インタビュー
“忍者”登場の背景にもシド・マイヤー先生の教えが生きていた。「ドミネーションズ」開発コアメンバーにインタビュー
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最大50対50のギルドバトルコンテンツ「WORLD WAR」の実装や,“忍者”を目玉としたゲーム内イベント「暗殺者の証」の実施など,精力的にアップデート/イベントが行われている本作だが,現在の反響や今後の展開はどのようになっているのか。今回4Gamerは,Big Huge Gamesのコアメンバーに話を聞く機会を得たので,その模様をお伝えしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。今回はどういった目的で来日されたんでしょうか。
テレビCMの展開なども含めて大きなメディアキャンペーンが行われていますので,その進捗状況を確認しにきました。今回は,ジョシュ(ジョシュ・カーモンド氏)とアリシア(アリシア・ベリー氏)を同行させていますが,2人は今回が初の来日です。2人に欧米と異なる市場や文化を感じてもらって,ゲームに生かしてほしいという目的もあります。
ティムとは長い付き合いで,初めて一緒に仕事をしたのは2005年。旧Big Huge Gamesの頃に「Rise of Nations」でデザイナーを担当していました。その後はZyngaやKongregateで仕事をしていましたが,約1年前にティムから声をかけられ,新生Big Huge Gamesに参加しています。なので,旧Big Huge Games,Zynga,新生Big Huge Gamesと,実はこうやってティムと仕事をするのは3回目なんですよ。
4Gamer:
トレイン氏にとって,ジョシュ氏はどういった存在ですか?
トレイン氏:
非常に相性の良いパートナーですね。自分が新たなプロジェクトを起こすときは,毎回ラブコールを送っていますよ。
4Gamer:
ベリー氏はどういった経緯で新生Big Huge Gamesに参加したんでしょうか。
自分はこれまでIT関連企業が中心で,ゲーム系ではZeniMax MediaやBethesda Softworksに在籍していましたが,約4か月前から新生Big Huge Gamesに参加しています。
ゲーム開発,というよりはプロジェクト管理の業務に関わっており,会社内の小さなプロジェクトなどを管理して,それらが滞りなくかつ円滑に進むようにするという役割を担っています。
4Gamer:
トレイン氏から見たベリー氏とは,どういった人物ですか?
トレイン氏:
最初に彼女に声をかけたのは約2年前でしたが,その経歴に驚きましたね。彼女のように,IT関連のプロダクション経験が深い人は非常に珍しいんです。
実は,アリシアが入社してから2週間後にジョシュの子供が産まれて,彼が育休に入ってしまったんですが,アリシアは入社してから2週間で,ジョシュが担当していたプロデューサー業務のピンチヒッターとして代わりを務めることになったんです。そして,彼女は期待どおりにそれをやり遂げました。
ベリー氏:
あのときは怖かったですね(笑)。でも私自身が大きなプロジェクトに挑戦することが好きで,入社からそう日が経たないうちにプロデューサー業務を任されて,結果的に開発チームに貢献できたというのは,とても良い経験になりました。ハードでしたけど,刺激的でもあり,あっという間の出来事でした。
トレイン氏:
ジョシュが育休を終えて業務に復帰したあと,ドミネーションズは2人の優秀なプロデューサーが揃い,自分としても大満足です。今後の発展を楽しみにしてください。
あらためて聞いた「WORLD WAR」のコンセプト
実現できなかったアイデアが,今後追加されていく?
4Gamer:
「WORLD WAR」が2015年12月の大型アップデートで実装され,プレイヤーはすでに楽しんでいると思いますが,今回の記事で初めて知る読者に向けて,あらためてコンセプトなどをお聞かせください。
トレイン氏:
WORLD WARは,ギルド同士で戦う最大50対50のコンテンツです。対戦相手のギルドが決まると,戦闘準備期間を含めて計2日間にわたるバトルが繰り広げられます。
戦闘期間中に敵対ギルドを攻撃すると,その戦果に応じて1〜5個の星が手に入り,WORLD WAR期間中に星の総獲得量の多いギルドが勝利するという仕組みになっています。
4Gamer:
実装から約2か月が経過しましたが,反響はいかがですか。
トレイン氏:
「グレート!」の一言に尽きますね。楽しいというフィードバックが多く寄せられ,大きな成果を得られました。
4Gamer:
ご自身でWORLD WARをプレイして,もっとも楽しいと思う部分はどこですか?
