激動の2021年もついに終わりを迎えようとしているが,読者のみなさんはいかがお過ごしだろうか。筆者は休日に友人を呼び集めてボードゲームで遊ぶのが楽しみだったのだが,緊急事態宣言が解除された今でも,まだ気軽に「遊ぼうぜ!」とは言えない雰囲気だ。
当然,2020年から続く,こうした環境変化の結果として
Steamで遊べるボードゲーム を調べる機会が増え,今や「ボドゲしようぜ!」は筆者が友人にSteamギフトを送りつける合図となりつつある。
おそらく,同じ境遇のSteamer兼ボードゲーマーは少なくないだろう。というわけで今回は,今年大量に購入して遊びまくったデジタル版ボードゲームの中で,
とくにオススメできる10タイトル を紹介していこう。
なお,いつかまた,気軽に集まって楽しめる日が戻って来たときのために,今回取り上げる10作品は
「アナログ版も販売されているボードゲーム」 としている。また,日本語が未実装であっても,言語への依存性が低いと思われるタイトルは対象に含めている。各タイトルの概要欄にある言語依存性の表示の意味については,以下の表を参考にしてほしい。
言語依存
低
ゲーム内でテキストを読む必要がなく,基礎ルールを習得すれば最後までプレイ可能。または,ルール自体もシンプルで,参照しながらプレイする必要がない。
中
ゲーム内でテキストを読む機会が多少あり,事前にゲーム内の要素を説明する必要がある。または,ルールは一度で覚え切ることは難しく,途中で数度は再参照が必要になる。
高
カードごとに異なるテキストなどがあり,事前に要素を説明することが困難。または,ルールを事前に完全に習得するのが難しく,サマリーなどを常に参照しながらプレイするのが望ましい。
Carcassonne - Tiles & Tactics
Carcassonne - Tiles & Tactics
日本語名
カルカソンヌ
価格
1010円
ジャンル
タイル配置
対応人数
1〜6人
プレイ時間
30分前後
言語
日本語なし
言語依存
低
まずは,ドイツの老舗ゲーム出版社・Hans im Gluck(ハンス イム グリュック)の代表作とも言える作品
「カルカソンヌ」 のデジタル版を紹介しよう。
カルカソンヌは,古代ローマの城塞都市をテーマとするタイル配置形式のボードゲームだ。各プレイヤーは数十枚のタイルを順番に1枚ずつ引き,それを配置して広大な城塞都市の建造を目指していく。
テーマは壮大だがルールは非常にシンプルで,プレイヤーが手番にできるアクションは「四角形のタイルを1枚ドローし,それを共有の場に配置する」だけ。すべてのタイルを使い切ったら得点を計算し,勝利点を最も稼いだプレイヤーが勝者となる。
タイルには道や城壁といった都市の構成要素が描かれており,新たにタイルを置くときは,すでに置かれているタイルの絵柄と矛盾しないように配置しなければならない。
加えて勝利点を得るためには,道や城壁を完成させた時点で,自身がそれらを“所有”している必要がある。その“所有権”を主張するために使用するのが,ゲーム開始時に各プレイヤーに配布される「ミープル」と呼ばれるコマだ。
プレイヤーは新たなタイルを配置するときに,一緒に手持ちのミープルを1つだけタイルの上に置ける。ミープルが置かれた道や城壁はそのプレイヤーの領地となり,“完成したとき”に勝利点を得られるといった仕組みだ。
手持ちのミープルの数は有限なので,タイルを置くたびにミープルも置いていると,すぐになくなってしまう。かといって使い渋りすぎれば,自分が置いたタイルを相手に利用されてしまうことも。このジレンマが,本作の読み合いを奥深いものにしている。
そんなカルカソンヌのデジタル版である「Carcassonne - Tiles & Tactics」は,単にビジュアルのクオリティが高いだけでなく,視覚的に道や城の完成状況が判別できるように工夫されており,非常に遊びやすくなっているのが特徴だ。
オンライン対戦を行うためにはAsmodeeのアカウントを取得する必要があるものの,最大6人でのオンラインマルチプレイにも対応しているのも嬉しいところ。
残念ながら日本語には対応していないが,テキストがまったく存在しないゲームなので,ルールさえ覚えてしまえば問題なくプレイできる。ルールの量もさほど多くないので,これからボードゲームに触れはじめる人には,とくにオススメの作品だ。
