パッケージ
戦国X公式サイトへ
レビューを書く
準備中
戦国X
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2014/07/18 12:14

インタビュー

「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた

画像集#011のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
 リアルスタイルは2014年7月,スマートフォン向けゲーム「戦国X」(センゴククロス,iOS / Android)のiOS版を配信開始した(Android版は事前登録受付中,近日公開予定)。このタイトルは,戦国時代を舞台にしたリアルタイムストラテジータイプのゲームで,武将をフィーチャーしたキャラクター性や,誰でも簡単に遊べる手軽さなど,とっつきやすさを前面に押し出している。
 今回4Gamerでは,「戦国X」のゼネラルプロデューサーを務めるリアルスタイルの杉山芳樹氏と開発ディレクターの牛草信寿氏,サウンドディレクターであるATTIC INC.の中條謙自氏に,同タイトルの魅力や,今後の展開に掛ける意気込みなどを聞いた。

 また記事の最後に,戦国Xの楽曲を試聴できるサイトへのリンクを掲載した。これは,サウンドディレクターを務める中條謙自氏がオススメする楽曲群となっているので,氏の“戦国サウンド”が好きな人はぜひチェックしてほしい。

左からサウンドディレクターを担当するATTIC INC.の中條謙自氏,ゼネラルプロデューサーを務めるリアルスタイルの杉山芳樹氏,開発ディレクターの牛草信寿氏
画像集#001のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた

「戦国X」公式サイト

iOS版「戦国X」ダウンロードサイト(App Store)



戦国ファンと戦国ゲームクリエイターが集まって作った「戦国X」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて,皆さんの経歴や「戦国X」の運営開発における役割などを教えてもらえますか。

画像集#002のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
杉山芳樹氏(以下,杉山氏):
 まず経歴から申し上げますと,私はずっとコーエーテクモゲームスにてコンシューマゲームの開発統括を務めていました。代表的なタイトルは,戦国無双シリーズやガンダム無双シリーズです。そして2011年,リアルスタイルが設立される際に,弊社代表の小松(リアルスタイル 代表取締役社長 小松清志氏)に合流したんです。
 この「戦国X」では,ゼネラルプロデューサーの立場で,ゲームのコンセプトやセールスポイントを明確化したり,予算を確保したり,プロモーションを手がけたりといったことをやっています。

牛草信寿氏(以下,牛草氏):
 私は以前,バンダイナムコゲームスでモバイル事業を手がけていました。代表的なプロジェクトは「テイルズ オブ モバイル」などです。バンダイナムコゲームス時代の後期には,アーケード連動企画にも携わっていました。
 そして2011年にリアルスタイルに入社し,初の自社タイトルとなるこの「戦国X」では,開発ディレクターを務めています。

中條謙自氏(以下,中條氏):
 私は2013年6月までコーエーテクモゲームスに在籍しており,今は独立して“サウンド制作集団”ATTIC INC.の代表をやっています。コーエーテクモゲームス時代は,杉山さんの下で戦国無双シリーズのサウンドディレクターを務めたり,真・三國無双シリーズの作曲をしたりしていました。そのほか「討鬼伝」など,主に戦国時代をモチーフにしたタイトルのサウンドを手がけています。
 「戦国X」では,サウンドディレクターとして,音楽や効果音などのサウンドデザインと,それらの進行管理を担当しています。また今回,11年振りに作曲もやっています。

4Gamer:
 戦国Xのために集結したんじゃないかと思えるほどの,そうそうたるメンバーですね……。いろいろと気になることはありますが,順にお聞かせください。まずは戦国Xの企画意図や,コンセプトについてお願いします。

杉山氏:
 私は新しいゲームを企画するとき,シリーズものを想定し,シリーズコンセプトを立てます。戦国Xでは“簡単お手軽RTS”というシリーズコンセプトにしたのですが,それは一般的にRTSというジャンルには,複雑で難しいというイメージがあるからです。

