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[TGS 2014]王道らしい王道RPGを作りたい――TGSで突如発表された新作「ZODIAC(ゾディアック)」とはどんなゲームなのか聞いてみた
美しい幻想的なグラフィックスに壮大な音楽,滑らかなアニメーション,それでいて,どこか懐かしいオーソドックスなバトルシステム。本作は,いわゆる“王道ファンタジー”あるいは“王道のJRPG”というものを,現代風にアレンジを加えつつも,ド直球で作ろうとしている作品だ。本作は,今回の東京ゲームショウにターゲットを合わせ,初発表/初出展/初プレイアブルという形でのお披露目となっている。
■「ZODIAC」TGS2014 トレイラームービー
「ZODIAC」公式サイト
また本作は,シナリオを野島一成氏(代表作:ファイナルファンタジーシリーズ)が,音楽を崎元 仁氏(代表作:伝説のオウガバトル,ファイナルファンタジー タクティクス)が手がけるなど,著名な日本人クリエイターが参加しているのも大きな特徴だ。いわく“最高級品質のタッチデバイス用タイトル”を目指して制作中という本作は,「ファイナルファンタジー」や「ヴァルキリープロファイル」「ドラゴンズクラウン」などといった作品をオマージュした内容になっているという。
4Gamerでは,そんな「ZODIAC」の開発を手がけるKobojoのCEO・Mario Rizzo氏に,野島氏や崎元氏とはどこで出会い,どういう経緯でこのプロジェクトを始めたのか?など,いろいろな話を聞いてみた。
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そもそも,どんなゲームなのか
まずは「ZODIAC」の大まかな説明をしておきたい。前述した通り,本作は,JRPGを強く意識したマルチプラットフォーム向けのオンラインRPGだ。野島氏がシナリオを手がける壮大なストーリーに加えて,トレジャーハンティング的なやり込み要素や,オンラインならではの協力プレイなどが盛り込まれた内容になるという。
戦闘システムは,昔ながらのターン制バトルをベースとしており,タッチ操作やフリック操作で敵を攻撃するというスタイル。慣れてしまえば,かなり快適に操作ができそうな雰囲気だ。
また,主人公のクラスを戦闘中にいつでも自在に変えられるという点も面白い。デモプレイでは,戦士から魔法使いへ,というジョブチェンジが披露されていたが,これにより,戦略性の高いバトルシステムを実現するのだという。
一方で,一緒に戦う「仲間」のクラスは固定。また,戦闘に出せるパーティは最大で3人までで,うち一人は,オンライン上のフレンドを呼んで一緒に戦う形。ただし,オンタイムで一緒である必要はなく,友達のキャラクターを“借りてくる”形になるとのことであった。
なお本作は,シンボルエンカウント制を採用しており,フィールドを徘徊する敵のシンボルとぶつかると,戦闘へと移行するという形になっている。
ちなみにフィールドは,横スクロールをベースとしたもの。試遊版では,グリフォンを操って飛び回るような形になっており,「チャイルド オブ ライト」のような感覚で飛び回れる……といえば,分かる人には分かるだろうか。
詳しくは,「こちら」の記事&ムービーなどで確認してほしいが,マップには多少のパズル要素も含まれるようで,試遊版では,リフトの上げ下げを駆使するというギミックが用意されていた。本作の中核の1つだというストーリーパートなどは,この謎解き要素+戦闘といった組み合わせで進んでいくものになるのかもしれない。
ともあれ。ゲーム自体がまだ未完成ということもあり,具体的にどういう遊び方をするゲームなのか――パッケージゲームのような形なのか,ソーシャルゲームのような仕組みなのかなど――は,正直よく分からなかったというか,Rizzo氏によると,むしろ「これから決めていく」とのことで,課金スタイルなどについても検討中だという。
ただ,グラフィックスやサウンド面を含め,本作がかなり力の入ったタイトルなのは確かで,この調子で作り込んでいってくれれば……と,現時点でもかなり期待が膨らんでしまうのは間違いない。
■「ZODIAC」 プレイムービー
