レビュー
FFシリーズの新機軸は,理想のアビリティを探し求めるハック&スラッシュ系アクションRPG
FINAL FANTASY EXPLORERS
スクウェア・エニックスは本日(2014年12月18日)に,ニンテンドー3DS用ソフト「FINAL FANTASY EXPLORERS」を発売する。本作は「ファイナルファンタジー」(以下,FF)シリーズの流れを汲むアクションRPGで,さまざまなクラスのキャラクターが巨大な「召喚獣」にFFシリーズでお馴染みの特殊能力「アビリティ」を駆使して立ち向かうという内容になっている。
シングルプレイのほか,アドホック通信やインターネット接続で最大4人のマルチプレイも可能な本作だが,本稿では,製品版と同等のROM(発売日に配信されるパッチ「1.1」を適用済み)を使用したシングルプレイと,先行配信版「FINAL FANTASY EXPLORERS Light」によるオンラインマルチプレイのインプレッションをお伝えしよう。
エクスプローラーはクエストを繰り返して高みを目指す
本作は1987年から展開を続けるFFシリーズの,外伝的作品の一つという位置づけになる。
物語の舞台は,急激な地殻変動で生まれた島「アモステラ」。プレイヤーは,星のエネルギーを宿すという「クリスタル」を探す「エクスプローラー」となり,クリスタルを守る召喚獣と戦うのだ。
拠点である「リベルタス」の街で,エクスプローラーを束ねる組織「ユニオン」からのクエストを受注し,指定された場所に赴いて任務をこなした後,再びリベルタスへと戻って次なるクエストへの準備を整える……というのが本作のおおまかな流れだ。
プレイヤーの分身となるエクスプローラーは,さまざまな「ジョブ」に就くことで能力が変化し,攻撃や回復に役立つ魔法や技である「アビリティ」や,これを強化した「オリジナルアビリティ」を覚えられるようになる。特定のクエストをクリアすることにより,新たなジョブが解放されることもある(これらの詳細は後述する)。
エクスプローラーは,クラスによって装備可能な武器も変わってくる。クエストで倒した召喚獣やモンスターから入手した素材を街の「工房」へ持っていくと,「合成」で武器や防具を作ってもらえるので,お目当ての武器に必要な素材と,その素材を落とす敵の把握は重要だ。
召喚獣をはじめとした,クエストに登場する敵はなかなかの曲者ぞろいで,一人では太刀打ちできない場合もある。そこで重要になるのが仲間の存在だ。本作にシングルプレイとマルチプレイモードがあることは前述したが,シングルプレイでも常に一人でプレイするわけではなく,「魂石」というアイテムを入手すれば,モンスターを仲間としてクエストに連れ出せるのだ。モンスターは経験値を得てレベルアップするので,これを育てるのも楽しい。
このように,新たなジョブや装備,アビリティなどでエクスプローラーをパワーアップさせ,より強力なモンスターや召喚獣に挑んでいく……というのが本作の面白さなのだ。
適度なアクション性のある,スリリングなバトル
では,クエストとバトルの流れを見ていこう。
依頼されるクエストは,「小型のモンスターを指定された数だけ倒す」「指定されたアイテムを集める」「召喚獣を倒す」「未開の地域を探索して指定地点にたどり着く」など,さまざまな種類がある。1回のクエストの制限時間は,確認できた範囲では最大30分ほどで,普通にプレイしていると10分から20分ほどで終了する。空き時間に気軽に遊べるという印象だ。
ユニオンでクエストを受注したら,街の出口から出発することでクエストが始まり,クエスト終了後は自動で街へ帰還する。これだけ聞くといわゆる「ハンティングゲーム」と呼ばれるジャンルのそれを思い浮かべるかもしれないが,ハンティングゲームと大きく違うのは,クエストがいきなり目的エリアからは始まらないということだ。
街を出る(クエストが始まる)と,プレイヤーキャラクターはまず「レジ大平原」に出て,そこから目的のエリアを目指して移動することになる。街から遠いエリアになると,移動だけでそこそこの時間を取られてしまうのだが,ゲームを進めると「飛空艇」が使えるようになり,好きなエリアまで連れて行ってもらえるようになるので,心配はいらない。
バトルで重要になるのが,ジョブによって異なる「アビリティ」の使い方だ。アビリティは[L]または[R]ボタンを押しながら[A][B][X][Y]のいずれかを押すと発動するという操作方法になっており,最大8種類を使い分けられる。
