連載
【山本一郎】「信長の野望・創造 with パワーアップキット」プレイレポート――輝け! 魂の姉小路家!〜怒涛の勢力拡大篇〜
山岳国家のプライドをかけ武田家と雌雄を決する
越前若狭北近江。ここで織田家と隣接して,後顧の憂いがなくなりました。織田家のことですから,そう簡単にこの地が敵に蹂躙されるとも思えません。ここは安全地帯の後背地として素晴らしい生産拠点,補給基地になってくれることでしょう。姉小路家は飛騨から出でて,いまや立派な織田政権の一角。能登,越中,加賀,越前を領する堂々たる戦国大名として,上杉家,武田家と並び称されるところまで成長を遂げました。
しかし,良頼パパは満足し頬を緩めることはしません。次こそ,武田家とは真の決着をつけなければならないと踏んでいるからです。今川家に押される友邦・徳川家に対し,織田家と共に援軍を送りつつ,内政を固め,物資を積み上げて補給できる体制を築き上げます。戦争は物量です。時代はまさにバブル景気継続中,各城の城下町では各種施設や城郭が次々と建設され,街道も土木工事による国土強靭化計画が着々と進み地方創生が実行されます。飛騨平均株価は2万円を突破する勢いであります。などと,せっせと内政をしておりましたところ,武田北条連合軍が上杉家のいる越後にまた攻め込んでいくではありませんか。
ゲーム開始当初ならともかく,すでに人口差のついている強力な北条軍を上杉軍は捌き切れず,上杉謙信以下,各武将が善戦するも後退。さらに武田軍が根知城方面からも進軍して,上杉家の重要拠点である春日山城に迫る勢いとなり,上杉家大ピンチであります。上杉ざまああああああ!
……いや待てよ。良頼パパは黙考します。ここでうっかり上杉家に滅ばれると,武田家や北条家を牽制する有力大名はひとつ減ってしまう。しかも,そこそこ豊かな越後を食って,武田北条両家は国力アップです。しかしながら,上杉家が健在すぎると,武田家北条家と講和したとたんに越中に出稼ぎにやってくるかもしれない。上杉家と武田家北条家には,いつまでも全力で元気に殴り合っていてほしい。でも,このまま放っておくと上杉家は武田家に飲み込まれてしまう……。
これはつまり,我が姉小路家が,どさくさに紛れて上杉家最大の拠点である春日山城を先に攻略してしまえばいいってことなんじゃないか。武田家に春日山城をくれてやるぐらいなら,上杉家が滅ばない程度に,しかし脅威にならないぐらいに痛めつけて,それでいて対北条家の一角にはなるという按配にコントロールするのが最良の策ではないかと考えるわけです。
本願寺,朝倉家討伐から1年。良頼パパの拳がうなります。
「兵を挙げろ!」
再び桜が咲くころ,姉小路軍は舞い散る花びらを踏みしめるように一路春日山城へ向かっていきます。なんかかっこいい。向こうの街道では,上杉軍と武田軍が真正面から懸命にぶつかり合って混戦となっており,そこへどちらの味方でもない姉小路の大軍が迫るという大乱戦となります。桜をバックにしたCHO☆NAN頼綱。彼の素敵な笑顔が晴れやかに見えるのは初めてです。何しろこれほど強大な野次馬の軍勢はあまり経験がありません。
プレイヤーとしても,とりあえず何だか分からないけど平押しに押して,武田軍を蹴散らし,また抵抗する上杉軍を排除し春日山城を包囲します。そこから2か月の攻防の末についに春日山城を攻め落とすと,その直後に伊達家から「お前よお,上杉さん滅ぶと北条包囲網が成り立たないからやめてくんない?」と和睦の仲介が。何という絶妙なタイミング。春日山城は返さないけど,もちろん応諾。ありがとう伊達。フォーエバー伊達。伊達ちゃん愛してるよ。