4Gamer:
 戦国Xは,より簡単に,より手軽に楽しめるRTSであると明示したわけですね。

杉山氏:
 はい。また,シリーズコンセプトとは別に,タイトルごとのコンセプトを一文で表現します。と言うのは,開発中,開発チームがどんなゲームにするのか迷ってしまうことがあるからです。
 そこで戦国Xでは,「戦国武将が織りなす軍勢同士の熱きバトル」というコンセプトを立て,これに基づき,開発チーム全体のベクトルを合わせました。前半の「戦国武将が織りなす」という部分は,キャラクターゲームであることを,そして「軍勢同士の」は,戦国時代の軍勢と軍勢がぶつかり合うことを示しています。最後の「熱きバトル」では,このゲームには箱庭要素などもあるけれども,ゲームプレイの中心となるのはバトルなんだということを表明しています。
 ですから私のチェックもまた,このコンセプトと牛草達が作ったものとを照らし合わせ,「ここが表現できていない」「これでよし」といった判断になります。

画像集#012のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた

4Gamer:
 そもそも,戦国時代をモチーフにした経緯は何だったのでしょう。

杉山氏:
 一番大きな理由は,私自身が,戦国時代を好きだからです。しかし,リアルスタイルの自社タイトル第1弾として,自分の好きなものを打ち出していいのかという葛藤はもちろんありました。そこでApp Storeの100位までのタイトルを,ゲーム性の高さとソーシャル性の高さの2軸で分析し,戦国Xのジャンルや世界観と競合するものがどれだけあるか確認したんです。
 それが2013年10月頃だったのですが,当時は,戦国時代を扱うタイトルは多いけれども,ゲーム性が高いタイトルは,ほとんどなかったんです。そこで戦国Xなら勝負ができるだろうと判断しました。

4Gamer:
 なるほど。

杉山氏:
 あとは牛草が「信長の野望」シリーズの大ファンだったということも大きいです。やはり開発チームに戦国好きがいないと,戦国時代の雰囲気は表現できないと思います。詳しいかどうかよりも,まず好きかどうかということが重要ですね。

画像集#003のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
牛草氏:
 最近だと「信長の野望 創造」は,従来のシリーズをいい意味で壊しているので,非常に面白いですね。ほかにも,シミュレーションゲームやストラテジーゲームはかなり遊んでいます。

4Gamer:
 杉山さんも牛草さんも,戦国時代や,それを扱ったゲームがお好きであると。中絛さんはいかがですか。ずっと戦国ゲームに携わってきたということで,お嫌いではないでしょうけれども。

中絛氏:
 ゲームとなると,どちらかと言えば研究目的でプレイすることが多くなってしまいますね……。その中では,海外のゲームの構成力や世界観の作り方が参考になります。たとえば「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」とか。
 構成力や世界観という意味では,映画からヒントを受けることも多いです。「ロード・オブ・ザ・リング」や「グラディエーター」のように,人物をドラマチックに描いていく中で,音楽をどう使うのが効果的なのかといった点を参考にしています。全然,戦国じゃないですけど(笑)。

4Gamer:
 逆に,戦国ゲームのサウンドを多数手がけてきた中絛さんが,そういったファンタジー寄りの映画を参考にしているというのは興味深いですね。

画像集#004のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
中絛氏:
 「ロード・オブ・ザ・リング」ではケルト音楽を取り入れたり,「グラディエーター」ではローマ時代を思わせる音楽を取り入れたりと,民族音楽的なアプローチを取っているんですよ。そこで戦国無双では,それまで打ち込みだった部分に本物の和楽器の演奏を取り入れて,より世界観を深く表現するアプローチをしたんです。これは杉山さんから「世界でヒットする『戦国無双』にしよう」というリクエストを受けて考案したものでした。

杉山氏:
 あれ,そんなこと言ったっけ?

中絛氏:
 言いましたよ(笑)。ともあれ,そのときのチャレンジが,戦国Xの音楽で尺八や箏,和太鼓などを使っていることにもつながっているというわけです。


パッと目を惹くイラストとハードロック調のサウンドで親しみやすさを強調


4Gamer:
 それでは,戦国Xの内容についても教えてください。シリーズコンセプトには“簡単お手軽”とありますけど,具体的にどういった形で表現しているのでしょうか。

杉山氏:
 私はハードコアゲーマーで,往年のRTSで言えば「ポピュラス」や「伝説のオウガバトル」「半熟英雄」,コーエーテクモゲームスのものなら「決戦」などにすごくハマっていました。ただ,それらのタイトルはどうしても複雑になりがちで,一度遊び始めたら,2時間は続けなければなりません。そこで昨今のスマートフォンアプリの要件にも合致する,簡単お手軽に遊べるゲームにしようと考えたわけです。