Ticket to Ride
Ticket to Ride
日本語名
チケット・トゥ・ライド
価格
980円
ジャンル
ハンドマネジメント ルート構築 セットコレクション
対応人数
1〜5人
プレイ時間
60分前後
言語
日本語なし
言語依存
中
列車や物流をテーマにした作品は,ボードゲームで人気の高いジャンルの1つだが,その中でもとくに有名なのが,Days of Wonderの
「チケット・トゥ・ライド」 シリーズだ。
プレイヤーは鉄道会社の経営者となり,マップ上に線路を敷設して勝利点を稼いでいく。いずれかのプレイヤーが持つ列車コマが2個以下になった時点で,最も勝利点を獲得したプレイヤーが勝者になる。
ルールは極めてシンプルで,プレイヤーが手番にできるアクションは「目的地カードを1枚引く」「列車カードを2枚引く」「線路を敷設する」の3種類だけ。マップ上には“都市”と“都市を結ぶマス”が描かれており,その区間に対応する色の列車カードをマスの数だけ同時に使うと,線路が施設されて自分の列車コマを配置できる。
線路の敷設は早いもの勝ちで,長い路線ほど完成時にたくさんの勝利点を得られる仕組みだ。また,目的地カードで指定された区間を完成させても得点がもらえるので,慣れないうちは目的地カードの達成を目指すと良いだろう。
本作の面白いポイントは,5枚の列車カードを表にした状態で置いておく共有スペースの存在にある。プレイヤーは列車カードを獲得するとき,山札から引くか,この共有スペースから取るかを選択できるのだが,当然共有スペースを活用したほうが狙った色を揃えやすいことが多い。
しかし,ここからカードを取得することで,ほかのプレイヤーにどの区画を狙っているのかがバレてしまい,先に線路を敷かれたり,必要な色のカードを奪われたりといった妨害を受けやすくなる。
一見すると線路を敷いてワイワイ楽しむ作品なのだが,慣れてくるとこうした読み合いが発生するのも,本作の奥深いところと言えるだろう。
Steam版のTicket to Rideは残念ながら日本語には対応していないが,目的地カードに書かれている都市の名前を除けばゲーム内でテキストを読む機会はほぼないので,先にルールだけ覚えてしまえば問題なくプレイできる。
オンラインマルチプレイにも対応しており,誰がどのカードを取ったかをハッキリと見せる演出や,各種の数字を見やすく表示するUIなどのおかげで,プレイフィールは快適だ。追加のマップやルールを導入するDLCも多数配信されているので,ハマれば長く遊べる作品となるだろう。
Scythe: Digital Edition
Scythe: Digital Edition
日本語名
大鎌戦役
価格
2050円
ジャンル
戦略シミュレーション 交渉
対応人数
1〜6人
プレイ時間
120分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
よりボードゲームらしい,奥深い戦略を味わいたい人にオススメなのが,ボードゲーム
「大鎌戦役」 のデジタル版
「Scythe: Digital Edition」 だ。
「大鎌戦役」は,謎の国家“ファクトリー”の出現によって,現実とは異なる技術的発展を遂げた20世紀初頭の東欧を舞台とする戦略ボードゲームだ。プレイヤーは一つの勢力のリーダーとなり,突如として活動を停止したファクトリーをいち早く調査するため,侵攻を開始することになる。
本作の魅力は,美しいアートワークによって演出される圧倒的な重量感と,ディーゼルパンクの世界観を際立たせる巨大ロボット「メック」の存在感だ。各勢力はゲームを進めるとメックを建造でき,戦場と化した田園風景の中をロボが闊歩するロマンを感じることができる。
また,深いこだわりを感じさせる“ボードゲーム感”もデジタル版の特徴だ。キャラクターやメックのコマには,“手で触れて動かすようなモーション”が付けられており,各種数値もボード上にトークンを置いた形で表現される。実際にアナログ版で遊んでいるような感覚でゲームを進められ,この雰囲気がまた良い。
ただし,ゲーム性はかなりシビア。パッと見では兵隊を揃えて戦争をするウォーゲームのように見える本作だが,戦いを得意とする勢力であっても,戦闘を繰り返す展開になることは少ない。