近隣の迷惑大名,上杉家が脅威でなくなった今,姉小路家は武田家との決戦に駒を進めます。もう絶対に許さんぞ武田。登山家のプライドにかけても葬り去ってやる。良頼パパは決意を新たにするのでありました。
戦を前にして,素敵な笑顔のCHO☆NAN頼綱の命を受け,姉小路家の間諜が山をまたぎます。ちらほらと武田軍の状況を見ておりますと,上杉家の必死の抵抗で削れていた兵数が回復するまでには3か月ほど。まずまず整備されている街道の状況を見ると,援軍は多数やってくる状況のようです。
しかも,なぜか武田信玄さんには,ぐう有能な雪女史・桐女史とかいう姫が2人おり,葵ちゃんを凌ぐほどの武勇の持ち主です。何ですか,このモビルスーツの性能の違いがもたらす圧倒的な戦力差は。武田信玄さんのDNAを色濃く受け継ぎすぎで,良頼パパ正直マイッチング(死語:知らない若者はレッツ検索)。おーおうおうおー DeNAベイスターズ。真正面から戦って勝てる気がしません。もともと勝てる気のしなかった上杉家と互角にやり合ってきた武田家ですから,当たり前と言えば当たり前なんですが,強いなあ。
故・武田信玄の娘の一人,雪女史。我らが葵ちゃんをも上回る戦闘能力で立ち塞がり,姉小路家一同が震撼します。いくらなんでも強すぎんだろ…… |
さらに信玄の遺児,桐女史。もはやDeNAベイスターズ状態。有力大名の娘が軒並み化け物なのは仕方のないことなのでしょうか |
武田家攻略の方法を考えあぐねる良頼パパ,そこへ重大な一報がもたらされます。まさかの武田信玄さんの訃報が。何ということでしょう,すごいタイミングです。一国の主柱たる偉大な大名が鬼籍に入るとき,それはいかに強大な大名家といえど,崩壊危機になりかねない一大事となるのは当然のことです。武田信玄にアフロを贈りそびれるも,偉大なライバルの死に良頼パパは心を痛めます。時代が時代なら,共に酒を飲み世界を語り合ったかもしれない偉大な人物だったのに。
でもさ,これって姉小路的には大チャンスじゃない? 柔和な表情の奥から畜生の光を瞳に宿した良頼パパは,好機到来とばかりにこの武田信玄さんの死を姉小路のさらなる飛躍の秋(とき)とすべく策を練ります。
ある日。新たに娘婿・岡左内さんを城主としたものの,どこかへ岡左内さんが出陣したためガラ空きとなる春日山城。その留守を狙いに,武田家を継いだばかりの武田勝頼さん(通称「ジュニア」)は姉小路討伐の軍を起こします。きっと一家を取りまとめるためには戦勝が必要なのでしょう。実際には敵の手薄を見たAIが勝手に兵を挙げただけかもしれませんが,そこは脳内補完で。
そんな武田軍の大軍が春日山城に迫るタイミングを見計らって,織田家と背中合わせとなっている安全な後背地たる加賀,越前,能登から,長女・錦女史ほか姉小路各将が仕立てた軍勢が。さらに覆い被さるように越中本城の富山城から葵ちゃんが出陣し,飛騨本城松倉城からはCHO☆NAN頼綱が留守になった南信濃各城に殺到します。
格下・姉小路家のまさかの反攻を知り,取って返す武田ジュニア軍。しかし春日山城に戻ってきた岡左内隊,加えて越中から迂回してきた姉小路家宿将・江馬輝盛隊が南下。加えて,春日山城を奪っておきながら姉小路家の都合で関係改善が進んでいた上杉家も,姉小路家の援軍要請に応じて失った越後各城を取り返そうと兵を起こします。さらに今川家からの圧迫を凌いだ徳川家に使者を送って武田家の城の攻略を依頼し,武田家の前線は瞬く間に追いやられていきます。はっはっは,愚かなり勝頼。同タイミングで一気に前線を崩壊させる,その名も姉小路名物「居留守大カウンター」戦法だ!