牛草氏:
 杉山が話したとおり,RTSはゲームの中でも難しいジャンルです。そこで戦国Xでは,AIに着目しました。AIによって,プレイヤーの思いどおりにユニットが動くのであれば,それだけでもRTSはゲームが成り立つだろうと。

4Gamer:
 なるほど。

画像集#006のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
牛草氏:
 さらに軍勢を率いている武将が「戦技」(必殺技)を使えば,相手の軍勢を蹴散らせるという分かりやすさも用意しました。
 また武将の存在はキャラクターゲームであることの象徴ですが,そこには軍勢という形で兵士が紐付いています。モバイル向けRTSの先駆者である「Clash of Clans」では軍隊同士の戦いを描いていますが,戦国Xではあえて兵士が出てくる施設を用意し,彼らがぶつかり合う様子を描くことで,合戦っぽさを分かりやすく表現しています。
 操作面で言えば,何かを選択し,画面をタッチしているだけでゲームが進行していくようになっています。

4Gamer:
 武将が軍勢の象徴として活躍し,かつ簡単操作で遊べるというのは,ある意味戦国無双シリーズに通じる部分がありますね。

杉山氏:
 ええ。やっぱり私が10年以上無双シリーズに携わっていましたから,武将を中心に軍勢がワラワラしていると,何となく安心するというか(笑)。実は今回もバトルのプロトタイプをチェックするときに,「兵士は何体まで表示できるのか」と確認してしまったくらいなんです。
 と言うのも,軍勢がガッとぶつかり合うところを表現したかったんですよね。最初はそれが全然表現できていなかったんです。

牛草氏:
 最初はユニット同士が重なったりして,見た目の数が少なくなってしまったんですよね。そこからいろいろ工夫を重ねて,今では漁港の水揚げみたいな状態に(笑)。

中絛氏:
 「スマホでこんなに多くの3Dキャラを表示できるのか」というくらいになっていますよね。

牛草氏:
 現状は最大200体表示しています。実は,iPhone 5相当のスペックがあれば500体は出せるんです。ただ,それだと遊べる端末が限られてしまいますから。

4Gamer:
 そのほか,「戦国X」を開発する上でこだわった部分を教えてください。

杉山氏:
 何より,「ゲーム」であることですね。
 またリアルスタイルという社名にしても,戦国Xというタイトルにしても,ほとんど誰も知らない状態ですから,ゲーマーの皆さんにどうやってアプローチするか,どうやってメッセージをお伝えするかということを考えました。

4Gamer:
 具体的に,それをどういう形で表現しているのでしょう。

画像集#016のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
杉山氏:
 絵と音です。音に関しては,ちょうど中絛が独立したタイミングだったので「じゃあ,頼むわ」と。
 そして絵ですが,私は「パズル&ドラゴンズ」で日野慎之助さんが描いたイラストが好きだったんです。何が好きかというと,ポージングがすごくいいんですね。そういうご縁もあって,今回,メインキャラクターのイラストを日野さんにお願いすることとなりました。
 また,ほかのイラストレーターさんにお願いするときも,日野さんの描いたイラストをベースに「こういう世界観です」と説明していますし,またゲームの箱庭部分やバトル部分の絵作りも,日野さんのイラストに合うものを念頭に置いています。

4Gamer:
 日野さんのイラストが,ビジュアル的なイメージを決定していると。

杉山氏:
 そういうことです。また最初に作ったムービーにもこだわりましたね。この3年間,さまざまなソーシャルゲームを研究してきた中で,最初のムービーでは,ゲームの内容をきちんと紹介し,演出も入っているようなものが定番かなと考えていましたし,社内の見解も同じでした。
 しかし私としては,やはりゲーマーの皆さんにも「おっ」と思っていただけるものにしたいという思いもあったんです。そこで,私がコンシューマゲームで学んできたように起承転結があり,絵的に目を惹くようなものにしたんです。

