インタビュー
「銀河英雄伝説タクティクス」開発インタビュー。開発秘話から今後の展開までいろいろ聞いてきた。待望のオンライン要素の追加も?
今回は,開発チームの重要人物であるDMM.com Labo ゲーム開発本部 第一制作部の油家政明氏,ゲーム開発本部 第一システム部の市山真治氏,ゲーム開発本部 第一デザイン部の内藤光洋氏の3人にインタビューを行い,本作の基本コンセプトから今後の展開まで詳しく聞いてみた。
銀河英雄伝説のイメージに合わせた本格的なシミュレーションゲームをブラウザ上で提供
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。銀河英雄伝説 タクティクスは,DMM.com Laboさんの内部チームが開発されているということですが,今回は初めてのインタビューですので簡単に自己紹介をお願いします。
油家政明氏(以下,油家氏):
企画/ディレクションの立場で開発チーム全体を見ております。
市山真治氏(以下,市山氏):
エンジニアのリードとして,プログラマの進捗の管理や企画から降りてくる案件のスケジューリングなどを担当しています。
内藤光洋氏(以下,内藤氏):
リードのデザインをやらせていただいてまして,キャラクター周りやユーザーインタフェースなどを取りまとめています。
4Gamer:
正式サービスが2016年1月28日に始まっていますが,まだプレイしていない方もいると思いますので,ゲームの概要と基本コンセプトを教えてください。
油家氏:
4Gamer:
銀河英雄伝説は知名度もありますし,今でも人気が高いようですが,そうした題材を扱うことに対して,こだわりのようなものはありますか?
油家氏:
私自身,小説を読み,アニメを観てきたタイトルですので,緊張感のようなものは感じています。開発チームの中にもどっぷりと銀河英雄伝説にはまっている人もいて,そうした熱心なファンがお客様になるんだろうなと考えていましたので。期待を裏切らないように良いモノを作ろうと,チーム一丸で開発に取り組んできました。
4Gamer:
では,正式サービスから1か月以上経過(2016年2月18日収録)していますが,率直に現在の心境を教えてください。
油家氏:
リリースが遅れてしまい,お待ちいただいた熱いファンの方々に申し訳ない気持ちもありますが,苦心したタイトルをようやく発表できたことは素直によかったかなと。プレイヤーの皆様に,まずは現在の銀河英雄伝説タクティクスを見ていただき,そのうえで皆様の声を聞きつつ改良していきたいです。
4Gamer:
当初は昨年の春に開始するとの予定だったと思うのですが,リリースが延びた理由は何だったのでしょうか?
油家氏:
技術が日々進化するなかで,クオリティアップのために時間が掛かってしまいました。先ほども言ったように,Flashで重さを感じることなくプレイできるようにすることを実現するのが一番大変だった部分でしょうか。
市山氏:
油家氏:
通信頻度の高いゲームなのですが,結果としては,重さを感じることなくプレイできるようになったと思います。
4Gamer:
リリースが伸びても,ゲームの基本コンセプト自体は企画の段階から変わっていなかったのでしょうか?
油家氏:
はい。「編成して,ボタンを押すと結果が出る」というブラウザゲームに多いシステムにも良いところがあると思いますが,銀河英雄伝説という題材には,やはりシミュレーションゲームが似合うだろうと考えていました。苦労はありましたが,しっかりとマップ上で艦隊を指揮するゲームに仕上がったと思います。
4Gamer:
確かにそうですね。"タクティクス"というサブタイトルからも,戦術シミュレーションになるのではないかと予想していた人も多かったでしょう。デザイン部門では,開発時に苦労した思い出などはありますか?
内藤氏:
4Gamer:
とにかくキャラクターが大勢いますからね。原作で記述が少ないキャラクターなどは大変そうです。
内藤氏:
アニメは本編だけで100話を超えていますので,資料集めも大変でした(苦笑)。ゲーム内では,各キャラクターに表情があるのですが,アニメでは怒っているシーンばかりで悲しんでる場面がないキャラクターもいて,そのキャラクターの背景を考えつつ予測して表情を付けています。
4Gamer:
プレイヤーの動向などはいかがでしょうか。
油家氏:
事前期間が長かったというのもありますが,多くのプレイヤーさんに遊んでいただけています。我々としては,シミュレーションゲームですので,じっくりゆっくりと楽しんでもらいたいと思っていたのですが,どんどん先に進めるようなプレイスタイルで遊んでいる方も多くて,フォローしきれていない部分もあったのかなと感じています。
4Gamer:
プレイヤーに一番楽しんでもらいたい要素は,やはりシミュレーションパートになりますか?