本作を手がけるkobojoという会社
本作のプロデューサーを務めるRizzo氏は,「EverQuset」でオンラインゲームの開発/運営に関わったのを皮切りに,「EverQuest 2」のゲームデザイン,「Star Wars: Galaxies」ではプロデューサーを務めるなど,オンラインゲームを中心にゲーム制作12年以上のキャリアを持つ人物である。kobojoは,そんな氏が2年ほど前に立ち上げたゲームメーカーだ。本社はフランスにあり,スコットランドにある開発スタジオのスタッフを含めると,総勢60人ほどの規模の開発会社だという。
この話だけだと,「この話だけだと,「野島氏や崎元氏とどこに接点が?」とも思うわけだが,キッカケは,フランスで行われた「和洋レコーズ」のコンサートに崎元氏が訪れたこと。崎元氏のファンだった「ZODIAC」のディレクター・Julien Bourgeois氏が,ダメモトで氏を自分のスタジオに招待してみたらしい。kobojoが元々RPGの制作を得意としていたという背景もあり,自分達が手がけているRPG(当時はまだ,ZODIACの原型のようなもの)を,「とにかく崎元さんに見てほしい!」と思ったのだそうだ。
その後,コンサートの開催者から,「ファイナルファンタジー」の楽曲で知られるゲーム音楽の重鎮・植松伸夫氏を紹介してもらい,その縁から,さらに野島氏を植松氏から紹介してもらったとのことで,Rizzo氏は「もの凄く光栄なことで,本当に嬉しかった」と,当時をふり返る。
そして,いくつかやりとりを重ねたあと,野島氏と崎元氏のプロジェクトへ参加が正式に決まるわけだが,これが約1年ほど前の話。その後,着々と準備を進め,今回の東京ゲームショウでのお披露目となったわけだ。
日本で最初にアナウンスした理由について,Rizzo氏は,「映画制作といえば,誰もがハリウッドに憧れるように,私はゲーム制作における日本というものに憧れてきた」と語る。幼い頃から「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といった日本のRPGに慣れ親しんできたRizzo氏にとって,野島氏や崎元氏は,尊敬する業界の先輩であると同時に,彼らは文字通りの“ヒーロー”だというのだ。
一方で,Rizzo氏は「今回,このような機会をもらえたことは,本当に夢のようで嬉しく思っている。しかし,同時に責任も感じている」とも言う。なぜなら,言語の壁のみならず,考え方や常識も違う外国のクリエイターとの協業は,とても難しいプロジェクトでもあるからだ。
Rizzo氏は,「日本のクリエイターが海外のスタジオと組むケースはまだまだ少ないと思うが,今後,こういった取り組みは増えていくだろうし,そこは大きな可能性がある領域だと思っている。その意味で,彼ら(野島氏と崎元氏)が最初に組む海外スタジオとして僕らを選んでくれたことを,とても誇りに感じている」と言う。
日本人クリエイターと海外スタジオ
海外で取材を行うとしばしば感じることだが,海外における日本人クリエイターの知名度は,おそらく,読者の皆さんが想像しているよりも遥かに高い。また,その知名度のみならず,日本独特のセンスや知見といったものが,高く評価されているのも確かで,Rizzo氏が言うように,海外のスタジオと組んで制作に乗り出すクリエイターは,今後,さらに増えていくと思われる。「ZODIAC」が,そうした取り組みの先行事例として,大きな足跡を残せるのか否か。兎にも角にも,2015年に予定されているというリリースが待ち遠しい限りである。
また,発表こそ出来ないものの,実はさらに2名ほど,著名な日本人クリエイターが制作に関与しているらしい。Rizzo氏曰く,「今はまだ言えませんが,後日,発表します」とのこと。まぁ,いったい誰が?――というあたりを悶々と考えながら,今後の動向をチェックしていきたいと思う。
コンセプトアート&スクリーンショット
「ZODIAC」公式サイト
- 関連タイトル:
ZODIAC Orcanon Odyssey
- 関連タイトル:
ZODIAC Orcanon Odyssey
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