4Gamer:
 もう一つの外せない要素である音に関して,中絛さんはどういったアプローチをしたのでしょう。

画像集#005のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
中絛氏:
 サウンドディレクターを引き受けたのは,2013年の秋に,杉山さんからどんなゲームにしたいのか,なぜスマートフォンで出すのかという明確なコンセプトを説明されたことがきっかけでした。そして戦国時代をモチーフにするから,ぜひ音楽を頼むと。
 また牛草さんもゲームミュージックに詳しく,戦国Xでは「とにかく耳に残るキャッチーさが必要だ」「バトルでは勢いのあるハードロックを主体にしたい」と,最初から明確なビジョンを打ち出していました。
 そこで私は,キャッチーなハードロックに尺八や箏などの和楽器を加えた「戦国ハードロック」というコンセプトを打ち出したんです。もともと私自身が得意としてきた分野だったこともあり,これが大変順調に進みまして。

4Gamer:
 あまり苦労した部分はなかったと。

中絛氏:
 はい。私自身,もともとハードロックバンドのギタリストでしたし,もう一人の作曲家であるATTIC INC.の山田玄紀も,真・三國無双シリーズでハードロック調の楽曲を手がけていたんですよ。先に述べたとおり,ハードロックに和楽器を導入する試みも研究を進めていましたから,非常に戦国Xにハマりましたね。
 またサウンドディレクターとしても,ゲームの規模がコンシューマゲームよりもコンパクトなので,細部にわたってコンセプトを維持できるというメリットがありました。たとえば楽曲のアレンジにしても,一音一音に対して目を配ることができるんです。ですから本当にやりがいがありましたね。

4Gamer:
 先ほど,久しぶりに中絛さん自身が作曲したという話もありましたね。

中絛氏:
 ええ。サウンドディレクターという立場になって以降,作曲は休業していたんですけど,独立してから何度かライブで演奏する機会があったんです。そのとき,ファンの方から,また私の書いた曲を聴きたいというメッセージを直接いただきまして,今回,一念発起したというわけなんです。

4Gamer:
 今回,思い入れのある曲があればぜひ教えてください。

中絛氏:
 今回は2曲書いていて,そのうち一つは浅井・朝倉連合軍の曲(「うたかたの夢」)で,勇ましくも少し泣きの入った仕上がりです。私は,織田に付くのか,朝倉に付くのかという決断を迫られ,結局滅びの方向を選んで勇敢に散っていったという浅井長政のエピソードが大好きなので,その思いをぶつけてみました。
 もう1曲は,群雄のテーマ(「快刀、乱麻を断つ!」)というバトル曲です。どちらもぜひ聴いてみてください。


体験版のフィードバックにより,大きく仕様が変わった製品版


4Gamer:
 6月から,戦国Xの体験版にあたる「戦国X 〜 序章」を配信していましたが,その狙いや,プレイヤーからの反響について教えてください。

画像集#007のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
杉山氏:
 狙いとしては,ゲーマーの皆さんにきちんとアプローチしたいということがありました。ゲームのメインとなるバトルに特化した内容にし,「これはどうですか」という問いかけをしたわけです。
 また体験版の配信は,どちらかと言えば開発の現場から出てきたアイデアでしたね。リアルスタイルは,新しいチャレンジを続けていく会社ですから,私も上層部も「それは新しい試みだからいいんじゃない」と賛成しましたけど,やはりいいものじゃないと意味がないということで,あの形になったんです。

牛草氏:
 体験版では,「AIが思いどおりに動かない」「もっと内容を詰めないと面白さが分からない」「戦技の効果が分からない」といった意見が寄せられました。
 そこで製品版では,そういった部分を一つ一つ改修し,体験版と比較すると,もう別のゲームと言っていいほど変化しています。もっと言ってしまうと,ゲームの仕様自体を変更しているんですよ。

杉山氏:
 体験版を出して,もう製品版を仕上げなければならない時期なのに,仕様を変えるって言いだしたんですよ。でも,私が遊んでみたら確かに仕様変更後のほうが面白かったんです。「じゃあ,いいか」って(笑)。
 ただ,やはり実際にプレイした皆さんの声を汲み上げるということが,開発チームの大きなモチベーションになるのは確かです。今回も「よりよくしていこう」という意識が高かったのだと捉えています。

中絛氏:
 私もテスト版をプレイしていたんですが,そうやって仕様が変わるごとに,分かりやすくなる一方で奥深くなり,また操作もしやすくなっているんです。
 でも仕様が変わるとセーブデータがリセットされるので,せっかく取ったSRカードがなくなっちゃうんですよね……。