トレイン氏:
醍醐味だと感じているのは,ギルド内でコミュニケーションを取って協力するところですね。チャットで相談し合ったり,リーダーが指示を下したりできます。メンバー同士で,ユニットを援軍としてゆずったりできますので,戦力が低い人でも援軍の力を借りて一定の戦果を挙げられます。
4Gamer:
接戦時はとくにアツいですよね。
トレイン氏:
そうでしょう? WORLD WARでは,ギルドの皆で同じ目標に向かって突き進むという一体感を得られますし,オンラインゲームならではの「1人で遊ぶゲームでは味わえない」面白さがあります。
4Gamer:
WORLD WARでは世界地図のマップが使用されており,「Rise of Nations」(RoN)のキャンペーンマップを彷彿とさせ,オールドファンの自分としては嬉しかったポイントです。
トレイン氏:
欧米のメディアにはゲームを触りもせずに取材する記者が多いんですが,4Gamerさんはよく調べていますね(笑)。WORLD WARは多くの国で幅広く遊ばれている印象で,実装以来,1人あたりのプレイ時間が若干伸びており,開発としても嬉しいですね。
4Gamer:
開発時,とくに苦労されたのはどういった部分でしょうか。
トレイン氏:
1つ目は,50対50,つまり100人が一斉にプレイしても不具合が生じないようにするテクニカルな部分ですね。バグ取りのために1日に2回はテストプレイを行うくらいのペースが必要でした。ローンチに向けて急ピッチで進め,社員に毎日必ずテストするように指示しました。
2つ目は,ゲームデザインです。社員はドミネーションズに精通しているがゆえに,コア寄りの目線で考えがちでした。意外なところが盲点だったりして,作る側からは,プレイヤーに何が刺さるのかが分からない部分もありましたね。
4Gamer:
WORLD WARの開発は,当初の想定よりも難航したようですね。
トレイン氏:
ジョシュが育休に入ってしまったこと,バグチェックが想定より大変だったこと,そしてテストプレイの期間が限られていたことが厳しかったですね。バグチェックは今後も引き続き行っていきますが,そのため実現できなかったアイデアが膨大に残っています。これらをいつか形にできないかな,と今は考えていますよ。
4Gamer:
お話できる範囲でぜひ教えてください。
トレイン氏:
現在のバージョンは,社内では「バージョン1」と呼んでいて,今後も「バージョン2」「バージョン3」といった具合に,残ったアイデアを実現させたいと考えています。まずはワールドマップのレイアウトの変更や,ベースの改善,ギルド内でのコミュニケーションをより円滑に進めるためのデザインを実現したいです。
4Gamer:
新規のプレイヤーがギルドを探すときに,国別で検索できるといいな,とは個人的にも感じました。
トレイン氏:
確かにその機能も必要ですね。WORLD WARを実装し,オンラインゲームの面白さはコミュニティにあると再認識していますので,必ず検討してみます。
4Gamer:
コミュニティの大切さ,という部分では具体的にどういった考えをお持ちでしょうか。
ギルドシステムは非常に重要だと捉えています。オンラインゲームではギルドのようなコミュニティに参加することが,ゲームの面白さを10倍に高めるといっても過言ではありません。
ドミネーションズをサービス開始時から遊んでいる人は,時間にして約1年(※)はプレイしていることになります。そして長期にわたって遊んでいるプレイヤーほど,ギルドのようなコミュニティの充実化を望む声が多いと分析しています。仮にドミネーションズが1人で遊ぶゲームだったら,今ほど遊ばれているかどうかは,正直なところ分かりません。
※「ドミネーションズ」は2015年4月にグローバル配信が開始され,日本を含む一部アジア圏では2015年8月からサービスされている。
4Gamer:
WORLD WARを通じた日本プレイヤーへの印象はいかがでしょうか。
トレイン氏:
日本のプレイヤーは,とくにコアなゲーマーが多いという印象ですね。実は,日本はWORLD WARの人気が高い国の1つだったりします。
“忍者”を目玉としたゲーム内イベント「暗殺者の証」にも
シド・マイヤー氏の教えが生かされている
4Gamer:
直近では,“忍者”を目玉としたゲーム内イベント「暗殺者の証」が開催されましたね。1人のプレイヤーとしても,自分の国が題材に取り上げられるのは嬉しいことでした。
カーモンド氏:
オンラインゲームの長期的な運営にあたって,インゲームイベントを定期的に行うことが大切だよねというのが発端でした。そこで具体的なテーマを考えてみて,結果的に日本の“忍者”を題材として選びました。その理由にもシド・マイヤーの教えが反映されています。
トレイン氏:
「自分が子供の頃に好きだったものをゲームに反映させると,それは間違いなく良いゲームになる」と,彼はよく言っていたんですよ。開発チーム内で「子供の頃は何が好きだった?」と問いかけてみたら,忍者だと答える人が一番多かったんです。子供の頃は手裏剣を投げたり,匍匐前進をしてみたりと,忍者ごっこをした人間ばかりでした(笑)。
4Gamer:
忍者の能力はどのようにして決めたんですか?