本作の勝敗は,目標達成で得られる「星章」,ゲーム終了時点での「支配地域」,所有していた「資源」によって決まるのだが,これらの点数の倍率は“民心”と呼ばれる特殊なリソースによって決定される。
戦闘で勝利すれば相手のユニットを本拠地まで押し返せるが,労働者に被害をもたらしたぶん,民の信頼(民心)を失ってしまう。かといって縮こまり過ぎれば相手に土地や資源をかっさらわれてしまうので,「ここぞ」というタイミングでは戦いに出なければならないわけだ。
元々が重量級のゲームだったためルールの分量はかなり多いが,日本語訳に対応しているほか,チュートリアルも用意されているので,重量級ボドゲの入門にはベストかもしれない。
デジタル版がリリースされたのは2018年8月で,リリース当初はいくつかの不具合が見られたが,継続的なアップデートによって現在では問題なくオンライン対戦が楽しめる。新勢力「アルビオン氏族」と「トガワ幕府」が登場するDLCも配信されているので,慣れてきたら,そちらの購入も検討してみるといいだろう。
Splendor
Splendor
日本語名
宝石の煌き
価格
980円
ジャンル
拡大再生産
対応人数
1〜4人
プレイ時間
60分前後
言語
日本語なし
言語依存
低
ボードゲームにおける至上の喜びといえば,「揃えて,増やす」ことだ。資源をたくさん集めて強力な能力をてにし,それを使ってより多くの資源を獲得する。こうした流れを中核とするシステムを,ボードゲームの世界では「拡大再生産」と呼ぶ。
そんな拡大再生産の楽しさを味わえる代表的なタイトルにして,シンプルかつ奥深く「揃えて,増やす」喜びをゲームデザインに組み込んだ作品として知られるのが,
「宝石の煌き」 だ。
本作におけるプレイヤーの目的は,誰よりも早く威信ポイント(勝利点)を15点獲得すること。鉱山や商船などが描かれている「発展カード」を,手元の宝石を使って買い集め,そこから得られる宝石を用いて,さらに大量の宝石を必要とする“勝利点付きの発展カード”の購入を目指すのだ。
プレイヤーは自分の手番で,「宝石を入手する」「宝石を使って発展カードを購入する」「場のカードを1枚手元にキープする」の中から1つを選んで実行できる。これを繰り返し,少しずつ場を整えていく流れだ。各アクションの詳細は以下のとおりだ。
1:宝石を入手
5種類の宝石の中から「3種類を1つずつ」または「1種類を2つ」獲得する。後者の場合,場に3つ以下しかない宝石は選べない。
2:発展カードを購入
場に公開された発展カード1枚を,記載されたコストを支払って購入する。
3:発展カードをキープ
場に公開された発展カード1枚,あるいはデッキの一番上から1枚を手元に置く。黄金トークン(任意の宝石1つとして代用可能)を1つ得る。
発展カードには宝石が1種類描かれており,その宝石の支払いを1つぶん,永続的に軽減する効果がある。例えば,赤の宝石が描かれた発展カードを4枚持っていれば,赤い宝石が7つ必要な発展カードを3つで購入できるといった具合だ。
また,条件を満たすことで獲得できる「貴族タイル」は追加の威信ポイントを得られるので,発展カードの競り合いと同時に貴族タイルを狙うのも重要だ。
発展カードには「レベル1」「レベル2」「レベル3」の区分が存在し,ゲーム開始時に各レベルのカードが4枚ずつ表示される。当然,レベルの高いカードほど購入に多くの宝石が必要になるが,得られる勝利点も大きくなる
デジタル版は残念ながら日本語に対応していないが,ゲーム内でテキストを読むことはないので,基本のルールだけ覚えてしまえば問題はない。
やや演出面でのテンポの悪さを感じる部分はあるが,オンラインマルチプレイにも対応しており,ルール自体もさほど複雑な部類ではない。友達とじっくり遊べる作品を探している人には,オススメの一本だ。
Dominion
Dominion
日本語名
ドミニオン
価格
基本無料(拡張セットは有料)
ジャンル
デッキ構築
対応人数
1〜6人(現在は最大4人)
プレイ時間
30分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
計画を立ててデッキを回していく,カード中心のゲームを遊びたい人には「ドミニオン」のデジタル版がオススメだ。