4Gamer:
 私もテストサーバーのリセットには泣かされました(笑)。しかし,単純な数値の変更ではなく,AIやUIにも手を加えていったんですね。

牛草氏:
 AIに関しては今後も常に手を入れ続けますが,それ以外だと,いわゆる触り心地ですよね。触ってすぐに理解できるのかどうかという課題は,常につきまといます。

杉山氏:
 一番大きな変更は,制圧した場所の扱いですよね。製品版では,敵の施設を制圧して自分の領地にすると青い旗が立ち,そこから攻めることができるようになったんです。また,その変更により,攻め手が少しずつ優勢になっていくことも実感できるんです。「先にここを領地にして,そこから攻めていこう」といった考え方もできるようになり,ゲーム自体の奥深さにもつながりました。

4Gamer:
 難度の高いマップほど,その仕様が生きてきそうですね。

杉山氏:
 ええ。そんなに大きな変更だったのに,牛草は「仕様を変えていいか」という打診をしないんですよね。「仕様を変えます」という報告なんです。

中絛氏:
 牛草さんは力強いですよね。何か提案して,それがいいアイデアだったとすると即座に「そうしましょう」と返事が返ってくるんです。「ほかの人に確認しなくて大丈夫ですか」と聞いても,「大丈夫,説得してみせます」という感じで,非常に頼りがいがあります。
 とくにサウンドの場合は,ゲームの中にきちんと入り込まないと表現したいことを実現できません。今回で言えば,戦技発動の演出に合わせた効果音をしっかり作りましたし,また戦技の曲もその演出の尺に合わせてイントロを作り,演出が終わると同時にメロディに入るということをやっています。これは,外部のサウンドチームとして関わっていると,なかなかできないことなんですよ。

杉山氏:
 そう言えば,今回はタッチの効果音にもこだわっているんですよ。

中絛氏:
 コンシューマゲームのコントローラには,ボタンを押す気持ちよさがありますよね。しかしスマートフォンやタブレットのタッチパネルだと,タッチしても物理的なレスポンスがなく,その気持ちよさがありません。
 そこで,指でタッチしたときと離したときにそれぞれ音を鳴らしてみたらどうだろうと。今はタッチすると「カチッ」,離すと「ポン」と鳴るんですけれども,非常にレスポンスがよく,操作している感じが出ます。

4Gamer:
 効果音をそこまで深く追求できたのも,牛草さんの存在があったからというわけですか。

中絛氏:
 そうですね。また,「ポン」という音は,鼓の音ですから,ちょっとゲームに疲れたときに叩いてもらえるとリズムゲームみたいで面白いかもしれません。もちろん,得点などは出ませんけれども。

4Gamer:
 そういったサウンドのこだわりについて,プレイヤーの反応はいかがでしたか。

中絛氏:
 Twitterに「音楽がいい」と書いてくださったり,音楽に注目したレビューを書いてくださったりといった反響がありました。私としては非常にうれしいですから,継続的にチューニングしてやろうとモチベーションが上がりましたね。

4Gamer:
 それでは,製品版で変更された点を具体的に教えてください。

牛草氏:
 まず,先ほど杉山が触れたとおり,制圧して壊した施設からも軍勢を出せるようになり,攻めている側が少し有利になります。したがって攻めているときは,どこから壊していくかを考えるようになりますし,防御側もどうやって守るかを体験版以上に考えなければなりません。戦略的には楽しみが増えたと言っていいんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 そこが奥深さにつながっていると。

画像集#008のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
牛草氏:
 また大きいところでは,戦技を使うための「士気ゲージ」の仕様が変わりました。体験版では,戦っているうちにゲージが溜まっていったのですが,製品版では最初にゲージが満タンになっていて,それをどうやり繰りするかという形式になっています。
 また最初に与えられたゲージのMAXが3だとすると,当然,ゲージを4消費する戦技は使えません。そこで箱庭の部分で「兵舎」という施設を設置し,ゲージの上限を増やす必要があります。

