連載
【山本一郎】「信長の野望・創造 with パワーアップキット」プレイレポート――輝け! 魂の姉小路家!〜夢の幕府開闢篇〜
山本一郎 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家
山本一郎:茹で蛙たちの最後の晩餐 |
山本一郎です。
何ということでしょう,この「信長の野望・創造 with パワーアップキット」(PC / PS4 / PS3 / PS Vita)のプレイレポートですが,前編の公開から早くも一年が経過してしまいました。月日の流れるのは早いもので,つい昨日のように思い出されます。嘘だけど。
その間,コーエーテクモさんからは「三國志13」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One)と,この「信長の野望・創造」の精神を引き継ぐ「信長の野望・創造 戦国立志伝」(PC / PS4 / PS3 / PS Vita)が発表になっていました。おお,なんということだ,なんということだ。私は思わずSteamで衝動買いしてしまった「信長の野望・天翔記 with パワーアップキット HD Version」(PC / PS Vita)で延々と遊んでいたというのに。楽しいし音楽がいいよね天翔記。別にサボってたわけじゃないんですけど,原稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。もうしません。
日吉の方角へ向かって存分に土下座したところで,改めてお送りするのは「信長の野望・創造」プレイレポート後編であります。前編,中編も併せて是非お楽しみください。
■前編:輝け! 魂の姉小路家!〜風雲嫁取り篇〜
■中編:輝け! 魂の姉小路家!〜怒涛の勢力拡大篇〜
「信長の野望・創造 with パワーアップキット」公式サイト
<あらすじ>
どのシナリオ,どんな難度でも必ず早期滅亡を運命づけられている,「信長の野望」の歴史に燦然と輝く弱小大名,飛騨・姉小路家。そんな零細でも勇気と希望と技術で生き残るべく,いま立ち上がる! 後ろ盾と恃む織田信長さん(通称「ノビー」)との政略結婚でやってきたスーパー奥さん・織田葵女史(通称「葵ちゃん」)と,ぐうたら長男で後継者の頼綱を二枚看板に,周辺大名を飲み込み北陸の戦国大名として名乗りを上げる姉小路良頼。
姉小路家で飛騨に幕府を開くという想いを長男頼綱に託し,志半ばで良頼パパは泉下の人となるが,遺志を受け継ぐ頼綱は,葵ちゃんは,姉小路家はどうなるのか…?
戦国大名・姉小路頼綱事始
「素敵な笑顔」がチャームポイントの当主・姉小路頼綱,父・良頼パパの遺志を受け継ぎ,さらなる版図の拡大を目指し準備に余念がありません。が,時間が経つほどに,北陸を本拠とする姉小路家と関東の北条家とは人口差が開いていきます。一応,富山城や七尾城,御山御坊に本拠地・松倉城といった本城こそ抱えているものの,周辺の城郭の規模で北条家に大きく劣り,そればかりか,里見家や結城家,佐竹家を喰って太り,さらに越後上杉家との戦いに勝利した北条家の領土拡大をもはや止められる者はいません。
そんな北条家を囲むように,周辺大名の伊達家,かつての敵・上杉家,さらに東海の雄となった政略結婚同盟国の徳川家と示し合わせ,当主・頼綱は決戦を急ぎます。抱えている武将の質は,長年の戦いの成果もあって,猛将兼女房の葵ちゃんや,娘を嫁がせ一門衆となった岡佐内,斎藤利三,果ては武田勝頼と,稲葉一鉄など斎藤家,武田家遺臣団という,姉小路家にはもったいないような武将がキラキラしている状態です。
また,北条家との戦いで姉小路家が有利な点は,背中に盟友・織田家を抱え,義父ノビーが控えている限り,越前,加賀,能登,越中,飛騨と豊かな後背地を擁し,太い道路で結ばれていること。北条家との戦いの鍵は,この補給地域からの大量輸送で,足りない兵力を前線で補いながら戦えるかどうかにかかっていると,当主・頼綱は考えていたのです。
そして,訪れる1591年9月の終わり……まもなく本格的な白い雪が飛騨の山々を覆うころ,先に頼んだはずのラーメンが後から来た北条家に先に出されたかどで姉小路家,北条家の間で紛争が勃発。第二次対北条戦が開始されます。ついに織田政権の一角,姉小路・徳川連合軍と北条軍の間で戦争が始まったのです。相手にとって不足はありません。
機先を制しようとする北条軍を,甲斐国最前線で受け止めるのは姉小路家が誇る超奥様葵ちゃん。ヤバい性能の武田桐女史や山県昌景さんら,武田家の列将も前線に立って北条家10万の大軍を迎え撃ちます。
戦いだ!
