COMPUTEX TAIPEI 2015で,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)は,「
STRIX」ブランドの新作となるサウンドカード「
STRIX RAID DLX」「
STRIX RAID PRO」「
STRIX SOAR」を展示していた。
STRIX RAID DLX。外付けのコントローラが付属するが,これについては後述する
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STRIX RAID PROとSTRIX SOARは,STRIX RAID DLXのそれとは異なる共通の基板を採用。外付けコントローラの有無で,「RAID」か「SOAR」に分かれる
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ASUSでオーディオビジュアル製品のシニアマネージャーを務める
Ives Chiu(アイヴェス・チウ)氏によると,STRIXブランドを冠した今回の新製品は,
ASUS製のサウンドカードやD/AコンバータシリーズであるXonar Essenceを手がけたエンジニアの新作で,「オーディオの技術で作った,ゲーマー向けサウンドカード」とのことだ。
CM6632AX
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サウンドチップは,詳細未公開ながら,
おそらくは「CM6632A」のPCI
Exp
re
ss接続モデルと思われるC-Media
Ele
ct
ro
ni
cs製の「
CM6632AX」。
マルチチャネルで24bit・192kHz対応を果たしている。
以下,カードデザインが公開されている最上位モデルのSTRIX RAID DLXで話を進めていくが,サウンドチップに組み合わされるD/Aコンバータは,ESS Technology製の「
SABRE9016S」。チップレベルのS/N比が,2ch時に128dB,8ch時に124dB,全高調波歪率は−110dBという高いスペックを持ち,主にBlu-ray Discプレイヤーや,いわゆるAVアンプなどでの利用が想定される製品である。
STRIX RAID DLXは高性能D/AコンバータであるSABRE9016S(写真赤丸内)を搭載。下位の2モデルも,チップレベルで120dBのS/N比を実現した「SABRE9006AS」を採用しているとのことだ
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STRIXシリーズの製品らしい,フクロウの目を模したカバーの下にある基板が下の写真だが,確かにオーディオグレードなのが分かるだろう。Chiu氏は,小細工なしに,高い音質によって,情報としての音を高い精度で聞き分けることができると,「オーディオグレードであることの意義」をアピールしていた。
カバーを外した状態のSTRIX RAID DLX。見るからに豪奢なアナログ段だ。ライン出力用と見られるOPAMPは交換可能なのも分かる
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サウンド入出力用のインタフェースは3製品とも3.5mmミニピン仕様。ライン出力は7.1chに対応する。ヘッドフォン出力のインピーダンスは600Ωにまで対応可能という
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もう1つ重要なのは,まったく新しいサウンドプロセッサソフトウェア「
Sonic Studio」を採用していることだ。従来のXonarシリーズでは,C-Media Electronicsのバーチャルサラウンド技術「Xear Surround」や,Dolby Laboratoriesの技術などを採用していたが,「これらを使うと,機能も,設定ユーザーインタフェースも,提供元の規定に左右されてしまう」(Chiu氏)。そこでASUSは,オーディオ関連の技術を持つパートナー企業からライセンスを受け,STRIXオリジナルのサウンドプロセッサソフトウェアとして,Sonic Studioを開発したのだそうだ。
Chiu氏いわく,Sonic Studioには,タブも,ポップアップするウインドウもないとのこと。設定できるすべての項目が,1つの,統一されたデザインのユーザーインタフェース上で完結するのが最大のポイントというわけである。
Sonic Studioの画面。一画面にすべての設定項目がまとまっている
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一例として,バーチャルサラウンドサウンド関連項目を拡大してみた。ASUSオリジナルのバーチャルサラウンド機能では,フロント寄りとバランス型,リア寄りの3パターンで,“効き”を調整できる
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中央部にダイヤル,その周囲に目盛りが並ぶ,外付けコントローラ
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さて,外付けのコントローラは何かだが,これは,ヘッドフォンもしくはスピーカー出力時の出力音量を手元で調整するダイヤル式ボリュームコントローラにして,「RAID MODE」を利用できるようにするためのものとのことだ。
ASUSが大文字で「RAID」というと,
ストレージの話になってしまう感じなのだが,これはMOBAやRTSなどにおける
Raid
(レイド,襲撃)のこと。突然のアタックを仕掛けるように,手元でぱっと設定を変更できるというのがその名前の由来だそうで,だからこそ外付けコントローラが付属しないSTRIX SOARからは,RAIDの文字が省かれているのである。
外付けコントローラ上のインタフェースは,PCとの接続用端子(左)と,ヘッドセット用となる3.5mmミニピン×2(右)。ヘッドセット接続端子を手元に引き出す機能も用意されているわけだ
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Sonic Studioに用意されたRAID MODEの選択肢
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そのRAID MODEは,「MicVolume」(マイクボリューム)と
「EQ」(イコライザ),
「Bass
Boost」(低音強調),
「Sur
round」
(サラウンド)の4つから機能をあらかじめ選択しておくと,外付けコントローラ上の
[RAID
MODE]ボタンを押すだけで,
全画面でのゲームプレイ中においても,
当該設定をダイヤルで調整できるという仕掛けである。
RAID MODEに入ると,外付けボックス上の目盛り表示も,機能ごとに変わる。ここではSurroundをバランス型にした状態(左)とフロント寄りにした状態(右)を並べてみた
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カード上には6ピンの補助電源コネクタがあった。マザーボードのPCI Expressスロットはノイズまみれであるため,マザーボードからは電源を取らないような設計になっているという
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試聴できたデモは,「オンボードのサウンド出力と音質を比べる」というもので,
なんというか,
違って当然という感じだった。
まったく新しいサウンドプロセッサの実力を確認するなどということは全然できていないのが申し訳ないが,
ハードウェアもソフトウェアも新しくなった,
完全新作のサウンドカードがこのタイミングで出てきたというのは,
音にこだわるゲーマーにとって,
意義深いことではなかろうか。
Chiu氏は,7月中にも,世界市場に向けて正式発表し,出荷を開始する予定だと述べていた。価格は「未定だが,STRIX SOARがミドルクラスのサウンドカードレベルになる」とのことなので,上位モデルは相応のお値段になりそうだが,楽しみな製品が出てきたとはいえそうだ。