「黒魔道士」の「ファイア」や「白魔道士」の「ケアル」など,シリーズでお馴染みのものが揃っており,「吟遊詩人」の「歌う」で,さまざまな効果を持つフィールドを出現させたり,「時魔道士」の「ヘイスト」で仲間の移動速度を上げたりと,FFシリーズの戦いがアクションRPGのシステムでうまく表現されているという印象だ。
アビリティは,剣や銃といった各種武器を使う「技」と,「魔法」に大別できる。前者はその武器種を装備できるジョブしか使えないが,魔法はどのジョブでも使用可能だ。前述したように,8つのボタンに好きなアビリティを割り振れるので,“白魔法で自分を回復しながら戦うモンク”“時魔法で加速して戦う忍者”といった組み合わせを考えるのが面白い。
こうしたアビリティの組み合わせは「マイセット」に登録しておくことができ,いつでも自由に呼び出せる。アビリティだけでなくジョブや装備まで登録できるので,マルチプレイ用に支援重視のセッティングをしておくこともできるのが便利だ。
エクスプローラーの前には,「トンベリ」「サボテンダー」「プリン」「フロータイボール」といった小型モンスターや,「イフリート」「シヴァ」「ラムウ」「アレクサンダー」などの召喚獣といった敵が立ちふさがる。
こういった敵との立ち回りで重要になるのは,相手の攻撃をしっかり見てからの回避,「ダッシュ」とアビリティの発動に必要な「AP」のリソース管理,アビリティのクールタイムの把握,といったところだ。
敵の攻撃,とくに召喚獣が使う「地獄の火炎」「ダイヤモンドダスト」「裁きの雷」といった大技は強力なので,相手の動きを見て攻撃を回避し,その隙にアビリティを叩き込むという戦い方を徹底する必要がある。
このとき,大切になるのがダッシュだ。[B]ボタンを押しながら移動することでダッシュできるのだが,ダッシュしている間はAPが減っていく。APはアビリティの使用にも必要となるので,むやみに逃げ回っているとAPが枯渇して反撃のアビリティが出せないし,かといってのんびりと歩いていたのでは攻撃を避けられない。また,相手に隙が出来たからといってアビリティを連発していると,ダッシュで逃げられずに次の攻撃に巻き込まれてしまうので,APは常に確認しておきたい。
さらに,アビリティを使った後は,クールタイムが経過しないと再使用できないので,それを頭に入れておく必要もあるのだ。
HPとAPを管理しつつ,ギリギリのところで攻撃を避け,アビリティを使って最大限の攻撃を叩き込んだ後に離脱する……という戦いはなかなかスリリングだ。
アクションRPGとはいっても,モンスターや召喚獣の攻撃に巻き込まれないような位置取りを保ったり,攻撃の予兆を見て回避に移ったりといった行動が重要なので,それほど反射神経は必要ない。アクションゲームが苦手な人でも,落ち着いてプレイすればうまく立ち回れるはずだ。
ジョブやアビリティ類の特性を理解していると,戦いがさらに楽しくなる。モンクの「ためる」で攻撃力をアップしてから「爆裂拳」で攻撃,忍者の「空蝉」で敵の攻撃を無効化しつつ敵に接近,召喚獣の突進をナイトの「ディフレクト」でとっさに受け止めるといった,FFの流れを汲むアクションRPGならではの面白さが味わえるはずだ。
ハック&スラッシュ的な楽しさを生み出す「オリジナルアビリティ」
本作のハック&スラッシュ的なプレイ感,つまり“クエストの戦果を眺めてはニヤニヤし,ついつい繰り返してプレイしてしまう楽しさ”を生み出す源となっているのが,「オリジナルアビリティ」だ。オリジナルアビリティとは,クエスト中の行動に応じて手に入る,ブースター(付加効果)が付いたアビリティのこと。本作では,オリジナルアビリティの収集・強化の中毒性が高いのだ。
オリジナルアビリティを手に入れるには,クエスト中に「クリスタルドライブ」を発動させることが必要となる。クリスタルドライブは,ひと言で言えば,味方や敵に効果を及ぼすバフ(補助魔法)のようなものだ。
クエスト中にアビリティを使うと,画面左上に表示された「レゾナンス」の数値が上昇し,これが一定値以上に達した状態で[L]と[R]を押しながら,さらに[A][B][X][Y]のいずれかを押すことでクリスタルドライブが発動するのだ。
