マリオの誕生日に開催された「スーパマリオ30祭」をレポート。生みの親である宮本 茂氏，手塚卓志氏，近藤浩治氏がゲストともに30周年を祝福

　任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」（以下，スーパーマリオ）の発売30周年を記念する「スーパマリオ30祭（さい）」が，2015年9月13日に東京都・渋谷のshibuya duo MUSIC EXCHANGEで開催された。当日は，スーパーマリオが1985年9月13日にファミコン用ソフトとして発売されてからちょうど30年となる記念すべき日であり，それを祝福するために大勢のファンが会場に駆けつけた。本稿ではその模様をレポートする。

入場開始時からイベントがスタートするまで，ステージ上ではパックマンを被った（！）DJのtom2さんが会場を大いに盛り上げた

　イベントは，スーパーマリオの生誕30周年記念の特別ムービーでスタート。MCをつとめるエレキコミックのお二人や，当日のゲストとともに，主賓であるマリオが登場し，特製のケーキで30歳のバースデーを祝福した。この様子を舞台裏で見ていた宮本 茂氏は，感動して目頭が熱くなったということを，後のトークで明かしている。

オープニングでは，スーパーマリオシリーズの歴史と30周年を祝福するムービーが上映された

MCをつとめたのは，エレキコミックのやついいちろうさん（左）と今立 進さん（右）。マリオとルイージの姿で登場した

ゲストとともに登場したマリオ。向かって右隣のスチャダラパーのBoseさんは「以外に身長が大きい」と対面を喜んだ

バースデーケーキのロウソクを見事に吹き消し，Boseさんとハイタッチ。実はリハーサルでは「ロウソク吹き消しはNG」だったそうだ

　マリオの誕生日は，ゲスト陣がライブで盛り上げた。前半で出演したアーティストは，CLACHIP（クラチップ）の皆さんとサカモト教授さん。それぞれが得意とするサウンドでスーパーマリオシリーズに関する楽曲を演奏した。

バイオリンとアコーディオン，そしてポータブルDJ機器で演奏を行ったCLACHIPの3人。スーパーマリオの各シリーズのメドレーで来場者を湧かせた

CLACHIP セットリスト
1：「スーパーマリオブラザーズ3」（メドレー）
2：「ドクターマリオ」（メドレー）
3：「スーパーマリオサンシャイン」
4：「スーパーマリオブラザーズ」（メドレー）

イベントが始まる前に，宮本 茂氏ら開発陣にサインを入れてもらったスーパーマリオのカセットを頭部のファミコンにセットして演奏したサカモト教授さん

サカモト教授 セットリスト
1：「スーパーマリオシリーズ」（メドレー）
2：「スーパーマリオブラザーズ」（メドレー）
3：「スーパーマリオブラザーズ3」（メドレー）
4：REBUILD

　サカモト教授さんの演奏後，ステージにはスーパーマリオのサウンドを手掛けた任天堂の近藤浩治氏が現れ，「皆さん楽しそうに演奏しているので，僕もやっていいですか？」とその場で「スーパーマリオメーカー」のタイトル曲を生演奏。来場者はもちろん，ゲストにとっても嬉しいサプライズに，会場からは大きな歓声と拍手が上がっていた。

突然のサプライズに緊張気味のサカモト教授さん。実は12年前，任天堂に就職の面接に行って，近藤氏と会っていたそうだ

　続いては，先日発売されたばかりのスーパーマリオメーカーのコーナーだ。ここでは近藤氏とともに，任天堂の宮本 茂氏と手塚卓志氏がスペシャルゲストとして登壇。トークゲストのBoseさんが自分で作ったステージを，宮本氏がプレイするという企画が行われた。「任天堂さんはこういう企画があったとしても，事前にソフトをくれない！（笑）」と訴えたBoseさんが3日で作ったというこのコース。通過すると落下していく大量の1upキノコが「30」の文字に見えるという，凝ったギミックも用意されていて，なかなかの力作のようだった。