精強で鳴る武田家も,各家が示し合わせて流し込んでくる攻撃の前に戦力は寸断され,殲滅されていきます。いかに優れた武将に率いられた軍勢であろうとも,計算された火力集中運用の前には力を発揮できず,次から次へと武将は生け捕りにされ,城を落とされていくのです。ジュニアはほうほうの体で甲斐へと逃げ帰って,対武田戦序盤は姉小路軍の勝利といったところでしょうか。
「押し潰せ!」
武田軍の虚を突き,兵力優勢圏の北信濃,南信濃にはいずれも姉小路家の旗がひるがえります。電撃カウンターで信濃を完全に掌中に収め,湧き立つ姉小路家中。目安箱には「【朗報】武田家が弱い!」というスレが30個ぐらい立っている状態です。さらに稲葉一鉄隊,斎藤利三隊,畠山政繁隊を中心に波状攻撃を仕掛けて武田領の奥地に侵攻。姉小路後背地の軍勢もたまり次第どんどん組成して前線に送り込まれるという,徴兵列車さながらの総動員体制へとシフトします。
しかし,武田家も後退した軍勢をジュニア筆頭に再編し,さらに甲相駿三国同盟の長たる北条家が,武田家を支えるために4万とか5万とかすんげー量の軍勢を加勢に送ってくるじゃないですか。困るんだなあ,そういうの。
やがて南信濃と甲斐国境付近で姉小路軍の攻勢限界点を迎え,戦局は膠着状態に陥ってしまいます。姉小路軍はがんばって攻めて,落とせなさそうな城は包囲して焼いたり,手薄な城を作って敵軍を誘導して囲んで殲滅したりといった地味な技巧を繰り出して何とか少しでも前へ進撃し,武田家の攻略に血道を挙げていきます。遠く伊達家,最上家にも書状を送り,北条家討伐の兵を起してもらうも,ラスボス北条家はビクともしません。
ここまで攻めたからには,少なくとも武田家を滅ぼせるところまで押し込まないと後が続かなくなります。しかし,無尽蔵ともいえる北条家からの援軍が次々と甲斐にやってくる状況では,戦術の粋を尽くしても決定的な勝利を収めるまでには至りません。北条家,ヤバイ。遠く桜洞城から,偵察衛星からの映像で前線を見つめる良頼パパの握られた両手が,しっとりとした汗に包まれていきます。
蓄えた友好度を肴に,上杉家からの援軍を北条家にぶつけ時間を稼ぎ,その間に武田家へ襲い掛かる姉小路家。さらに徳川家へ武田家&今川家に攻略を求める使者を送り,東部戦線は総力戦の様相を呈することに |
頑強な抵抗に遭いつつも,丁寧に丁寧に武田家の城をひとつずつ落としていきます。信長の野望中盤の山場は,この中堅勢力同士の叩き合いにあります |
そして,山岳国家における関が原ともワーテルローとも呼ばれる,高遠城の戦いが勃発。武田勝頼,北条氏直が率いる6万2000の連合軍と,織田葵ちゃんを総大将とする3万7000の姉小路軍が,真正面から対決することに。本当は迂回したいんだけどさあ,南信濃から甲斐に向かう道路がここしかないから渋滞しちゃうんだよね。
数が少なく,武将の性能も劣る姉小路軍は,ぶつかり合い緒戦の損害を受け止めきれず稲葉一鉄隊をしんがりに後退。その間,稲葉隊追撃のため前線に突出した北条軍を横合いから畠山政繁隊と斎藤利三隊が取り囲んで叩き潰します。両軍の押し合い引き合い,細い山あいの街道で両軍列になって合戦は続きます。
数で劣る姉小路軍――その勝利の秘策は,この時間をかけた合戦にありました。敵は大量の兵数を同時に運用して,細い街道に部隊が渋滞している一方,兵数の少ない姉小路家はローテーションを組み,豊かな後背地から回復した部隊を順番に前線に送り込んで,受けた損害と同数以上の前線兵力を確保する戦術に出ます。兵数でも質も劣っても,戦場の選択が合理的であれば互角以上の戦いができる。それもこれも,織田家を背中に飛騨,越前,加賀,能登,越中と豊かな補給地点を用意できているからこそです。ノビーさま,今後ともよろしくお願い申し上げます。
補充の終わった松倉城・CHO☆NAN頼綱の部隊1万2000が前線に到達すると,姉小路家は一気に攻勢に出ます。越後から攻めてきた春日山城・岡佐内隊と能登七尾城・斎藤利三隊が後退するのを追撃しようと,ジュニア勝頼率いる武田勢が突出。その部隊を越中富山城・葵ちゃん隊,CHO☆NAN頼綱隊と,迂回した次女・円隊以下,支城から来た有象無象の皆さんで取り囲んでフルボッコにするのであります。挟撃されて退路もなく大損害を蒙って崩壊していく武田軍。後方から北条勢が救援に向かうも道中に現れた畠山政繁隊に阻まれ,また戦地の後方に姉小路軍の陣が突然完成するなどの戦術を見破れずに武田北条連合軍は崩壊。誰だよ敵の真ん中に陣建設したの。そのままの勢いで甲斐国本城躑躅ヶ崎館まで姉小路家の侵攻を許してしまいます。