4Gamer:
 なるほど。ゲージを溜めるのではなく,マネジメントするゲームに変わったわけですか。

牛草氏:
 そうです。最初から士気をプラスできる武将もいますし,兵舎を育てればゲージの上限が上がります。

中絛氏:
 実は私,その変更を知らなくて,テスト用のバージョンをプレイしたとき,体験版と同じようにやっていたら,いつまで経ってもゲージが溜まらないという経験をしました(笑)。

牛草氏:
 そのほか,箱庭にはデッキのコスト上限を上げる効果もありますので,充実させるほど,バトルも有利になっていきます。

画像集#014のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた

中絛氏:
 あとは忍者が罠を解除できるようになりましたよね。

牛草氏:
 ええ。そのほか細かい部分では,触り心地や分かりやすさを改善しています。たとえば右下に表示されるキャラクターが使えるということが分かりにくかったので,きちんと「あなたのユニットですよ」ということを表現しています。

中絛氏:
 チュートリアルもかなり充実しましたよね。

杉山氏:
 チュートリアルも含めて,武将同士の掛け合いがいい感じに仕上がっているんですよ。

牛草氏:
 それで思い出しましたが,製品版ではレア以上の武将にボイスが入っているんです。当初は入れない予定だったんですが……。

杉山氏:
 何となく,入れて当然というムードになっていたんですよ。「ここまでやったら,ボイスがないとおかしいでしょう」みたいに。

中絛氏:
 とうぜん,収録には私も立ち会ったのですが,台本がすごい勢いでできてきたんですよ。武将150人で,声優さんが全21名。嵐のようでしたね。

牛草氏:
 台本もそうですが,急遽決まった話なので,声優さん21名のスケジューリングがとにかく大変でしたね……。


ゲームの舞台は日本全国に拡大。複数のデッキが必要となるコンテンツも構想に


4Gamer:
 それでは,今後のアップデートで追加される要素のうち,今,お話できるものがあればぜひ教えてください。

画像集#009のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
杉山氏:
 まずは地域の拡大ですね。

牛草氏:
 今はあえて浅井・朝倉までにしており,皆さんが期待している毛利,島津,伊達といった地域は今後のアップデートで追加していきます。ゆくゆくは全国に拡大していきます。

4Gamer:
 曜日別のダンジョンなどはどうでしょう。

牛草氏:
 今,まさに準備を進めています。

4Gamer:
 それでは,実現するかどうかはともかく,戦国Xをこうしていきたいというような願望はありますか。

牛草氏:
 今は一つのデッキしか使えませんが,複数のデッキを使い分けるような要素を入れたいですね。たとえば3連戦しなければならないクエストで,第1陣,第2陣,第3陣とそれぞれ異なる3つのデッキを用意しておかなければ攻略できないとか。

中絛氏:
 野戦のあとに城攻め,みたいな感じですね。

牛草氏:
 ええ。まだ実現は未定なんですが,そのあとは本丸で戦うようなステージが作れるといいな,とは考えています。
 おそらくリクエストが多いだろうと予想しているのが,織田家や武田家をそろえるとアドバンテージがあるという仕様ですね。

中絛氏:
 ゲームとはあまり関係ないかもしれませんが,季節感も出したいですよね。戦国時代というと豊かな自然というイメージがありますから,四季を表現できると癒やしになるんじゃないかと。

4Gamer:
 さらに長期的な展望についても教えてください。杉山さんは,最初にシリーズコンセプトを立てるとおっしゃっていましたけれど,もう戦国Xのシリーズ化やモバイル以外のプラットフォームへの展開を考えているんでしょうか。

杉山氏:
 いえいえ,まずは運営を含めて,モバイルでしっかりやっていこうと考えています。当面は長くサービスを続け,多くの方に遊んでいただくことを念頭に置き,それがある程度の段階に達したら,次を考えることになるでしょうけれど。今は,戦国Xをそこまで育てることで手一杯です。

牛草氏:
 今の戦国Xは,どちらかというと一人で楽しむタイプのゲームですから,ゆくゆくは,プレイヤー同士で協力したり,競争したりする要素を追加したいですね。そうやってコミュニティが広がるようなゲームに育てていきたいです。

画像集#010のサムネイル/「戦国X」はゲーム性,イラスト,音楽と全方位にこだわりつつも“簡単お手軽”を実現したRTS。その魅力を3人のキーパーソンに聞いた
中絛氏:
 武将のキャラクターが立っているゲームですから,ぜひプレイヤー同士で,どの武将を推すかで盛り上がってほしいですよね。「お前の“推し将”,誰?」「オレ,織田推し」とか(笑)。