クリスタルドライブは数十種類が存在しているようだが,画面にそのすべてが並ぶわけではない。エクスプローラーが装備している武器をはじめとする,さまざまな条件により大枠が決定され,その中からレゾナンス値に応じて最大4個が選択肢として出現するようだ。
クリスタルドライブの効果は,攻撃に斬属性の追加ダメージと即死属性を付与する「斬断の加護」や,毒や火傷といった状態異常の発生率をアップさせる「免疫弱体」など,いかにも補助魔法的なものばかりではなく,すべての攻撃がクリティカルヒットする「クリティカルタイム」や,攻撃のダメージが1000に固定される「針千本タイム」,エクスプローラーの身体が大きくなってパワーアップする「巨大化」など,かなりユニークなものも用意されている。
面白いのが,クリスタルドライブの中には敵に効果が及ぶものもあるということだ。例えば前述した「針千本タイム」の場合,味方だけでなく敵の攻撃もすべて1000ダメージになってしまう。キャラクターが弱いときは“やるかやられるか”というハイリスク&ハイリターンなものとなるので,状況をしっかり考えたうえで発動させよう。マルチプレイのときには仲間のことまで考える必要もありそうだ。
また,これは想像だが,通常時の攻撃で1000ダメージ以上受けてしまうような強敵が出てくるとしたら,針千本タイムは防御手段としても使えそうである。クリスタルドライブはなかなか奥が深そうだ。
さて,クリスタルドライブの話が長くなってしまったが,ここからやっとオリジナルアビリティだ。クリスタルドライブ発動中にアビリティを使うとき,通常なら白い文字で書かれているアビリティ名が黄色になっている場合がある。このアビリティを使うと,クリスタルドライブの力によって特殊な効果(ブースター)が付与されるのだ。
この効果は一時的なものだが,クエスト完了後に街に戻ると,クエスト中に使ったブースター付きのアビリティを習得できるようになる。これがオリジナルアビリティだ。通常のアビリティと同様に,ボタンに割り振っていつでも使えるようになる。
アビリティにどんなブースターが付与されるかは,発動したクリスタルドライブの種類によって異なる。例えば,攻撃されてものけぞらないようになるクリスタルドライブ「スーパーアーマー」だと,物理と魔法の防御力をそれぞれ上昇させる「物理防御上昇」「魔法防御上昇」のうち,いずれかのブースターが付く。
状態異常の時間を短く抑えるクリスタルドライブ「超回復」の場合は,アビリティを使うとHPが回復する「回復」や,一定時間のあいだHPが回復し続ける「自動回復」のブースターが付く。つまり,クエスト中にクリスタルドライブを使うたび,どんなオリジナルアビリティが手に入るのかにワクワクできるというわけだ。
ブースターは複数個付けられるうえ,同じブースターが重なった場合は効果がさらにアップする。例えば,スーパーアーマーのクリスタルドライブを発動させたときにケアルを使うと,オリジナルアビリティとして,「物理防御上昇」が付与されたケアルが誕生。これを使うと,HP回復に加えて,物理防御力が上昇するのだ。
筆者はこのケアルへさらにブースターを付けていき,最終的に「物理防御上昇」「使用間隔短縮」「魔法反射」「自動回復」「速度上昇」という5つの効果が付いたケアルを誕生させた。使うとHPが回復し,かつアビリティのクールタイム減少が速くなり,さらに一定確率で,魔法を反射する効果,一定時間HPが回復し続ける効果,移動速度アップ効果がつくというとんでもないケアルだ。しかも,ここからさらにブースターを付けることができるのだ。
このケアルは極端な例というわけではない。普通にプレイしていても,相手に毒を与えつつ物理防御力を下げる「盗む」や,一定確率で魔法を反射する「空蝉」など,ナンバリングシリーズでは考えられないような効果を持ったオリジナルアビリティが使えるようになる。こうした派手な展開ができるのも外伝作品ならではの自由さといえるだろう。
この感覚は,「ディアブロ」シリーズなどのハック&スラッシュ系ゲームで,さまざまな特殊効果が付いた剣や鎧といった戦利品を眺めている時に近い。
クエスト中,出現率が低いと思われるクリスタルドライブ「無限連携」が選択肢に出現した時などは,レアアイテムを見つけたかのような喜びがあった。アビリティ使用後の隙を特定のアビリティでキャンセルできる「連携・○○」というブースターが付けられるからだ。