戦端が開かれ,陣地で守る姉小路家3万6000の軍勢を助けるべく,後背地から当主・頼綱を中心に14万の姉小路軍が北信濃,甲斐両方面から北条領に雪崩れ込みます。さらには,徳川家の手勢6万2000が北条家居城小田原城へ,上杉家約4万は上野厩橋城へ,南部家との抗争に勝利し東北をほぼ平定した伊達家が手勢3万4000を率い北条氏直さんが守る結城城へと襲い掛かっていきます。さすがに強大な北条と言えど,この包囲網を簡単に捌くことはできまい。進軍を命ずる当主・頼綱の顔には,余裕の笑顔さえもが零れ落ちます。むしろ,敵は味方……すなわち,同盟国であり協調するべき仲間である徳川家,上杉家,伊達家が北条家を早期に刈り取りすぎて,姉小路の取るべき領土が減ったらどうしよう,と憂えるばかりです。
進め! 進め! 進め!! 当主・頼綱は,腕が千切れんばかりに全軍に進撃を指示し,周囲から攻め立てられ戦線を後退させる北条軍部隊を,次,また次と包囲し,壊滅させていきます。関東平野の玄関口にあたる八王子城,河越城を攻略すると,上杉軍主力が北条家と盛んに揉み合っているのを横目で見ながら,一路,江戸城を目指します。お前らはいつまでも殴り合って消耗していてほしい。そして,一度補給に戻った葵ちゃん隊と合流した当主・頼綱は,短く夫婦の情愛を確かめると,兵員の補充のため,戦線を後にします。
これは勝てる。北条家,何するものぞ。
いつしか,姉小路家は打倒北条家の博打から,楽勝ムード漂う掃討戦へと楽観視するようになっていったのです。
歴史はまたも本能寺で動く
しかし… 山の天気は変わりやすいことを,飛騨民は忘れてはなりませんでした。富山城に戻り,当主・頼綱がそろそろ咲き始める桜のつぼみを目にするころ,事件は起こります。
……は? ちょっと,そこのミッチー! 何を言っちゃってるの。変なの? 本能寺の変なの?? やーめーてー! |
ねえ! そこのノビー!! お義父さーん! なーに油断ぶっこいてるんすか!! 勘弁してくださいよ! まーじーでー! |
えーーーっ! 本能寺の変,起きるのーーーっ!!!!?
ノビーーーー!!!
突然始まったイベントを見て,ディスプレイの前で絶叫した私はのめり込みすぎでしょうか。このとき,ちょうど私は42歳の誕生日を迎えたばかりでした。いい歳して何をしているのでしょう。正直30回以上は姉小路家でプレイしていますが,今回を含めて2回という超レアな事態で,特定の条件で発動すると見られる本能寺の変がシナリオ冒頭ではないタイミングで発生してしまいました。っていうか,何無断で横死してんすかお義父さん!
「是非もなし」とこともなげに述べ,その野望を本能寺の炎の中へ潰えさせられた織田信長の無念とは別の悲しい感情を抱かずにはいられません。マジか……ノビーと一緒なら,たとえ姉小路幕府は開けなくともゲームを終えていいとまで思っていたのに。織田政権の一角として,息女葵ちゃんの傍にある姉小路頼綱が織田家家老として権勢を奮って良しというゲームエンドさえ考えていたのに。
ただ,ノビーが亡くなったということは,姉小路家に天下が転がり込んでくる可能性も出てきたと言えるわけですが,そんな緩い妄想を抱き続けられるほど現実は甘くはありませんでした。
突然織田家が明智家,柴田家,羽柴家とかいう聞いたことのない勢力に分割されて,安心して後背地と思っていた越前能登越中飛騨が一気に火薬庫に。何故だ!! |
いきなり攻め込まれるとマジ終了なため,茶器でも郵送して明智家にご様子伺いをする当主頼綱。ところが外交が始まる前にいきなり姉小路討伐の軍を興され攻め込まれて台無しに。ほげえええええ |
やべえよやべえよ……興隆を誇った織田家は織田信雄,柴田勝家,羽柴秀吉,そして明智光秀(通称「ミッチー」)各家老メンの領地に分割され,姉小路家と織田家の政略結婚による同盟関係はいきなり解消されてしまいました。
そして,最前線に全兵力を送り出し,後背の生産地として無防備に新設明智家と柴田家の隣に置かれる越前,加賀,能登,そして越中。酷い。歴史が酷すぎる。どういうことなの。