見ろ,大山岳戦の勝利だ! ひとつの大戦闘に5か月ぐらいかかっているけど気にしない。
さらに北条家が2万の軍勢を甲斐防衛に送り込んできますが,姉小路家も加賀・御山御坊からの援軍が間に合い,対北条戦線が膠着している間にひとつ,またひとつ甲斐の各城を落としていきます。最後の抵抗,宿敵とも言える武田雪隊,さらに武田桐隊を葵ちゃんが女同士の戦いの果てに制し,壊滅に追い込んで,ついにジュニア勝頼の篭る最後の城,甲斐・富士吉田城を包囲します。
いける。これはいける。もはや山岳王の座を争ったライバル武田家も風前の灯。補給線が完全に伸び切った姉小路家も,必死に部隊をローテーション。最後のひと踏ん張りであります。
どうにか武田家の本拠地,本城躑躅ヶ崎館付近まで到達。しかし,ここからさらに1年近い攻防が続きます |
伸び切る補給線。攻勢限界点はとっくに来ているが,もうこればかりはやめられません,勝つまでは……後から思うと,これが油断に,そして敗勢へとつながるわけですね |
そして,刀折れ矢尽きたジュニア勝頼も激しい攻防の末に陥落。ここに,戦国時代の中心であり続けた武田家は滅亡のときを迎えたのでありました。亡父から国を受け継ぎ,混乱の中でも最高の戦いを見せてくれたジュニア勝頼。敵ながら,ナイス奮闘であります。その若武者の肩をも良頼パパは暖かく抱きかかえ,夕日をバックに抱き締めて広い心で迎え入れるのでありました。戦いの中にこそ,真の友情があり,尊敬があることを,戦いの日々の中で良頼パパも,ジュニア勝頼も胸に刻んだのでありましょう。
そればかりか,帰順したジュニア勝頼のその類稀な軍事の才能を見込んだ良頼パパは,勝頼に我が娘,三女・歌を嫁がせて一門衆に迎え入れます。我が娘,不肖にして「気勢崩し」するのであり,それを真正面から受け止められる逸材はジュニア勝頼をおいてあるまい。娘の幸せと姉小路家の発展,そして何よりも領民の幸せと安全を願う良頼パパにとって,武田信玄亡き後ここまで姉小路家を苦しめたジュニア勝頼もまた,この狂った戦乱の時代を正す人材の1人と見込んで暖かく迎え入れるのであります。
あの手この手でセコい手段も駆使しながら,2倍はくだらない武田家北条家連合軍を,見事に打ち破った姉小路家。山岳地で,街道が細くてマジ助かったとか,口が裂けてもいえない姉小路家ですが,最後の城を落城させ武田家を滅亡させると,北条家は意気消沈したのか軍を返していきます。そんな北条軍を追撃する余力など残っていない。しかし姉小路家将士の面々は,山岳マンの高い誇りと天下を狙う確かな使命感を担う男の眼光を宿しているのでありました。
宿敵だった武田家の遺臣は,すべて姉小路家が登用。降将は誰であれ,遺恨を残さず受け入れる。それがローマ人の教えを守る姉小路家の家訓です。だからローマ人って誰だよ |
領土が広がって記念撮影。まだ幕府を開くまでは道半ばですが,少しは見られる状態になってきました。まあ,領土は山だらけですけど |
でも実は,今のままだと姉小路の,姉小路による飛騨姉小路幕府は開くことができないのですよ。何しろ,幕府を開くには天皇陛下のおられる山城国の御所を確保していなければいけないんですが,もうとっくに織田さんの領地になっているんですよね。織田家が天下を取った暁には,織田政権の一角として,我が姉小路家も報われる日が来るかもしれない。しかし,飛騨姉小路幕府を開くには,政略結婚を切って,織田家と戦争をし,山城国を手に入れる――つまりは,姉小路家の屋台骨であるCHO☆NAN頼綱と織田葵ちゃんの夫婦(めおと)を解消しなければならんのです……。
確かに飛騨姉小路幕府は夢であるが,CHO☆NAN頼綱と葵ちゃんという夫婦がいなければ,姉小路家はここまで躍進することはできませんでした。そんな愛し合う2人を引き裂いてまで,帝を擁するために織田家と袂を分かち山城を奪う決断など良頼パパにはできるはずもありません。
