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「オーバーウォッチ」の国際大会“APAC Premier”が中国・上海で開催。日本から出場した新進気鋭のプロチーム「Unsold Stuff Gaming」に感想を聞いた
APAC Premierは,中国では「League of Legends」のプロリーグ「LPL」の運営元として知られるBanana Cultureが主催する,オーバーウォッチの国際大会だ。オーバーウォッチは2016年5月に発売された比較的新しいタイトルではあるが,本大会の賞金総額は165万元(日本円で約2500万円)と,競技種目としてすでに大きな注目を集めている。
「APAC Premiert」公式サイト(中国語)
今回の決勝大会には,北米/ヨーロッパ/日本/韓国から招待された6チームと,あらかじめ中国で開催された予選大会を通過した6チームの,計12チームが出場。中国選りすぐりのチームが,海外の強豪を迎え撃つイベントというわけだ。決勝大会に出場した12チームの顔ぶれは以下のとおり。
【中国予選通過チーム】
1位:「Skadis Gift」
2位:「Vici Gaming」
3位:「iG.Fire」
4位:「All Strike Gaming」
5位:「NGA Club」
6位:「Snake eSports」
【海外招待チーム】
「NRG eSports」(北米)
「Rogue」(ヨーロッパ)
「Unsold Stuff Gaming」(日本)
「DeToNator」(日本)
「Lunatic-Hai」(韓国)
「Afreeca Freecs.Blue」(韓国)
決勝大会では,最初に12のチームを3つのグループに分けたうえで,それぞれグループステージを展開。そして各グループの上位2チーム(計6チーム)と,敗者復活枠の2チームを合わせた8チームにより,シングルイリミネーション形式で決勝トーナメントが行われた。
この大会に,日本から「Unsold Stuff Gaming」(USG)と「DeToNator」の2チームが招待枠で出場したものの,残念ながら両者ともグループステージで敗退してしまった。今回の取材では,試合を終えたUSGの各選手に感想などを聞く機会が得られたので,後ほど詳しく紹介しよう。
さて,決勝大会の展開に目を向けると,グループステージと決勝トーナメントを勝ち進み決勝戦へと駒を進めたチームは,「Lunatic-Hai」(韓国)と「Rogue」(ヨーロッパ)だ。決勝戦はBO7(Best of 7の略。4本先取した側が勝利)で,展開によっては3時間近くもの長丁場になるかと思われた。
ところが,1番目のマップ「Numbani」をLunatic-Haiが制した後は,Rogueが「King's Row」「Nepal」「Temple of Anubis」「Hollywood」を連取。欧米のFPS系大会でも名の知れたRogueが実力を見せつけ,見事優勝となった。
ちなみに決勝戦を含む一部の試合は,ネット配信サービス「アフリカTV」を通じて,日本語による実況解説付きで放送されている。これにはDeToNatorのYamatoN選手も解説者として参加しているので,プレイヤーはこちらも確認しておくとよいだろう。ここからは,会場内などの雰囲気を写真多めで紹介していく。
【アフリカTV】「APAC Premier」決勝トーナメントのアーカイブ
日本出場チーム「Unsold Stuff Gaming」へのミニインタビューを紹介
USGは,2015年10月に設立されたプロゲームチームで,現在は「League of Legends」「ハースストーン」「オーバーウォッチ」「シャドウバース」の4タイトルで活動しており,合計で約30名の選手が所属している。
チームの設立から約1年しか経っていないものの,LoLでは専用の宿泊施設(いわゆるゲーミングハウス)で活動しており,またCyberZやG-Tuneなどとのスポンサー契約を交わしている。そのほかにも,e-SportsCafeとの業務提携を行うなど(※関連外部記事),期間を考えるとアクティブに活動しているようだ。
Vader選手に聞いたところによると,彼は世界の強豪チームと対等に渡り合うための環境を手に入れるため,ゲーミングハウスでの活動環境やメンバー集めなどの計画を綿密に立てたうえで,設立後間もないUSGに白羽の矢を立てたとのこと。
一方の高橋氏も,Vader選手が思いつきだけではなく,謙虚かつ地に足がついた計画を持って行動していることに,心を打たれたそうだ。