油家氏:
そうですね。
4Gamer:
そのシミュレーションパートについて,プレイヤーからの反響はいかがでしょうか?
油家氏:
ブラウザゲームということもあって,ほかの手軽なゲームをプレイされている方々は,一部戸惑っている印象はあります。シミュレーションゲームの良さはじっくり遊んでこそだと考えていますので,タイトルを進化させていきながら,多くのお客様に楽しんでいただけるようにしてまいります。
4Gamer:
そうした戸惑っているプレイヤーへの対策は急務になると思うのですが,何か考えていることはあるのでしょうか。
油家氏:
ユーザビリティを上げるよう,もっとサクサク感が出るようにできないかと模索しています。
4Gamer:
ブラウザゲームだと,どうしても同じようなこと,例えば同じダンジョンを繰り返し周回するといったことが多くなりますよね。操作することの多いシミュレーションゲームで,こうした周回プレイをするのはちょっと厳しいのかなとも感じました。
油家氏:
すぐに対策というのは難しいかもしれませんが,回転率やテンポを上げるような機能ですとか,どんどんボリュームを増やしていって新しいマップで遊べるようにできればと考えています。
4Gamer:
DMMさんのブラウザゲームですと,一度クリアしたマップはワンクリックで攻略を完了して,行動力が減る代わりに資源を得るようなタイプもありますよね。そういった方向性は考えなかったのでしょうか?
油家氏:
あくまで本格シミュレーションゲームとして作っていましたので,いわゆるポチポチゲーとは違う面白さを提供したいなと考えています。その辺りは慎重に検討しなければなりません。とはいえ,プレイヤーさんからの声としては「面倒」とか「手間が掛かる」といった声もありますので,なんらかの対策は必要かなとは考えています。
個性豊かなキャラクターは今後も定期的に追加される
4Gamer:
区分としてはオンラインゲームになると思いますが,現状ですとオンラインらしい要素は少ないですよね。
油家氏:
いわゆるソーシャルゲームの要素や,PvP,共闘などが今はありませんので,オンラインとは違うソロプレイ中心の内容になっています。今後は,プレイヤーの皆さん同士が関わるような要素,例えば帝国と同盟と二つの陣営に分かれて争うようなイベントも検討しています。
4Gamer:
ローンチの段階では,あえてオンライン要素を省いたということでしょうか。
油家氏:
年齢層も高めになると予想されましたので,ソーシャルゲームではなくきちんと遊べる"硬派なゲーム"を提供したいと考え、現在の形になりました。まずはゲームに慣れてもらい,少しずつオンライン要素も追加していきたいです。
4Gamer:
ちなみに,プレイされている年齢層はやはり高かったのでしょうか?
油家氏:
ええ。ほかのDMMタイトルよりも年齢層は高いです。ただ,女性の方が多くプレイされていることに驚いています。予想ではほとんどいないのではないかと考えていたのですが。
4Gamer:
シミュレーションパートでは,ストーリーも展開していきますが,プレイヤーのプレイ状況はいかがでしょうか。すでにクリア済みの方はいるんですか?
油家氏:
最後まで到達している方は,そこまで多くはないですね。後半は難しく作ったつもりでしたが,やはり我々の予想を上回る速さでプレイされる方もいらっしゃいました。
4Gamer:
育成の要素のありますし,やり込んだ分だけ強くなってシミュレーションゲームが苦手な人でも,いずれはクリアできるようになりそうですね。そういえば,ゲームを始めるときに,帝国と同盟を選びますよね。現状のゲーム内容を見ると,同盟でも帝国の将兵や戦艦が手に入ったりするので,分けなくても良かったのではないかとも思ったのですが,これは外せない要素だったのでしょうか。
油家氏:
帝国と同盟は……一緒にできないですよね(笑)。
4Gamer:
ファンの心情的にはやはりそうですね(笑)。人口比はどうですか?
油家氏:
最初は,帝国側に傾くかなと予想していたのですが,現状で見て,若干帝国のほうが多いかなといった程度に落ち着き,大きな差はありませんでした。
4Gamer:
ゲーム自体は原作に沿ったストーリー展開になっていますが,本作ならではの,例えばifのシナリオなどは考えていますか?