即座に,もう毎月の評定の画面に移るとすぐに,姉小路家の名外交官・前田玄以さんを使者とするミッチー向け外交を指示,それと同時に郵パックで丁寧に梱包された茶器がミッチーに送られ,ご機嫌伺いを光の速さで行おうとする当主・頼綱。実父を殺され,家内葵ちゃんは怒り心頭かもしれないけど,そこは感情じゃないのよ……勝てないのだ,いまミッチーに後背地攻め込まれると。頼むミッチー,1か月待って。北条家倒したら相手にしてあげるからさ。ほら。
いきなり明智勢に攻められてボッコボコにされる加賀姉小路軍。全部北条戦に突っ込むために山を越えて出払っちゃってるんですよね…… |
慌てて軍を返し救援に向かうも,逆に近畿地域特有のでかい城から繰り出される潤沢な兵士数に蹂躙されて後退を余儀なくされる姉小路家。マジヤバイ |
しかし,そんな甘い期待は秒速1億稼ぐスピードで裏切られ,評定が終わり月が始まるや否や,ミッチーがいきなり姉小路討伐の軍勢を立ち上げます。ああ,外交努力が水の泡に。北近江から,美濃から,約7万というけったいな規模の軍勢で,越前や飛騨に迫ります。死ぬ。これは死ぬ。本城の軍勢は対北条戦に出払ってほとんどおらず,保険のために建設しておいた野戦陣に数千規模の支城兵が篭るのみです。後背地から明智勢に食い破られ,姉小路家は緊急事態に陥ります。
わずかに若狭,北近江に城を構えた柴田軍が明智勢にあっという間に蒸発させられ,たった2か月の間に降伏に追い込まれると,次はお前だとばかりにミッチー本隊が越前に殺到します。その数,さらに増えて9万6000。やめて。マジやめて。迎え撃つ姉小路家次女・妹の円女史はわずかに2000。野戦することもあたわず,援軍らしい援軍も送れないうちに,明智勢の水も漏らさぬよう分厚く包囲された城からの突破を図った円女史の手勢は,寡衆敵せず散々に打ち破られてしまいます。後背地の内政を任された円女史は,思いもよらぬ戦渦に巻き込まれ,持ち前の壮絶な咆哮を見せながらも敵兵に斬られ,その屍を戦場に晒すことになってしまいました。
ただ,これは姉小路家にとって悲運の始まりに過ぎなかったのです。
なぜか織田信雄軍が徳川勢を蹴散らし,徳川領で包囲殲滅にかかっている。徳川家に援軍を送り持ち直してもらわないとどうにもならないのだが,友軍がみすみすやられるのを見ているほかない |
山城(京都)付近は羽柴勢と明智勢とで競り合いが激化して大混戦。ガラシャ女史も大軍を率いて明智軍の一員として大奮戦しているのを見て,なぜか涙が止まらない。 |
姉小路家に迫る滅亡の危機
北条家との前線を守っていた軍勢も,上杉・伊達連合軍との合戦に大勝したと見られる北条軍からの反攻に晒され,危機に陥ります。北条軍,強い。その一言に尽きます。上杉家の前線が崩壊すると,北条軍は次々と上杉家の城を落とし,姉小路家の北信濃まで手を伸ばそうかという勢いになってしまいます。これは拙い。
時を同じくして,姉小路家良頼パパと共にその成長を支えてきた江馬輝盛(通称「テリー」)も,北条軍の猛攻の前に敢闘及ばず陣を枕に敗死。慌てて再編成した女婿・岡左内さんの春日山城の軍勢は,北信濃からの侵入を図る北条軍の抑止で精一杯の状況です。そればかりか,小田原城から出た北条の軍勢が徳川軍の攻撃をも簡単に跳ね返し,危地に立つ姉小路家だけでなく,上杉・伊達・徳川各大名を敵に回して大奮戦しています。おまけに,どういう理由かあっという間に明智家と講和した尾張伊勢の織田信雄軍が,留守になった徳川家の三河岡崎城をちゃっかり攻略しているじゃないですか。
前線の崩壊危機に見舞われた姉小路家は,再編成のために戦線を後退させ,ノビー死亡から1か月を待たず早期の甲斐放棄を決断します。正直これは持ちこたえられん。ところが,春日山城岡左内隊を押し返した北条軍は,撤退のスピードを上回る想像以上の勢いで北信濃に侵入。北条軍,その数合計14万4000。補給が追いつかず劣勢著しい姉小路勢の支城を次々と陥落させていきます。
さすがに姉小路家滅亡も覚悟した美濃方面からの明智軍侵攻。回せる兵がないんだ,兵が |
