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「Overwatch」を制作するBlizzard本社をじっくりと探索。ゲームデザイナーのキャプラン氏に開発秘話なども聞いてきた
本作は,21体のヒーローキャラクターからいずれかを操作し,6人ずつに分かれてのチーム対戦が楽しめるオンライン専用のFPSだ。シューティングジャンルには初参入となるBlizzardだが,キャラクターの個性を前面に押し出した同社らしい戦略と,遊びやすいゲームシステムで,現在も開催中のβテストは好評である。
ストーリーは,“オムニウム”と呼ばれる新型原子炉(フュージョンコア)の開発によって生まれた高性能ロボット“オムニック”と人類が共存しつつ,新たな文明を発展させていた近未来の地球が舞台となる。
しばらくは平和に共存していた両種族だが,突如として起こったオムニック達の反乱により,人間対ロボットの25年にもわたる戦争“第1次オムニック・クライシス”が世界各地で勃発。そこで各国政府は,選りすぐりのヒーロー,科学者,さらには荒くれ者までを集結させた特殊組織“Overwatch”を編成して,25年という長い戦いを終結させる。
再び平和を取り戻した人類だったが,今度はOverwatchの面々の能力に恐怖した民衆による反対デモ,そしてそうした事態を嫌った国連との軋轢により,Overwatchは解体させられ,メンバーも四散してしまうことになる。
人々への理解が得られないことを悟った元Overwatch達は,ある者は隠遁し,ある者は犯罪に走り,さらにはオムニックのために働く者まで出る始末。そして再びオムニックがロシアで進軍を開始して“第2次オムニック・クライシス”が勃発してしまう。
そうして再び表舞台に引きずり出されたOverwatch達は,反目し合いながらも過去の英雄としての自覚を取り戻していくことになる。ゲーム内ではこういった背景の中で,ヒーロー達が戦っているわけだ。
さて,今回のメインイベントは,日本でもスクウェア・エニックスから発売されるPlayStation 4版をプレイするというものだったが,ファーストインプレッション自体はすでに掲載済みなので,今回はゲーム内容について重視することはしない。強いて言えば,現在PC向けに行われているクローズドβテストを,コントローラで操作するプレイフィールとさして違いがないように感じたし,グラフィックス面でもほとんど大差がなく,1080p/60fpsでプレイできた。
それよりも今回は,かなり貴重ともいえるBlizzard社内のプレスツアーが行われたので,写真とともにじっくりとご紹介したい。
写真で巡るBlizzard社内ツアー(その1)
なぜ,Blizzardは「Overwatch」を作ったのか
2015年11月に開催されたBlizzCon 2015でのインタビューにも登場したキャプラン氏は,これまで15年近くも同社に在籍し,2013年から同社にとっての新しいIPとなる「Overwatch」の開発現場で陣頭指揮を執っている人物だ。
これまでファンタジーワールドであるアゼロス(Warcraft),ダークゴシック調のサンクチュアリ(Diablo),そして三者三様の文明が描かれた宇宙(Starcraft)といった世界を描いてきたBlizzardだが,「Overwatch」においてはFPSという新しいジャンルに挑戦することもあり,これまでとは異なるカラフルな色使いで近未来の地球を表現することにしたという。
キャプラン氏が言うには,同社のIPはもっとも古いもので20年近くが経過しており,「もうファンタジーはやり尽くした感がある」という選択からだそうだ。
「Overwatch」のクローズドβテストに参加したり,映像やスクリーンショットを見たりした人ならばお分かりのように,本作はアメリカの映画スタジオやショッピング街を模した「Hollywood」や,桜が咲き誇る日本の城と界隈の街並みを描いた「Hanamura」,さらにはビクトリア朝の建物が立ち並ぶイギリスの「King’s Row」といった,いわゆる“ステレオタイプ”なエッセンスを含んだマップが用意されている。
これについてキャプラン氏は,ストーリーの設定に準じつつも,あまりリアルには寄せないことで,誰でもゲーム世界に集中できるよう工夫しているのだとのこと。
Blizzardにとって,1つのタイトルをPCとコンシューマ機に向けて同時にローンチするのは,この「Overwatch」が初めてのことであり,ローンチ後も3つのプラットフォームを並行してサポートしていくとキャプラン氏は言明している。ただ,PC版をリードプラットフォームにするという方針には,今のところ変更はない様子。
また,同社のゲームタイトルはすべてコミュニティなしでは存在し得ないことを強調しつつ,キャプラン氏は「我々がすべてのアイデアを持っている必要はない。コミュニティのフィードバックを受けながら,Overwatchをさらに良いモノにしていきたい」と話していた。ただ,MODサポートなどについては言及を避けており,FPSというジャンルにおいて,どのようにBlizzardが立ちまわっていくのかには,今後も注目していく必要があるだろう。
写真で巡るBlizzard社内ツアー(その2)
キャンパス内に3つある建物の中で,受付があるのは第1棟のみ。関係者以外が第2,第3棟への立ち入るのは極めて異例であるようだ。もちろん,開発者達が働いている場所での写真撮影は一切禁止であったものの,内部の様子を許される限り撮影してきたので紹介しておこう。
「Overwatch」の仕掛け人キャプラン氏へのインタビュー
最後に,「Overwatch」の仕掛け人であるキャプラン氏へのインタビューを掲載して,本稿を締めたい。
4Gamer:
メインシアターのカンファレンスでは,「Overwatch」の開発チームが,FPSを開発するにあたって十分な経験があることを強調しているように思えました。
「Overwatch」の開発チームは,多様な経験を持つプログラマー,デザイナー,プロデューサー,アーティスト,そしてオーディオのスペシャリスト達で構成されています。Blizzardでほかのプロジェクトに関わったベテラン勢が多いのですが,「Dark Force」シリーズのリードデザイナーなど,もともと他社でFPSジャンルに関わっていたメンバーもいます。
こうしてBlizzardのカルチャーを持つ開発陣と,FPSの開発経験者がうまく融合されることこそが,本作を開発していくうえで重要になるであろうと,チームを編成する当初から意識していました。
4Gamer:
先ほど開発チームの人とも話したのですが,なんでも「Overwatch」の開発チームは,ほかのプロジェクトチームと比べても結束力が強いとか。リーダーであるキャプランさんも,そう感じていらっしゃいますか?