4Gamer:
 推し将って(笑)。

中絛氏:
 ぜひ公式Twitterでも,推し将という言葉を広めてほしいです。
 それはともかく,戦国Xはスマートフォン向けのゲームですから,リアルの友達同士が顔を合わせてプレイできるわけじゃないですか。ぜひ,一人だけで遊ぶのではなくいろんな形でコミュニケーションを取りながら楽しんでほしいですね。
 個人的な願望としては,もっとバトル曲を書きたいです。

牛草氏:
 地域が増えれば,必然的に曲も増えますよ。今回は,家柄ごとに曲を付けていますから。サウンドトラックを出すには……もう少し曲数がほしいですね。

中絛氏:
 どんどん書きますよ。

4Gamer:
 それでは最後に,「戦国X」に期待している人に向けて,メッセージを願いします。

杉山氏:
 繰り返しになりますが,「戦国X」では長く遊んでいただける内容を目指しており,実際にそうなっています。ゲームを熱心に遊ばれる方は,ぜひ戦略性を突き詰めてガッチリ楽しんでください。
 また,これまでRTSは経験がないという方も,簡単お手軽に遊べます。コンシューマゲーム同様,1日に1バトルだけ爽快感を楽しんで終わりという遊び方もできますので,ぜひ一度,触ってみていただきたいです。

牛草氏:
 皆さんがこの記事を読んでいるときは,「戦国X」の製品版がリリースされており,興味のある方はすでにプレイされていることと思います。皆さんそれぞれに「面白い」「面白くない」という感想があるでしょうが,私達は,多くの人に面白いと思っていただきたいと考えています。「面白くない」と感じた方は,ぜひ忌憚なきご意見を戦国Xの公式Twitterや,お問い合わせ窓口にお寄せください。

中絛氏:
 ゲームは曲だけ突出してもいいものにはなりません。ゲームが楽しく,また音楽もキャッチーで楽しいといったようにバランスを考えてサウンドを作っていますので,ぜひ両方同時に楽しんでください。また武将のボイスも個性豊かですので,期待してください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


中條氏こだわりのサウンドを一部紹介!


1.天下統一の夜明け 〜織田軍のテーマ
織田軍との戦いで流れる戦闘曲です。織田軍のかっこよさが全面に出るよう意識した、尺八と箏とギターが絡む和楽器ロックです。(作編曲:山田玄紀)
https://soundcloud.com/real-style/sengokux-07-oda-preview?in=real-style/sets/x-preview

2.うたかたの夢 〜浅井・朝倉軍のテーマ
浅井・朝倉連合軍との戦いで流れる戦闘曲です。「美しく散る!」をコンセプトに、勇ましくも哀愁漂う楽曲に仕上げました。(作編曲:中條謙自)
https://soundcloud.com/real-style/sengokux-11-azaiasakura?in=real-style/sets/x-preview

3.快刀、乱麻を断つ! 〜群雄のテーマ
その他様々な軍勢との戦いで流れる戦闘曲です。異国の軍勢に向かって意気揚々と行軍するさまをオリエンタル音階とポップなメロディで表現してみました。(作編曲:中條謙自)
https://soundcloud.com/real-style/sengokux-12-others-preview?in=real-style/sets/x-preview

4.最後の一太刀 〜総大将登場のテーマ
総大将出現時に流れる戦闘曲です。前半の劣勢な曲調から、テーマ曲としても使われている後半のメロディへとドラマチックに展開する「魅せる」楽曲に仕上げました。(作編曲:山田玄紀)
https://soundcloud.com/real-style/sengokux-13-boss-preview?in=real-style/sets/x-preview

5.絶技 〜戦技発動・壱
戦技発動時に流れる楽曲その1です。武将の能力アップに負けないように、軽や かで、終始ノリノリな楽曲にしました。(作編曲:山田玄紀)
https://soundcloud.com/real-style/sengokux-18-skill1-preview?in=real-style/sets/x-preview
  • 関連タイトル:

    戦国X

  • 関連タイトル:

    戦国X

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:11月06日〜11月07日