ついに,先代・良頼パパの眠る桜洞城にも明智軍の攻勢に脅かされる。総勢44000の敵軍を迎え撃つのは7,000の姉小路軍。もちろん援軍は来ない |
そして,葵ちゃんと一門衆・斎藤利三隊を殿軍に甲斐から北信濃方面へ後退する姉小路勢の退路を,美濃から侵攻してきた岐阜城の明智軍4万4000が塞いでしまいます。前方から迫る北条軍14万に挟まれ,逃げ場のなくなった斎藤隊は身動きの取れないまま壊滅の憂き目に遭い,姉小路家隊士総勢1万2000は善戦むなしく全滅。北信濃,甲斐を北条軍に,南信濃を明智軍に攻め込まれた姉小路軍の前線は完全に崩壊し,対北条戦は,予想外のノビー暗殺により一敗地にまみれてしまいます。
そればかりか,北条軍の電撃反攻の前に多くの将兵を失い,前線を預かる葵ちゃん隊は退路を絶たれ孤立。完全に追い込まれて,わずかな手勢のみ率いて高遠城での篭城を強いられます。
当主・頼綱も,必死に防戦に打って出ますが,明智軍を退けても退けても沸いて出るように侵攻してくる近江,大和方面からの軍勢に押され,ついには加賀御山御坊をもうかがうところまで侵略を許し,風前の灯火となります。敵にわざと城を包囲させては横から挟撃するなどして時間を稼ぐのに精一杯です。葵ちゃんの篭る高遠城に送れる援軍など一兵もありません。何とか,凌いでくれ。祈る気持ちさえも,各所での劣勢を伝える伝令の悲痛な報告にかき消されます。どうにもならん。
姉小路家二代にわたって積み上げてきた領土は,瞬く間に明智家,北条家,織田家信雄の企図しない連携に食い破られ,蒸発するように,また何もできぬうちに喪失していきます。完璧な外交で強大な北条家を包囲したはずが,逆に包囲されて存亡の危機に陥った姉小路家に残された手段はほとんどありません。
そして飛騨に桜の咲くころ。北条軍8万の大軍に包囲された高遠城は強攻で激しく攻め立てられて,無残にも陥落。一縷の望みを抱いて篭城していた葵ちゃんは……抵抗むなしく北条軍に引っ立てられて,ほしいまま暴虐をふるう北条家の兇刃の前に斃れます。正確には,ゲーム中,捕虜として連れて行かれた連絡ののち,そのままたった一行,ダイアログが出てその死亡が伝えられるのみです。悲しくも味気ない,しかし重く厳しい戦国時代を想像させる最期。夫婦の二人三脚で姉小路幕府の夢を見た葵ちゃんの野望が潰えると,姉小路家は火が消えたように南信濃,北信濃のすべてを失ってしまいます。また,春日山城も北条軍の前に叩き潰されて,越中・越後間で魚津城付近の要衝を頼みに寡兵の岡左内隊が少しでも時間を稼ぐべく陣取っている状態です。
怒り。そして,慟哭。言葉にもならない喪失感が,姉小路家を襲います。当主頼綱も半身をもがれるような辛い思いをひきずりつつ,失った戦力の建て直しを模索しますが,こればかりは技巧ではどうにもなりません。敵はざっと8倍。小手先の戦術では支えきれないのも道理です。
「戦いは数だよ兄貴」と嘯く時間もないぐらい北条家の侵攻スピードは速く,強い。すぐさま,伝令が北条家の江戸城から出立した総勢5万5000が姉小路家の居城・飛騨松倉城に向かったと伝えます。うげえ,ちょっと待った。南信濃を経由すれば,むき出しの飛騨本城である松倉城はすぐ隣です。本丸が落ちる,本丸が。姉小路家発祥の地が,危機に晒されています。
急ぎ,要所に防御用の陣を立て,緊急事態に備えるも,その防御用に立て篭もるべき戦力をもった部隊を用意できないという惨状。兵力豊富な北条軍の総勢はさらに増えておよそ15万6000,さらには明智軍も11万2000,対する姉小路勢はかき集めても3万8000。改めて近畿と関東平野の大正義っぷりを肌で感じる刺激的な体験であります。南信濃と飛騨の間に建設した陣に1200の兵で立て篭った姉小路家宿将の内ヶ島氏理さん(通称「ウッチー」)が北条家の大軍に包囲されて文字通り陣ごと轢き殺されて討ち取られると,もはや稼げる時間もそう多くは残されていません。
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