「ドローン・トゥ・デス」公式サイト

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    ドローン・トゥ・デス

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