キャプラン氏:
これまで「Overwatch」の開発チームは,1つのグループとして天国と地獄を見てきました。クリエイティビティという面では,我々はこれまでになかった世界を共に創り出し,そこに我々の持てる愛と情熱を注ぎ込んできたのです。チーム1人1人の個性というものが,1つの世界で融合しているとでも言いましょうか。皆,開発者として尊敬し合っていますし,「Overwatch」のような作品を協力して作り合えることを幸運に思っております。だから強いと思えるんでしょう。
4Gamer:
2015年のBlizzConでは,もっとも人気のキャラクターがファラー(Pharrah),不人気なのがシメトラ(Symmetra)だと話していました。今はどうでしょうか。
キャプラン氏:
現時点では,ソルジャー76(Soldier: 76)が,もっとも「Overwatch」の中でプレイされているヒーローキャラクターですね。チュートリアルで使用できるキャラクターであり,より多くのプレイヤーにアピールできる使い勝手の良さを目指してデザインしたヒーローなので,そうなることはある程度予想していました。
そして,今のところもっとも不人気なのがザリア(Zarya)で,これも想定範囲内でした。非常にパワフルなキャラクターですが,性能をフルに活かすためにはその性能をしっかりと理解する必要があったからです。
ソルジャー76 |
ザリア |
4Gamer:
なるほど。それは,変わっていくのでしょうか。
キャプラン氏:
よほどの理由がない限り,ヒーローキャラクターの人気・不人気を受けてバランスを変更しようとは思っていません。もちろん,あまりにも強過ぎたり,弱過ぎたりでゲームプレイに支障が出てくるのなら,その限りではありませんが。
4Gamer:
ヒーローの必殺技を発動させる“アルティメット・メーター”は,どのようにして溜まっていきますか?
キャプラン氏:
アルティメット・メーターは,時間経過や相手にダメージを与えることで徐々に溜まります。また,タンク系ならダメージを受けることで,ヒーラー系なら仲間を治癒することで,そのスピードが加速されていきます。
4Gamer:
クローズドβが公開されているPC,そして今回公開されたPlayStation 4やXbox One版では,グラフィックスやフレームレートにほぼ違いがないように思えます。それを達成するために,どういった苦労をされたのでしょうか。
キャプラン氏:
具体的にはお話しできませんが,すべてのプラットフォームにおいて,グラフィックスのパフォーマンスを最大限に引き上げるというのは我々が力を注いでいる部分です。それぞれのプラットフォームの性能は異なりますから,ゲーム体験という意味では完全に同じにはならないかもしれません。ただ,皆さんがそれぞれのプラットフォームで満足できる体験をするということは,これからも重視していきます。
4Gamer:
「Overwatch」でサポートされているカスタムゲーム(※)についても教えてください。
※プレイヤーが作成できるマッチングのこと。
キャプラン氏:
カスタムゲームの機能は非常に作り込まれている部分です。プレイヤーがフレンドをマッチに招待するといったことはもちろん,ランクにあったAIボットを参加させることも可能です。また,プレイヤーが実験できる楽しい機能もいくつか盛り込まれていて,クールダウンタイムやダメージ,ヘルス,アルティメット・アビリティなど,さまざまな部分を細かく調整できます。
4Gamer:
e-Sportsの計画については?
キャプラン氏:
BlizzConなどのイベントを見ていただければお分かりのように,我々はe-Sportsのファンであり,常に真剣に向き合っています。もちろん「Overwatch」についても,いろいろと計画中ですが,こちらについては後日の正式発表をお待ちください。
4Gamer:
最後になりますが,すでにウィンストンを主人公にした「Recall」,そしてウィドウメーカーを主人公にした「Alive」など,ボリューム感のあるCGアニメがリリースされ始めていますね。今後も,こうしたキャラクターの紹介を行っていく予定なのでしょうか。
キャプラン氏:
ええ。ようやくヒーロー達やその世界観を紹介する短編アニメを皆さんにお届けできるようになり,非常に興奮しております。最初にウィンストンを紹介したのは,Orverwatchの物語を説明するうえで,彼がもっとも重要な役割を持っていたからです。これからも,短編アニメによるヒーロー紹介には期待しておいてください。
4Gamer:
公開を楽しみにしております。ありがとうございました。
「オーバーウォッチ」公式サイト
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(C)2015 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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