油家氏:
そういうのができれば楽しいかなと思うのですが,原作の雰囲気を壊さないことが大前提ですので,版元さんと相談しながら考えていきます。シナリオ以外の部分では,ゲームでしかできないような試みを近々に行う予定です。
4Gamer:
原作が完了している題材ですので,ストーリーはいつか完結してしまいますよね。
油家氏:
もともとサブ的なシナリオを含めて膨大な量がありますので,ゲーム内のストーリーがすぐに完結してしまうということはありません。
4Gamer:
個性的なキャラクターも銀河英雄伝説の魅力ですが,ゲーム内にはまだ主要なキャラクターしか登場していませんよね。
油家氏:
まだまだ出せていないですね。出したいキャラクターはたくさんいますので,随時追加していきます。追加で早く出してほしいキャラクターなどありましたらコミュニティなどでご意見いただけるとありがたいです。
4Gamer:
イベント限定で将兵が手に入ることがありますが,これは将兵の「スカウト」では手に入らない特殊な将兵という扱いになりますか。
油家氏:
そうですね。イベント専用のキャラクターとして毎回新しい将兵を追加していきます。
4Gamer:
私自身も銀河英雄伝説は大好きなんですが,開発陣の好きなキャラクターというのも気になります。さしつかえなければ教えてください。
油家氏:
ブラウンシュヴァイク公ですね。愛すべき悪役というか,最後もちょっと情けない感じがとても良くて。こういうアクの強いキャラクターが存在し,対立の構図が成り立っているのが銀河英雄伝説のドラマなのかなと。まだゲーム内には登場していないので,なんとか早く出したいです。
市山氏:
あまり前に出てこない感じのオーベルシュタインが好きですね。こちらもまだゲーム内に登場していないので,早く出したいです。
4Gamer:
二人とも帝国派なんですね。
市山氏:
どちらかというと,そうですね。戦艦も帝国のほうが格好いいですし(笑)。
内藤氏:
僕は同盟派ですね,好きなキャラクターは,あえてヤンです。同盟のお祭り感があって,自由奔放なキャラクターも多く,自分が所属すると考えたら同盟のヤン配下がいいですね。
4Gamer:
そうした,個性豊かなキャラクター達で自分の艦隊を編成できるのも,本作の醍醐味ですね。同盟縛りで編成しようとすると地味になって,帝国の華やかさには叶わないのですが(笑。キャラクターの個性という点では,声付きのキャラクターも増えると嬉しいですね。
油家氏:
増やしていきたい気持ちはあります。ボイスは完全に新規収録になっていまして,現状ですとアニメ版のキャスティングにこだわってますので,全員というわけにはいかなそうなんですね。
市山氏:
実はストーリー中では声付きでしゃべるけど仲間になる将兵にはなっていないキャラクターもいて,誰かは伏せておきますが,そう遠くない時期に登場することになります。
4Gamer:
同盟のなかでも人気の高い,伊達と酔狂の方……でしょうか?
市山氏:
秘密ということでお願いします(笑)。
油家氏:
キャラクターに関しては,原作であまり活躍しなかったような人物でも,登場させてほしいというご意見をいただいています。ですので,有名無名問わず,できるだけ大勢のキャラクターを登場させたいなと考えています。
4Gamer:
システム面についても何点かお聞きしたいのですが,ちょっと画面が小さくて操作しにくいかなと感じました。
市山氏:
プレイヤーの皆様からもそういったご意見をいただいています。作り始めたときには標準的な大きさだったのですが,開発の遅れもあって最近の大画面化されたゲームと比べると小さく見えてしまいますよね。対応については工数的な兼ね合いもあって,後回しにせざるをえない状況なのですが,前向きに対策を考えていきます。
4Gamer:
あと,一定時間将兵を探索に送り出す「出兵」という要素で,個人的なのですが失敗続きでどういう仕組みになっているのか気になっているんですよ。
油家氏:
えーと,ちょっと難しくしすぎたのかもしれません。基本的に,強い将兵を副官まで設定して送り出せば成功するようにしたのですが,サブといいますか,育っていない将兵で出兵すると失敗になるケースが多くなってしまいます。
4Gamer:
なるほど。まだ育っている将兵が少ないこともあって,確かに育っていない将兵で出兵してました。細かいところなんですが,出兵後,報告書を読まないと将兵の体力が回復しないのも気になりました。
油家氏:
確かに,そうしたご意見も多くいただいていて,現在検討しています。
4Gamer:
ついでに戦艦の「建造」についても聞きたいのですが,プレイヤーはブリュンヒルトやユリシーズなど名のある戦艦が欲しいと考えていると思いますが……なかなか作れないですよね(笑)。建造時のレシピといいますか,よい戦艦を作るコツがあれば教えてください。
油家氏:
まだまだ有名な戦艦を持っている方は一握りですね。決め打ちのレシピではなく,なるべく多くの資材を投入して,帝国同盟それぞれのレア素材を入れれば,その勢力の強い戦艦が手に入るような仕組みです。
4Gamer:
意外と単純だったんですね。どの素材を何割とか細かく決まっているのかと思ってました。
油家氏:
そもそも資材が集まりにくいということもありますが,帝国と同盟とに分かれていることも分かりにくい要因だったかもしれません。戦艦を入手しやすいイベントも考えています。
4Gamer:
話がちょっとそれてしまうのですが,ローディング画面で銀河英雄伝説の名言が表示されますよね。個人的には良いアイデアだなと思いました。
油家氏:
原作自体名言に溢れているので,ファンに少しでもニヤリとできるような要素を入れたいと考えて導入しました。おかげさまで評判は上々です。なかには,これは名言か? と思えるような吐き捨てるようなセリフもあったりするのですが(笑)。
帝国と同盟の対立を描く新しいコンテンツが今年の春に登場
4Gamer:
それでは,今後の展開についてお聞きしていきます。シミュレーションパートが軸になるという話でしたが,これから本作はどのように進化していきますか?