良頼パパは,考えを巡らせます。本当に姉小路家が幕府を開くに値するだけの国力を得られてから,織田政権の一角であり続けるも良し,何がしかの言いがかりのネタを見つけて関係を解消するも良し。それもこれも,北条家を屠り,関東を我らが姉小路家のものとして初めて,夢のまた夢に手の届く頃合というもの。ただ,それは先のこと。今は,向かい合わせの背中でしっかりと織田家と姉小路家が勢力を伸ばし,立派に戦い抜いてこそ,上が目指せるというものだと。そして,そのころの姉小路家のことは,立派な武将となった頼綱が考えてくれるに違いない。
地道な各種外交も功を奏し,ルイージこと次男・顕綱に娶らせた督姫は髪結いして夫婦で加賀の領地経営に精を出す一方,縁戚・徳川家は我らが対武田戦勝と前後して難敵今川家の攻略に成功。また上杉家も城数を回復して北越後の小大名としてまだ権勢を保ち,同盟国となった伊達家は東北の主導権争いを制して北条家の前線と小競り合いを続けています。日ノ本は,織田政権へと大きく移り変わっていきました。
良頼パパはついに右京大夫に。名実共に,覇者の1人へと上り詰めてゆきます。目指せ,姉小路幕府! |
ゲーム開始当初はへっぽこ武将の代名詞で,役立たずで全滅しては泣きながら城へ逃げ帰っていた江馬輝盛(通称「テリー」)もこんなに立派な宿将に |
それにしても……良頼パパは思います。姉小路家すべての家臣,軍勢,領民が,CHO☆NAN頼綱と葵ちゃん夫婦の指揮の下で結束し,北条武田連合軍との戦いにおいては劣勢をものともせず戦い抜き,ついには勝利してしまいました。整備されていない山道を,わずか数百人の手勢でとぼとぼと行軍していたのが遠い昔のようです。それがいまや,CHO☆NAN頼綱は「知将」と呼ばれ,才気溢れるじゃじゃ馬のようであった才媛・葵ちゃんと駒を並べて前線で万単位の軍勢を率い奮戦しています。つい,十年前はろくでもないニートにしか見えなかった長男が,いまでは立派な跡取りとして軍を統べている。その姿を見て,良頼パパは咲き誇る桜の前で優しい親の顔つきになっていました。
いくら強大な北条家といえども,周辺大名すべてが姉小路家と誼を通じ,打倒北条の機運を高めているいま,うれえることは何もありません。高い志を持つ素晴らしい嫁にケツを叩かれ,押しも押されもせぬ戦国大名となった姉小路家の跡取り・頼綱は彼なりに最大限の成長をしてくれました。その頼綱のそばで笑う葵ちゃんと,末永く姉小路家を切り盛りしていってもらいたい。止まらぬ乾いた咳を続けながら,良頼パパは,なお未来を見据えます。息子夫婦に有力な家臣団がいるいま,彼らに任せておけばきっと北条家など敵ではないでしょう。そして,願わくば,飛騨を冠たる姉小路幕府に。
満開の桜が,山々を滑り落ちる強い風に煽られて舞い散るころ,年始からの咳風邪に見舞われていた良頼パパは,花びらに溶け込むようにして……突然に,その生涯を閉じました。54年の人生のすべてをかけて,貧困極まる飛騨の山中から身を起こして激動の時代を生き抜き,周囲の敵を何とか討ち滅ぼした良頼パパ。そればかりか,その広い心で積年の仇敵までをも部下に取り込んだ,良頼パパ。まるで心配事など何一つないかのような穏やかな表情のまま,家臣や領民に惜しまれながら静かに逝ったといわれています。
ありがとう,良頼パパ。楽しかったよ。
その遺志は,CHO☆NAN頼綱改め当主頼綱が引き継ぎ,良頼パパの見果てぬ夢に過ぎなかった飛騨姉小路幕府を目指して突き進んでいく――はずだったんですが,いろいろ起きてしまう後編に続きます。天下も見えた,はずの姉小路家にいったい何が起こるのか? 待て,次号!
■後編:輝け! 魂の姉小路家!〜夢の幕府開闢篇〜
■■山本一郎■■ 言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。半年ぶりに原稿が送られてきたと思ったら,まさかの中編。これ,三部作だったんですか!? 後編の原稿もお待ちしてます。 |
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信長の野望・創造 with パワーアップキット
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