「ドミニオン」 は“デッキ構築ボードゲーム”の火付け役とも言える作品で,2009年のドイツ年間ゲーム大賞,ドイツゲーム大賞の二冠を達成した名作として知られている。2010年代には国内でも大きなブームとなったので,名前だけは知っているという人も少なくないだろう。
その影響はデジタルゲームの世界にも波及し,昨今では
「Slay the Spire」 をはじめとする多数の作品にデッキ構築システムが採用されており,現在ではひとつの大きなジャンルとして確立している。
あらためて紹介すると,デッキ構築ゲームとは「デッキを作り上げる過程」そのものを楽しむジャンルのことだ。ドミニオンにおいては,ゲーム開始時に各プレイヤーにプレーンなデッキが配布され,マーケットからカードを購入してデッキを強化していくことになる。
最終的にマーケットから所定のカードが買い尽くされたところでゲーム終了となり,その時点でデッキ内に最も多くの勝利点を保持していたプレイヤーが勝者となる。
ターンが終わったプレイヤーは,使用したカードと余った手札をすべて捨札に置き,自分のデッキから手札を5枚引くことになる
ドミニオンの魅力は,ゲームごとに最適な戦略が変化する部分にある。マーケットに並ぶカードは,500種類以上(拡張含む)あるカードプールからランダムに選ばれた10種類であり,同じような組み合わせになることはほとんどない。そのため,毎回違った戦略が楽しめ,それゆえリプレイ性が非常に高いのだ。
マーケットに並ぶカードの種類はゲームごとに変わるので,そのたびに最適な戦略も大きく変化する。ちなみにマーケットに並ぶカードを自分で選択するカスタムモードも用意されている
基本価格は無料で,拡張セットはDLCとして有料配信されている
デジタル版のドミニオンでは,「カードを出す」「購入する」などのアクションにほぼ待ちの時間が存在せず,非常にプレイのテンポが速い。アナログ版だと,場に出すアクションカードが多くなるにつれて,その処理にかなり時間を取られてしまうが,デジタル版であればそうした待ち時間も発生しないので,シンプルな対戦ツールとしても優秀と言えるだろう。
現在はアーリーアクセス期間中であり,オンライン対戦が可能な人数は最大4人となっているが,今後のアップデートで最大6人までプレイ可能となる予定だ。
なお,チュートリアルは現時点で日本語に訳されていないが,カードテキストはデジタル版も日本語なので,これからドミニオンに触れてみたい人は,大まかなルールをほかで覚えてからプレイするといいだろう。
Heart of Crown PC
Heart of Crown PC
日本語名
ハートオブクラウン
価格
2570円
ジャンル
デッキ構築
対応人数
1〜4人
プレイ時間
30分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
ドミニオンは多数の派生作品を生んでおり,その中にはデジタル版がリリースされるほどの人気を獲得した作品も存在する。そうしたドミニオン・リスペクト作品において,とくに人気の高い国産タイトルが
「ハートオブクラウン」 だ。
基本的な仕組みはドミニオンと同じで,カードを購入してデッキを強化していくことになる。最大の特徴は「擁立」と呼ばれるシステムで,プレイヤーは一定のコストを支払うことで「プリンセスカード」を選んで擁立(購入)できる。
プリンセスは,各自が持つ固有能力でプレイヤーをサポートしてくれるほか,プリンセスの擁立に使用した一部のカードは“直轄領”と呼ばれる固有エリアとなり,一定コスト内の手札をキープすることが可能になる。
注目したいのは,勝利点に関するシステムだ。本作において勝利点を持つカードは,プリンセスを擁立したあとで場に出さなければ有効化されない。そして,誰よりも早く20点を有効化したプレイヤーがゲームの勝者となる。
擁立後は勝利点カードがデッキを圧迫しなくなるため,高めたデッキの出力をブン回してどんどん勝利に向かって走り抜けられる。じわじわとデッキを作り上げ,ゲームエンドのタイミングを見計らってカード購入を行うドミニオンと比較すると,展開がスピーディで計画を立てやすいのが特徴だ。