試合後の感想をVader選手に聞いてみたが,中国のトッププレイヤーとの実力差は,決して適わないほどではない。また海外のプロチームの環境に直接触れて,この環境さえあれば自分達が対等に渡り合うことは決して不可能ではないと,あらためて感じたとのこと。
APAC Premierでは悔いの残る結果となってしまったが,帰国後早々,中国プロチームとの練習試合を行うなど,次に向けて動き出している様子。それと並行して,現在はゲーミングハウスを物色中とのことだ。いずれ国内外のオーバーウォッチの大会で,USGの名前を目にする日を楽しみに待ちたい。
最後に,今回出場したUSGの各選手にメールインタビューを行ったので,その内容を紹介しよう。
――自身のFPS歴や,オーバーウォッチにおける得意なヒーロー/ロールを教えてください。
Aktm選手:
FPSを最初にプレイしたのは12年前の「Gunz Online」で,「サドンアタック」は6年近くプレイしていました。オーバーウォッチでのロールはDPSで,得意なヒーローはメイとマクリーです。
Defuse選手:
FPSを始めて10年程になります。オーバーウォッチでのロールはサポートで,得意なヒーローはルシオ,ゼニヤッタ,アナです。
Novady選手:
FPSを始めたのは約7年前で,主に「サドンアタック」「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」をプレイしていました。オーバーウォッチはオープンβテストからプレイしています。得意なロールはサポートで,ルシオとアナをメインで使っています。
Pepper選手:
自分は普段,USGのチーム“Supreme”に所属しているのですが,諸事情により急遽APAC Premierに参加することになりました。これまでのFPS歴は,「コール オブ デューティ」シリーズを4年,「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」を1年プレイしています。オーバーウォッチでのロールはDPSで,得意なヒーローはウィドウメイカー,マクリー,トレーサー,ハンゾーです。
Sparky選手:
「サドンアタック」を4年,あとは色々なFPSを少しずつかじってきました。オーバーウォッチでの得意なヒーローは,ラインハルト,ザリア,ロードホックです。得意なロールはもちろんタンクです!
Vader選手:
最初にPCオンラインゲームをプレイしたのは,今から12年前の「Gunz Online」です。2007年以降は「サドンアタック」を中心にプレイしていました。2014年の「SACTL(Sudden Attack Clan Tournament League)2014」を最後に,FPSの大会で一線から退いていたのですが,オーバーウォッチのオープンβテストを機にFPSを再開しました。
オーバーウォッチでの得意なヒーローは,ザリア,ウィンストン,ジャンクラットです。APAC PremierではFlexを担当しましたが,今後はDPSに変更します。
――APAC Premierでの試合内容を振り返ってみてどうでしたか。
練習試合よりうまく戦えましたが,負けてしまい本当に悔しかったです。細かい所をもう少し改善できていれば,結果は違ってたなと……。
Defuse選手:
多くの試合で,後一歩と感じるシーンが多かったです。接戦の粘り強さが足りないので,今後の課題にしていきます。
Novady選手:
負けてしまったのは悔しいです。こちらの連携や,細かい動きの部分で差が出てしまったのかなと思います。ですが,中国のチームとの実力差に関しては,それほどは感じませんでしたね。
Pepper選手:
自分達のミスが原因で集団戦に負けてしまったり,不要な場面でアルティメットを使ってしまったりと,悔いの残る場面が沢山ありました。その点,対戦相手のチームはミスがほとんどなく,連携も完璧のように見受けられました。集団戦での当たり方やアルティメットの使い方などの大切さを痛感しましたね。
Sparky選手:
あと少しの頑張りがあれば勝てそうな試合もあり,非常に悔しいですね。チームとして少ない練習時間の中で作りあげた戦術を,思いのほかしっかり決めることができ,その点では満足しています。しかし,一度体制を崩された後に立て直せなかったりと,脆さも目立っていました。今後の課題が浮き彫りになった試合だと思います。
僕個人を客観的に見ると,ラインハルトの睨み合いに関しては,思っていたより戦えていたのかなと思います(笑)。相手のアースシャッター(アルティメット)は防ぎ,自分のアースシャッターはうまく決められましたね。
