連載
【山本一郎】「信長の野望・創造 with パワーアップキット」プレイレポート――輝け! 魂の姉小路家!〜風雲嫁取り篇〜
CHO☆NAN嫁取り大作戦! 奥様は猛将?
地道に織田家との関係を改善し,なけなしの金を払ってお膳立てを全力で進める姉小路家。その間,三好家,六角家と小競り合いをしていた浅井家からの救援依頼に織田家が借り出されるなどの幸運もあり,心配された「関係改善中の相手から無慈悲な戦争を吹っかけられて,すべてが灰燼に帰す」という悲劇はありませんでした。
そして到達した信用100。織田家と姉小路家の友好関係はマキシマム。痛みに耐えて良く頑張った! 感動した! これが姉小路家が誇る土下座外交の力だ! 努力が報われ,良頼パパも満足そうです。蒼白い顔で「婚姻」を織田家に申し込む手が心なしか震えます。断られたらどうしよう。理性では「そんな仕様ねーよ」と思うんですが,万一「娘をくれ? お前にはやらねーよバーカ」とかノビーに言われたら,プレイヤーとして数日立ち直れなくなることは間違いありません。
武田家との抗争が一服し,越中隣の春日山城に帰ってきた「ヤバいの」こと上杉謙信さん。マジご近所。こっち見んな。対策を急がねば。一刻の猶予もない |
ついに信用100に達し,婚姻を申し込めるところまで漕ぎ着ける姉小路家。画面の右側が洗練された織田家の皆さん,左側が良く言えば素朴な感じの姉小路家。CHO☆NANの馬鹿面だけが異空間。祈りながら決定を押す |
そして婚姻申し込みは……成功! やったぞ姉小路家やればできるじゃん! 姉小路家スタッフ一同および領民の流した感激の涙が飛騨の山を流れ集まり川となりそうな展開でありまして,良かった良かった。ご理解ありがとうノビー。お互い命のある限り,共に手を携えて不透明極まりないこの時代を生き抜いていきましょう。
ノビーは婚姻のお言葉に「貴様には先が見えているようだな」とか賜るわけですが,別の意味で「先が見えないから婚姻するしかなかったんです」と言いたい気持ちをぐっとこらえ,織田家のご息女を迎え入れるために「野郎ども城の掃除だ,赤絨毯をひけ」と指示を出しまくっているであろう良頼パパ。うだつの上がらない息子もこれで少しは気持ちを入れ替えて領国経営に取り組んでくれるのではないかと,親として期待する次第であります。ゲーム上ではとくに印象的なイベントは仕込まれていないので,盛大な結婚式を挙げているさまを脳内で補完。弱小大名にも,そういう喜びはあるのです。こんな片田舎ですけど,どうかゆっくりしていってください。娘さんは私たちが責任もってお守りしますので。
――で,織田家ご息女・葵女史(通称「葵ちゃん」)をお迎えしたわけなんですが……
葵ちゃんTUEEEEEEEEEEEEE!! なんですか! この世界的にも一流の能力は!! うまく立ち回れば恐ろしい上杉家とも互角に戦えるほどの高い戦闘能力と,姉小路家の家老全員が束になっても敵わない抜群の内政力。さらに技能はノビー譲りの鉄砲「三段撃ち」。ヤバイ。同じ人間とは思えんハイレベルで私たちと違う。これが第六天魔王・織田信長のDNAか。おーおうおうおー DNAベイスターズ。葵ちゃんのあまりの能力の高さに茫然自失となる姉小路家。いままでの私たちは何だったんだ。反省した。いい意味で反省した。長女次女も祝福の咆哮をあげています。
しかも葵ちゃん超野望高い。必要忠誠はノビーと同じ12,ちょっとやそっとのことでは満足しません。都会の女はプライド高ぇ。忠誠の状態を示すマーカーは真っ赤。お前たち,葵ちゃんがご不満だ! 宝物を差し上げろ! あ,この富山城さっき取ってきたんで,城主名乗っちゃってくださいよ! もう,ドーンと。どうぞどうぞどうぞ。わしらもう何でもしますんで。あ,遠慮せず。
その翌月から,姉小路家の評定は葵ちゃんが仕切ることになりました。ええ,家中の戦争に出ていない武将の中でもっとも能力の高い人が評定の議長をやるんです。もうお分かりですね。どう見ても姉小路家,乗っ取られてます。いろんな意味で。
