日本では2015年内に,260機種を超えるWindows 10搭載PCが販売されるという
|
2015年10月14日,Microsoftの日本法人である日本マイクロソフト(以下,
Mi
cro
so
ft)は,東京都内にて報道関係者向けのイベントを開催し,2015年冬商戦で販売されるPCメーカー各社のWindows 10搭載PCを披露した。
実のところ,ゲーマーに関係する話題はほとんどないイベントだったのだが,
Windows 10とXbox Oneを組み合わせた「ゲームストリーミング」機能に関する追加情報や,スマートフォン向けのWindows 10である「Windows 10 Mobile」搭載端末に関する新情報が公開されたので,簡単にレポートしよう。
着実に進化を続けるWindows 10のゲームストリーミング機能
2015年7月に掲載した
特集記事で報じたとおり,Windows 10には,ゲーマー向けのさまざまな機能が導入されている。その中でも,目玉機能の1つに位置付けられているのが,Xbox One上で動作しているゲームを,LAN経由で接続されたPCでプレイできるゲームストリーミング機能だ。
実はこのゲームストリーミング機能は,
Xbox Oneのシステムアップデートに合わせて,改良され続けているのだそうだ。
ゲームストリーミングのウインドウ内でマウスポインターを動かすと,画面の上側に情報や設定を行うパネルがオーバーラップ表示される
|
とくに重要な改良点は,入力操作がゲームに反映されるまでの遅延(レイテンシ)を低減したことにあると,会場のMicrosoft関係者は説明していた。筆者もWindows 10のリリース直前に,ゲームストリーミング機能を試したことがあったのだが,当時は「入力に対するレスポンスがちょっと悪いな」と感じたことがあったのを覚えている。実際,Microsoft社内でFPSのヘビープレイヤーに,ゲームストリーミング機能を使ってBattlefieldシリーズをプレイしてもらったときは,遅延の大きさに酷評を受けたという。
しかし,現在のゲームストリーミング機能では,入力に対する遅延を大幅に短縮したのに加えて,PC側の表示フレームレートも最大60fpsに対応したことで,プレイの快適さが大きく向上しているそうだ。
ゲームストリーミング中のPCでタスクマネージャーを起動して,CPUやネットワークの負荷を表示してみた。Core i5-6300HQ搭載のInspiron 15 7000で,CPU負荷は25%程度,データ転送レートはおおむね6〜8Mbps程度だった
|
Xbox One本体とWindows 10搭載PCを持っている人は,一度試してみると面白いのではないだろうか。
視線追跡型HMD「FOVE」の試作機も披露
会場で披露されていたFOVE HMDの試作機
|
また,このイベントでは,Microsoftがベンチャー企業支援活動を通じて支援している日本のベンチャー企業FOVEが開発中の仮想現実対応型ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「
FOVE」(以下,FOVE HMD)の試作機も展示されていた。
FOVE HMDの特徴は,装着者の視線を追跡する機能を備えることだ。詳細は
西川善司氏によるレポート記事を参照してほしいが,簡単に説明すると,映像を見るレンズの周囲に赤外線LEDを取り付け,赤外光を使って瞳孔の位置を検出するという機能を備えたHMDである。これを利用すれば,視線の動きでゲームを操作したり,視点の周辺だけを高精細に表示して,その周囲はほどほどの品質で描画するといったことが可能になるという。
FOVE HMDには,レンズの周辺に小さな赤外線LEDが6個,両目合わせて12個搭載されている(左)。瞳孔に反射した赤外光を捉えるカメラは,レンズの下側に装備されているとのこと。右写真は,デモコンテンツを動作させていたマウスコンピューター製のゲーマー向けPC。ただ,スペックは公表されなかった
|
|
FOVEのCEOである
小島由香氏によれば,視点の周辺だけを高精細で描けばいいFOVE HMDなら,全画面を高精細に描く既存のVR HMDと比べて,6倍もレンダリング時間を短縮できるという。ゲームに応用する場合,グラフィックスエンジン側がFOVE HMDに対応したレンダリング機能を備えている必要があると思われるが,なかなか興味深いアプローチであり,Microsoftが目を付けたのも頷ける。
視線追跡機能をゲームの操作に使ったデモ。夜の都市を背景に,次々と飛んでくるエイのような敵に視線を合わせてビームを発射し,敵を撃ち落とすというミニゲーム的な内容だった
|
FOVE HMDの技術が,どのような形で製品化されるのかはまだ分からないが,期待の持てる技術であるのは確かだろう。今後の展開に期待したい。
VAIOやAcerがWindows 10 Mobile搭載スマートフォンを国内市場に投入
現在は6社が,Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの国内発売に向けて開発を進めている
|
イベントの最後には,国内におけるWindows 10 Mobile対応端末の最新情報も発表された。すでに製品投入を予告している,
マウスコンピューターや
プラスワン・マーケティング(※ブランド名はFREETEL),
サードウェーブデジノスに加えて,今回新たに,
Acerと
VAIO,
トリニティ(※ブランド名はNuAns,ニュアンス)の3社が,Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの国内発売に向けて,開発を進めていることが発表された。
会場で披露されていたWindows 10 Mobile搭載スマートフォン。左から,サードウェーブデジノス,FREETEL,ジェネシスの製品だ
|
左写真はNuAnsの「NuAns NEO」,右写真はAcerの「Liquid Jade Primo」と思われる
|
|
MicrosoftがWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「Lumia 950」を発表したときに公表したイメージ。スマートフォンを「Display Dock」経由でPC用ディスプレイやキーボードにつなげて,PC風に利用できる
|
会場でも,各社のWindows 10 Mobile搭載スマートフォン試作機が披露され,サードウェーブデジノスなどは詳細なスペックも公表している。それによると,詳細未公開の「クアッドコアプロセッサ」をSoCに採用し,メインメモリ容量は1GB,内蔵ストレージ容量は16GB,液晶パネルは5インチサイズで,解像度720×1280ドットというスペックを備えるとのこと。
メインメモリ容量が1GBだと,Windows 10 Mobileの特徴である,スマートフォンを外部ディスプレイやキーボードとつなぐことで,PCのWindows 10と同じような画面でアプリを利用できる機能が使えないのではないかと思われるのだが,初期に販売されるWindows 10 Mobile搭載スマートフォンは,どれも同じようなスペックになっていると,サードウェーブデジノスの担当者は説明していた。
今回披露されたWindows 10 Mobile搭載スマートフォンの発売時期や価格は発表されなかったが,早期の投入を期待したいところだ。