連載
NHK「ゲームゲノム」Season2 第8回は「Cities: Skylines」。三浦大知さん,岡崎体育さんらと見る幸福へのロードマップ作り
MCは歌手/ダンサーとして活躍している三浦大知さん,ゲストはアーティストの岡崎体育さんと女優の田中道子さんの二人。岡崎さんは日常的にゲーム配信をしており同作もプレイ経験アリ。田中さんは大学で都市デザインを学んでおり,さらに一級建築士の資格も取得している。
※2024年3月1日9:25追記 初出時,三浦大知さんの漢字に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
今回はそんな面々と共に,いくつかのキーワードに分けて本作において社会の,そして幸福へのロードマップをどのように作り,整備していくのかを見ていこう。
シティズスカイラインとは?
Cities: Skylinesはフィンランドのゲームデベロッパ,Colossal Orderが開発した都市開発シミュレーションゲームで,販売元はスウェーデンを本拠地とするParadox Interactiveだ。
市長であるプレイヤーには,2km x 2kmの更地が与えられる。ここで人口を増やして安定した税収を獲得するというのが大きな目的だ。まずは近くの高速道路から一般道を引き込む。次は区画整理で,居住区,商業区,産業区といったように区画をわけて,どこにどんな建物を建てるかを決めていく。
建物が建設されると電気や水が足りないといったサインが街から出てくる。それに対してプレイヤーは送電線で電気を送り,水道管を張り巡らせなければならない。そして,居住区のインフラが一通り整備されると,どこからともなく車と共に市民が引っ越してきて,都市としての姿が見えて来る……というのがゲームの大まかな流れである。
KEYWORD 1:千里の道も一歩から
本作には市民が何を求めているかを表す需要メーターがある。住宅,商業,産業という3つのパラメータのバランスを見ながら,今街に何が必要なのかを判断していく。
例えば,産業の需要が高いときは働く場所が足りていないということを表しているので,それに対してプレイヤーは工場などを建設して対応していく。すると今度はそれに伴って水や電気が足りなくなるので,新たに水道管整備や電力発電所を建てていくのだが……プレイヤーに与えられる予算は限られている。
当然,都市の発展のためには建設費や維持費がかかるので,理想だけを求めた街作りを追求しすぎると財政難に陥ってしまう。お金がないと,居住区で下水処理ができないといった問題に直面した際に解決できず,結果として市民が街から離れてしまい,負の連鎖に陥ることに。
ゲストの岡崎さんはこの街作りの過程を音楽に例えて「道路を敷くのはドラム,区画整理はベース,建物はシンセサイザー,そして街の問題は不協和音」と表現する。どんなジャンルのものづくりにも,こういった共通点が見られるそうだ。
KEYWORD 2:道路は社会の血流
さて本作では,試行錯誤の末に街として機能しはじめ,税収も人口も右肩上がりに増えていっても,市民の幸福度が下がってしまう場合がある。幸福度の低下は住民の街離れにつながり,それは居住区の廃墟化を招く。こういうときには観察モードを使い,市民一人ひとりの幸福度をチェックする,いわゆるミクロな視点が重要になる。
番組ではオリビア・キャンベルというキャラクターの観察をとおして都市の問題を特定していく。彼女はゴミが回収されないことに怒りを覚えており,それが幸福度の低さにつながっていたのである。ゴミ集積場もあり,回収車も稼働しているのになぜなのか?