トレイン氏:
特別な能力を持たせなければならない,というのはまず第1に考えましたね。いくら忍者好きだからといって,そのままゲームに実装するとバランスを崩しかねませんが,結局は「オーバーパワー」の状態で実装しました。これは,期間限定のゲーム内イベントの報酬であり,むしろオーバーパワーだからこそ普段とは違うゲームプレイが実現し,新鮮な面白さにつながると考えたからです。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,他国ではどう受け入れられたのかが,日本人としては気になるところなのですが!
とくに欧米では大成功ですね。忍者は皆知っていますし,知っているものが登場すると嬉しいですから。ちなみに,欧米では「ニンジャ VS. パイレーツ」と,海賊と引き合いに出されるほど,忍者は大人気なキャラクターなんです。そして忍者といえば,隠密行動や忍術が得意なことも皆知っています。共通の理解があるものをゲームに実装すると良い反響を得られるということを,今回のイベントでも実感できました。
たとえばですが,ドミネーションズにおいて,戦車が砲弾で敵施設を破壊できるシステムは説明する必要がありませんよね。実はこれも「教えなくても分かるものは良いテーマ」というシド・マイヤーの教えが生かされており,忍者も同様というわけなんです。
4Gamer:
前回のインタビューに引き続き,今回もシド・マイヤー氏の名前が聞けて嬉しいです。お時間がきてしまったようなので,最後に,ドミネーションズでもっとも気に入っているポイントを,ぜひ皆さんからお聞かせください。
トレイン氏:
世界の歴史という誰もが知っているテーマに大きな自信を持っています。子供がドミネーションズをプレイして,歴史に興味を持つきっかけになったというフィードバックが寄せられるケースもあり,嬉しく思っています。
カーモンド氏:
私もティムと同様,歴史をテーマとしたところに,こだわりがあります。今までの時代がどのような形でゲームに反映されているのか,そしてこれからの時代はどんな形でゲームに反映されるのか。作る側としても楽しみにしています。
ベリー氏:
個人的には,WORLD WARがお気に入りです。ティムからも話しましたが,通常の対人戦とは異なって,ギルドメンバーと協力して1つの目標に向かっていく,というのはオンラインゲームならではの面白さがあります。ゲームを始めたばかりの人でも,援軍を通じて戦力強化を図れるので,ぜひ体験してみてほしいですね。
本日はありがとうございました。ちなみに,仮にドミネーションズが一段落したら,次はどんなタイトルを作ってみたいですか?
トレイン氏:
次のプランは考えていません(笑)。現在はすべてのスタッフが100%の力をドミネーションズに注いでいます。今作がBig Huge Games初のモバイルゲーム,かつUnityを用いたタイトルで,改善できる余地はまだまだ残されています。
私自身としても,ドミネーションズを通じて伝えたい人類の歴史がまだ山ほどあります。本日は(日本語で)ドウモアリガトウゴザイマシタ!
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──2016年2月4日収録
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