こうした仕組みによってカード同士のシナジー(相乗効果)の重要性が増している本作だが,マーケットはデッキからランダムに並べられる“ランダムマーケット形式”が採用されているため,画一的な戦略は取れない。状況を見て最適なデッキとプリンセスを見極め,デッキを組み上げる楽しみを味わうことができる。
ビジュアルの違いも含めてドミニオンとどちらを選ぶかは好みの分かれる部分だが,デジタル版としての出来栄えは非常に良好だ。国産タイトルだけあって日本語のUIも完璧で,カードプレイのレスポンスも良い。
オンライン対戦も可能だが,もともとが同人向けPCゲームだったこともあって,ルームマッチを行うにはポートの開放が必要な点にだけ注意しておこう。
Through the Ages
Through the Ages
日本語名
スルー・ジ・エイジズ
価格
1640円
ジャンル
戦略シミュレーション 拡大再生産
対応人数
1〜4人
プレイ時間
120分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
人類の歴史を感じさせる壮大なゲームを遊んでみたい人にオススメなのが,
「スルー・ジ・エイジズ」 のデジタル版だ。
本作は,人類6000年の歴史をカードと資源のやり取りで描くゲームで,ボードゲームの初版がCzech Games Edition(チェコゲームズ)からリリースされたのは2006年となる。デジタル版は,2015年にリリースされたアナログの改訂版をベースに作られたものだ。
ゲームの目的は,文明の指導者となって自分の文明を発展させ,ゲーム終了時点で最も多くの文化点を保持することだ。各プレイヤーは自分の領土にあたるボードを持ち,共有の場から購入したカードを使って新たな建物を作ったり,軍備を増強したりしながら,4つの時代を生き抜くことになる。
建設したカードは労働者を割り振ることでアクティブ状態となり,自分の番が来るたびに資材や食料を生産してくれる。労働者の配置で読み合いをする「ワーカープレイスメント」とは異なり,本作では配属した労働者が常に同じ建物で生産に従事してくれるので,意図的に配置替えを行うか,建物を壊さない限り再配置する必要はない。
特徴的なのは,資材や食料といった各種のリソースが,個人ボードの「青バンク」に置かれたトークンで表現されるところだ。本作には資源固有のトークンなどは存在せず,“トークンを配置する場所”によって所有している資源の種類を管理する形式が採用されている。
例えば,青バンクのトークンが「農業」カードに置かれればそれは食料として扱われ,「青銅」カードに置かれれば資材として扱われる。
そして,青バンク内に存在するトークンが一定以下になった状態で次のターンを迎えると,ペナルティとして一部の資源が“腐敗”して青バンクに戻ってしまう。各種資源を過剰に生産すると腐敗が発生するため,しっかりとバランスを見極めながら文明を成長させる必要がある。
さらに,ゲームが進むと共有の場に出現するカードの“時代”が変化し,どんどん強力なカードが登場してくる。次第に食料,資材,研究力,軍事力と多彩なリソースを求められるようになるが,このすべてを網羅することはできない。
各時代で力を発揮してくれる「偉人」や,建造に多大な労力がかかる代わりに強力な効果を持つ「遺産」,ゲーム中盤以降にプレイヤー同士で利益を共有できる「同盟」など,さまざまな効果を駆使して,それぞれの時代を乗り越えていくのだ。
デジタル版としてのクオリティも高く,もちろんオンライン対戦にも対応している。また,プレイヤーが建設できる建物個別のビジュアルが用意されているなど,デジタル版ならではの演出も楽しめる。
チュートリアルも丁寧で,いつでも参照できるヘルプが存在するなど,重量級ゲームを楽しむ上で大切な要素もしっかり揃っているのも嬉しいポイントである。プレイ時間はかなり長めだが,じっくりと遊べる作品を探している人にはオススメだ。
Root
Root
日本語名
ルート 〜はるけき森のどうぶつ戦記〜
価格
1520円
ジャンル
戦略シミュレーション 非対称ルール
対応人数
1〜4人
プレイ時間
120分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
