プレイレポート
「絶対迎撃ウォーズ」のインプレッションをお届け。タワーディフェンス系にも通じる,新感覚アクションゲームの魅力とは
ご存じのとおり,タワーディフェンスとは,迎撃用施設やユニットなどを自陣に配置することで防衛ラインを設計し,自陣へと攻め寄せる敵を撃退するゲームのジャンルだ。迎撃用施設は自動的に稼動する仕様であることがほとんどで,防衛ラインの設計の良し悪しそのものが勝敗を大きく左右する点が特徴となっている。
とりわけ,昨今のモバイルゲーム市場で急速に人気が高まってきたジャンルであり,最近ファンになったという人も多いのではないだろうか。
アクワイアから本日(2015年7月2日)発売された「絶対迎撃ウォーズ」(PS3/PS Vita)は,そのタワーディフェンス系のシステムをベースに,ユニークなアクション要素を加えた“都市防衛アクション”だ。あらためてPS3やPS Vitaの歴史を紐解いてみると,タワーディフェンス系の要素が盛り込まれた作品は散見されるものの,その多くはバトル中の立ち回り(アクション性)を重視したデザインになっている。
その意味では,拠点の設計にも重点が置かれた絶対迎撃ウォーズは,これまでのPS3やPS Vitaに「ありそうで(ほとんど)なかった」タイプの作品だろう。今回,発売に先がけて実際に遊んでみたところ,本作はタワーディフェンス系に馴染みのない人からも共感を得やすいゲームであると感じたので,ゲームの魅力を順を追って紹介してみたい。
「絶対迎撃ウォーズ」公式サイト
ライトユーザー向けながら,システムは職人気質
まず,絶対迎撃ウォーズの世界観は陽気かつ軽快,そしてゲームバランスは易しめだ。ただ,きめ細かく作り込まれたシステムからは,開発者の職人気質がにじみ出ており,まさにアクワイアらしいタイトルと感じられる。
適度な難度と明るい雰囲気に彩られた作品だが,その骨子となるシステムはしっかりと作り込まれている |
物語は,惑星規模の災厄に見舞われた未来の地球が舞台になっている。地表のほとんどは荒野と化してしまったものの,人類は「アルタナイト」と呼ばれる地下資源を発見し,その産出地を拠点に都市を築いて,文明の再建を目指していた。
しかし,この時代には人類の天敵ともいえる巨大生命体「プロティノウス」(通称:エネミー)が大量に出現。プレイヤーは都市防衛隊の司令官となって,都市を守り,そして経済発展に手腕を振るうことになる。
プレイヤーが成果を示すと,そのぶん都市の再建が進み,仲間からの信頼も高まっていく |
迎撃能力の高い都市を築こう
都市に迫り来るエネミーとの攻防は,大きく分けると「バトル前の準備(開発フェーズ)」と「バトル時のアクション(迎撃フェーズ)」という2つのパートで構成されている。
開発フェーズでは,都市の敷地内にさまざまな施設(ユニット)を建設して,防衛ラインをデザインしていくことになる。ユニットは大きく分けて,兵装ユニット,住居ユニット,防御用ユニット,特殊なユニットという4つに分類することが可能だ。
迎撃フェーズで都市に侵攻してくるエネミーを迎え撃つには,都市内に兵装ユニットを配置し,攻撃力を手に入れる必要がある。そのうえで,都市の外側にも防御用ユニットでバリケードを築くことが大切だ。
エネミーの迎撃に成功すると,都市の安全性が世界中に伝わって移民希望者が増えてくる。そうなると彼らの生活にも気を配らなくてはならないし,施設が増えて都市全体の消費電力が上がれば,発電所の増設も避けられない。こうしたサイクルを繰り返して,より迎撃能力の高い都市を目指していくことになるのだ。
防衛ラインを設計しているところ。ユニットの種類が多いので,自分だけの都市を作り上げることが可能だ |
迎撃フェーズでは,都市の周囲から攻め寄せるエネミーとのバトルに突入する。ここで筆者は,ミサイルの挙動に目を引かれた。弾が直進するだけのキャノンとは異なり,ミサイルにはエネミーを追尾する機能が備わっているのだが,そのカーブの度合いには限界がある。つまり,接近を許してしまった敵にはミサイルがほとんど当たらず,「遠距離の敵の出鼻をくじくならミサイル,都市の近くまで迫ってきたらキャノン」といった,どのような戦況にも対応できる設計が求められるのだ。
こういったゲームバランスは丁寧にチューニングされており,防衛ラインの設計を巡る戦略性の妙味を満喫することができた。
ミサイルには追尾機能があるとはいえ,その機動力には限界がある。遠距離の敵への攻撃に使いたい |
相手の動きを見て撃退せよ
さらにエネミーの侵攻が佳境に差しかかってくると,「リングフォースシステム」と呼ばれる本作独自の要素に感心させられた。キャノンやミサイルによる砲撃は,エネミーの接近を察知すると自動的に行われるが,その配置は戦闘中に変更できるようになっている。