そこで次はゴミ回収車を観察すると,ゴミ回収車が渋滞に巻き込まれて,うまく回収が進んでいないことが分かる。さらに渋滞の理由を探ると,バス停にたくさんの乗客が溜まっていて複数のバスが詰まっているのが原因だと判明。このバス停は産業区と居住区をつなぐ幹線道路上,非常に交通量の多い街の要所にあった。
プレイヤーは,この場所の道路を3車線のバスレーン付き道路に変更。すると渋滞が解消され,ゴミ回収車もしっかり機能し始め,オリビアの幸福度も改善していった。このように市民の不満というミクロの視点から,街としての問題を特定して解決していくのがプレイヤーの重要な仕事なのだ。
Colossal OrderのCEO,マリーナ・ハッリカイネン氏は映像出演し,下記のように語った。
「道路は単なる道ではなく街のあらゆる場所を行き来する経路になる。人々は自宅から仕事場へ行くし,商品が工場からお店へ運ばれることもある。道路は人の体を流れる血流のような重要なもの」
ちなみにゲストの岡崎さんは京都の宇治出身ということで,それを模した街「新宇治」を本作で作成した。新宇治サンドバックスという架空のサッカーチームのホームグラウンドや,パリを意識して作ったというサークル状の居住区アホアホヒルズといったユニークな街を披露している。
「どういう風に街を作れば市民の人が満足してくれて,それでいて効率的なのか,それを考えるのが面白くてずっとプレイしていた」(岡崎さん)
KEYWORD3:変わりゆく姿と向き合う
本作ではゲーム内の時間経過と共に,市民も成長していく。そのため街作りの方針もその変化に対応していく必要がある。
番組内ではキャロル・サンダーという住人を例に変化していく街作りを見ていった。彼女の家庭は,子供8人,大人6人という3世帯が暮らす大型家族だ。しかし,その全員が教育を受けていない。その理由は,まだ街に学校がないから。さまざまな職業の担い手を育てるために教育施設は不可欠だろう。だからといって,学校を建設すれば解決するのかというと,話はそう簡単ではない。
同時期に,街では犯罪が横行し,治安は深刻な状態に陥ってしまった。将来のために学校を作るか,今,治安を守るために警察署を作るか,プレイヤーはその時々に応じて選択していかなければならない。番組内では警察署を建てて治安を回復させるが,結果としてキャロルは教育を受けることができないまま成人してしまった。キャロルはそれでも会社で事務員として働く立派な大人へと成長した。
プレイヤーがキャロルのためにできること,それは学校を建てることだけではない。キャロルのような市民のために,例えばショッピングセンターを建てる。こういった施設は若い世代を中心に市民の幸福度アップにつながるからだ。
さらに月日が経つと,キャロルも高齢者になっていく。1年前は10%だった高齢者の割合も21%へ上昇。それに伴って高齢者用の施設や墓地を作るなど,プレイヤーは常に,その瞬間の市民の人生に向き合っていくことになる。
「プレイヤーが時の経過の中でゲーム内の市民をただの数ではなく,街で暮らす個人であると理解すれば,彼らは生まれ,学校に通い,職を見つけ,いずれ亡くなる存在に見えてくる。だから建物だけではなく,その中には人々が暮らしていることを心に留めておいてほしい」(ハッリカイネン氏)
実際に番組内で人生を追った市民,キャロルもその生涯を終え,最終的には霊柩車でプレイヤーの作った墓地へと運ばれていく。
「ひとりにフォーカスして見ていくことで,街の深さを,やっぱり人なんだなと感じる」(三浦さん)
「幸福度を保つためにはインフラも娯楽も大事。バランスよく成長させるのが肝かなと思う」(田中さん)
KEYWORD 4: 備え そして復興
実は本作の発売から1年半後,新たに自然災害モードというコンテンツが追加された。せっかく作ったプレイヤーの街が森林火災などで破壊されてしまうのだ。その実装意図について,ゲームデザイナーのヘンリ・ハイマカイネン氏は「自分の街で悲惨なことが起こったときにどうすれば防げるか,もしくはどうすれば市民を救えるかを考えなければならない。それがゲーム内にほしかったもの」と語っていた。
もちろん,本作には災害から市民を守るためのさまざまな対策も用意されている。竜巻の発生を予測する気象レーダー,市民に避難を促すラジオ塔,1万人を収容できる避難シェルターなどがその代表例だ。このような施設を活用し,さらに事前に避難ルートを決めておくことで,災害時に市民たちは自らの命を守れる。だが,こういった対策には多額の資金が必要なので,限られた予算でどこまでやるべきか,プレイヤーは考えなければならない。
「プレイヤーたちは災害を防ぐために今,この資金を投入するのが理にかなっているか,それとも災害が起きた後に対処するのがいいかを計算しなければならない」(ハッリカイネン氏)
完璧な対策を施して市民を守れても,災害は街に大きな爪痕を残す。そんな街の復興の要となるのはやはり道路だ。道路がなければ建物に残された市民を救うことも,瓦礫を撤去することもままならない。しかし道が通じて車が行き交うようになれば,人々が自ら街を復興し,その営みを再建していくことになる。街は破壊されても,道路を敷いて血流を改善してやれば再び蘇る。この道路の役割を理解することが,本作の体験の要と言えるだろう。
最後に,今回の出演者たちの本作への思いを,まとめて紹介しておこう。
「街全体が生き物だから,完成したら終わりではない。自分が一人の住民としてどうやって関わっていくのかというところまで考えられるようになった」(田中さん)
「(街作りには)明確な正解がない。一つの解決が全部の解決につながるとは限らない。いろいろなしがらみや葛藤がある。それはものづくりすべてに共通して言えることだと思った」(岡崎さん)
「きっと広い視点と小さな視点の両方を見ながら街というのは作られているし,それが理想の街作りなのかなと思う。日々,当たり前のように過ごしているけれど,恵まれた環境にいていろいろなものを与えられているのだと,あらためて感じた」(三浦さん)
2024年1月10日 放送開始(全10回)
毎週水曜日 23:00〜23:29/NHK 総合(予定)
※「NHK プラス」で1週間見逃し配信あり
「Cities: Skylines」公式サイト
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