なんか,業績が微妙な国内ドメスティック企業が世界的な多国籍企業に買収されたら,本社からMBA(経営学修士)を持ったバリバリの若手女幹部が取締役に送り込まれて,一番最初の取締役会で「この会社を5年で1兆円の時価総額にします」とか宣言されたような衝撃を,いま姉小路家は受けています。そんな鬼のような嫁をもらってしまってCHO☆NAN大丈夫か。完全な田舎侍に都会の女が嫁いできたカルチャーショックってこういうもんなんでしょうね。
こんな攻守にわたって活躍が期待できるいい嫁をもらえて,CHO☆NAN頼綱は幸せ者だ。こんな田舎侍にいい嫁が来てくれて。姉小路家も思わぬ戦力アップでかすかな希望が見えてきました。領民の安寧に向けて確かな一歩が踏み出せている。そう,良頼パパは自分のやってきたことに間違いはなかったのだと確信したのであります。
嵐のような葵ちゃん受け入れ騒動が終わり,荒れていた姉小路家も日々の安寧を取り戻しつつあるころ,上杉家はふたたび武田家との抗争を開始しました。例の「ヤバいの」こと上杉謙信も春日山城を出て武田領へ侵攻していきます。これは越中・魚津城攻略のチャンスなのではあるまいか。再び火事場泥棒的なアプローチで軍を興す姉小路家。このチャンスを逃さず空き巣を貫徹して,どさくさに紛れて勢力を拡大するのが当方のスタイルであります。
しかも今回は一味違います。葵ちゃん,姉小路家では初陣であります。凡将頼綱以下,再就職に職業訓練が必要な能力しか持ち合わせていない武将に兵を持たせていた姉小路家とはオサラバ。嫁いできて半年で姉小路家のすべてを手に入れた,織田家の血を引きし者が姉小路軍を統べるのです。危機を感じたのか,上杉軍も魚津城防衛のために軍を引き返し,中には上杉謙信の姿もあります。や,さすがに大丈夫なのか姉小路家。
さらには,上杉と同盟している畠山家も援軍を送ってきました。許さない。絶対に許さない畠山家。沸騰する怒りは差し置いて,冷静に指揮を執るわたくし。後詰で出していた夫・頼綱ほかの軍勢と葵ちゃんで挟撃し,あれよあれよという間に約2倍の兵力を擁する上杉・畠山連合軍は尻に敷かれたポテトチップのように粉々になり退散していきます。葵ちゃんつえぇ。損害は出しつつも敵を打ち破った姉小路軍はそのまま魚津城を包囲,ついに越中の玄関口である魚津を確保することに成功したのです。
これは強い。見ろ,上杉謙信隊が敗走していくぞ。祈りから確信に変わった姉小路家は,一家の悪しき風習である卑屈な日陰者路線から一変し,夢と希望に満ちた戦国大名としての脱皮を目指して,次なる目標を畠山家に据えます。一人の女性が,弱小国の運命を大きく変えた瞬間となったのです。
姉小路家飛躍の時! 気合と根性の二正面作戦
織田家とのご縁が深まり,上杉家からの脅威も排除されつつあるいま,我ら姉小路家に必要なこと,それは拡大戦略。それも,じっくり時間をかけて広がっていくのではなく,一足飛びに,しかも着実に大きくなり,収入の源泉となる安全な後背地を確保することが,御家安泰と領民の安全を確保するのに必要なことなのは間違いありません。
外交面では徳川家と結び,武田家が飛騨に興味を持ってしまったときの保険を確保する一方,北陸で残る宿敵・畠山家を完璧に屠るため本願寺との同盟も進めていきます。折しも,本願寺は隣の朝倉家との小競り合いが続いており,対畠山戦で変な便乗をされることはなさそうな雰囲気です。
武田家対策で徳川家とも2年の同盟に持ち込む姉小路家。何しろ織田家と武田家はひっそり同盟を結んでいるため徳川家との同盟はマスト。拡大を狙うにあたっては,慎重に保険をかけておきたい。準備,準備 |
信用度が70あるにもかかわらず,突然勢力拡大した姉小路家を不審に思う本願寺。しかし,とにかく宿敵・畠山家との決着をつけるためにも,本願寺領の通過は必須のため敢えて膝を折り短期の同盟を申し込むことに |