下の写真を見てほしい。都市は「環区」と呼ばれる,ドーナツ状の4つの区画で構成されており,それぞれの環区はグルグルと回転させることが可能だ。都市へと侵攻してくるエネミーは,その周囲360度,どの方角に出現するかは分からない。エネミーが北東(画面右上)から迫ってきたら,環区を回転させて兵装ユニットを北東方向に配備し直すといった独特のアクションを楽しめるのがポイントだ。
都市を構成する4つの環区は,そこに設置されたユニットごと回転させられる |
「ここぞ!」で決める戦略性
2つの異なる環区それぞれにキャノンを配置し,バトル時に環区を回転させて,2つのキャノンが縦に隣接すると,両ユニットが合体して2倍サイズの大型キャノンが誕生する。当然,より高い破壊力でエネミーを攻撃できるというわけだ。もう1つのキャノンを並べれば,3つのユニットが合体した特大キャノンとなって,さらに高い迎撃力を手に入れられる。
無事,すべてのエネミーを全滅させれば,ミッションはクリアだ。プレイヤーの戦果に応じて,「迎撃実績」と呼ばれる経験値が獲得できるのだが,同じエネミーを倒した場合でも,合体ユニットで仕留めるとボーナスが加算されるのがポイントだ。戦い方次第で,出世スピードは大きく変わってくるだろう。
ある程度までミッションを進めていくと,都市の中央にそびえ立つ塔に,絶対迎撃兵器と称される最強の兵器「バスターキャノン」を設置できるようになる。バスターキャノンを設置すると,戦闘中に少しずつ起動エネルギーが蓄積され,100%に達すると任意のタイミングで発射可能だ。バスターキャノン発射時には一人称視点になるので,威力絶大なエネルギー砲をエネミーに叩き込む爽快さはバツグンだ。
これまでに紹介したユニット合体やバスターキャノンを使いこなせると,「より効果的に」「よりカッコいい」戦い方を次々と編み出せるようになる。それによって「倒すのは難しくなるけど,今回はユニットを合体させて経験値を稼いでみよう」といった具合に,いろいろなアプローチを試してみたくなってくるはずだ。
また,新しいユニットを開発したり,戦果を上げることで移民を集めたりと,さまざまなやり込み要素も用意されている。豊富な戦略性と相まって,なかなかの遊び応えを感じ取れた。
絶対迎撃ウォーズの華
頼もしく,かつ笑いを誘う仲間達の存在
プレイヤーとともに都市の防衛に尽力する仲間達は,本作を語るうえで忘れてはならない存在だ。プレイヤーが司令官に着任した直後は,片手で足りる程度の登場人物しか指揮下にいないが,迎撃実績を積み重ねることで,新たな仲間が1人また1人とプレイヤーのもとに集まってくる。
仲間達は皆,頼もしい戦闘員や技術者であるのと同時に,ブッ飛んだ性格の個性派揃いだ。
最初にプレイヤーと知り合うことになるトウワは,結婚に憧れすぎている女の子。任務中ですらウッカリと婚活がらみの夢や焦りを口走ってしまうこともあるほどだ。一方,爽やかなイケメンの青年・ラブロックは,度が過ぎた情熱家で何かにつけて暑苦しい(?)セリフを連発する。そんな登場人物が矢継ぎ早に追加されるので,つねにドタバタ感に溢れている。
物語が山場に入ると,ショートイベントが発生し,仲間達による軽快なセリフの掛け合いが繰り広げられる。そのほかにも,バトル時に特定の攻撃が成功したタイミングや,設備で欠けているものがある場合などでは,仲間のちょっとした“つぶやき”や“突っ込み”がバンバン飛び交う。こうした演出によって,シリアスな戦況はどこへやら,肩の力を抜いて楽しめるポップな雰囲気になっているのだ。
絶対迎撃ウォーズについてまとめるなら,タワーディフェンス系のゲームとしてのツボは手堅く押さえつつ,それでいて気軽に楽しめるコンセプトが貫かれている新感覚のアクションゲームだ。あまり難度が高くないという点で,やや物足りない印象があるかもしれないが,登場人物同士のセリフの掛け合いは楽しく,“堅苦しくない”雰囲気は幅広い層に受け入れられるはず。そして何よりも,「タワーディフェンス系アクションの入門編」としての完成度の高さは特筆ものだ。本稿を機に,ぜひ注目してほしい1本である。
「絶対迎撃ウォーズ」公式サイト
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- 絶対迎撃ウォーズ 予約特典(サウンドトラックCD付きビジュアルブック(+DLC)(仮称)) 付
- ビデオゲーム
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