ファイアに「連携・サンダー」のブースターが付き,“使用後の隙をキャンセルして立て続けにサンダーが唱えられるファイア”ができた時は嬉しかった。たたみかけるように連続でアビリティが使えるようになったことでバトルの迫力が増したのに加え,“自分が冒険の中で作り出したアビリティでパワーアップする”という,本作の魅力に改めて気付かされたからだ。
マルチプレイではゲーム性が大きく変化
ここからは体験版「FINAL FANTASY EXPLORERS Light」を使ったインターネット接続によるマルチプレイのインプレッションをお伝えしていこう。
マルチプレイでは仲間と共に巨大な召喚獣に挑むわけだが,シングルプレイとはプレイフィールが大きく変わってくる。
最も大きいのが「ヘイト」の存在だ。ヘイトとは,どれくらい敵の注意を引いているかという尺度で,敵に攻撃を当てるなどすると蓄積されていき,最もヘイトの高いエクスプローラーが敵から狙われることになる。ヘイトの値自体が表示されることはないが,狙われているエクスプローラーの足元には赤いマーカーが表示されるので,次に誰が攻撃されるかが分かるという仕組みだ。
シングルプレイではほとんど自分だけが狙われ続けるのだが,マルチプレイでは敵が頻繁にターゲットを変えてくるので,この管理が重要なのだ。ナイトのようなタンク系の場合,できるだけ手数を出したり,「月光斬り」などのヘイトが大きく上昇するアビリティを使ったりして,敵の注意を引きつける必要がある。モンクなどのアタッカー系なら,自分が狙われていないときに,アビリティを叩き込み続けるのが役目。白魔道士や黒魔道士などは,自分が狙われないことを第一に行動したほうがいいだろう。
召喚獣の攻撃は広範囲に及ぶものが多いため,自分が狙われている場合は,仲間を巻き込まないような位置へ移動するのが基本。また,仲間が一定範囲内に効果を発揮する支援系アビリティを使う場合は,その仲間の近くに走り寄るといったことも必要だ。仲間の存在とヘイトを意識することで,ゲームが一段階も二段階も奥深くなったように感じられるだろう。
マルチプレイでは召喚獣のHPが高くなり,より手ごわくなるのだが,エクスプローラー側も4人がそれぞれクリスタルドライブを使える。シングルプレイでは召喚獣にビビりながら戦うことが多いのだが,マルチプレイなら終始押し気味のムードで戦えるという印象だ。
何よりもありがたく楽しいのが,仲間との助け合い。シングルプレイでは攻撃も回復もすべて自分でやるしかなかったのだが,マルチプレイならHPが減っても仲間が癒してくれるし,力尽きても「レイズ」で復活させてくれるのだ。
自分が支援に回るのも楽しい。例えば白魔道士なら,仲間のHPに気を配りつつ,タッチパネルで魔法をかける相手を切り替えて,誰も力尽きないように回復する。シングルプレイでは味わえない忙しさと面白さだ。
今回一緒にプレイしたエクスプローラーには,こういった立ち回りに不慣れな人も多かったのだが,これはこれでやりがいがあるように感じられた。慣れているエクスプローラーと一緒に初心者を守ったりするようなケースも多く,クエスト終了時に「ありがとうございます」とお礼を言われたときなどは,「これぞマルチプレイの醍醐味!」と思えたものだ。
シリーズの新たな可能性を感じさせる作品。さらなるアップデートでの磨き上げに期待
FFシリーズの流れを汲んだアクションRPGである本作は,オリジナルアビリティというアイデアにより,一風変わったハック&スラッシュに仕上がっている。こうしたジャンルが好きな人ならガッツリとハマることができるだろう。
オリジナルアビリティのリストを並べ替えることができなかったり,モルボルをはじめとする大型モンスターを連れ歩いたときに視界が塞がれることがあったり,壁際などでカメラが回り込めずに真上からの視点になったり……と,細かいところで改良の余地はあるが,何より,FFシリーズの新たな可能性を感じさせる土台ができたというポジティブな印象が強い。
先行配信版に寄せられたユーザーの声を取り入れたバージョン1.1パッチが発売と同時に配信されたが,今後もこうした修正の取り組みを継続してもらい,さらに磨きをかけていってほしいところだ。
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