絶対に畠山家は屈服させるのだという良頼パパの執念とは別に,美濃では最後の岩村城に篭り20人の武将を擁する斎藤家が終末のときを待っているじゃないですか。う,斎藤家の良質な武将が欲しい……。葵ちゃんが強くても,各方面に優れた指揮官がいなければ勢力の持続的拡大など夢のまた夢です。すでに斎藤家の岩村城は武田勢に包囲されていますが,遠巻きに見ている限りではすぐの落城はなさそうです。いま介入して岩村城を横取りすれば,滅んだ斎藤家に仕えた家臣はすべて姉小路家のもの……舌なめずりで滴り落ちるヨダレを抑え切れません。
これは拡大のチャンスなのではないか。城も欲しいし,武将も欲しい。趨勢を見極めた良頼パパは,北方能登攻略には鬼嫁……もとい名将葵ちゃんを,美濃・斎藤家攻略には松倉城の四女・渚を筆頭に,遊軍のCHO☆NAN頼綱を残し姉小路家のほぼ全力を投入することを決断します。っていうか頼綱には3か月かけて道路工事を指示しちゃったんだよね。しかし,やるにはいましかない。そして出陣した主将のポートレートに5人の女性が並ぶ姉小路軍。どんだけ女性主導の一家なんだ。
北方戦線は突然現れた猛女……もとい葵ちゃんが,本願寺の助勢も得ながら次々と畠山家の軍勢を破り,城を落としていきます。半泣きで壊滅していく畠山勢。敵の本城七尾城を陥落させても兵の補充など不要とばかりに残る畠山支城もぷちぷちと潰して,ものの半年で畠山家を完全に屈服させてしまいます。さすがは葵ちゃん。
斎藤家の攻略を担当した四女・渚は,すでに武田戦で疲弊しきった斎藤軍からの抵抗もほぼなく,順調に城を取り囲み落城に追い込んで,斎藤家を滅亡させました。姉小路家の目論見どおり,すべての作戦が成功裏に終わって良頼パパの権威はうなぎ上りであります。一足先に捕虜となって引き連れられてきた斎藤家家臣は全員を武将として登用。さて,問題は因縁深い畠山家ですが……。
歴史的にまったく絡みのなかった姉小路家に横から城を落とされ理由も分からず滅亡に追い込まれる可哀想な斎藤家。本当にすまないと思っている!(バウアー風) |
まさに垂涎の一流武将が混じる斎藤家降将たち。半兵衛も斎藤利三も不破光治も前田玄以も姉小路配下に。これは……勝つる! |
まあ,狂った戦国時代にあって冷静な判断を下せる大名なんてそう多くないからこそ,名を挙げるため各大名が戦いに明け暮れてきたのも事実でありまして。姉小路との抗争の責任はただ畠山にあるものではないということで,本人が望むなら姉小路家に帰順せよと申し伝えて全員が受諾,畠山家もまた,すべてが姉小路家のプロパティとなったのであります。
この時代が,すべて悪かったのだよ……。宿敵畠山よ,いまこそ手を取り合って,激動の戦国時代の行く末を共に見届けようではないか。良頼パパが敗将・畠山義綱の肩を抱き寄せ指差した先には,真っ赤に燃える沈む夕日があたりを赤く照らしているのでありました。
優れた配下が増えたおかげで内政がはかどるようになり,どんどん道路は完備され,施設は拡張建設されていきます。好循環が転がりだすと,姉小路家は高度成長期へ,そしてバブル経済へと発展していくのであります。赤貧を洗うが如き時代は過ぎ去り,姉小路家はいまや上杉家と並び称される北陸の戦国大名としてその地位を固めつつありました。目指すは上洛,そして征夷大将軍へ向けて,国家の繁栄と領民の安寧を目指した姉小路家は,一見,日の出の勢いとなったわけですが……ここからが厳しかった。人間,危機を脱した,うまくいったと思った瞬間から転落が始まるのもまた摂理なのであります。
以下,待て次号!
■中編:輝け! 魂の姉小路家!〜怒涛の勢力拡大篇〜
「信長の野望・創造 with パワーアップキット」公式サイト
■■山本一郎■■ 言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。12月,世間が解散やら選挙で騒がしい最中にも,その愛は姉小路家に向けられるのでした。というか,次号ってなんですか山本さん。聞いてないっすよ? このボリュームを最後まで読んでから,その一言に(マジで)吹きました。原稿お待ちしてます。 |
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