より個性的なゲームを求めている人にオススメなのが,Dire Wolf Gamesが2020年9月にリリースした非対称型戦略シミュレーションゲーム
「ルート」 のデジタル版だ。
本作においてプレイヤーは,森に住む動物たちによる4つの派閥「猫野侯国」「鷲巣王朝」「森林連合」「放浪部族」の中から1つを選び,自らの勢力を森の覇者へと導く。
勝利条件はいち早く勝利点を30点獲得すること,またはカードで示される特定の条件を満たすことだが,4つの勢力はそれぞれ異なる勝利点の獲得方法を持っている。それどころか,ベースとなる挙動も異なり,各々がまったく異なるルールでゲームに参加しているのだ。
例えば,「猫野連合」は最初から多数の兵士を持っていて,その優位を活かして建物を建築していくことで勝利点を得る。対する「鷲巣王朝」は初期時点ではボードの隅にしか勢力を持たないが,手番ごとに増える“勅令”によって多彩なアクションを実行できる。
なかなかルールの把握が難しい作品だが,そこにデジタル版ならではの強みがある。本作はチュートリアルが充実しており,使用する勢力を選択してルールを覚えられるのだ。
一緒に遊ぶ人の勢力を事前に決めておいて,それぞれが必要なチュートリアルを済ませておけば,問題なくゲームプレイに移れる。最初のプレイで互いにルールを教え合いながらプレイして,その後は担当する勢力を入れ替えながら遊ぶことも可能だ。
デジタル版としての出来も優れていて,プレイ中にストレスを感じることはない。単にテンポが良いだけでなくUIもきちんと整備されており,独特で味わいのあるアートワークを再現した3Dキャラクターによる演出の数々も見栄えが良い。
また,AIと対戦や特定の状況からの勝利を目指す「チャレンジ」が用意されているなど,ソロモードもしっかりと整備されている。ルールを覚えてクリアするだけでも結構楽しめるので,1人でじっくり遊ぶデジタルボードゲームとして購入するのもアリだろう。
WINGSPAN
WINGSPAN
日本語名
ウィングスパン
価格
2050円
ジャンル
拡大再生産 エンジンビルド
対応人数
1〜4人
プレイ時間
60分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
続いて紹介するのは,ドイツ年間ゲーム大賞2019のエキスパート部門,ドイツゲーム大賞2019で大賞を受賞し,多方面で高い評価を受けた
「ウィングスパン」 のデジタル版。自然公園で野鳥たちを育成し,豊富な生態系を構築していく拡大再生産系の作品だ。
プレイヤーが手番に実行できるアクションは「鳥カードのプレイ」「餌の獲得」「卵の獲得」「鳥カードのドロー」の4種類。鳥カードは「森林」「草原」「水辺」のいずれかの生息域に属しており,プレイするときに対応するエリアに配置することになる。
鳥カードを場に出すために餌や卵が必要になるので,いずれのアクションも重要だ
4種類のアクションのうち3つは鳥の生息域と紐付いており,対応する生息域に新たな鳥カードが置かれると効果が強化される仕組みになっている。
例えば「餌の獲得」アクションを実行した場合,ゲーム開始時点では1アクションに対して1つしか餌を入手できない。だが,対応する「森林」に生息する鳥カードが2枚出ていれば,1回のアクションで2つの餌を獲得できる。
さらに,多くの鳥カードは「自分の生息域のアクションが実行された時に発動する効果」を持っているため,アクション1回ごとに得られるリターンがどんどん増えていく。これらの効果を組み合わせていくのが,本作における基本的な動きだ。より詳しいゲーム内容は,以下の記事を参考にしてほしい。
関連記事
2021/01/22 12:00
デジタル版は日本語訳の出来も良く,チュートリアルも丁寧に作られている。オンライン対戦機能も搭載しているので,ゆっくりと友達と会話をしながら遊びたい人には最適だ。
また,デジタル版は細かな演出が強化されており,鳥カードにはそれぞれ美しいアニメーションが用意されているほか,鳥に関する豆知識も収録されている。ボードゲームファンだけでなく動物や鳥が好きな人にもオススメできる作品なので,ぜひ遊んでみてほしい。
カードで表現される野鳥たちは実に170種類におよぶ
Gaia Project
Gaia Project
日本語名
ガイアプロジェクト
価格
2570円