Vader選手:
負けてしまったのは非常に惜しかったです。しかし,普段から立派な環境でプレイしている中国のプロチームを相手に,対等に渡り合えたことは,自分達の自信にもつながりました。
――今回の上海遠征を振り返って感じたことや,今後の抱負を教えてください。
Aktm選手:
遠征中は海外のプレイヤーと交流できたり,Scrim(練習試合)を行えたりと,とても良い環境でプレイできました。今後の目標としては,まずは日本一になり,そして海外のプロチームと渡り合えるようになりたいです。
Defuse選手:
日本と中国のプレイ環境の差は大きかったです。日本でも,もっとe-Sportsが盛んになって,あの環境が当たり前になってくれるといいなと思いました。e-Sportsを盛んにするためにも,まずは自分達が日本で一番強いチームになることを目標にします。
Novady選手:
海外のプロチームとの練習試合や会話などを通じて,彼らがどのように考えてプレイしているのかなど直接目にすることができ,多くのことを学べました。自分達の成長にも大きく役立ってくれると感じています。
今後はもっと練習を重ねて強くなって,再びこのような機会を得たときは,ファンや試合を観ている人達をあっと驚かせるようなプレイや結果を出したいと思います。
Pepper選手:
自分にとっては,違う国での大会に参加する初めての機会で,普段と違う食事や他国語を話す人達など,初めてのことが多く最初は戸惑いました。でも,チームマネージャーや運営スタッフさんが親身になってくれたお陰で,とても充実した日々を過ごせました。
この経験を活かし,今よりもっとレベルアップをして,国内大会や世界大会に挑戦していきたいと思っています。
Sparky選手:
海外遠征は初めてで,食事や睡眠などで体調を悪くしないか心配だったのですが,運営スタッフさんのお陰で快適に過ごすことができました。現地での練習環境が素晴らしく,また海外の有名チームとの練習試合が行えたのも良い経験でした。国内では得られない経験も多く,短いながらも充実した遠征だったと思います。
今後の目標は,世界で通用するチームになる……と言いたいところですが,まずは国内で1位になることです!
Vader選手:
過去に出場した海外遠征では,滞在中のスケジュールがびっしりと詰まっているなど,自由な時間や練習する時間が少なかったです。でも今回の上海遠征では,快適な練習環境や宿泊施設などが用意されていて,スケジュールも含めまったくストレスを感じませんでした。想像していた以上に快適でしたね。
USGとしての最終的な目標は,主要な世界大会で優勝することです。そのためにも,まずは日本の大会で優勝し,世界大会でも上位入賞することを目標に据えていきます。
――オーバーウォッチをプレイしていて,もっとも楽しい部分または瞬間はどこですか。
少し変わってると思われるかもしれませんが,自分がヒーローを変えたら,相手もそれに合わせたカウンターピックしてくれると,思わず嬉しくなりますね。あとは仲間とうまく連携が取れた瞬間も楽しいです。
Defuse選手:
やっぱり,チームとしての連携がしっかりと決まって,ラウンドを取れた瞬間がもっとも楽しいですね。
Novady選手:
一番気持ち良いのは,アナの“スリープ・ダーツ”で,敵ヒーローのアルティメットを止める瞬間ですね。あとは,チーム全体としての成長を感じられる瞬間も好きです。
Pepper選手:
自分にとって苦手なヒーローを,繰り返し練習してうまくなっていく過程が好きですね。
Sparky選手:
手強いチーム相手に勝利した瞬間の達成感など,仲間とのチームワークにまつわる部分が多いですね。ひとつの瞬間に絞るとなると,やっぱりラインハルトでアースシャッターを相手全員に決めた時が一番気持ち良いです!
Vader選手:
チームプレイ全般ですね。とくに,事前にチーム内で相談した戦術が決まった瞬間は楽しいです。あとは,大会等の大一番で“オーバータイム”を制して勝つ瞬間も,ほかのFPSでは得られない高揚感がありますね。
「Unsold Stuff Gaming」公式サイト
「Overwatch」公式サイト(PC版)
「オーバーウォッチ」公式サイト(PlayStation4版)
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(C)2015 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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