レビュー
Amazon限定で販売が始まった「GIGABYTE製ゲーマー向けノートPC」の実力検証
GIGABYTE AORUS X7 Pro V4
第1弾となるのは,17.3インチで解像度1920×1080ドットの液晶パネルを搭載するノートPC「AORUS X7 Pro」に属する「AORUS X7 Pro V4」(型番:X7 Pro-SYNC)と「AORUS X7 Pro V2」(型番 X7 V2)の2製品で,いずれもAmazon.co.jp限定販売となる。18日時点における販売価格は順に37万7784円,29万9138円(いずれも税込)だ。
両製品の主なスペックは表のとおり。4Gamerでは,「GeForce GTX 970M」をSLI構成で搭載し,ノートPC向け「G-SYNC」に対応するAORUS X7 Pro V4を入手できたので,筆者らしく,ゲーマー目線多めで,この新しいゲーマー向けノートPCをチェックしてみたいと思う。
薄さが目を惹くAORUS X7 Pro V4。キーボードレイアウト以外はよくできている
3Dゲームを起動して,長時間プレイし続けても,本体のキーボード面が熱くて触れなくなるような心配は無用だ。厳正を期すなら,長時間プレイしていると,[I][K]キーあたりから右側がほんのり温かくなってはくるが,触れないということは全然ないのだ。
比較的“かさ”のあるゴム足で浮いた底面から吸気し,本体正面向かって背面側両サイドに埋め込まれたファンを使って,本体背面および両側面に排気するという冷却機構は,きちんと機能できていると言っていいだろう。
17.3インチクラスのノートPCは,そう頻繁に持ち運ぶものでもないのだが,それでも,薄さのおかげで,机上で畳んだときなどの自己主張が少ないのは悪くない。
キーボードは,最近の流行でもあるアイソレート型で,打鍵感は少しペコペコしているものの,柔らかすぎず固すぎずで,大きな問題はない。ただ,フルキーボード仕様なのはいいのだが,メインキー部と10キー部との間に隙間がまったくないため,メインキー部の[Enter]キーや矢印キーを押そうとしてその右隣の数字キーを“誤爆”してしまうということが,かなり頻繁に発生した。本体の左端に並んだキーは,ご推察のとおりマクロキーなのだが,これを用意するよりも先に,メインキーと10キーの使い勝手に注力してほしかったところだ。
なお,Microsoftが公開している「Keyboard Ghosting Demonstration」で確認する限り,キーのロールオーバー数は組み合わせによって3〜10といったところで,配慮がゼロというわけではないが,及第点にも達してはいない。
残念だが,他社製品のほとんども同じような感じなので,ここはやむなしか。
なお,筆者はテクニカルライターではないので,G-SYNCそのものについて触れることはしない。「ノートPC向けG-SYNCとは何であって,デスクトップPC向けG-SYNCと何が違うのか」という込み入った話は,4Gamerの過去記事を参照してもらえればと思う。
NVIDIA,ノートPC向け「G-SYNC」を発表。ようやく「G-SYNCモジュールが何をしているのか」が明らかに
実際にゲームをプレイして,AORUS X7 Pro V4の実力に迫る
読者にとって気になるゲーム性能は,実際にゲームをプレイして確認しよう。今回は,筆者が最近最もよくプレイしている3本「World of Warships」「DayZ」「ARK: Survival Evolved」でテストを行う。テストに用いたグラフィックスドライバは「GeForce 355.60 Driver」だ。
下に示したのはそのムービーだが,実際,何の問題もなくプレイできているのが分かるだろう。
また,ムービーは60fps化されているので,これだけだと分からないのだが,体感レベルでは,ヌルっとした動きを確認することができた。正直,テストするまで筆者は,垂直リフレッシュレート120Hzの液晶パネルを搭載したゲーマー向けノートPCが存在する中で,75Hzなどという中途半端なスペックでは,垂直リフレッシュレート強化の恩恵はほとんど得られないのではないかと高をくくっていたのだが,この結果を見ると,考えをあらためざるを得ない。
お次は,開発速度が遅く,それが原因でプレイヤーの数が確実に減ってきているものの,筆者がこよなく愛しているスタンドアローン版DayZである。
ネットワークコードに引っ張られて性能がなかなか出なかったり,グラフィックスの最適化がいい方向に進んでいなかったりと踏んだり蹴ったりなタイトルなではあるのだが,GeForce GTX 970Mを2-way SLIで動作させるAORUS X7 Pro V4では20〜50fpsあたりのフレームレート内でうろうろする感じだった。
人里から離れたエリアや海沿い道を走っているときはだいたい40〜50fpsで落ち着いている一方,大きな街に入って,建物やオブジェクトが増えてくると,最小では15fpsまで落ちるが,平均では20〜30fps程度を確保できる。
ただ,下に示したムービーを見てもらうと分かるように,体感レベルでは,フレームレートが低すぎてゲームにならない,という感じではない。これが,NVIDIAのいう「G-SYNCによって,低フレームレート時のちらつきが抑制されている」効果なのか,単純に75Hzの液晶パネルを採用する効果なのかは断言できないものの,それほど残念な感じにはなっていないのだ。