ジャンル
戦略シミュレーション
対応人数
1〜4人
プレイ時間
120分前後
言語
日本語あり
言語依存
高
自分の種族を繁栄させていく名作重量級ボードゲーム
「テラミスティカ」 をベースに,マップのランダム化など,リプレイ性を向上させる要素を多数導入したスピンオフ作品
「ガイアプロジェクト」 のデジタル版だ。
プレイヤーは宇宙に進出した種族の1つを担当し,さまざまな惑星に入植して勢力を広げていくことになる。
ただし,各種族は入植できる惑星の種類が決まっており,性質の異なる惑星に降り立つためには惑星改造(いわゆるテラフォーミング)を行わなければならない。各プレイヤーがどこに進出しようとしているかを見極め,先回りして惑星を押さえるか,異なる惑星を取りに行くかを考えるのだ。
テラミスティカから続く本作の大きな特徴は,いわゆる“戦争”の要素が存在しないということだ。それどころか,近接する惑星に異なる種族の建物が存在する場合は,一部の建物をアップグレードするときのコストが減るなどの恩恵も用意されている。
邪魔されずに惑星に入植したいからといって孤立すると,最終的には損になる。宇宙の覇権を握るためには,相互利益のためにある程度は寄り添いつつ,しっかり自分の惑星を確保するしたたかさが必要なのだ。
個人ボード上で循環する“パワー”を使うことで特殊アクションを実行できたり,特殊な資源“知識”を消費することでアクション全般を強化できたりと,プレイヤーが取れる戦略の幅は非常に広い。
その上でゲームは全6ラウンドしか存在せず,基本的にラウンドの開始時にしか資源の収入を得られないので,1手番の重みは相当なもの。ゲーム開始後に提示されるランダム要素はほとんどないので,じっくり考えて結果を出したい人にはもってこいの作品だ。
ただし,そのぶんルール量はかなり多く,デジタル版のチュートリアルをひと通りこなしても完璧にシステムを理解するのは難しい。まずは簡単なAIとの対戦を何度か繰り返し,基本的な動き方を掴んでいこう。
リリース当初は誤植や不具合が報告されていたが,現在はその多くが修正され,現在ではある程度問題なくプレイできる。
ただ,UIのレスポンスは多少ぎこちない部分があり,1人で遊ぶのに問題はないが,オンライン対戦ではややゲームが重くなることも。オンラインで不具合を感じた場合は,Remote Play Together(
関連記事 )などを利用した仮想オフライン環境で遊ぶことも検討してみよう。
紹介しきれなかったデジタル版ボードゲーム
最後に,個別にピックアップできなかったタイトルをまとめたリストを掲載して記事の締めくくりとしたい。デジタル版ボードゲームを扱っているパブリッシャは限られているので,自分でデジタル版ボードゲームを探したい場合は,各タイトルからSteamのパブリッシャ/デベロッパページをチェックすればいい。
Steam
タイトル
価格
日本語
リンク
Clue/Cluedo: The Classic Mystery Game
1220
○
リンク
容疑者,凶器,部屋の正しい組み合わせを探すゲーム。ゲーム内で情報が整理されるので遊びやすい
Terraforming Mars
2050
−
リンク
火星の地球化を目指すボードゲーム。残念ながら日本語は未実装だが,ソロルールも収録されているので,そちらで練習してみるのもアリ
Gloomhaven
3600
−
リンク
超重量級レガシー型ボードゲームのデジタル版。テキストが大量にあり,ストーリーも展開されるので,それなりの英語力を要求される
Small World
980
○
リンク
ランダムな能力の組み合わせを活かして戦う,ファンタジー世界を舞台にした陣取りゲーム。相互干渉が強いゲームだがAIがあまり賢くないため,対人戦用のゲームとして遊びたい
Concordia: Digital Edition
1950
−
リンク
古代ローマを舞台に,交易で勢力を拡大していくゲーム。基本ルールは単純だが一部のカードにテキストがあり,プレイするときには事前にサマリーを作っておきたい
Ascension: Deckbuilding Game
1320
−
リンク
構築したデッキを使って場のモンスターを撃退していくゲーム。テキスト量がかなり多いので取っ付きは良くないが,ゲームとしての出来は良いので,原作をプレイ済みの人にオススメ