宮本氏は「マリオは昔うまかったけど，最近は『スターフォックス』ばかり作っているんで」と話し，となりのマリオにツっこまれていた

　来場者やBoseさんにとって「神」である宮本氏が挑戦を始めると，画面のマリオの動きに会場全体が一喜一憂。昔はうまかったと話しながらもさすがの腕前で，目立ったミスもなく見事ゴールしてみせた。宮本氏は「作ったコースには性格が出るんです。このコースには“優しさ”が見えました」と感想を述べ，Boseさんは感激の笑顔を見せていた。

30周年を思わせるギミックが盛り込まれたBoseさん謹製のコース。宮本氏は見事にクリアし，大きな歓声が上がった

　そんなBoseさんが作ったコースを，今度は手塚氏がアドバイスするという企画にも発展。「30TH」と空中に並ぶコインをすべて取れるように，1個しか配置されていなかったジュゲム雲を複数配置したり，隠してあることがわかりづらかった1upキノコの場所にコインで矢印の形を描いして，より一層優しさが見えるコースへと仕上げ，この道30年の手腕を発揮してみせた。

Wii U GamePadを手にコースに改良を加えていく手塚氏。マイクを持つBoseさんは「答え合わせされている気分」とぽつり

　続いてのトークでは，開発陣によるスーパーマリオの開発秘話が語られた。近藤氏と手塚氏は1984年の同期入社で，その後すぐにスーパーマリオの製作に入ったそうだ。先輩にあたる宮本氏は当初，サウンドの専門スタッフが田中宏和氏しかいなかったところに，譜面が読み書きできる社員が入社してきたことを大いに喜び，近藤氏は入社時から宮本氏にレコード屋に連れて行かれ，宮本氏が薦めるレコードを聴かされたという。
　近藤氏はあのスーパーマリオのメインテーマがどう浮かんだのかを問われると「どうだったかな？」と記憶が曖昧なことを暴露。実はほかにも，のほほんとした草原を思わせるイメージの楽曲も作っていたが，それを完成したゲームに載せてみると，まったく合わず，そちらはボツにしてしまったそうだ。ちなみに本作の効果音も近藤氏が手掛けていて，「短くて機能を生かすという音は作るのが難しい」と，楽曲と同じぐらい苦労した思い出を語っていた。

　気になるこれからのスーパーマリオシリーズについては，「このスーパーマリオメーカーで終わり……と思わせて，油断させておく（笑）」と，宮本氏は意味深な発言を残す。続いて近藤氏と手塚氏が「今後もどんどん作っていきますよ！」と宣言すると，会場からは大きな拍手が湧いた。

占い師のゲッターズ飯田さん（右から2番目）が登場し，マリオを占った。「冒険心旺盛だけど気が小さい。国内より国外で活躍するタイプ。2018年には大きな話題になりやることが増える。恋愛経験はほぼない」とのこと

　ここからは後半のライブへと突入。出演アーティストは，REATOMO（リトモ）さんとYMCKの皆さんの2組だ。

口だけでサウンドを奏でるヒューマンビートボックスで，リアルタイムでサンプリングをしながらマリオの楽曲を演奏したREATOMOさん

RETOMO セットリスト
1：「スーパーマリオブラザーズ」無敵時（スター）BGM
2：オリジナル楽曲
3：フリースタイルのビートボックス
4：「スーパーマリオブラザーズ」地下BGM
5：「スーパーマリオブラザーズ」地上BGM
6：「スーパーマリオブラザーズ」死亡ジングル

今回のために製作した映像と，チップチューンのサウンド，そしてボーカルMidoriさんのキュートな声で会場を大いに盛り上げた

YMCK セットリスト
1：オープニング
2：マリオだよ！
3：Time Bomb
4：52 Futures
5：PicoPictのテーマ
6：YMCKのテーマ

　来場者と出演者，両方の思い出に残る内容となった今回のイベント。最後全員で「Happy Birthday to You」を合唱し，改めてマリオを祝福して，イベントは終了となった。なお当日の様子はTwitterのハッシュタグ「#mario30sai」「#30祭」でつぶやかれているので，気になる人はチェックしてみよう。

イベントのエンディングは，ゲームのスタッフロール的な演出に

開場入口では，THE KING OF GAMES製の特製Tシャツや，スーパーマリオ関連のグッズ，ゲスト出演者のCDなどが販売された