性能を体感だけで書くなよ,という人がいるかもしれないので,4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0で設定されている「3DMark」(Version 1.5.915)の「Fire Strike」と「Fire Strike Extreme」を実行した結果もお伝えしておこう。レギュレーションでは,2回実行して,高いスコアを採用することになっているので,そのスクリーンショットを下のとおりお届けする。
Fire Strikeのスコア |
Fire Strike Extremeのスコア |
Fire Strikeで10709というのは,ノートPCとしては相当に高いレベルにあると言っていいだろう。CPUなど,ほかのコンポーネントが異なり,ドライババージョンも異なるので,参考程度にしかならないが,SLIが有効に機能すれば,GeForce GTX 980並みか,少し高い程度のスコアは得られていると述べてもよさそうだ。
DayZでG-SYNCのメリットを確認してみる
ここで,DayZを使って,G-SYNC有効時とVsync有効時,Vsync無効時における挙動の違いを見てみよう。テスト方法は至って簡単で,比較的大きな街の中でフレームレートが落ち込んだときの状態を,いま挙げた3パターンで比較してみる。
一方,Vsyncを無効化すると,当たり前といえばそれまでだが,低フレームレート時のテアリングが盛大になる。フレームレートが低くなると,あるフレームとその次の間のフレームで描画される内容に大きな違いが生じてくることはあるので,これはやむを得ないだろう。
高フレームレート時における入力デバイスの操作遅延を解消するアイデアとして,Vsync無効には相応の価値があるのだが,低フレームレート環境と組み合わせるものではないということだ。
以上のテスト結果からして,AORUS X7 Pro V4におけるG-SYNCは,有効化がマストと言い切ってしまっていいように思う。なお,「G-SYNCの有効化により,『G-SYNC処理自体の遅延』が発生するのではないか?」と疑問に思う人がいるかもしれないが,少なくとも筆者に,それは体感できなかったことを付け加えておきたい。むしろ,G-SYNCが有効であっても,低フレームレート時の残像感からは逃れられないことのほうが,個人的には気になった。
スピーカーはきちんと鳴るが,ゲームではヘッドセット/ヘッドフォン必須
ゲームプレイにとって,グラフィックスと合わせて重要なサウンドもチェックしておこう。
大型のノートPCで,サブウーファを搭載するような製品だと,どういうわけかサブウーファが本体底面で片側に寄り,しかもそこから重低域以外も再生されて,スピーカーサウンドがたいへん残念なことになるケースが多いのだが,AORUS X7 Pro V4で,その心配は無用だ。
底面を開けた写真を再掲。サテライトスピーカーは底面埋め込みで,左耳用が大型1基,右耳用が小型2基になっており,これでなんとバランスが取れている(ように,筆者の耳には聞こえる) |
写真左手前(と,この角度ではほとんど見えないが右手前)に注目。左右両サイドにサブウーファが埋め込まれている |
ただ残念ながら,そのスピーカーサウンドを,ゲームで味わうことは,ほとんどできなかった。なぜかというと,CPUと2基あるGPUを冷却する2基のファンが,3Dゲームを開始すると全力で回転し,ゲームサウンドを遮ってしまうからだ。
アイドル時やWindows操作時などは静かで,BGMをかけながら作業,なんてこともできるAORUS X7 Pro V4であるものの,たとえばWorld of Worshipsだと,起動後,マッチングが始まって,さらに艦艇などのオブジェクトが読み出されると,一気にファン回転数が上がり,室内はファンの風切り音で満たされるようになる。
ゲームサウンドの音がいいとか悪いとかを論ずる以前の問題であり,集中してゲームサウンドを聞きたい場合は,密閉型ヘッドセットやヘッドフォンの利用を強く勧めたい。
「GTX 970M SLI+G-SYNC」のノートPCとして,そつなくまとまったAORUS X7 Pro V4
筆者が目下プレイしているタイトルにいわゆるAAAクラスのものが1つもないため,SLIノートPCとしての評価になったかというと疑問は残らなくもないが,「SLIが期待どおり機能しなくても,G-SYNCと,垂直リフレッシュレート75Hzある液晶パネルの効果によって,Vsync有効時や無効時よりも滑らかな映像が得られる」というテスト結果が得られたことには,個人的に満足している。3DMarkのスコアを見る限り,SLIに最適化されたタイトルなら,デスクトップGPUであるGeForce GTX 980と同程度の性能は期待できるはずだ。
また,テストを通じて,それこそ「スピーカーの音が左右どちらかに寄っている」といった,つまらない問題に出くわさなかった点も,AORUS X7 Pro V4のよいところといえるだろう。キーボードのデザインと,強烈なファン動作音は明らかなマイナスポイントだが,国内初上陸のノートPCとしては,むしろ「その程度で済んでいる」ことのほうが驚きだったりする。だって前にテストしたノートはゲーム中に熱暴走で死んだし!
ハードルがあるとすれば,いくらGIGABYTE製とはいえ,国内では実績がほぼ皆無のノートPCに,ぽんと37万7784円(税込,8月18日現在)の価格を支払える人がいるか,というところだ。Amazon.co.jp限定販売なので,購入前に試してみるということができないのも痛い。
全体としては,価格と,どの程度厚いのか分からないサポートが気にならないなら,買って後悔することはないように思う。SLI+G-SYNCという仕様のゲームPCが気になるなら,一考の価値はあるとまとめておこう。
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