Brass: Birmingham
1640
−
リンク
借金で物流を回していく,産業革命をテーマにした経済構築ゲーム。リリース当初は多かった不具合の多くが修正され,かなり遊びやすくなった
Tanto Cuore
1010
○
リンク
メイドさんしか存在しないデッキ構築「たんとくおーれ」のデジタル版。ドミニオンの基本ルールが分かれば問題なくプレイ可能
Steam/ iOS / Android
タイトル
価格
日本語
リンク
Patchwork
720
○
リンク
1対1でタイルを取り合い,自分のボードを埋めていくパズルゲーム。日本語訳やUIは微妙だが,ゲームを知っている人同士のプレイなら問題はない
Potion Explosion
720
○
リンク
縦に並んだビー玉を取って,色を合わせる落ちものパズルゲーム。言語,演出の両面でクオリティが高く,ソロでも遊びやすいオススメタイトルの1つ
Istanbul: Digital Edition
1220
○
リンク
イスタンブールの市場で商品を売買し,ルビーを集める交易ゲーム。巻き戻し機能が比較的柔軟で,日本語もあるので遊びやすい
Race for the Galaxy
840
−
リンク
ラウンドごとに実行できるアクションが固定されておらず,プレイヤーが宣言したアクションのみが実行される拡大再生産ゲーム。意外とテキストは少なめだが,基本ルールがやや複雑
Roll for the Galaxy
1520
−
リンク
Race for the Galaxyのダイスゲーム版。アクション争いや拡大再生産のエッセンスは継承しつつ違うゲームになっており,Race for the Galaxyにハマッた人にはオススメ
Eight-Minute Empire
620
○
リンク
共有の場のカードで兵隊を広げ,資源を集める陣取りゲーム。要素の多さのわりにプレイ時間も短めで,初心者でも遊びやすい
Sagrada
1010
−
リンク
ダイスを使ってステンドグラスを完成させるパズルゲーム。一部の特殊アクションにテキストがあるので,それだけ覚えておこう
Raiders of the North Sea
1520
−
リンク
置ける場所が異なる労働者を入れ替えながらプレイするワーカープレイスメント。日本語はないが,リアルに遊んだことがあればプレイできるはず
Reiner Knizia Yellow & Yangtze
1520
−
リンク
黄河文明の発展をテーマにした戦略ゲーム。ルールは特徴的だがテキストを読む機会は少ないので,事前に調べればプレイ可能
The Fox in the Forest
720
−
リンク
2人専用のトリックテイキングゲーム。演出が美しく,かつプレイを邪魔しない程度で遊びやすい
The Castles of Burgundy
1520
○
リンク
ダイスを使ってタイルを購入し,城を建築していくゲーム。日本語訳がやや怪しいが,デジタル版としては問題なくプレイ可能
Dragon Castle: The Board Game
930
−
リンク
独自の牌を並べて城を作る「覇王龍城」のデジタル版。レスポンスが良好で遊びやすく,ビジュアルも美しい
Mystic Vale
1320
−
リンク
デッキにあるカード1枚1枚を強化していく特殊なエンジンビルド系ゲーム。演出のクオリティが高い
Twilight Struggle
1010
−
リンク
米ソ冷戦時代をテーマにした1対1の重量級ゲーム。デジタル版としての出来は良い
Yomi
1480
○
リンク
格闘ゲームをモチーフにした1対1のカードゲーム。ハンドマネジメントと熱い読み合いを楽しめる
Railroad Ink Challenge
800
○
リンク
ダイスを振ってレールを書き込んでいくゲーム。1人でのスコアアタックがとくに楽しい
Love Letter
720
−
リンク
カードを引いてプレイするだけのお手軽ゲーム。テキスト量は意外と多いので,事前にサマリーを用意しておくと遊びやすい
Tokaido
1010
○
リンク
東海道の旅人になるボードゲーム。演出は豪華だがやや長く,多人数プレイだと待ち時間が頻繁に発生する。ソロで楽しむのがオススメ