油家氏:
軸は崩さず,シミュレーションパートが活きるような機能を追加してより遊びやすくしていく予定です。同時に,マップや新規キャラクターの追加といったボリュームアップのアップデートも行っていきます。
4Gamer:
分かりました。何度か期間限定イベントも行われていますが,これは今後も続いていきますか。
油家氏:
定期的に行っていきます。期間限定だからこそ楽しめるシステムやシナリオをご提供するつもりです。
4Gamer:
新しいコンテンツの追加は考えていますか? 例えばオンラインの機能を使ったPvPなどはどうでしょうか。
油家氏:
PvPも検討はしているのですが,入れるかどうかはプレイヤーの皆さんの意見をもう少し聞く必要があるかなと思ってます。その前に,先ほど話した帝国VS.同盟の構図を使ったコンテンツを入れる予定です。幸いなことに,陣営の人口比が拮抗していますので,なにか面白い仕掛けを用意したいですね。
4Gamer:
帝国VS.同盟のコンテンツは,直接プレイヤー同士が戦うのではなく,ポイントを競うような形になるのでしょうか?
油家氏:
まだ具体的に決まっているわけではないのですが,プレイヤーそれぞれの戦った結果が陣営に影響を与えて,そのトータルで陣営同士が争うといったイメージになります。いずれにせよ,まずは地固めといいますか,いまある機能をしっかりと遊びやすくしたうえで,コンテンツの拡充を行う必要があると思います。
4Gamer:
「出撃」コマンドの中に,まだ開放されていないコンテンツが一つありましたが,ここにその帝国VS同盟が入る感じですか?
市山氏:
そうなります。
4Gamer:
では,シミュレーションパートの「作戦」同様に大きなコンテンツになりそうですね。導入時期はいつ頃になりそうですか?
市山氏:
そう遠くない時期,そうですね……今年の春にはお届けしたいです。
4Gamer:
春には新機軸になりそうな,銀河英雄伝説らしいコンテンツが追加されるということで,楽しみにしています。ほかにこの機会にプレイヤーに伝えておきたいことなどはありますか。
市山氏:
新コンテンツによりアクセスが集中することを想定して,サーバーの負荷対策も万全を期して行っていますので,そこはご安心ください。あと,ユーザーインタフェースもまだまだ満足できる段階に至っていないので,バージョンアップをしていきたいですね。
4Gamer:
分かりました。では最後に銀河英雄伝説タクティクスを楽しんでいる,またこれから始めようと思っている方にメッセージをお願いします。
油家氏:
プレイヤーの皆様からご意見で気づくことも多く,我々としてもまだ満足できる状態ではありません。これからもっと遊びやすく改良を重ねて,銀河英雄伝説という素晴らしい題材を扱った本作を,多くの人にプレイしていただけるようにしてきます。
市山氏:
皆様の厳しい声は届いています。できることとできないことはありますが,まずはできることから実装していき,技術的に難しいことは代案になるような方策を考えていきたいと思います。今後とも銀河英雄伝説タクティクスをよろしくお願いします。
内藤氏:
デザイン部門としては,原作ファンの方々に満足してもらえるような良いキャラクターを追加していきます。あとユーザーインタフェースの利便性を上げ,見ただけで操作方法が分かるように改修していきたいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「銀河英雄伝説タクティクス」公式サイト
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